湧々堂HOME 新譜速報: 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック 廉価盤 シリーズもの マニア向け  
殿堂入り:交響曲 管弦楽 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック SALE!! レーベル・カタログ チャイ5



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品番 内容 演奏者
HMA-1951670
ブリテン:無伴奏チェロ組曲(全曲) ジャン=ギアン・ケラス(Vc)

録音:1998 年 3月
(旧品番 HMN 911670)
ジャン=ギアン・ケラスが初めてハルモニア・ムンディに登場した際の録音。ブリテンの無伴奏チェロ組曲は、名手ロストロポーヴィッチのために書か れた作品。高い技術と音楽性が要求される難曲です。今や押しも押されもせぬ実力と人気を誇るチェリストとなったケラスの若き日の鮮烈な演奏を聴くこ とができます。 (Ki)
HMA-1951793
スラヴ作品集
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
ルトスワフスキ:スビート、パルティータ
シマノフスキ:神話〜3つの詩Op.30
イザベル・ファウスト(Vn) 
エヴァ・クピェツ(P)

録音:2002年 8月
(旧品番 HMC 901793)
名実ともに現代ヴァイオリン界の女王となりつつあるイザベル・ファウストによるチェコとポーランドの作品集。難曲シマノフスキの名作「神話」では、驚きの技巧と深い精神性で作曲家の魂の叫びを表現した圧巻の演奏です。またエヴァ・クピェツの雄弁かつ絶妙なニュアンスのピアノも、ファウストの演奏を支えています。 (Ki)
HMA-1951951
マルティヌー:ヴァイオリン協奏曲第2番 H.293
弦楽セレナード第2番H.216
トッカータと2つのカンツォン〜Pfと弦楽合奏のための
イザベル・ファウスト(Vn)
セドリック・ティベルギアン(P)
イルジー・ビェロフラーヴェク(指)
プラハPO

録音:2006年6月
東欧諸国からパリに集まった作曲家のグループ「エコール・ド・パリ」のメンバー中、もっとも演奏・録音に恵まれているチェコ出身のボフスラフ・マルティ ヌー。彼のヴァイオリン協奏曲を、イザベル・ファウストの録音で。急進的な傾向の強い第1番でなく、かのエルマンに捧げられた叙情的な第2 番という のも興味深いところです。 マルティヌーの作品の中でもとりわけ美しい旋律にあふれ、平和で田園的な世界が続きます。ファウストの美音も冴え、ビェロフラーヴェクのボヘミア 的濃厚な伴奏も絶品。マルティヌー観の変るアルバムと申せましょう。もうひとつの注目は、ピアノの協奏的作品「トッカータと2つのカンツォン」の独奏をイケメン名手ティベルギアンが務めていること。明るい喜悦性に富 んだ曲で、あまり知られていない曲ですが、存分に楽しめます。 (Ki)

HAF-8905297
「ラモー氏の庭園」
ラモー:「イポリートとアリシ」から/「エベの祭典」第1アントレ「詩」から/「ダルダニュス」から/「優雅なインドの国々」から/カノン「笑いから離れ」/カノン「起きろ、際限なく寝る奴め」
ドーヴェルニュ:「死に行くエルキュル」から/「ヴェネツィアの女」から
カンプラ:「優雅なヨーロッパ」第2アントレ「フランス」から
モンテクレール:「ジェフテ」プロローグから
ラコ・ド・グランヴァル:カンタータ「何もない」
グルック:「改心した酒飲み」から
ダニエラ・スコルカ(S)
エミリ・ルナール(Ms)
ベネデッタ・マッズカート(A)
ザカリー・ワイルダー(T)
ヴィクトル・シカール(Br)
シリル・コスタンツォ(Bs)
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:2013年3月29、30、31日、パリ
クリスティの名盤が再発売!クリスティが主宰するアカデミー「声の庭」に参加している、選ばれし若手声楽家たちによる、啓蒙主義時代のフランスの声楽作品へのいざない。後の フランス・オペラの世界の原点を見るような内容です。2002年にレザール・フロリサンが始めた声楽家のアカデミー「声の庭」は2年ごとに開催され、 毎回250-300人が応募する中から6-7人が選ばれます。彼らはクリスティが実際にフランスで住んでいる城館に住み、徹底的に訓練を受け、その後レザー ル・フロリサンと共に世界の舞台を経験するという夢のようなアカデミーです。この演奏はその6回生たちによるものです。(第7回生は2016年10月 に来日し、「イタリアの庭で」と題した公演で絶賛されました)。
HAF-8905298
ヘンデル:キャロライン王妃のための音楽集
戴冠式アンセム第3番「主よ、王はあなたの力によって喜び」 HWV260
テ・デウム「キャロライン王妃」 HWV280
キャロライン王妃の葬送のためのアンセム「シオンの道は悲しみ」 HWV264
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン,ティム・ミード(C.T)
ショーン・クレイトン(T)
リサンドロ・アバディエ(Bs-Br)

録音:2013年11月20、21日、パリ
クリスティの名盤が再発売!ヘンデルは1710年頃から亡くなる1759年までほぼ半世紀をロンドンで過ごしました。その前半でヘンデルを熱心に支えたのが、キャロライン王妃 (1683―1737)でした。英国王ジョージ2世(1683―1760 在位1727―1760)の妃で、非常に人気の高い王妃でした。彼女はまだ少女の頃か ら2歳年下のヘンデルを知っていたそうで、ロンドンでのイタリアオペラの活動に奮闘していたヘンデルを常に庇護しました。ヘンデルはキャロライン王妃 のために多くの曲を書いていますが、その中でも有名な3曲を収録しています。 (Ki)
HAF-8901416
ミシェル=リシャール・ドラランド(1657-1726):プティ・モテ集
 独唱者(と合唱)のためのミゼレーレ(1867) 衛兵の寝ずの番はむなしい 
 同情と共感/ 第4の歌
ルイ・ルメール(1693/4-c.1750):・マリアは天に昇らせたもう
ジャン=バティスト・モラン(1677-1754):・レジーナ・チェリ
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
ソプラノ:ヴェロニク・ジャンス、サンドリーヌ・ピオー、ノエミ・リーム、
アルレッテ・シュタイアー

録音:1990年9月、1992年2月
クリスティの名盤が再発売!何人かの独唱者と小規模な器楽編成による「プティ・モテ」集。ヴェルサイユ宮殿で演奏されたグラン・モテの付属品のようなものだったかもしれませ んが、どれも美しさと鮮やかさに満ちています。 (Ki)
HAF-8901351
ミシェル=リシャール・ドラランド(1657-1726):「テ・デウム」「Super flumina Babilonis」「Confitebor tibi Domine」 ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1990 年 9月
クリスティの名盤が再発売!ヴェルサイユ宮殿がまだ隆盛を誇っていた頃、宮殿で行われた礼拝のためにグラン・モテを作曲し、リュリの後継者とも言われたドラランド。1684年の 「テ・デウム」はドラランドの最高傑作と名高いもの。詩篇に音楽を付していますが、他の作曲家による同様の作品とは比べ物にならないくらい感情に直 接訴えるドラランドのその力量に圧倒される内容です。 (Ki)
HAF-8901329
ルイ=ニコラ・クレランボー(1676-1749):カンタータ集
「ピラムとティスベ」(1713)
「オペラのミューズ、または抒情的な文字」(1716)
「ヘラクレスの死」(1716)
「 オルフェ 」
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1990 年 2月
クリスティの名盤が再発売!こんにちではオルガン作品の作曲家としても名を残しているクレランボーですが、生前はそのカンタータ作品で知られた存在でした。1710-1726年の 間に彼は5冊ものカンタータ集を出版しています。ギリシャやローマ神話に題材をとっています。とはいえここに収録されている「オルフェ」は通常の悲劇 的な幕切れではなく、オルフェウスの英雄的勝利を歌う軽めのアリアで幕となり、当時からよく演奏されていたといいます。 (Ki)
HAF-8901274
リュリ:プティ・モテ集
「すべての民よ、手を打ち鳴らせ」「天の元后」「おお、知恵よ」「種の僕らよ」「サルヴェ・レジナ」「神よ、私の叫びを聞き」「キリストの御魂よ」「めでたし天の最高の贈り物」「我が主に賜わった主の御言葉」「おお、いと甘き主よ」「主よ、王を救いたまえ」
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1987年 8月
クリスティの名盤が再発売!リュリの最晩年に作成された手稿譜の写しで資料が残されています。様々な精査の結果、現在は残されているプティ・モテのうち、11がリュリの真作で ある、とされています。これらの作品も、3パートから成る声楽パートと、シンプルな通奏低音という編成がカリッシミのスタイルと似ているとも指摘され ていますが、その声楽パートは絶えず他声部を模倣しあいながら進んだり、時に効果的な長いソロ・パッセージが置かれているなど、リュリならではの凝っ た技法がみられます。 (Ki)
HAF-8901268
ジェズアルド:5声のマドリガーレ第3、4、5、6巻(抜粋) ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1987年 7月13-15日
クリスティの名盤が再発売!愛、願望、死・・・これらの3つのテーマにジェズアルドほど肉迫した作曲家も、歴史上珍しいかもしれません。ここにセレクトされたジェズアルドのマ ドリガーレは、魂の苦悩を精密に音楽で描いているとともに、恋人たちの心をむしばむ「甘い毒」を音楽であざやかに表現しています。 (Ki)
HAF-8901055
エティエンヌ・ムリニエ(1599-1676):モーセ讃歌 モニク・ザネッティ(フロール、第1のムーア人女性)
クレール・ブリュア(ダフネ、第2のムーア人女性)
ノエミ・リム(クリメーヌ、第3のムーア人女性)
ハワード・クルーク(ティルシス、スパカモン、外科医2)
ジャン=フランソワ・ガルデーユ(ドリラス、外科医1)
ジェローム・コレア(パン)
ドミニク・ヴィス(老女、夜警、第4のムーア人女性)
アラン・トレトゥ(ポリシネル)
ブリュノ・ボルテフ(夜警)
フランソワ・フォシェ(夜警)
アントワーヌ・シコ(夜警)
ジャン・ドートルメ(アルガン、入学有資格者)
イザベル・デロシェ(アンジェリク)
アドゥニ・レジェ=ミヨー(クレアトン)
ウィリアム・クリスティ(学長)
エドゥアール・ドゥノワイエル(博士) ジャン・フランソワ・ゲ(博士)
フィリップ・ショケ(博士)
 ダニエル・ボナルド(博士)
ジョナタン・リュバン(博士)
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1990年4月
文豪モリエールの「病は気から」は、羊飼いたちの太陽王ルイ14世への追従に始まり、思いを寄せる女性への愛の語らいを夜警に邪魔される男、周 囲の人々に医者に仕立てられる男など、現代にも通じるギャグとペーソスに溢れる喜劇。シャルパンティエの活気に満ちた音楽には冒頭から圧倒されます。 また、ドミニク・ヴィスの抜群にコミカルな演技、第3の幕間劇ではクリスティ自身も出演して、大いに笑わせてくれる最高の1作です。 (Ki)
HAF-8901083
シャルパンティエ:牧歌劇「花咲ける芸術」H.487 ジル・フェルドマン(平和の女神:ソプラノ)
アニェス・メロン(音楽の女神:ソプラノ)
グレゴリー・ラインハート(不和の女神:バリトン)
カトリーヌ・デュソー(詩の女神:ソプラノ)
ギュメット・ロランス(建築の女神:メゾ・ソプラノ)
ドミニク・ヴィス(絵画の女神:カウンターテナー)
フィリップ・カントール(ひとりの戦士:バリトン)
ウィリアム・クリスティ(指)レザール・フロリサン
戦士たち、復讐の女神たちの合唱:上記7名+ミシェル・ラプレニー(Br)

録音:1981年5月
1978年にウィリアム・クリスティによって結成されたレザール・フロリサン。この団体の名称となっているシャルパンティエの傑作、音楽劇「レザール・ フロリサン(花咲ける芸術)」。シャルパンティエは多作であり、宗教曲から世俗歌曲、歌劇など幅広いジャンルに取り組み、洗練された美しさをもつ楽曲 を残しています。本作「花咲ける芸術」はシャルパンティの巧みな劇作法と優美な楽しい音楽劇となっています。クリスティ&レザール・フロリサンによる 本盤は、フランス・バロックの現代復興の第一歩となった記念碑的な名盤。クリスティやドミニク・ヴィスのデビュー時ならではの若々しい輝きも聴きどこ ろです。 (Ki)
HAF-8901091
ロッシ:2つのオラトリオ
オラトリオ「後悔した罪人」
オラトリオ「おお、哀れな瀕死の男のおろかさ」
アニェス・メロン(S) 
ジル・フェルドマン(S)
ギュメット・ロランス(A)
 ドミニク・ヴィス(オート=コントル)
ミシェル・ラプレニー(T) 
エティエンヌ・レストランガン(T)
フィリップ・カントール(Br)
グレゴリー・ラインハルト(Bs)
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1982年1月
ルイージ・ロッシは室内カンタータを多く残し、イタリア初期バロックの声楽曲の分野では当時のローマを代表する存在でした。この2つのオラトリオは、 ロッシの名声が確立した1640年頃の作品と考えられています。ロッシの音楽はローマで生まれ、その後ヨーロッパ全域に広まった声楽の新しいスタイル を代表するもので、優れた構成力、知性と想像力を駆使した鋭い審美眼に基づく音楽でした。 (Ki)
HAF-8901238
カンプラ:フランス語によるカンタータ集
アリオン、アモルとヒュメナイオスの争い、女たち、アエネアスとディド
ジル・フェルドマン(S)
ドミニク・ヴィス(C.T)
ジャン=フランソワ・ガルデル(Br)
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1986年
南フランスのエクサンプロヴァンス出身のアンドレ・カンプラ(1660-1744)は生来の劇場好きで、ノートル=ダム聖堂の楽長も務めていましたが、や がて舞台音楽の作曲に本腰を入れ成功しました。ここに収録されているカンタータも、貴族の館で上演されるため小規模ながらも、オペラと同様の手法 が盛り込まれたドラマティックな作品。フランス・バロックの権威、ウィリアム・クリスティと名カウンターテナー、ドミニク・ヴィスなどの優れた歌手を揃 えた文句なしの録音です (Ki)
HAF-8901280
モンテクレール:ディドンの死〜カンタータ集
カンタータ集第1巻より第6曲「ディドンの死」(ソプラノ、ヴァイオリン、フルートと通奏低音のための)
カンタータ集第2巻より第7曲「意地悪な愛」(カウンターテナーと通奏低音のための)
カンタータ集第2巻より第3曲「愛の勝利」(テノールと通奏低音のための)
カンタータ集第3巻より第9曲「ルクレティアの死」(ソプラノ、2つのヴァイオリンと通奏低音のための)
カンタータ集第2巻より第6曲「プラムとティスベ」(ソプラノ、テノール、バス、ヴァイオリン、フルートと通奏低音のための)
アニェス・メロン(S) 
モニク・ザネッティ(S)
ジェラール・レスヌ(オート=コントル) ジャン=ポール・フシェクール(T)
ミリアム・ゲヴェルス(Vn)
ソフィー・デゥムール(Vn)
マルク・アンタイ(フルートトラヴェルソ)
ステファン・スタブス(テオルボ) 
エリザベス・マティファ(ヴィオール)
ウィリアム・クリスティ(指&Cemb)
レザール・フロリサン

録音:1988年3月
フランス・カンタータの黄金期を築いたミシェル・ピニョレ・ド・モンテクレール。モンテクレールは多くの作品は残しませんでしたが、鍵盤楽器以外 のあらゆる分野の楽曲を書いています。特に重要なのが3巻に渡るカンタータ集です。モンテクレールのカンタータは、歌と楽器を絶妙に組み合わせ展開 する劇的な表情と多彩な楽器の使用です。アニェス・メロンをはじめとした古楽のエキスパートたちの歌唱にレザール・フロリサンの巧みな表現力を楽し むことができます。 (Ki)
HAF-8901297
ロッシ:聖週間のためのオラトリオ
オラトリオ「悔やむ罪人」*
アニェス・メロン(S)
ジル・フェルドマン(S)
マリー=クロード・ヴァラン(S)
ドミニク・ヴィス(オート=コントル)
ヴァンサン・ダーラ(オート=コントル)
イアン・ハニマン(T)
ミシェル・ラプレニー(T)
フィリップ・カントール(Bs)
フランソワ・フォシェ(Bs)
アントワーヌ・シコ(Bs)
ジル・フェルドマン(S)
モニク・ザネッティ(S)
ジェラール・レスヌ(オート=コントル)
ジャン=ポール・フシェクール(T)
ミシェル・ラプレニー(Br)
フランソワ・フォシェ(Bs)
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1984年2月、1986年7月*
17世紀前半、全盛を誇ったバルベリーニ家の庇護の下、様々な芸術が豪華を競っていたローマ。ローマ楽派の巨匠ルイージ・ロッシのバルベリーニ 家時代の作曲と伝えられているオラトリオは、バロック芸術の本質である明暗、歓喜と悲観、といった劇的な対照によって、オペラにも優る表現力を持つ。 豊かな表情と旋律美を、クリスティの洗練された抒情で聴かせます。 (Ki)
HAF-8901381
ラモー:オペラ「ピグマリオン」、
「ネレとミルティス」
ピグマリオン(一幕のバレエ付オペラ)
ハワード・クロック(ピグマリオン:テノール)
サンドリーヌ・ピオー(愛神;ソプラノ)
アニェス・メロン(セフィーズ:ソプラノ)
ドナティアンヌ・ミシェル=ダンサック(彫像:ソプラノ)
ネレとミルティス(一幕のバレエ付オペラ)
アニェス・メロン(ミルティス:ソプラノ)
ジェローム・コレア(ネレ:バス)
フランソワーズ・セムヤ(コリンヌ:ソプラノ)
ドナティアンヌ・ミシェル=ダンサック(アルゴス女:ソプラノ)
カロリーヌ・ペロン(アルゴス女:ソプラノ)

ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1991年5月
50歳でオペラ作曲家としてデビューしたラモーは、その後29作品のオペラを残しています。その中で最高の成功作といわれる「ピグマリオン」と「ネ レとミルティス」を1枚に収録した名盤。両作品とも一幕のバレエ付オペラとして作曲されています。 自分がつくった彫刻に恋をする王ピグマリオンと愛する女性の心を確かめるために心変わりをしたフリをするネレ。ともにフランス・バロックならではのギャ ラントな雰囲気に溢れています。 (Ki)
HAF-8902276
LA HARPE REINE〜王妃のハープ〜マリー・アントワネットの宮廷の音楽
ジャン=バティスト・クルムフォルツ(1747-1790):ハープ協奏曲 第5番 op.7 変ロ長調(1778)
ハイドン:交響曲第85番「王妃」Hob.I:85 (1785)
ヨハン・ダヴィド・ヘルマン(1760?-1846):ハープとオーケストラのための協奏曲第1番 op.9 ヘ長調(1785-1789)
グルック:「精霊の踊り」〜オルフェオとエウリディーチェより(編曲:メストレ)
グ ザ ヴィエ・ドゥ・メストレ(Hp)
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:2016年6月27,28日、ヴェルサイユ宮殿王立歌劇場(ライヴ)
LES ARTS FLORISSANTS & WILLIAM CHRISTIEシリーズの新譜は、なんとハープのメストレをゲストに迎えての1枚。タイトルに「王妃のハープ」 とあるように、マリー・アントワネット (1755-1793)と、彼女が愛した楽器、ハープの楽曲をおさめた内容です。2016年6月に行われた演奏会のラ イヴ録音。 1曲目の作曲家クルムフォルツは、ボヘミア出身の作曲家でありハープ奏者。楽器製作者とともに、ハープの改造や奏法に取り組み、それまでになかったハー プのための作品を残しています。 クルムフォルツが対位法を師事したのが、作曲家ハイドン。マリー・アントワネットが気に入っていたとされる交響曲第85番を収録しています。クリスティ によるシンフォニーの録音ということで、注目のプログラムといえましょう。荘重なアダージョを経て軽快なヴィヴァーチェとなる第1楽章から、楽器間の アンサンブルも十分にたのしめる演奏。終楽章の最後まで、快活さと典雅さを感じさせる演奏です。 ドイツ人のヨハン・ダヴィド・ヘルマンは、アントワネットのピアノ教師で、作曲家。自身はハープ奏者ではありませんでしたが、3つのピアノ・ソナタ、3 つのピアノ協奏曲のほか、3つのハープ協奏曲をのこしています。このハープ協奏曲はすべてルイ14世の妹(ハープ奏者)、つまりアントワネットの義妹 にささげられています。今日ハープ奏者にも知られざる存在の作品ですが、モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲と同様、ハープ奏者ではない 作曲家によるハープ作品、ということでも重要な作品です。  演奏会でアンコールとして演奏されたグルックの「精霊の踊り」は、メストレ自身の編曲によるハープ独奏版。メストレの歌心に胸を打たれるトラックです。 (Ki)
HAF-8905276
愛は苦しみ〜厳粛なアリアと酒の歌
ミシェル・ランベール(1610-1696):秘密の炎
 やすらぎと影、そして静けさ
あ、今後は誰が約束しようなどと思うだろう
 心変わりするならば死を選ぶ
フランソワ・クープラン(1668-1733):怠け者の墓碑銘
 巡礼の女たち
ランベール:イリスは去った
 愛は苦しみ
シャバンソー・ド・ラ・バール(1633-1678):魂を虜にされると
マルク・アントワーヌ・シャルパンティエ(1643-1704):「無理強いの結婚」より新しいインテルメッツォ
ランベール:11.新しい季節に小鳥が歌いだす
 イリス、あなたの美しい瞳のために
 隔てられた恋人たち
オノレ・ダンブリュイ(c.1650-1700):私たちの森の快い静けさを
シャルパンティエ:赤ぶどう酒を飲んだあと
 火のそばで愛し合う
 深紅の小さな美しい瞳
ランベール:悲しい別れは私の悲しみをときあかす
 本当です、愛は魅力的
 全宇宙が愛に従う
レザール・フロリサン
エマヌエル・ド・ネグリ(ドゥスュ/S)
アンナ・レイノルト(バス-ドゥスュ/Ms)
シリル・オヴィティ(オート・コントル)
マルク・マウイヨン(バス・タイユ/Br )
リサンドロ・アバディエ(Bs)
フローレンス・マルゴワール(Vn)
タミ・トロマン(Vn)
ミリアム・リニョール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
トマス・ダンフォール(テオルボ)
ウィリアム・クリスティ(指)

録音:2013年12月ヴァンセンヌ音楽院ホール
古楽界の大御所ウィリアム・クリスティはフランス・バロック音楽、特にオペラと声楽作品の復興に多大な貢献し、現在の古楽界に大きな影響を与えて います。 本アルバムは、ランベール、シャルパンティエら17世紀フランスの作曲家による歌曲集。16世紀後半から17世紀中期にかけてフランスの上流階級で流 行した「エール・ド・クール(世俗歌曲)」を収録したアルバム。エール・ド・クールの中心的な作曲家ランベール、シャルパンティエの作品は、フランス・ バロックの開花初期の素朴な美しさが魅力。いずれも哀愁を帯びた旋律、それにヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュートの低旋律、和声、リズム を効果的に掛け合わせ情熱的に聴かせます。特にアルバムのタイトルにもなっているランベールの「愛は苦しみ(Bien que l’ amour…)」は優美で洗練 されたランベールの特徴が最も現れた美しい楽曲。そしてフランス・バロック中期から後期の代表的な作曲家F.クープランや、ルイ14世のシャペル付楽 団のオルガニスト、シャバンソー・ド・ラ・バール、ランベールの弟子のオノレ・ダンブリュイの作品も収録。 このアルバムに収められている作曲家たちは、同時代フランス・バロックとは言っても、フランス・ルイ王朝の栄華期に活躍したランベール、ラ・バール、シャ ルパンティエと衰退を見せた時期に活躍したダンブリュイ、F.クープランという2世代に分けられ、その対比を、音楽と詩という当時最も豊かであった文 化を組み合わせた歌曲という分野で表面化させたプログラミングも、さすがクリスティと思わせるポイントです。 (Ki)
HAF-8905283
「イタリアの庭で」〜アリア、カンタータ、マドリガーレ
バンキエーリ(1568-1634):マドリガーレ「さあ、全員集まったから」〜≪音楽のザバイオーネ≫(「森の創意」&5声のマドリガーレ第1集(1604))より
ヴェッキ(1550-1605):「音楽のユーモア」:「皆さん、静かにしてください」〜≪シエーナの夜会、または現代の音楽のさまざまな気分≫より
ストラデッラ(1639-1682):シンフォニア〜カンタータ≪ねえ、恋人さんたち(愛のアカデミア)≫より
ヘンデル(1685-1759):アリア「冥界の川に住む、邪悪な亡霊たちよ!」〜歌劇≪オルランド≫(HWV31)より
ジャキェス・デ・ヴェルト(1535-1596):マドリガーレ「もはは涙ではない」〜≪5・6・7声のマドリガーレ集≫第5巻より
ヴィヴァルディ:レチタティーヴォ「不実で嘘つきな娘よ」-アリオーソ「鎧も兜も脱ぎ捨てよう」-レチタティーヴォ「身軽になったので、一息つこう」-
アリア「俺は、背中には百の翼を」〜歌劇≪オルランド・フリオーソ≫(RV Anh.84)より
ヘンデル:アリア「棘は残したまま、薔薇の花だけ」〜オラトリオ≪時と悟りの勝利≫(HWV 46a)より
ヴィヴァルディ:アリア「嫉妬よ、おまえは私の魂にもたらした」〜歌劇≪離宮のオットー大帝≫(RV 729)より
ストラデッラ:レチタティーヴォ「〈悟り〉は愛の学校のメンバーではないけれど」-アリア「愛の神の矢に用心しなさい」-レチタティーヴォ「〈悟り〉が〈理性〉と手を組んだなら」-マドリガーレ「愛の神は巧みな師匠だ」〜カンタータ≪ねえ、恋人さんたち(愛のアカデミア)≫より
チマローザ(1749-1801):「ああ、皆さん分かってください」歌劇《みじめな劇場支配人》より
ハイドン:レチタティーヴォ「美しい方々!」-レチタティーヴォとアリア「私はどうしたらいいの」-レチタティーヴォ「どうですか」-伴奏つきレチタティーヴォ「配偶者!」〜歌劇≪歌姫≫Hob.XXVIII:2より
ドメニコ・サッロ(1679-1744):アリア「人前で芝居をするのは惨めだわ」-レチタティーヴォ「外国から来る興行師を待ってるの」-レチタティーヴォ「私の名はニッボ」-レチタティーヴォ「でもあなたは私に去ってほしいの?」-アリア「愛は用意する」〜歌劇≪カナリー劇場支配人≫より
ハイドン:四重唱「悪党!裏切り者!人殺し!」〜歌劇≪歌姫≫Hob.XXVIII:2より
ハイドン:フィナーレ「僕は困惑している」〜歌劇≪騎士オルランド≫Hob. XXVIII:11より
ルシア・マルティン=カルトン(S)、
レア・デザンドレ(Ms)
カルロ・ヴィストリ(C.T)
ニコラス・スコット(Tb)
レナート・ドルチーニ(Br)、
ジョン・テイラー・ウォード(Bs)
音楽監督・指揮:ウィリアム・クリスティ
オーケストラ:レザール・フロリサン

録音:2015年3月9,10日 メルボルン・リサイタル・センター(ライヴ)
2016年10月、10年ぶりに来日したクリスティ&レザール・フロリサン。バロックから古典にかけての歌の数々を選りすぐり、前半は様々な感情を歌 うアリアがならぶぜいたくなメドレー、後半は作曲家や劇場支配人と歌手(歌姫)たちのやりとりをコミカルに描く劇に仕立てた公演は大評判となりました。 この盤は同様の公演のメルボルンでのライヴを収録したもの。日本公演とほぼ同内容で、公演の感動がみずみずしく蘇ります。
出演する歌手はいずれもクリスティが主宰するアカデミー「声の庭」に参加している、選ばれし若手声楽家。2002年にレザール・フロリサンが始めた 声楽家のアカデミー「声の庭」は2年ごとに開催され、毎回250-300人が応募する中から6-7人が選ばれます。彼らはクリスティが実際にフランスで 住んでいる城館に住み、徹底的に訓練を受け、その後レザール・フロリサンと共に世界の舞台を経験するという夢のようなアカデミーです。このディスク で演奏しているメンバーは7回生にあたります。 【プログラムのあらすじ】第1部(前半)では、まず歌手たちが登場。誰がどのパートを担当するかなどを話す。シエーナの貴族が「現代の音楽のさ まざまな気分をもっとも見事に表現できたものが優勝」とするゲームを提案。器楽によるシンフォニアの後、それぞれの歌手が怒り、愛、憎しみ、嫉妬、 妄想、幻滅など、様々な感情が盛り込まれたアリアを歌う。第2部(演奏会では休憩の後)では、歌姫様のわがままな要求にあれこれ頭を悩ませる作曲家、 美しき歌姫の気を引こうとする作曲家や劇場関係者、あるいは歌い手とそのステージママたちなどが登場。事態は裁判沙汰にまでなりますが、最後はモー ツァルトの美しい旋律で皆の心は落ち着き、全員で「幸せになりたいなら、愛してくれる人を愛しなさい。そうすれば満ち足りた心になる」と歌って幕とな ります。 (Ki)
HAF-8905293(2CD)
バッハ:ミサ曲 ロ短調 BWV 232 ウィリアム・クリスティ(指、Cemb)
レザール・フロリサン(合唱、管弦楽)
キャスリーン・ワトソン(S)
ティム・ミード(C.T)
レイノー・ファン・メヘレン(T)
アンドレ・モルシュ(Bs)

録音:2016年9月、フィルハーモニー(パリ)、ライヴ録音(拍手は収録されていません)
クリスティの母はニューヨークの教会の聖歌隊指揮者だったそうで、1950年代の終わりに、彼女が聖歌隊を指揮してロ短調ミサ曲の2曲を演奏して いたのを聴いて以来、ロ短調ミサはクリスティの中で特別な存在であったといいます(クリスティは1944年生まれ)。冒頭の「キリエ」から、なめらかに 丸みを帯びた合唱で、クリスティの真骨頂が発揮された絶美の演奏で、引き込まれます。また、自身鍵盤楽器の名手でもあるクリスティは、第2曲の「キ リストよ、憐れみたまえ」のソプラノとアルトの二重唱をはじめ、9つの楽曲ではチェンバロ(通奏低音)に専念し、事実上指揮者不在となっています。 これにより、クリスティが配した、適切な人数の合唱とオーケストラのメンバー、そして独唱者たちによって、より親密なアンサンブルが醸成されています。 また、自身ライナーノートでも書いていますが(日本語訳なし)、全体として軽やかな速めのテンポで演奏されています。「Cum Sancto Spiritu」などの 超絶技巧の楽曲でも、合唱もオーケストラも実に軽やかに輝かしく演奏しており、クリスティ率いる音楽家たちのきわめて高い完成度に圧倒されます。独 唱者たちののびやかな歌唱も印象的。バスの独唱(「Quoniam」)でのホルンとファゴットの名人芸も注目ですし、ソプラノ・アリア(Laudamus te)で はヒロ・クロサキのヴァイオリン・ソロが聴けるのもまた嬉しいところです。「カトリック、プロテスタントという宗派を超えて、自らのキリスト教信仰の普 遍形としてこのミサを書きあげた」バッハ(クリストフ・ヴォルフ/ライナーノートより(日本語訳なし)。厳格なミサ、というよりも、このミサ曲にバッハ が込めた、人間というものへの肯定が前面に打ち出された、音楽の悦びに満ちたたぐいまれなる名演となっています。 (Ki)


HMC-802156
(2SACD+DVD)
バッハ:マタイ受難曲 ヴェルナー・ギューラ(福音書家/ T)
ヨハネス・ヴァイサー(キリスト/ Bs)
ソプラノ…イム・スンヘ[12,13,27a,48,49]、
 クリスティーナ・ローテルベルク[8,30]
アルト…ベルナルダ・フィンク[5,6,27a,38,39,59,60]、
 マリー=クロード・シャピュイ[51,52]
テノール…トピ・レーティプー[19,20]、
 ファビオ・トゥリュンピ[34,35]
バス=バリトン…コンスタンティン・ヴォルフ[56,57]
バス…アルットゥ・カタヤ [22,23,30,42]
ルネ・ヤーコプス(指)
RIAS室内Cho
ベルリン大聖堂Cho
ベルリン古楽アカデミー

録音:2012年 9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
幼い頃、ボーイ・ソプラノとして演奏に参加したことをはじめ、ヘレヴェッヘ(1984)、そしてレオンハル ト(1990)のレコーディングにもアルトとして参加、そして何度もこの作品を指揮してきたヤーコプス。まさに、満を持して世に送り出す、記念碑的録音と いえるでしょう。
「マタイ受難曲」は、2つの合唱と管弦楽のグループを持つ大規模な作品。この初演はトーマス教会で行われましたが、教会の構造や記録等を見ても、 その時は、ひとつのグループは正面の祭壇のところに、そしてもう片方のグループは、礼拝参列者の後ろの、バルコニーのようなところで演奏されたと考 えられます(しかもそれぞれの位置は24メートルほども離れていました)。ヤーコプスは、このレコーディングに際し、合唱を、ソリストも含む24人の Principal合唱団と12人のRemote合唱団に分け、配置をこれまでのように左右に置くのではなく、前後に配置しています。このことにより、音楽面、音響(録 音)面の両方で、素晴しい効果を生んでいます。Principal合唱にはエヴァンゲリストやイエス役のソリストも含まれ、受難の物語にダイレクトに関わり、 生々しい描写をしていきます。Remoteの方は、たとえば冒頭の合唱曲では「いずこへ?」などのパートを担当、さまよえるような雰囲気を醸成していま す。管弦楽も同様の割合で分け、これまでにない音世界。ただ、これは当時の演奏を再現しようとするためのものではなく、あくまでもバッハのアイディア を具現化させようという検討と試行錯誤の結果です。 冒頭合唱が入るまでのオーケストラの前奏から、通奏低音が刻むひたひたとしたリズムに、管・弦楽器が美しく絡む極美の世界。合唱も非常に柔らか。 それぞれのアリアも、歌手が歌う言葉ひとつひとつはもちろん、器楽パートにもすみずみまで血が流れているのを感じます。通奏低音も、アルパーマンの オルガン、野入志津子のリュートなど、場面場面に非常に寄り添った音楽。ギューラのエヴァンゲリストも、出過ぎることはありませんが、物語の起伏に 寄り添った語り部ぶりで見事。DVDは、NTSC(リージョン・オール)、トータル46分、録音風景や、ヤーコプスらへのマタイ受難曲についてのインタビュー(日本語字幕はありません) (Ki)

HMC-802236
(2SACD+DVD)
バッハ:ヨハネ受難曲

[特典] メイキングDVD(56分)
ヴェルナー・ギュラー(福音史家/テノール)
ヨハネス・ヴァイサー(Br)
スンハエ・イム(S)
ベンノ・シャフトナー(A)
セバスティアン・コールヘップ(T)
ベルリン古楽アカデミー
RIAS室内Cho
ベルリン大聖堂Cho
ルネ・ヤーコプス(指)

録音:2015年7月、テルデックス・スタジオ、ベルリン
ヤーコプスは「マタイ受難曲」(HMC.802156) に引き続き「ヨハネ受難曲」を録音しました。満を持して登場した「マタイ受難曲」は、長年の経験 と研究に裏打ちされた記念碑的録音であったので、今回の「ヨハネ受難曲」も大いに期待できる内容です。
「ヨハネ受難曲」は、バッハの生前に計4回演奏され、毎回新たな変更が加えられてきた作品です。バッハがその時の演奏で使える楽器や演奏家に影 響され改訂された場合が多いですが、もっとも大幅に変更されたのが1725年の第2稿です。例えば、冒頭の合唱部分には、当時まだ作曲されていない マタイ受難曲第1部の終曲を使用し、作品後半にも数曲異なるアリアを使用しています。ヤーコプスはこの第2稿のみで追加、差し替えされた5曲(第 1曲合唱「おお、人よ、汝の大いなる罪を悲しめ」に変更。第11曲テノールのアリアを追加。第13曲テノール・アリアを別の曲に。第19曲テノール・ アリアを別の曲に。第40曲カンタータBWV23終曲合唱「キリスト、汝 神の子羊」に変更。)をアルバムの最後に収めています。ヤーコプスは、この 第2稿について是非とも注目して聞いて欲しいと語っています。パッケージにボーナスとして収められている第2稿を入れ込んで再構築させた録音をハイレ ゾダウンロード(harmoniamundi.comウェブサイトを参照)で通して聞くことができます。
ボーナスDVDには録音風景を収録したメイキング映像が収められています。「マタイ受難曲」同様に録音配置にもこだわっています。ヤーコプスは合唱 団の歌詞を最大限に明瞭にするため、そしてオーケストラにも最大限クリアな響きを求めるために、いくつかのパートに分類することを要求しました。福 音史家と通奏低音のパートは中央に、オーケストラは左に、右側には合唱、そこから各アリアを歌うソリストが現れ出るという、配置で録音されました。5.1 サラウンドで再生すると異なる4つのセクションが聞き手のまわりに配置されているように再生される臨場感溢れる録音となっています。
HMC-901816
ハイドン&モン:チェロ協奏曲集
ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.VII:b-1/
 チェロ協奏曲第2番 ニ長調 Hob.VII:b-2
モン(1717-1750):チェロ協奏曲 ト短調
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
ペトラ・ミュレヤンス(指)
フライブルク・バロックO
HMC-901833
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.53*
ピアノ三重奏曲 ヘ短調 Op.65+
イザベル・ファウスト(Vn)
イジー・ビェロフラーヴェク(指)
プラハ・フィルハーモニア*
ジャン=ギアン・ケラス(Vn)+
アレクサンダー・メルニコフ(P)+

録音:2003年9月、12月
HMC-901871
バッハ:クラヴィーア協奏曲集
ニ短調 BWV.596〜シシリエンヌ/ト短調 BWV.975
パストラーレ.ヘ長調 BWV.590
イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV.971/ニ短調 BWV.974/ハ短調 BWV.981/ト長調 BWV.973
ロ短調 BWV.979〜アダージョ
アレクサンドル・タロー(P)

録音:2004年9月
有名なイタリア協奏曲をはじめ、いずれも協奏曲の名が付きながらソロの曲を収録。いずれもイタリアの協奏曲様式で書かれ、さらに大半がイタリアの作曲家の作品を元にした編曲作品です。BWV.596、BWV.975、BWV.973はヴィヴァルディ、BWV.974はA・マルチェッロ、BWV.981 はB・マルチェッロ、BWV.979はトレッリが原曲。つまりバッハとイタリアの協奏曲の邂逅がこのCD のテーマです。タローは、ピアノでしか出せない深い情感が豊かで、加えて知性的なコントロールも見事、現代におけるピアノ演奏のバッハの意義を十全に感じさせてくれる出来ばえです。スタインウェイの上品な響きも特筆。 (Ki)
HMC-901879
R.シュトラウス:歌曲集
献呈 Op.10-1/なにも! Op.10-2
夜 Op.10-3/誰がしたのか?Op.10-6
解き放たれて Op.39-4
万霊節 Op.10-8
4つの歌 Op.27[憩え、わが心/ツェツィーリエ/ひそやかな誘い/あすの朝]
懐かしい面影 Op.48-1
私はお前を愛す Op.37-2
5つの素朴な歌 Op.21[私の思いのすべて/あなたは私の心の王冠/ああ恋人よ、私は別れねばならない/ああ悲しい、不幸なる者よ/女たちは時にはつつましく]
たそがれの夢 Op.29-1
夜の逍遥 Op.29-3
「はすの花びら」からの6つの歌 Op.19[おとめよ、それがなんの役にたつというのか/あなたの黒髪を私の頭に広げてください/美しく、しかし冷たい空の星よ/二人の秘密をなぜ隠すのか/希望と失望/私の心は沈黙し冷える]
私は恋を抱いて Op.32-1
あこがれ Op.32-2/悪天候 Op.69-5
ヨナス・カウフマン(T)
ヘルムート・ドイチュ(P)
1993年にニュルンベルクのマイスタージンガーコンクールで見事優勝したヨナス・カウフマンは現在36歳。チューリヒ歌劇場でもひっぱりだこ、超人気者の彼は、ケント・ナガノ指揮の「ヤコブのはしご」(HMC 801821)で「指名されたもの」を熱唱、また、ノリントン指揮のベートーヴェンの第九(93.088)のソロでも凛々しい美声を披露していました。タミーノやアルフレートなど、どちらかというとリリックテナーの王子タイプの役が多いですが、リートを歌わせるとなんとも頼もしい声。リートを歌う時に必ずパートナーとなる巨匠ドイチュのピアノとあいまって、シュトラウスの歌曲の魅力をじっくり味わわせてくれます。変幻自在、怪物的ともいえるその実力に脱帽するばかりの名テナーの魅力を心ゆくまで堪能できます。  (Ki)
HMC-901928(2CD)
ヘンデル:オラトリオ「メサイア」 シャスティン・アヴェモ(S)
パトリシア・バードン(A)
ローレンス・ザゾ(C.T)
コビー・ヴァン・レンズブルク(T)
ニール・デイヴィス(Bs)
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO、
クレア・カレッジcho

録音:2006年1月
競合盤ひしめく「メサイア」の中、ヤーコプスは最高の演奏を届けてくれました。フライブルク・バロック・オーケストラを自在に操りながら、ヤーコプスならでは知的刺激と熱い情熱の入り混じったヘンデルはお見事の一言。ヘンデルの音楽に浸る喜びに溢れています。この録音では1750 年に上演した時の形態を元にし、ソリストを5 人立てています。ソプラノは、スウェーデン出身で、ここ数年猛烈な勢いで人気急上昇のシャスティン・アヴェモ。ヘンデルなどバロック音楽から、「ルル」のタイトルロールまで得意とする恐るべき人です。アルトには、充実した深いアルトの美声が素敵なアイルランドのパトリシア・バードン。カウンターテナー、テノールには、ローレンス・ザゾ、コビー・ヴァン・レンズブルクとヤーコプス組というべきお馴染みの面々。バスにはこれもバロックで大活躍のウェールズのバス、ニール・デイヴィス。 (Ki)
HMC-901956
F. クープラン:作品集
神秘的なバリケード(第6組曲より)、
ティク・トク・ショック(第18組曲より)、
クープラン(第21組曲より)、
信心女たち(第19組曲より)、
さまよう亡霊たち(第25組曲より、
編み物をする女たち(第23組曲より)、
シテール島の鐘(第14組曲より)、
居酒屋のミュゼット(第15組曲より)*、
葦(あし)(第1組曲より)、
アタラント(第12組曲より)、
パッサカリア(第8組曲より)、
プラチナ色の髪のミューズ(第1組曲より)
奇術(第22組曲より)、闘いの響き(「凱旋」より/第10組曲より)、
子守歌またはゆりかごの中のいとしい子(第15組曲より)、
空想にふける女(第25組曲より)、
ロジヴィエール(第5組曲より)、
双生児(第12組曲より)、
かわいい子どもまたは愛らしいラジュール(第20組曲より)、
デュフリ
(1715 〜 1789):ラ・ポトゥワン(クラヴサン曲集第4巻より)
アレクサンドル・タロー(P)、
パブロ・ピコ(タンブール)*
まさに衝撃的な一枚の登場。かけた瞬間、ドビュッシー作品かと錯覚するほどの色彩感、量感、情感。ゆったりとふくよか、 ビロードのようでありながら、立ち上がりがどこまでもくっきりとした不思議な音色は、聴く者をとらえて放しません。リリー スを重ねるたびに、ますますそのタッチに磨きがかかるアレクサンドル・タロー、待望の新譜は、ピアノによるF. クープラン。 タロー本人が「play する、という考えに基づいて曲をきめました。自分がしばしばコンサートでも演奏するティク・トク・ショ クを中心に据えました。F. クープランのもっとも「ピアニスティック」な作品を集め、これらのplay-ful な側面を強調してい ます。」と語っているように、どの曲もきわめて清冽かつ明確に演奏されています。冒頭に収録されている「神秘的なバリケー ド」は、一音一音にしっかりと意志と力強さがこめられており、聴いていてストレートに心に響く演奏。また、「ティク・トク・ ショック」も、これほどまでにクープラン作品が超絶技巧だとはと驚かされるもの。最後にデュフリの作品が収録されているの も心憎いところです。 (Ki)
HMC-901960
バッハ:初期作品集
トッカータニ長調BWV912(1707/13頃)、
パルティータ「おお神よ、汝義なる神よ」BWV767、
トッカータホ短調BWV914(1707/13頃)、
組曲イ短調BWV818a(1720年頃)、
トッカータト長調BWV916(1707/03頃)、
カプリッチョ変ロ長調(「最愛の兄の旅立ちに寄せて」)BWV992(1704または03頃)
アンドレアス・シュタイアー(Cemb)
※使用楽器:AnthonySideyd'apresHass
「行進できない」トルコ行進曲(HMC901856)で我々の度肝を抜き、モーツァルトの転調の妙技、さらにはショルンスハイムとの連弾で我々を楽しましてくれた(HMC901941「amSteinVis-a-vis(1777)」)シュタイアー、待望のソロは堂々、若き日のバッハ作品集と相成りました。「音楽の父」として音楽史上に大きく聳え立つ存在の大バッハ。シュタイアーは、ここに収められた初期作品の演奏を通して、バッハが若くしてすでに尋常ならざる気魄を備えた究極の音楽家であったことを我々に示してくれています。若き日の名曲として有名な「最愛の兄の旅立ちに寄せて」のアリアなど、シュタイアーの鬼才ぶりが遺憾なく発揮された名演。また、パルティータ「おお神よ、汝義なる神よ」の8曲目の半音階が多用された楽曲など、聴いていると足下の地面がぐんにゃりと変形して、異次元へと迷い込んでしまったかのような気分になる異様な半音階ぶりとなっています。
HMC-901964(3CD)
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(1788年ウィーン稿)

【補遺:1787年プラハ初演稿の楽曲】
・第2幕第2場レチタティーヴォ「それじゃ、さっき私のマゼットを(Dunque quello sei tu)」(ツェルリーナ、ドンナ・エルヴィラ、ドン・オッターヴィオ、マゼット)
・第20番アリア「ああ、おゆるしください」(レポレッロ)
・第2幕第10場レチタティーヴォ「Ferma, perfido, ferma」(ドンナ・エルヴィラ、マゼット、ツェルリーナ、ドン・オッターヴィオ)
・第21番アリア「今こそ僕の愛しい人を慰めてあげて下さい(Il mio tesoro intanto)」(ドン・オッターヴィオ)
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO、RIAS室内cho、
ヨハネス・ヴァイサー(ドン・ジョヴァンニBr)、
ロレンツォ・レガッツォ(レポレッロBs)、
アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ(ドンナ・エルヴィラ S)、
オリガ・パシフニク(ドンナ・アンナ S)、
ケネス・ターヴァー(ドン・オッターヴィオ T)、
スンハエ・イム(ツェルリーナ S)、
ニコライ・ボルシェフ(マゼット Br)、
アレッサンドロ・グエルツォーニ(騎士長 Bs)
快進撃のとまらないヤーコプス、遂にモーツァルトのダ・ポンテ三部作完結編となる「ドン・ジョヴァンニ」の登場。2006年のインスブルック音楽祭で上演された直後の録音で、ヤーコプスの練り上げられた統率のもと、一音一音がショッキング!序曲冒頭の和音でいき なり奈落の底に突き落とされるような衝撃と迫力です。名手フライブルク・バロック・オーケストラの面々が、いななく管、激流の弦で 大爆発です。楽しさ、おそろしさ、美しさをとことんつきつめた表現は壮観、まさに音絵物語です。ドン・ジョヴァンニ役は、1980年ノ ルウェー出身の若き貴公子、ヨハネス・ヴァイサー。色気たっぷりですが、ドン・ジョヴァンニ=騎士身分の品格もきちんと感じさせま す。レガッツォによるレポレッロは、ドン・ジョヴァンニに仕える憎めない役どころをきちんと演じていますが、あまりに上手くてカッ コよすぎるかも、と思う瞬間もあるほど。ドン・ ジョヴァンニに翻弄されるドンナ・エルヴィラは今をときめくペンダチャンスカ。ドンナ・アンナには、Opus111 でもおなじみのウクラ イナ出身の清潔感あふれるソプラノ、パシフニク。驚異的な息づかいの長さで、しっとりと歌いあげるさまは圧巻。ツェルリーナ役のス ンハエ・イムは、韓国出身の期待のソプラノ。LFJ 音楽祭2006 でも来日、そのピンと透き通った歌声をご記憶の方もいらっしゃるのでは。 レチタティーヴォでのフィゲイレドのチェンバロも冴えまくりで、一音たりとも聞き逃せません。 さらに、さすがヤーコプス!と思わず膝を打ってしまいたくなるのが、プラハ初演稿の楽曲もディスク3の最後に収録されていること。 ドン・オッターヴィオのアリアの瑞々しいこと!どこまでもカンペキな「ドン・ジョヴァンニ」。 (Ki)
HMC-901973
21世紀のチェロ協奏曲集
ブルーノ・マントヴァーニ(1974-):チェロとオーケストラの為の協奏曲*
フィリップ・シェーラー(1957-):風の目(チェロとオーケストラの為の協奏曲;#)
ジルベール・アミ(1936-):チェロとオーケストラの為の協奏曲+
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
ギュンター・ヘルビッヒ(指)*
ザールブリュッケン放送SO*
アレクサンダー・ブリジェ(指)#
ラジオ・フランスO#
ジルベール・アミ(指)パリO+

録音:2005年9月*/2008年5月#/2006年9月+
実感できる現代ものの登場。もともとケラスはブーレーズ率いるアンサンブル・アンテルコンタンポランに所属していたこともあり、同じ今という時代を生きている作曲家の作品を演奏し、作曲家とともに音楽を作り上げることに関して特別な思い入れがあります。作曲家のいかなる要求をも実現するテクニックは群を抜いています。そんなケラスによる、現代を代表する作曲家たちの力作がそろいました。すべて世界初録音です。マントヴァーニの作品は、2003年にケラスのために書かれたもの。シューマンのチェロ協奏曲と同じオーケストラ編成で書かれています。暗い洞窟の中で様々な音が不気味に響くような冒頭部に始まり、激しい盛り上がりを見せ、最後はサラリと終わります。心の原風景を映し出すようなシェーラーの「風の目」。アミの作品は、武満徹の思い出に捧げられており、2000年にケラスによってサントリーホールで初演されました。技巧的な部分もありますが、武満を思わせるような、静寂を聴かせる作品です。どれもケラスの技が光る作品となっています。  (Ki)
HMC-901982
ショパン:前奏曲集Op.28(全曲)、
モンポウ
:ひそやかな音楽第15番(ショパンの前奏曲第4番による)、
ショパン:3つの新しいエチュード、
モンポウ:プレリュード第9番、
ショパン:前奏曲嬰ハ短調Op.45、
 小プレリュード変イ長調(遺作)、
モンポウ
:Ellago(湖)〜Paisajes(風景)より
アレクサンドル・タロー(P)
2007年10月に来日し、我々を魅了したピアニスト、アレクサンドル・タロー。その清冽にして多彩な独特のピアノのタッチと、聴くものの心をわしづかみにして金縛りにかけてしまうような、驚異的なまでに集中した音楽は、人々に強烈な印象を与えました。「音楽の友」誌2008年2月号の「2007ベスト・コンサート22」にもランク・インしています。自分の部屋にピアノをもたないことや、座禅を組むなどといった独特のライフスタイルもあって、年末の音楽界の話題をさらった彼の待望の録音は、ショパンとモンポウの作品です。ショパンの前奏曲第1番から始まるこのディスク、いきなり豊かな響きに胸をわしづかみにされます。第15番「雨だれ」の冒頭の有名な旋律の繊細な歌わせ方はさりげなく絶品。中間部の嬰ハ短調は、ショパンをすでに蝕んでいた病魔、死の影すら感じさせる壮絶な音楽となっています。モンポウの「ひそやかな音楽」第15番は、ショパンの前奏曲第4番をもとに書かれたもの。ショパンの心の原風景を見るかのような、心の中の暗がりをはてしなく彷徨っているような演奏です。「湖」では、念入りに彫琢を施された音型が重なり合い、聴く者の心をふるわせ、絶えない感動のさざなみを呼び起こします。
HMC-902012
ドビュッシー:チェロ・ソナタ第1番、
 レントよりも遅く、
プーランク
:チェロ・ソナタ、
 バガテル,ニ短調(原曲:Vn&P)、
 「陽気な歌」〜セレナード(原曲:歌とP)、
 フランス組曲(全7曲/Vc&P版)、
ドビュッシー:スケルツォ、インテルメッツォ
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)、
アレクサンドル・タロー(P)
2007年のバッハ:無伴奏チェロ組曲の衝撃的名演奏のリリースの記憶も生々しいケラス。そして、2007年秋に来日し、強烈な個性と集中した演奏で事実上の日本デビューを果たしたタロー。2人の共演による夢のリリースは、フランスの室内楽です。異様に研ぎ澄まされたタローのピアノの音色に、ケラスの颯爽としたチェロがからまる様は、まさにフランスのエスプリそのもの。「レントより遅く」でのたゆたうような雰囲気に酔い、プーランクの「フランス組曲」の終曲カリヨンでの音色の鮮やかさに圧倒されます。今もっとも注目の二人による、堂々の1枚です。   (Ki)
HMC-902025(3CD)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
◆CD
ソナタ第1番〜第8番ト長調Op.30-3
◆dual-disc
[CD面]ソナタ第9番「クロイツェル」(HMC901944と同音源)*
[DVD面]録音メイキング風景+ソナタ第10番〜第1楽章演奏風景
イザベル・ファウスト(Vn)、
アレクサンドル・メルニコフ(Vn)

録音:2008年、2006年5月*
3CD+1dualdisc(CD&DVD)の仕様。)しなやかな力強さと細やかな感受性をあわせもつファウストの新譜は、ベートーヴェンのソナタ集。ファウストのヴァイオリンで聴くベートーヴェンというだけでも心踊るのに、メルニコフがピアノだなんて、なんと贅沢なことでしょう。ファウストは、第5番「春」の第1楽章の有名な冒頭で、実に繊細で可憐な表情を見せており、彼女のセンスと知性が光ります。ピアニストのメルニコフも、弱音でもくっきりとした発音とピリッと線の通った和声感、一糸乱れぬピアニズムで聴かせます。お互いに自由に羽ばたいているのに、息はピタリと合っており、見事の一語です。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ集にうれしい名演奏の登場です。 (Ki)
HMC-902058
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV 988
■ボーナスDVD…『 アンドレアス・シュタイアー、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を弾く』
アンドレアス・シュタイアー(Cemb/ Anthony Sidey harpsichord after Hass)

録音:2009年7月
※ボーナスDVD (NTSC/ 約23分)
シュタイアー、ついにゴルトベルクの登場です!まず、トータル80分超えという演奏時間もさることながら、録音も大変素晴らしい!まるでシュタイアーが、目の前で自分のためだけに弾いてくれているようなリアルな息遣いが感じられ、親密さと細やかさに満ち、しかしダイナミックさも併せ持つ演奏に圧倒されます。演奏CDだけでも素晴らしいものですが、特典DVDがまた実に興味深い!シュタイアーは、「バッハという人は、周囲にいた演奏者にだけではなく、親しい人、彼を愛する人にとっても大変難しい人物だったのではないか。完璧主義者で、自分と同じレベルのものを他人にも要求するようなタイプだったのではないか」と言っています。なので、1時間以上かかる鍵盤音楽を作曲依頼された時も、バッハは、「あなたは私のことを好いてはいらっしゃらないかもしれませんが、このような依頼に対して、自分ができるすべてのものを注ぎこみましょう、そして、他の誰もがなしえないものを作りましょう、依頼主に最高レベルのものを呈しつつも、どこか反発するような気分も交じっていたのではないか」とシュタイアーは語っています。深い学びに裏打ちされた、シュタイアーのバッハ私見を聞ける、とても興味深い内容のDVDとなっています。さらに、シュタイアーは実際に鍵盤に触れながら、様々な要素が手を変え品を変え変奏されていること、曲の大きな構造などについて語り、自分がどのようにして音色を選択しているかなどについても語ります。これを見てからCDを聴くと、また違った風に聴こえてきます。ゴルトベルクとは、演奏者にとっても聴き手にとっても、汲めども尽きぬ大海のような作品なのです。
HMC-902059
バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ集
無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番
イザベル・ファウストv

録音:2009年9月1-4日テルデックス・スタジオ(ベルリン)
しなやかでチャーミング、そして力強く確かに歩む音楽で私たちを魅了しているヴァイオリニスト、イザベル・ファウスト。待望のバッハの登場です。2009年に来日した際にも、しなやかかつ自然なバッハで聴衆を虜にしたファウスト。「シャコンヌ」というと、冒頭の次々と掻き鳴らされる重音に、聴き手も覚悟を決めてこの楽章に臨む、というイメージがありますが、ファウストの演奏は、この楽章が舞曲(それも、どちらかといえば跳躍の多い)に起源を持つことを思い出させてくれるもの。自然に紡ぎだされる様々な楽想では、なにかダンサーが一人で時にエレガントに、時に激しく、無心に踊っている部屋を覗いているような不思議な錯覚をおぼえます。ファウストのエレガントかつ自然体な人柄と、並外れたテクニック、そしてあくなき探求、すべてが見事に調和したからこそ生まれた演奏があますところなく収められています。録音も秀逸。
=ファウストの言葉より(ブックレット抄訳)=
バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの自筆譜を見た人は、その筆致の美しさ、完璧さに驚かされる。一貫して変わらない筆跡は、支柱、装飾、荘厳な構築性を兼ね備えた大聖堂のような総合芸術へと私たちを誘う。ここで見られるハーモニー、均衡はなんということか!この自筆譜の特徴を耳で聴けるかたちにするのは大変に骨の折れる作業である。演奏者は尽きることのない疑問と戦い、ゴールが果てしなく遠いことに気が遠くなることもある。この録音は、偉大なバッハに対する敬礼のようであり、きわめて親密なスナップであり、そして果てなく続くプロセスの中の一つの結晶のきらめきのようなものである。
HMC-902064
バッハ:「フーガの技法」
コラール「深き悩みの淵より,われ汝に呼ばわる」(BWV38)
『フーガの技法』
コントラプンクトゥス(以下CP)1(4声〜2つのVnによる)
CP2(4声〜チェンバロによる)
CP3(4声〜Ob,テノールOb,Trb,Fgによる)
CP4(4声〜トゥッティによる)
8度のカノン(2声〜チェンバロによる)
CP5(4声〜トゥッティによる)
CP6(4声〜トゥッティによる)
CP7(4声〜チェンバロ、2つのVn、Vla,Vcによる)
10度のカノン(2声〜VnとVlaによる)
CP8(3声〜Vn,Vla,Vcによる)
CP9(4声〜トゥッティによる)
CP10(4声〜2つのVn,Vla,Vcによる)
CP11(4声〜トゥッティによる)
12度のカノン(2声〜Vn,Vcによる)
CP12-a(4声〜トゥッティによる)
CP12-b(チェンバロソロによる)
CP13-a(Ob,tenoroboe,Fgによる)
CP13-b(Vn,Vla,Vcによる)
反行形による拡大カノン(Vn,Vla,Vcによる)CP18/3つの新主題による未完フーガ
ベルリン古楽アカデミー

(BWV38コラール演奏:ラファエル・アルパーマン(オルガン))

録音:2009年10月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
「フーガの技法」というと、ついしかめっ面でバッハが築いた対位法の複雑な砦に頭から突っ込んで迷ってしまいそうになりますが、ベルリン古楽アカデミーの面々の手にかかると、なんとエキサイティングに響くことでしょう!もちろん、バッハが知の限りを尽くした線と線、点と点のからみあいが織り成す堅固な形式はもちろんまったく損なわれておりません。「ああ、これが主要主題でこちらが対旋律だな」とわかる演奏は多々あれど、これだけ主要主題と対旋律の双方が拮抗しながらお互いの効果を高め合い、緊張感とエキサイティング性、そして崇高なまでの「美」を保った演奏は他ではなかなか得難いものといえるでしょう。バッハが残した知の迷宮にメンバーも全力で応え、楽器の編成もそれぞれの曲が効果的に響くように考えられていることがよくわかります。BWV38のコラールが最初に収録されていますが、これは原調ではなく、ニ短調で演奏されており、聴き手にとって「フーガの技法」のよき導入になるのでは、というメンバーの考えに基づくもの。メンバーの意見によると、バッハがこのフーガの技法を書くときにこの主題が頭の中にあったかどうかはわかりませんが、主題の構造に類似性が認められるといいます。また、メンバー全員、実際の録音の時にもまずこの曲を聴いてからでないとフーガの技法に入れないこともあったとか。古楽界の雄、ベルリン古楽アカデミーの面々が真剣勝負で挑む、バッハが残した「知」の果てることなきゲームの目撃者となってください! (Ki)
HMC-902067
ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調Op.10
デュティユー:「夜はかくの如し」(弦楽四重奏のための)
ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
アルカントQ

録音:2009年10月
2009年度のレコード芸術レコード・アカデミー賞を受賞し、注目度急上昇中の弦楽四重奏団、アルカント・カルテットの最新盤の登場。今回はカルテットの王道レパートリー、ドビュッシーとラヴェルにデュティユーという魅力のプログラムです。ドビュッシーの冒頭の各声部が反行しながら動くさま、陽が差したような明るい音色のハーモニー、くすんだハーモニー、辛口でパンチの利いたハーモニー、官能的に薫る旋律など、刻一刻と表情が変わるので、息つく間もありません。ラヴェルの第1楽章冒頭、息が深めにとられた絶妙なテンポ設定で、各パートの奏者たちの奏でる旋律線が、絡み合いながら上下に動く様の完璧な「美」を堪能できます。「夜」に秘められた妖しくも官能的な世界が薫るデュティユー作品では、ピチカート、グリッサンド、トレモロ、ハーモニクスなど様々な技巧が用いられていて、各パートが各楽器界の第一線で活躍する奏者たちによる夢のカルテットの腕が冴えわたります。アンサンブルの密度もますます濃密なものとなったアルカント・カルテット、ますます目が離せません! (Ki)
HMC-901970
(2CD+1DVD)
バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
※使用楽器:1696 Gioffred Cappa
ジャン=ギアン・ケラスによる待望のバッハの登場!ハリとバネのあるチェロの美しい音色、そして 甘いマスクは、これまでにも多くのファンを魅了してきたところ。第1番の有名なプレリュードは、ゆったりとしていながら実にアグレッ シブ。舞曲のような独特の躍動感です。第3 番も、プレリュードは、滾々と湧き出る泉のよう。湧き出た水は、時に速く、時にゆったりと、 自在に姿を変えて大海原へと流れ行きます。つづく舞曲も実にしなやか。「バッハの組曲では、弓をまるで剣の名手のように使いこなせる ことが要求される。フェンシングのチャンピオンみたいに。」と語るケラスによる華麗なる弓さばきが生み出す絶妙な間とタイミングに、 最終曲のジーグまで引き付けられどおしです。組曲がもつ独特の祈りのような深い精神性と、自由闊達な躍動感が見事に共存した稀有な 演奏となっています。ボーナスDVDでは、組曲第3番全曲の演奏姿がおさめられており、彼の見事な弓づかいをじっくり見ることができ ます。また、レコーディング風景や、ケラスがバッハについて語る映像も収録(英語字幕あり)。耳でも目でもたのしめる素晴らしいバッ ハのセットとなっています。  (Ki)

HMC-902068(3CD)
モーツァルト:歌劇「魔笛」 ダニエル・ベーレ(T タミーノ)
マリス・ペーターゼン(S パミーナ)
ダニエル・シュムッツハルト(Br パパゲーノ)
イム・スンヘ(S パパゲーナ)
アンナ=クリスティーナ・カーッポラ(S 夜の女王)
マルコス・フィンク(Bs-Br ザラストロ)
クルト・アツェスベルガー(T モノスタトス)
インガ・カルナ(S 第1 の侍女)
アンナ・グレヴェリウス(Ms 第2 の侍女)
イザベル・ドリュエ(Ms 第3 の侍女)
コンスタンティン・ヴォルフ(Bs-Br 弁者)ほか
ルネ・ヤーコプス(指)ベルリン古楽アカデミー,
RIAS 室内cho

録音:2009年9,10月,ベルリン
ヤーコプスがついに「魔笛」を録音しました!もちろん今回も充実の内容。ヤーコプスは2009 年7 月にエクサン・プロヴァンス音楽祭で「魔笛」を 上演しており、その経験を踏まえた上で秋にベルリンのテルデック・スタジオで入念なセッション録音。ヤーコプスならではの大胆に踏み込んだ雄弁 な音楽を鳴らしつつ、歌芝居としての「魔笛」の楽しさ面白さもたっぷり生かしています。しかも今回はベルリン古楽アカデミーとRIAS 室内合唱団と いう超一流の団体のバックアップ。さらに歌手も充実。パミーナにはドイツで大人気のソプラノ、ペーターゼン。タミーノはまだデビューして数年という ハンブルク出身のテノール、ベーレを大抜擢、柔らかい甘い美声はまさに王子様。パパゲーノは、オーストリアのバリトンでウィーン・フォルクスオーパー の人気者、シュムッツハルト。パパゲーナは、ヤーコプスのオペラの常連、スンヘ。夜の女王は、2007 年にメトロポリタン歌劇場でもこの役を歌ったフィ ンランドのソプラノ、カーッポラ。ザラストロにはこれもヤーコプスの長年の協力者フィンクと、ベテラン、若手を巧みに配しています。また今回の「魔笛」 では台詞部分にたいへん力を入れており(詳しくはヤーコプス自身の解説(英独仏)で詳細に説明されています)、様々な創意工夫が凝らされています。 永遠の名作「魔笛」を、また新鮮な気持ちで聞けるヤーコプス・マジックをお楽しみください!

HMC-902075
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
弦楽六重奏曲第2番Op.36*
イザベル・ファウスト(Vn/‘スリーピング・ビューティ’1704年ストラディヴァリウス)
ダニエル・ハーディング(指)
マーラー・チェンバー・オーケストラ

イザベル・ファウスト(Vn)、
ユリア=マリア・クレッツ(Vn)
ステファン・フェーラント(Va)、
ポーリーヌ・ザクセ(Va)
クリストフ・リヒター(Vc)、
シェニア・ヤンコビチ(Vc)
録音:2010年2月(SociedadFilarmonica(ビルバオ))、2010年9月(テルデックス・スタジオ(ベルリン))*
近年目を瞠る充実ぶりの女性ヴァイオリニスト、イザベル・ファウスト。前作のバッハも世界中で非常に高い評価を得ています。そんなファウストの待望の新録音は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。ファウストによるブラームスというだけでも心躍るのに、ハーディング指揮によるマーラー・チェンバー・オーケストラとの共演となれば、さらに期待が高まります。ヴァイオリン・ソロの冒頭から、ファウストの高度の集中としなやかさに耳を奪われます。第2楽章での高音による旋律では、ファウストの繊細かつ芯のある美音が冴えわたります。第3楽章で見せるエネルギー、それでいてどこか可憐な風合いもある表情はファウストの魅力全開です。全体を通してハーディングの巧みな造形が光る音楽運びも見事です。なお、ファウストは、ブゾーニのカデンツァを採用。「表情豊かで、作品への畏敬の念に満ち、構造的には単純ながらオリジナリティに溢れ、ブラームスらしさを保ちつつも、ヴァイオリニストの技量の見せどころもちりばめられている」とファウスト自身が熱く語るブゾーニのカデンツァ、注目です。カップリングの弦楽六重奏曲は、繊細な冒頭から見事なアンサンブル。マーラー・チェンバーの若手奏者のほか、ナヴァラやフルニエに師事したクリストフ・リヒターなど世代を超えたメンバーによる演奏で、親密でロマンティックな名曲をたっぷりと聴かせます。(Ki)
HMC-902083(2CD)
C.P.E.バッハ:鍵盤協奏曲集Wq43
協奏曲第1番ヘ長調、第2番ニ長調、
第3番変ホ長調、第4番ハ短調、
第5番ト長調、第6番ハ長調
アンドレアス・シュタイアー(Cemb/Hieronymus Albrechthass、ハンブルク1834のコピー(2004年パリ、Anthony SideyandFredericBal))
フライブルク・バロック・オーケストラ、
ペトラ・ミュレヤンス(指、コンサートミストレス)

録音:2010年5月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
シュタイアー待望の新譜は、C.P.E.バッハの鍵盤協奏曲集。オーケストラはフライブルク・バロック・オーケストラとこれ以上望みようがないくらいに最高の布陣での、満を持しての演奏です。とにかくチェンバロもオケもうまい!この録音のために、事前にコンサートに臨み、万全の態勢で録音を迎えたというから気合が違います。アレグロなどの快速楽章でのフライブルク・バロック・オーケストラの快活なリズムの刻みは、愉悦の極み。快速なパッセージによるかけあいも、シュタイアーが駆け巡る音型を奏でている間のオケの合いの手も、すべてに思わず笑みがこぼれてしまう素晴らしさです。また、緩徐楽章でのシュタイアーの冴えわたりかたはものすごいものがあります。 (Ki)
HMC-902104
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調Op.35
ヴァイオリン・ソナタOp.134
ピアノ協奏曲第2番ヘ長調Op.102
アレクサンドル・メルニコフ(P)、
イザベル・ファウスト(Vn)、
イェルン・ベルヴァルツ(Tp)、
テオドール・クルレンツィス(指)
マーラー・チェンバーO
ショスタコーヴィチの難物「前奏曲とフーガ」全曲で衝撃を与えたメルニコフが協奏曲に挑戦しました。しかも指揮が話題のクルレンツィス、オーケストラがマーラー・チェンバーというのも注目です。こだわり派のメルニコフはショスタコーヴィチの自作自演盤を研究し、独奏・オーケストラともにテンポ、フレージング、表現等々ソックリなまでの影響を受けています。とは言っても単なるコピーではなく、メルニコフらしさやクルレンツィスらしさが横溢し、21世紀らしい新鮮さも欠けていません。
協奏曲第1番のトランペット独奏はベルギーの若手イェルン・ベルヴァルツが務めていて、その巧さにも驚愕。メルニコフの演奏はまさに才気煥発の極みで、テクニックはもちろん、ヒリヒリした皮肉と緊張感が理想的にブレンドされています。長大で深遠な交響曲第11番と同時期に書かれたピアノ協奏曲第2番は、平易で軽い作品と思われがちですが、メルニコフの演奏で聴くと一筋縄ではいかない力作であることを再認識させられます。クルレンツィスの指揮は評判となった交響曲第14番のディスクを彷彿させる充実ぶりで、メルニコフのピアノと互角に競い合います。
フィルアップのようでアルバム一番の大作ヴァイオリン・ソナタは、何とイザベル・ファウストとメルニコフの共演。これは超驚愕の凄さ。ファウストとメルニコフは、オイストラフがショスタコーヴィチのピアノ伴奏で1968年にプライヴェート録音した音源の噂を聞き、オランダのコレクターを訪ねてそれを聴かせてもらい、目から鱗が落ちたとのこと。確かに背筋の凍るような緊張感と不思議な美しさは自作自演にソックリですが、セッション録音ゆえ、その凄さは倍増され、ちょっと人間業とは思えぬ境地に至りました。ファウスト屈指の名演なだけでなく、意外に名盤に恵まれないこの作品のベストであることは歴然と申せましょう。 (Ki)

HMC-902108
ウェーバー:ヴァイオリンのオブリガートつきのピアノのための6つの段階的ソナタ(アマチュアのために作曲、捧げられた)op.10
 第1番 ヘ長調op.10-1
 第2番 ト長調op.10-2
 第3番op.10-3 ト長調
 第5番 イ長調op.10-5
 第6番 ハ長調op.10-6
四重奏曲(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとピアノのための)変ロ長調 op.8
イザベル・ファウスト(Vn/1704年製ストラディヴァリス「スリーピング・ビューティ」)
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ‘Lagrassa’(1815年ca.,エドウィン・ボインクのコレクションより))
ボリス・ファウスト(Va/ガエターノ・ポラストリ)
ヴォルフガング・エマニュエル・シュミット(Vc/マッテオ・ゴフリラー)

録音:2011年 6月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
【ジャケット絵画:ロヴィス・コリント(1858-1925):ヴァイオリンを弾く女(1900年)】
今もっとも輝いているヴァイオリニスト、イザベル・ファウスト。注目の最新盤は、ウェーバーの作品集です。ドイツにおけるロマン主義運動の重要な先 駆者であり、多芸多才な楽長、明晰な批評家として、さらには華々しいピアニストとしても活躍したウェーバー。「魔弾の射手」やピアノ曲が非常に有名ですが、 室内楽はわずか9曲(完成されたもの)しかのこしていません。そのうち8曲は、ウェーバー自身、かなりの名手であった楽器、ピアノを含む編成のものとなっ ています。イザベル・ファウストを中心とする豪華メンバーのこの録音では、ウェーバーの才能の輝きに満ちた室内楽作品が、ファウストにしか奏でること のできないまばゆい音色に導かれ、いきいきと再現されています。メルニコフの溌剌とした気魄に満ちたフォルテピアノの音色も見事。なお、四重奏曲で 共演しているヴィオラのボリス・ファウストは、イザベルの兄。そしてチェリストも来日経験もある中堅シュミットということで、注目盤の登場といえましょう。
6つのヴァイオリン・ソナタは、1810年の夏の終り頃、出版社のヨハン・アントン・アンドレの依頼を受けて作曲されたもので、家庭内で、いわゆる アマチュアの人々が音楽演奏を楽しむための楽曲がならびます。ウェーバーはあまりこの仕事に乗り気ではなかったことが手紙などにも残されていますが、 その内容は実に多彩で、ウェーバーの才気に満ちたもの。カスタネットが打ち鳴らされるようなボレロ(第2番第1楽章のキャッラテーレ・エスパニョー ロ)や、バラライカの音色を思わせるエア・リュス(第3番第1楽章)など、多国籍の情緒が感じられ、また、魅力的なメロディー、そこかしこに、魔 弾の射手のアリアを彷彿とさせる華やかなパッセージも盛り込まれていて、「アマチュアのための」とされてはいますが、非常に充実した内容となっています。 アンサンブルをたのしむことにも主眼がおかれた作品だけあって、ファウストとメルニコフとの、丁々発止のやりとりにも注目です!
四重奏曲は、1809年9月、ウェーバーが22歳のときに完成された作品。なんといっても聴きどころは第2楽章。弦楽器の半音的な動きをみせるハー モニーに始まる印象的な問いかけにピアノが応えたかと思うと突然の休止小節、そしてピチカートによるカデンツァが続く、というなんとも謎めいた出だし の楽章です。この楽章だけ、1806年に完成、残りの楽章は後になって書かれたことがわかっています。ピアノの短い導入に始まり、瑞々しいロマンティッ クなメロディーのきらめきが美しい第1楽章、弦楽器の美しい音色が冴えわたる充実した第2楽章、エスプリの効いた短い第3楽章、そして、終楽章では、 弦楽器3者のフーガ風なやりとりの中、ピアノが縦横無尽に華麗にかけめぐります。
ファウストの、どこまでもまっすぐな音色で奏でられるウェーバーの書いた旋律美、メルニコフの才気と知性が冴えるピアノ・パート、そしてアンサンブ ルの妙。すべてがとびきりのクオリティのウェーバー作品集。珠玉の1枚の登場です。 (Ki)
HMC-902113(2CD)
バッハ:管弦楽組曲(全曲)
組曲第4番ニ長調BWV1069〔3Ob、Fg、3Trp、timp、弦、通奏低音〕
組曲第2番ロ短調BWV1067〔Fl、2Vn、Vla、通奏低音〕
組曲第1番ハ長調BWV1066〔2Ob、Fg、弦、通奏低音〕
組曲第3番ニ長調BWV1068〔2Ob、Fg、3Trp、timp、弦、通奏低音]
フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2011年1,2月/パウルス・ザール(フライブルク)
2012年1月、いよいよ待望の初来日となる、フライブルク・バロック・オーケストラによる最新盤、日本での演奏曲目でもある「管弦楽組曲」堂々の登場。古楽器オーケストラの雄、とよく言われますが、まさにその証明となる圧巻の出来栄えです。どのパートもとにかくうまいですが、特に印象に残るのが通奏低音を奏でるファゴットの超絶技巧。また、オーボエなどの木管群の細やかで雄弁なテクニックには圧倒されます。第3番では、トランペットとティンパニが加えられてより華やかな響きになった稿が採用されています。有名なアリア(「G線上のアリア」)では、メロディーが美しいのは言うまでもありませんが、通奏低音を奏でる低弦の歩みの確かさが心にしみます。続くガヴォットの、エレガントでありながらきびきびした動きとのコントラストも心憎いまでに完璧です。細かなところまで完璧、曲の内部の細やかな旋律や、曲同士のコントラストも絶妙で、まさに望みうる最高の管弦楽組曲の登場といえるでしょう。 (Ki)

HMC-902115(2CD)
シューベルト:ピアノ・ソナタ集
ピアノ・ソナタ第17番.ハ長調Op.53/D850
ピアノ・ソナタ第18番.ト長調Op.78/D894「幻想」
即興曲Op.90/D899
ピアノ・ソナタ第15番「レリーク」
3つのピアノ曲D946
ポール・ルイス(P)

録音:2011年3,6月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
王子ホールでの「シューベルト・チクルス」も好評のポール・ルイス最新盤はシューベルトの作品集。シューベルトの天才の煌めきに満ちた4つの即興曲(Op.90)は、ピアノ学習者でも演奏することもある作品ですが、うつろう気分や繊細なデュナーミクなど、ポール・ルイスは意のままに演奏しています。ト長調「幻想ソナタ」での極美の弱音は聴き手を別世界へといざないます。一音一音がピアノの芯を見事にとらえていて、「他のどの楽器よりも、ピアノという楽器に対して、自分の身体が実にしっくりとなじむ」と語る通り、楽器を完璧にコトロールするポール・ルイスの演奏は、ピアノという楽器の存在を忘れさせ、そこにシューベルトがいるような、そんな気分にさせられます。どこまでも優しく、しかし雄弁に語りかける、ポール・ルイスの類を見ないシューベルト作品集です。 (Ki)
HMC-902122
シューマン:室内楽作品集
ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47
ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44
アレクサンドル・メルニコフ(P/1875年製ベーゼンドルファー)
エルサレムSQ
【アレクサンドル・パヴロフスキ(Vn)、
セルゲイ・ブレスラー(Vn)、
オリ・カム(Va)、キリル・ズロトニコフ(Vc)】

録音:2011年7月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
なんとも充実のシューマンの室内楽作品CDがリリースされます。2012年2月に来日し、もの凄いショスタコーヴィチの演奏会と、ファウストとのベートー ヴェン・デュオのコンサートで日本の聴衆の度肝を抜いたメルニコフと、エルサレム弦楽四重奏団(ヴィオラの元メンバー(アミハイ・グロス)が、ベルリン・フィ ル首席ヴィオラ奏者に就任し、離団したため、新たにオリ・カムをヴィオラ奏者メンバーに迎えた新編成)による室内楽の登場。メルニコフが演奏してい るのは、ブラームス作品集(HMC.902086)でも用いた、1875年ベーゼンドルファー製のピアノ。エルサレム弦楽四重奏団の研ぎ澄まされた清冽な音 色で展開されるアンサンブルと、メルニコフのピアノのコンビネーションは絶品です。
ここに収められている室内楽曲は、どちらも1842年、「室内楽の年」(42年6月から43年1月までの比較的集中した時期)に書かれたもの。この 時期、3つの弦楽四重奏曲、そして、ピアノ四重奏曲と五重奏曲が書かれました。溢れるイマジネーションをピアノ・ソロの作品で表現するには「制約が ありすぎる」とクララに語っていたといいます。五重奏は、ワーグナーにも強い影響を与えたと言われています。ベートーヴェン、メンデルスゾーンやシュー ベルトが残した同ジャンルの偉大な作品からエネルギーを得て、自身の創作力を全て注ぎこんだ力作です。四重奏曲終楽章のフィナーレや、五重奏曲の有 名な冒頭での、メルニコフのピアノは圧巻。メルニコフが描く細かな歌いまわしを、エルサレムの面々も見事にキャッチ。親密な雰囲気と、心地よい緊張 感に満ちた稀有な演奏が展開されています。 (Ki)

HMC-902124
バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ集 VOL.2
ソナタ 第1番 ト短調 BWV 1001
パルティータ 第1番 ロ短調 BWV 1002
ソナタ 第2番 イ短調 BWV 1003
イザベル・ファウスト(Vn)
※ヴァイオリン/1704年製ストラディヴァリス「スリーピング・ビューティー」

録音:2011年 8,9月
イザベル・ファウスト、待望のバッハの完結編の登場です。第1弾となる無伴奏ソナタ&パルティータ集 BWV 1004-1006(HMC 902059)は世界中 で絶賛され、その後も、ブラームス(HMC 902075)の協奏曲と六重奏曲というカップリングで魅せた比類なきアンサンブル、そしてアバド指揮モーツァ ルト管とのベートーヴェン&ベルク協奏曲(HMC 902105)の神がかり的な美しい演奏のディスクで私たちをたのしませてくれました。さらに来日公演も 高評価だっただけに、期待が高まります!
聴き手の耳と心に焼きつく強烈な美しさを放つファウストの音。重力を感じさせない、しかし軽いというわけでは決してない、実に不思議な弓使いから 生み出される彼女の音色は、一度聴いたら忘れられないもの。今回のバッハでも、銘器ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティー」の特徴でも ある美しい音色、彼女自身「レーザーのようにまっすぐで、宙を射る光の線のようにまばゆい」と述べる音色で、聴き手の心にまっすぐに響いてくるバッハ を聴かせてくれます。
ソナタ第1番第1曲アダージョ冒頭の、平衡感覚にすぐれた、持続する緊張感はファウストならでは。ただこの緊張感というのが、聴き手を金縛りに させるような強烈なものとはまた違った、ファウスト独特の不思議な緊張感なのですが、冒頭からファウストの世界にぐいぐい引き込まれてしまいます。パ ルティータ第 1 番 1 曲目のアルマンドは、アルマンドが舞曲であることを痛感させる浮遊感あるリズムに乗って、淡々と奏でられます。4 曲目ドゥーブルの 無窮動では、細かな音符が一部の隙もなく急速にくるくると押し寄せてきて、その遠心力で一種の無重力状態が生じているような、不思議な世界が広がり ます。ソナタ第2番の終曲アレグロでは、ファウストのかっこよさが炸裂しています。イザベル・ファウストという演奏家、そしてこの素晴らしい音色を秘 めた「スリーピング・ビューティー」という楽器、両者が最高の状態で出会い、ただならぬバッハの世界を創りあげています。 (Ki)
HMC-902125
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲集
第6番 変ホ長調 op.70-2
第7番 「大公」変ロ長調 op.97
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ/Alois Graff, 1828頃(エドウィン・ボインクによる修復、メルニコフ蔵)
イザベル・ファウスト(Vn/1704 年ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc/Geoffredo Cappa 1696年)

録音:2011年9月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
今、もっとも世界が注目する音楽家、ヴァイオリン奏者イザベル・ファウスト、チェリストのケラス、ピアニストのメルニコフ。このなんとも豪華な三名 によるベートーヴェンの登場です!このメンバーは、2004年にドヴォルザークのピアノ三重奏曲第4番ホ短調Op.90「ドゥムキー」を録音していますが、 それから時を経て、三人とも深みを増してからの録音とあって、期待が高まるところです。
第6番は、「幽霊」とならんで作品70として出版されたもので、「傑作の森」と称される中期に生み出された作品。ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の 中では比較的地味な存在ですが、ベートーヴェン自身が非常に高く評価していた作品で、晴れやかな楽想が印象的な名作です。ファウストのヴァイオリン の伸びやかな音色で聴くメロディがえもいわれぬ美しさ。それをささえるメルニコフの溌剌としたフォルテピアノと、ケラスのハリのある音色が、活き活き と美しいアサンブルを奏でます。
「大公」は歴史上に燦然と輝く名曲にして大曲。冒頭のメルニコフによるひたひたとしたピアノ独奏に、ファウストのまばゆくまっすぐな音色のヴァイオ リンと、ケラスの豊かな響きと推進力のあるチェロが加わると、これから始まる雄大な世界への期待が高まります。三人ともひとつひとつのフレーズを慈し むように、実に細やかに表情づけを施しながら演奏しており、息をのむような美しい瞬間が随所に現れます。それでいて、作品の雄大なスケール感を感じ させる、音楽の広がり具合も見事。奏者の懐の深さゆえの余裕のある出来栄えです。スケルツォでの弾むリズム、緩徐楽章での弦が織り成す美しいレガー トは絶品です。終楽章の華やかなコーダは圧倒的です。室内楽史に燦然と輝く名曲の、決定的な名演がここに新たに誕生しました。 (Ki)
HMC-902143
…pour passer la melancolie
フローベルガー:組曲第30番イ短調 
ダングルベール:「オルガンのための種々のフーガ」〜基礎のフーガ.イ短調
J.C.F.フィッシャー:「音楽のパルナッソス山」
 組曲「ウラニア」ニ短調〜トッカータ/パッサカリア
L・クープラン:組曲ヘ長調 
ダングルベール:「クラヴサン小品集」〜プレリュード/シャンボニエール氏のトンボー/シャコンヌ.ロンドー.イ長調 
J.C.F.フィッシャー:「音楽のアリアドネ」〜リチェルカーレ「イエスが十字架にかけられしとき」
クレランボー:「クラヴサン曲集第1巻」〜組曲ハ短調
ムッファト:「オルガン音楽の練習」〜パッサカリア.ト短調
フローベルガー:皇帝フェルディナント4世陛下の悲しい死に寄せる哀悼歌
アンドレアス・シュタイアー(Cemb.)
【使用楽器:17世紀末フランス製クラヴサン“Anonyme Collesse”(2000-2004年、ロラン・ソマニャック)】

録音:2012年2月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
鍵盤奏者として確固たる地位を築く名手、アンドレアス・シュタイアー待望の新譜!2012年にリリースされたベートーヴェンの「ディアベッリ変奏曲(HMC 902091)」での名演も記憶に新しいシュタイアーですが、今回はチェンバロ・ファン必見のオール・チェンバロ・プログラム。17世紀のフランス&ドイツ・ バロックの鍵盤作品を対象に、特にトンボーや哀悼歌など「憂鬱(メランコリア)」あふれる作品に焦点を当てたアルバムとなっています。近年はより深み のある音色と表現に磨きをかけてきているシュタイアー。本アルバムでも期待を裏切らぬ素晴らしい演奏で魅せてくれます。
今回のプログラムについて、「『トンボー』や『嘆き』はフランスのリュート音楽において典型的な様式ですが、クラヴサン奏者のレパートリーとしても等 しく重要なのです」と語ったシュタイアー。フローベルガーやダングルベールといった初期バロックの作品から、クレランボーやムッファトなどの後期バロッ ク作品に至るまで幅広く収録しており、たっぷりとバロック・メランコリーを堪能するアルバムに仕上がっています。フィッシャーのリチェルカーレ「イエス が十字架にかけられしとき」やムッファトの「パッサカリア」など、オルガン作品をチェンバロで演奏しているところにも注目されましょう。
当時のヨーロッパにおいては、「憂鬱」という言葉には「瞑想」のイメージが多く含まれていたそうで、本アルバムに収録されている作品も、全体的に「瞑想」 という言葉がしっくりくるような落ち着いた曲調の作品が目立ちます。とはいえ、決して暗く沈みこんだ雰囲気に徹することがないのは、シュタイアーの緩 急鮮やかな表現力が成せる業。音の響きの重みはそのままに、ドイツとフランスそれぞれの響きをしっかりと表現し分けているところも名手の面目躍如と いったところでしょうか。バッハの「ゴルトベルク変奏曲(HMC 902058)」でも絶賛された、明瞭な音捌きと圧倒的な響きの厚みは今回も健在。まさ に骨太の演奏に定評のあるシュタイアーの魅力の真髄に聴き入るにぴったりのアルバムです! (Ki)
HMC-902145
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043
ヴァイオリン協奏曲ホ長調(第2番)BWV1042、
ヴァイオリン協奏曲イ短調(第1番)BWV1041
3つのヴァイオリンのための協奏曲ニ長調BWV1064R*
フライブルク・バロック・オーケストラ
ぺトラ・ミュレヤンス(Vn、指)
ゴットフリード・フォン・デア・ゴルツ(Vn,指)
アンヌ・カタリーナ・シュライバー(Vn)*

録音:2012年4月フライブルク、パウルス・ザール
フライブルク・バロック・オーケストラによる最新盤はバッハのヴァイオリン協奏曲集。 バッハはヴァイオリンによる協奏曲を3曲残しており、ここではそれに加えてチェンバロ協奏曲から編曲した合計4曲が収録されています。第1番の協奏 曲は威厳に満ちた音楽で宗教曲のような崇高さを感じられる曲。第2番は対照的に明るい曲調で愉しさに溢れています。そして2つのヴァイオリンのため の協奏曲は、対位法を駆使した2つのヴァイオリンと合奏の3者の掛け合いが魅力的な作品です。フライブルク・バロック・オーケストラの演奏は、バッ ハの溌剌としたリズムや楽器間の精緻なアンサンブルが見事で、特に緩徐楽章は、伸び伸びと表現され軽やかに愉しげに演奏されています。フライブルク・ バロック・オーケストラのヴァイオリンの名手たちの鮮やかな技巧が冴え、バッハの音楽と向き合った充実した演奏を聴かせてくれる1枚です。 (Ki)

HMC-902146
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲集
ヴァイオリン協奏曲第1番 Sz36(遺作)
ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz112
イザベル・ファウスト(Vn/1704年製スリーピング・ビューティ(ストラディヴァリウス))
ダニエル・ハーディング(指)
スウェーデンRSO

録音:2012年4月/ベルヴァルトホール(ストックホルム)
気・実力とも急上昇中のヴァイオリニスト、イザベル・ファウストの新譜の登場!ブラームスの協奏曲でもファウストとの素晴しいアンサンブルで魅せ てくれたハーディングの(指)オーケストラは、ハーディングが音楽監督を務めているスウェーデン放送交響楽団という最強の布陣による、バルトークのヴァ イオリン協奏曲集です。
バルトークは、ファウストの魅力が炸裂する作曲家の一人といえるでしょう。ファウストの衝撃のデビュー盤は、バルトークの作品集でした【HMG 508334(2CD)の「バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタSz.117/ヴァイオリン・ソナタ第1番(ピアノ:エヴァ・クピーク)、1996年収録」】。この盤は、 新人としては異例の「グラモフォン」エディターズ・チョイス、97年度グラモフォン賞に輝くなど、世界の耳を驚かせた衝撃の名演。デビュー当時から格 別なものがあるファウストのバルトークということで、期待が高まります。
第1番は、バルトークが26歳の頃に書かれたもの。当時熱い思いを寄せた女性ヴァイオリニスト、シュテフィ・ガイエルに献呈されましたが、一度も 演奏されないままに、彼女もバルトークの死後10年ほどでこの世を去ってしまい、ふたりの死後しばらくしてからこの作品の存在が知られることとなった、 遺作です。ファウストはこの録音にあたり、草稿など様々な資料にあたり、バルトーク自身による書きこみなどを発見。バルトークの思いを可能な限り汲 んだ力演を聴かせています。冒頭の長七の和音を静かに上行する4つの音からなる音型は、シュテフィ・ガイエルをあらわすモティーフ。ファウストが奏 でる内省的な音色から、一気に世界に引き込まれます。ハーディング率いるオーケストラとのアンサンブルも緊張感に満ち、見事。第2楽章のゆるやかに 上下行をくりかえす旋律を奏でるオーケストラの微妙な揺れと、ファウストが奏でる旋律が絶妙に融けあう様は息をのむほど美しく、官能的ですらあります。 終盤で聴かれるドイツ民謡の引用は、バルトークがこの作品を書いた1907年の夏、ガイエルと二人で休暇を共に過ごした時に聴いたもの。しかしつか の間の平穏な雰囲気は霧散し、最後は緊張感のあるクライマックスを迎えます。この作品が完成した2日後、二人の関係は終わりました。にも関わらず バルトークはこの作品を彼女に献呈、作品ページ冒頭には、別れの挨拶が、そして最後には哀しみのメッセージが書かれています。こうした作品成立の背 景を考えながら聴くと、また一層の味わいがあります。(なお、ライナーノートはファウスト自身の筆によるもので、曲の背景やファウストが見つけた事実 などが述べられており、実に興味深い内容となっています)
第2番はバルトークの中期、最も創作的に充実していた時期に書かれたもの。ハンガリー民謡的な旋律、抒情的な旋律、五音音階から十二音技法、 さらには四分音まであらわれる、多種多様の素材が見事に融合・構築され、高度の集中を要求するこの作品には、バルトークのすべてが詰まっていると いっても過言ではないでしょう。激しいクライマックスで締めくくられる第1楽章、様々に変容する旋律でファウストの美しい音色が官能的に輝く第2楽章、 そして野性味すら感じさせる力強いリズムに満ちた第3楽章まで、緊張感に満ちたファウストのソロと、ハーディング率いるオーケストラとのアンサンブル が見事に弾き切っています。幼いころから室内楽に親しみ、アンサンブル能力にたけたファウストだからこそ実現できる演奏といえるでしょう。 ファウストとハーディングによるバルトーク。今もっとも活躍する音楽家たちによる注目盤です! (Ki)
HMC-902147
モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番ト長調K453
ロンド.イ長調K 386
ピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K482
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ/ポール・マクナルティ、ディヴィソフ、チェコ共和国、2009年/Anton Walter & Sohn、ウィーン、1805モデル)
フライブルク・バロックO

録音:2012年5月、ブライブルク、アンサンブルハウス
フォルテピアノの申し子、天才ベザイデンホウトによるモーツァルトのピアノ協奏曲集の登場。ベザイデンホウトといえばこれまでにモーツァルトのソロ作 品集を3枚リリース、そのどれもが高い評価を得ていますが、今回は協奏曲での登場です!管弦楽を務めるのは、古楽界のベルリン・フィルとも称される 名人集団フライブルク・バロック・オーケストラ。ベザイデンホウトの奏でる装飾の巧さ、カデンツァでの神がかり的な美しさと創造性、そしてオーケスト ラとの掛け合いの妙。どこをとっても、うれしい驚きに満ちた素晴らしい1枚の登場です!
ベザイデンホウトが興味深い録音ノートを寄せています。まず、配置に関して、「フォルテピアノが真ん中に、管楽器がピアノ奏者と向かい合うかたちで 一列に、弦楽器はピアノ奏者の背後を含め周りを囲うかたちで配されている。これにより、管楽器の音色が前面に出、さらに、ピアノと管楽器間のより自 然で活き活きとした対話が可能となった。これにより、時折出会うような、いわゆるピアノ前面型の演奏から、E.T.A.ホフマンが言ったような、オブリガート・ ピアノを伴う交響曲になった。ピアノは、ソロと通奏低音の両方を担当し、オーケストラの豪華なサウンドの中を自在に駆け回り、時には前面に出、時に は伴奏にまわる。」と述べており、実に素晴らしいアンサンブルもじっくりたのしめる演奏となっています。また、「モーツァルトが即興の名手であったこと はよく知られており、ピアノ・パートには明らかに装飾をして演奏しなければならない部分があるが、ということは、オーケストラにもやはりそうした部分 があるのでは、と考えた」ということで、今回管楽器奏者の奏でる美しい旋律にもそこかしこに通例とは異なる表現が!時にはセッション中に実際に即興 された部分もあるということ。あまりの美しさに思わずハッとしてしまう瞬間に満ちています。
協奏曲の前奏から思わず胸がときめくようなオーケストラの巧さ、その合間にベザイデンホウトがさりげなく入れる通奏低音のセンスのよさ、もちろんベ ザイデンホウトのソロの素晴らしさ、そこかしこにちりばめられた天才的なひらめきに満ちた装飾音、17番第2楽章での仰天のカデンツァなど、聴きどこ ろの瞬間に満ちた 1 枚です! (Ki)

HMC-902148
エルガー:チェロ協奏曲ホ短調 op.85
ドヴォルザーク:ロンドop.94、
 森の静けさop.68/5
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲(フィッツェンハーゲン版)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)
BBC響

録音:2012年5月、ロンドン、BBCマイダ・ヴェール・スタジオ
ケラス待望の新譜は、エルガーの協奏曲!冒頭のカデンツァから、渋みと深みの極み。えぐるような、しかし決して力技にならない、研ぎ澄まされたバラ ンス感覚の音色で切々と歌う旋律は絶品。第2楽章では、ビエロフラーヴェク率いるオーケストラが、ケラスの抒情豊かな表情に見事なまでにぴったりと 寄り添った表情で応えています。ケラスというと、アルカント・カルテットのバルトークで魅せるような、凄味や、カミソリのような切れ味などが思い浮か ぶかもしれませんが、このエルガーは、濃密な歌に満ちていて、ちょっとその表情の豊かさに驚かされるほど。もちろん、いつもの通り、音楽の核心を突 く真摯な演奏を展開していることはいうまでもありません。最後の一音まで聴き逃せないような、迫真の演奏の登場です。続いて収録されているドヴォルザー クも、ノスタルジックで詩情に満ちたロンドと、夢見るような「森の静けさ」など、柔らかな表情で聴かせます。「ロココ主題の変奏曲」は、非常にノーブ ルな音色と明るい歌い回しで、甘く品格ある世界を展開しています。緩徐楽章でのメランコリーもぐっときます。クライマックスでの速いパッセージも、実 に軽やかに完璧に弾きこなしているのはさすがです。
エルガーでの渋みと深み、ドヴォルザークでの詩情、チャイコフスキーでの明るさなど、ケラスのもつ底知れぬ表情表現力とテクニックを究極まで味わう ことのできるプログラミングといえるでしょう。また、ビエロフラーヴェクは、もともとチェロ弾きだったということもあり、ケラスも完全に信頼しているの がわかります。指揮者、ソリスト、オーケストラ全員が、真摯に作品世界に入り込んでいることがわかる力演です。
チャイコフスキーで、ケラスはフィッツェンハーゲン版を採用。この理由について、「チャイコフスキーが、自身のオリジ ナル版の通りにこの作品が演奏されることを意図したとはどうしても考えることができませんでした。もちろんチャイコフス キーは、フィッツェンハーゲンが自作を改訂したことについて非難しましたが、それは、改訂したことにではなく、相談もな しに為されたことに対してだったのではないでしょうか。チャイコフスキーは、この版をレパートリーとして暗黙のうちに認 めていましたし、自身のスケッチ的なオリジナル版を完成させて、フィッツェンハーゲンの版を排除しようとしたりしません でした。また、フィッツェンハーゲンの版は非常に成功していると思うのです。」と語ります。 (Ki)
HMC-902159
アダージョとフーガ〜W. A. Mozart after J. S. Bach
プレリュードとフーガ.ニ短調 K405/4(J.S.バッハ:平均律第2巻第8番 嬰ニ短調 BWV 877)
ラルゲット・カンタービレ ニ長調&フーガ K405/5(J.S.バッハ:平均律第2巻第5巻 ニ長調 BWV 874)
アダージョとフーガ.イ短調(J.S.バッハ:平均律第1巻第22番 変ロ短調 BWV 867)
アレグロ.ハ短調 K.Anh.44&2台チェンバロのためのフーガ K426
アダージョ・カンタービレ&フーガ 変ホ長調(平均律第2巻第7番 変ホ長調 BWV 876)
弦楽のためのアダージョとフーガ.ハ短調 K546
アダージョとフーガ.ホ長調 K405/3(平均律第2巻第9番 ホ長調 BWV 878)
アダージョとフーガ.ロ短調(平均律第1巻第4番 嬰ハ短調 BWV 849)
アダージョとフーガ.ニ短調(平均律第1巻第4番 嬰ハ短調 BWV 849)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2012年9月13-15日/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ベルリン古楽アカデミー久々のアンサンブルもの新譜の登場。圧巻の「フーガの技法」(HMC 902064)のあとは、ヤーコプスのプロジェクトで「魔笛」 や「マタイ受難曲」、またペルゴレージの作品などで鮮烈な音色を聴かせてくれていれていたベルリン古楽アカデミー。このたびリリースされるのは「W. A. Mozart after J. S. Bach」と題された、モーツァルト編曲のバッハ作品を中心とした1枚です。  興味深いのが、平均律の室内楽編曲版。バッハの平均律が出版されたのは1801年のことでしたが、モーツァルトは、ヴァン・スヴィーテン伯爵を介し て、バッハの平均律の存在を知ります。モーツァルトは、来る日も来る日もオリジナルの資料にあたって平均律を研究、4声体の5つのフーガを2つのヴァ イオリン、ヴィオラ、チェロのために編曲しました。これはKV 405というコレクションの中に収められており、ヴァン・スヴィーテン伯爵のサロンでのマ チネー演奏会で演奏されたと考えられています(1782から83年にかけてのこと)。この盤には5曲のうち3曲が収められています。プレリュードはバッ ハの平均律のプレリュードとは必ずしも同じものではありませんが、すべてモーツァルトによる(と考えられる)ものです。  K番号が付されていないものは、オーストリア国立図書館に収蔵されている、モーツァルトと非常に関連が深い(コピストが同じ、など)と考えられる ものの、作曲者不詳の楽曲。K.546の弦楽のためのアダージョとフーガは、K.426の2台のクラヴィーアのためのフーガのモーツァルト自身による編曲 版ですが、一層声部の動きが明瞭で、ベルリン古楽アカデミーの面々の腕も冴えわたっています。  天才モーツァルトを介して知るバッハの新しい世界に興味津々の一枚です! (Ki)
HMC-902168
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K581
弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421
アルカント・カルテット
【アンティエ・ヴァイトハース(1Vn)、
ダニエル・ゼペック(2Vn)、
タベア・ツィンマーマン(Va)、
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)】
イェルク・ヴィトマン(Cl)

録音:2013年1月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ジャケット絵画/フラゴナール:馬乗り遊び(Le cheval fondu)[1870年頃]
スター奏者を揃え、2年連続でアカデミー賞を受賞、演奏会シーンでも活躍と、常に注目の存在のアルカント・カルテット、待望の新譜はモーツァルト。 ゲストに、注目のクラリネット奏者イェルク・ヴィトマンを迎えたクラリネット五重奏曲と、弦楽四重奏曲第15番という魅惑のプログラム。
クラリネット五重奏曲の冒頭の和音のスーッとした入りから、鳥肌もの。つづいてヴィトマン奏でるクラリネットの上行和音から立ち上る香気で一気に別 世界に引き込まれます。全体に甘さを抑えた表現なのが却って作品本来の素晴しさと高貴さを引き立てているようです。弦楽四重奏曲第15番ニ短調は、 ハイドン・セットの中の唯一の短調の曲で、この作品のもつ暗さが、アルカント・カルテットの無駄を一切排除した表現で浮き彫りになっています。第 1 楽章冒頭の神秘的な仄暗さ、第3楽章のトリオの長調部分のむなしい明るさ、終楽章の変奏曲の、高貴なる悲しさなど、常に美しさは湛えながらも、壮 絶なペシミスティック感漂う演奏で、ただならぬモーツァルトとなっています。
2002年に結成された、スター揃いのアルカント・カルテット。これまでのリリースは4枚(バルトーク[廃盤]、ブラームス[廃盤]、ドビュッシー& ラヴェル&デュティユー[HMC 902067/ KKC 5108]、シューベルト[HMC 902106/ KKC 5235]、および日本限定でSACDボックスも発売中[HMSA 0006/4枚組(廃盤のものも含む)])ですが、尋常でない緊張感に満ちた演奏で、常に音楽シーンで注目の的となっています。待望の新譜に注目です!
イェルク・ヴィトマン(b.1973)は、作曲家・クラリネット奏者として注目の存在。ミュンヘンに生まれ、クラリネットを、ミュンヘン音楽大学でゲルト・シュ タルケに、その後ジュリアードでチャールズ・ナイディッチに師事。作曲を、リーム、ヘンツェらに師事、彼らをはじめ様々な作曲家からクラリネット協奏 曲を献呈され、初演を行っています。世界の名だたるオーケストラと共演、また作曲家としても活躍している異能の存在。フライブルク音楽大学ではクラリネッ トと作曲の両方で教授を務めています。

HMC-902183(2CD)
ベートーヴェン:チェロとピアノのための作品全集
モーツァルトの『魔笛』の「娘か女か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 op.66
チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調op.5-1
チェロ・ソナタ第2番 ト短調 op.5-2
ヘンデルの『ユダ・マカベア』の「見よ勇者は帰る」の主題による12の変奏曲 ト長調WoO.45
チェロ・ソナタ第3番 イ長調 op.69
モーツァルトの『魔笛』の「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46
チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 op.102-1
チェロ・ソナタ第5番 ニ長調 op.102-2
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
アレクサンドル・メルニコフ(P)

録音:2013 年 10&12 月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
人気、実力とも当代ナンバーワンのジャン=ギアン・ケラスの新譜は万全のベートーヴェン。ピアニストのメルニコフがパートナーを務める注目盤です!
チェロのケラスは、ソロ活動ではますます冴えわたった弓さばきを展開しているほか、アルカント・カルテットのメンバーとしての活動も充実。2014年 秋にはアルカント・カルテットでも来日が予定されている、押しも押されぬ人気奏者。メルニコフも、近年充実著しいピアニスト。フォルテピアノとモダン のピアノを縦横無尽に弾きこなしておりますが、ここではモダンのピアノを奏でています。
ケラスとメルニコフ両者の、透明感と密度の高さ、精確性を兼ね備えた音質が非常に美しく、1ミリの狂いもないアンサンブルで、ベートーヴェンの世 界を自在に駆け巡る伸びやかさが心地よい演奏です。
第1番第1楽章、アレグロ部分でのベートーヴェンならではの溌剌としたパッセージも実に活き活きとしており、抜群に息の合った掛けあいには聴きいっ てしまいます。有名な第3番の冒頭、チェロが奏でるのびのびとした第一主題も、ケラスは実に楽々と奏で、チェロを受けて入るメルニコフのピアノも絶 妙の表情です。第4、5番が書かれたのは1815年、ベートーヴェン後期の世界を感じさせるもの。とくに第4番は、「ピアノとチェロのための自由なソ ナタ」とも題されているように自由な形式のソナタで、作品全体がひとつの幻想曲のような作品。第5番は古典的なソナタ形式に忠実ではありますが、フー ガのような部分が目立つことや、緩徐楽章(チェロ・ソナタ5曲のうち唯一)での瞑想性など、やはり後期の特徴が表れております。ケラスもメルニコフ も、研ぎ澄まされた音色で独特の世界を表現しています。ベートーヴェン得意の変奏曲では、ケラスとメルニコフは実に颯爽と軽やか、表情豊か。快心の 出来栄えのベートーヴェンです! (Ki)
HMC-902187
ブラームス:クラリネットとピアノのためのソナタ集
クラリネット・ソナタ第1番 ヘ短調 op.120-1
6つのピアノ小品 op.118
クラリネット・ソナタ第2番 変ホ長調 op.120-2
ロレンツォ・コッポラ(Cl/ B 管、ベルマン・オッテンシュタイナーのモデルによる、シュヴェンク&セゲルケ製、
バンベルク、2001年)
アンドレアス・シュタイアー(P[ ニューヨーク・スタインウェイ、1875 年製 ])

録音:2013 年10月
鍵盤楽器の鬼才アンドレアス・シュタイアーの新譜はブラームス。ブラームス最晩年の屈指の名曲クラリネット・ソナタ、およびピアノ小品(ソロ)と いうプログラムです。クラリネットを演奏するのは、フライブルク・バロック・オーケストラのメンバーでもあり、モーツァルトの最後の協奏曲【HMC 901980(廃盤)】でクラリネット協奏曲を収録、世界を魅了したロレンツォ・コッポラ。
コッポラとシュタイアーによるクラリネット・ソナタというだけでも既に心躍りますが、もうひとつ注目なのが、楽器です。クラリネットは、ブラームスが クラリネット作品を書くきっかけを与えた当時の天才奏者ミュールフェルトも使用していたベルマン&オッテンシュタイナー・モデルの楽器を使用。1875 年製のスタインウェイと、バランス的にも音色的にも、素晴らしく融け合っています。
クラリネット・ソナタ第1番では、冒頭のシュタイアーの前奏から、ただならぬ雰囲気。終楽章の活発なピアノに触発されたようなコッポラのクラリネッ トも圧巻です。第2番では、やさしく甘い第1楽章の旋律で、コッポラがとろけそうな音色を奏でます。幻想曲風な第3楽章の幕切れも、ピアノの音色 が独特の世界をいっそう盛り上げます。クラリネット・ソナタ2作の間に収録されているのはシュタイアーのソロ。晩年のブラームスが自分の作品ひいて は人生を振り返って懐かしんでいるような作品を、シュタイアーが、彼ならではのやわらかな語り口と、スタインウェイの銘器の音色を最大に活かしながら、 いつくしむように奏でています。
HMC-902191
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番Op.15
4つのバラードOp.10*
ポール・ルイス(P)
スウェーデンRSO
ダニエル・ハーディング(指)

録音:2014年5月ストックホルム・ベルワルドホール*、2016年1月テルデックス・スタジオ・ベルリン
アルフレッド・ブレンデルの薫陶を受けるイギリスの名手ポール・ルイスは、ヨーロッパでひっぱりだこの人気ピアニスト。ベートーヴェンのピアノ・ソ ナタ全集(HMX.2901902)、ピアノ協奏曲全集(HMC.902053)やシューベルトのピアノ・ソナタ集などハルモニアムンディからリリースされている数々 の録音はいずれも高い評価を受けています。日本にも度々来日し、2015年12月に行った「ベートーヴェンの後期3大ソナタ」公演は、音楽の本質を 射抜いたかのような演奏を聴かせてくれました。
このアルバムは、ダニエル・ハーディングとスウェーデンRSOとの「ブラームスのピアノ協奏曲第1番」とルイスのソロで「4つのバラード」 が収録されています。ピアノ協奏曲第1番は、2014年新日本フィルとハーディングが行った「ブラームス・プロジェクト」の一貫でポール・ルイスがゲ ストとして参加した際に演奏された曲目。その際もハーディングがルイスとの共演を熱望したということで、完成度の高い演奏を披露しました。
ピアノ協奏曲第1番はブラームス初期の傑作で、恩人シューマンの不幸とクララへの憧れが入り混じった意欲的な作品。第1楽章はブラームスらしい 重厚なシンフォニックな響き、弦楽器とファゴットの穏やかな旋律で開始される第2楽章には、シューマンへの追悼そしてクララへの思いを示したラテン語 の祈祷文が書かれています。力強いピアノの主題からはじまる第3楽章は疾走感がありピアノが華やかに躍動します。ルイスのピアノは端正で味わい深く、 第2楽章では幻想的に静かに語りかけるように、第3楽章では生き生きと爽快にダイナミックに聴かせてくれます。ハーディングの絶妙な指揮も聴きどこ ろで、ピアノの音を引き立てつつ、重厚に音を響かせ、ときにはピアノと共に繊細な音を作り出し、特に木管陣の美しさ上手さに魅了されます。 そしてブラームスの初期のピアノ・ソロの中でも人気の高い「4つのバラード」。若々しいブラームスの抒情溢れる名作。ルイスは若きブラームスの音楽 からにじみ出る「孤独」を、透明感あるピアノの音色で描き出しています。 (Ki)
HMC-902193
F.クープラン:讃歌集
トリオ・ソナタ「壮大なもの」(1690年頃)
リュリ讃(1725)/コレッリ讃(1724)
4声のソナタ「スルタン妃」(1695年頃)
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
リ・インコーニティ

録音:2014年1月4-7日/グラディニャン、四季劇場(ジロンド)
フランス古楽界の新世代を代表するバロック・ヴァイオリン奏者、アマンディーヌ・ベイエ。2014年11月にはアンサンブル・リ・インコーニティを率 いての来日が予定されています。この度、久々にハルモニアムンディからの登場となる当盤のプログラムは、F.クープランの「リュリ讃」と「コレッリ讃」 というなんとも嬉しい組み合わせ。ベイエの魅力である喜びに溢れたようなリズム、愛に満ちた明るい音色があますところなくとらえられています。 CDのプログラムは、「壮大なもの」で幕を開けます。「少しクセのある、色鮮やかな不協和音に満ちたハーモニーのキラキラとしたつむじ風にたちまち 耳を奪われる」とベイエ自身述べている作品を、非常にチャーミングに響かせています。
F.クープランの「コレッリ讃」と「リュリ讃」は、両作品とも各楽章に表題が付けられており、「コレッリ讃」では音楽の神が住まうパルナッソス山にコレッ リが導かれる様子が描かれ、「リュリ讃」では、コレッリに続いてパルナッソス山へ登ったリュリが、そこで出会ったコレッリと共に演奏を行う、という物語 になっています。フランスでは、「トンボー」というジャンルで、先人の肖像画的な音楽を作るという伝統がありましたが、このクープランの「リュリ讃」「コレッ リ讃」は、それぞれの作曲家のスタイルに厳密に従っているわけではなく、また、その規模などから、音楽史上でも特殊な作品として輝きを放っています。 ベイエとアンサンブルの面々が、活き活きとしたリズムでひとつひとつのハーモニーまでも逃さず味わいつくすように演奏しています。
最後に収録されているスルタン妃は比較的初期の作品ですが、繊細なテクスチュア、柔軟な舞曲のリズム、抒情性、モティーフのキャラクターづけの巧 さなどが光る秀作です。 (Ki)

HMC-902202
プロコフィエフ: ピアノ・ソナタ第2番ニ短調Op.14
ピアノ・ソナタ第6番イ長調Op.82
ピアノ・ソナタ第8番変ロ長調Op.84
アレクサンドル・メルニコフ(P)

録音:2014年7月8-10日、2015年8月3-5日/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガ」や協奏曲で神業を聴かせたメルニコフがプロコフィエフのソナタに挑戦しました。ロシア・ピアノ音楽史 上の名作だけに、メルニコフがどう解釈するのか興味が募ります。 もともとメルニコフの敬愛するリヒテルの十八番として、いくつか残る録音は今日も決定盤とされている作品ばかり。メルニコフの解釈は、リヒテルゆず りの辛口な解釈ながら、リヒテルのような骨太さよりは繊細で、プロコフィエフのうつろいやすい気分を絶妙に表現しています。まさに21世紀風プロコフィ エフ演奏と申せましょう。 プロコフィエフが通称「戦争ソナタ」(ピアノ・ソナタ第6〜第8番)を作曲したのは第2次世界大戦中の1939-44年での厳しい状況下で、主に疎 開先で書かれましたが、中央でない干渉のなさゆえか、プロコフィエフ本来の才気と天才性が輝きをみせています。プロコフィエフの作曲当時、メルニコ フの祖父母の作曲家ニコライ・チェンベルジとザーラ・レーヴィナはすぐ近くにおり、まさに誕生に立ち会っていました。そうした遺伝子上のつながりも、 演奏に思い入れを増しているように思える凄さです。 (Ki)
HMC-902211
バッハ:「レーオポルト侯のための葬送音楽」BWV 244a
(モーガン・ジュルダンとラファエル・ピションによる復元)
ラファエル・ピション(指)
アンサンブル・ピグマリオン
サビーヌ・ドヴィエイル(S)
ダミアン・ギヨン(A)
トーマス・ホッブス(T)
クリスティアン・イムラー(Bs)

録音:2014年5月/ヴェルサイユ宮殿内王立礼拝堂
消失していた「レーポルト侯のための葬送音楽」の復元録音の登場です!これを手掛けたのは、ラファエル・ピション。彼は、アルファ・レーベルから、 たび重なる改訂などで謎が多い「ロ短調ミサ曲」の原点を、見事に再現してみせた、研究と演奏両面にひいでた指揮者。あくなき探求と研究が、また ひとつの素晴らしい成果を生み出しました。
J.S.バッハは、レーオポルト侯(アンハルト=ケーテン侯)(1694-1728)の宮廷で1717-23年の間楽長を務めました。侯は、音楽を愛し、音楽 に精通した主君で、優れた宮廷楽団を有し、バッハのよき理解者でもありました。バッハはこの時期に、「ブランデンブルク協奏曲」「無伴奏ヴァイオリン・ ソナタとパルティータ」、「インヴェンション」、「平均律クラヴィーア曲集第1巻」など多くのすぐれた器楽曲を作曲した充実した日々を送っていました(た だしこれらのほとんどは浄書であり、作品自体がこの時期に成立したかどうか明確でない部分もあります)。
この「レーオポルト侯のための葬送音楽」は、1728年に亡くなった侯のために1729年3月24日に演奏されたもの。楽譜資料は消失しているものの、 「マタイ受難曲」のテキストも手掛けたピカンダーによる、この作品のためのテキストが残されています。このテキストが、マタイ受難曲(初版、1727年版) などの既存のアリア楽曲旋律にそのままあてはめられる構造であることから、この葬送音楽はバッハの自作のパロディの技法を用いて作られたと考える ことができます。たとえば、マタイ受難曲の有名なアルトのアリア「主よ、憐れみたまえ(Erbarme dich)」は、この葬送音楽では「Erhalte mich(私 を忘れないでください)」というテキストに置き換えられており、完全に入れ替え可能なものとなっています。このようにテキストを既存の楽曲にあては めながら、この復元・録音の実現となりました。ブックレットのトラック表には、マタイ受難曲のほか、「侯妃よ、さらに一条の光を」BWV198、ロ短 調ミサ曲など、元になった楽曲との対照表もついています(欧文)。
演奏陣も、俊英アンサンブル・ピグマリオン、さらに歌唱陣もフランスの新しい歌姫ドヴィエイルや、ダミアン・ギヨンらと充実の布陣で、つやがあっ て引き締まった素晴らしい演奏を展開しています。  (Ki)
■ラファエル・ピション
カウンターテナー歌手としてサヴァール、レオンハルト、コープラマンらと共演したことがあり、また、ピアノ、ヴァイオリンも学び、その後、ピエール・ カオの下で指揮も学んだという逸材。バロックから現代作品の初演までを手掛け、2006年、アンサンブル・ピグマリオンを設立。ラモーのオペラ録音、 そして、バッハのロ短調ミサ曲の録音(アルファ)でも話題となりました。

HMC-902214(2CD)
モーツァルト:歌劇「後宮からの誘拐」 コンスタンツェ:ロビン・ヨハンセン(ソプラノ)
ブロンデ:マリ・エリクスモーエン(ソプラノ)
ベルモンテ:マキシミリアン・シュミット(T)
ペドリッロ:ジュリアン・プレガルディエン(T)
オスミン:ディミトリー・イヴァシュチェンコ(Bs)
太守セリム:コルネリウス・オボニャ(語り)
RIAS室内Cho
ベルリン古楽アカデミー
ルネ・ヤーコプス(指)

録音:2014年9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
ヤーコプスが「後宮からの誘拐」を録音しました!これが実に鮮烈痛快きわまりない演奏。パーカッションもにぎにぎしく活躍する快速序曲から、トル コを思わせる世界に一気に引きこまれる痛快な演奏です。セリフ部分にも演技と音楽の両面で様々に工夫がなされ、聴いていて実にたのしい「後宮」の 誕生となりました!
1782年の「後宮からの誘拐」のウィーン初演は、聴衆および批評家たちから、かつてない大成功の反響となりました。エキゾチズム(東洋趣味)に 重きを置いた音楽、啓蒙主義思想の礼賛、当時のオスマン帝国に対する偏見とは間逆の筋書が当時の人々にとってまさにドンピシャ、ツボにはまったもの だったのです。また、このオペラはジングシュピール(歌芝居)なのでレチタティーヴォがなく、アリアとセリフで構成されています。現在では、演奏に際 し、セリフ部分は多くの部分がカットされてしまいますが、この録音では改訂を施しながらもフルに収録。さらに、アリアの途中でもセリフを挿入させるな ど、耳のための音楽劇として聴き手が場面や登場人物の心情を想像しやすいような工夫も随所に見られます。さらに、様々な資料から、ヤーコプスは、セ リフ部分でモーツァルトが自らフォルテピアノを操り場面を盛り上げ、次のアリアへのよい橋渡しとなるような即興、あるいは自作の鍵盤音楽からの引用を 織り交ぜたのではと考え、この録音に際してもセリフ部分の何か所かで、フォルテピアノ奏者にちょっとした楽曲を演奏させ、さらにアリアの中でも通奏低 音の枠を超えたようなものを演奏させています。このような細かな工夫により、セリフとアリアのつながりにも自然な流れが生まれ、オペラの内容がよりリ アルなものとして見事によみがえっています。
歌唱陣は、バイロイトにも出演、カルダーラの世界初録音アリア集CD(マルコン指揮)でも注目を浴びたソプラノのロビン・ヨハンセン、既にバロック からロマン派のアリアまで多数のCDをリリース、2015年のザルツブルク音楽祭デビューをしたテノールのマキシミリアン・シュミットなど、今が旬の顔 ぶれがズラリ。なお、ヤーコプスはこれまでにモーツァルトの歌劇として「偽りの女庭師(HMC 902126)」、「皇帝ティートの慈悲(HMC 901923)」、 「イドメネオ(HMC 902036)」、「フィガロの結婚(HMC 901818)」、「ドン・ジョヴァンニ(CD・HMC 901964/映像・HMD 9909013[DVD], HMD 9809013[BD])」、「コジ・ファン・トゥッテ(HMC 901663)」、「魔笛(HMC 902068)」、また交響曲として「第38&41番[HMC 901958]」、「第 39&40番[HMC 901959]」と録音してきましたが、この後宮からの誘拐でいったんオペラ・プロジェクトから離れるということ。今後は、モーツァルト のレクイエムなどが予定されています。 (Ki)
HMC-902216
ヘンデル:「水上の音楽」HWV348-50 (1717)
第1組曲ヘ長調HWV348(10曲)
第2組曲ニ長調HWV349(5曲)
第3組曲ト長調HWV350(6曲)
ベルリン古楽アカデミー
ゲオルク・カールヴァイト(音楽監督)

録音:2015年11月5日
名人集団ベルリン古楽アカデミーの最新盤はヘンデルの「水上の音楽」。1717年7月17日にロンドンのテムズ河を舞台に行われた豪華絢爛な川遊び のお祭り用に、ヘンデルが書いた豪華な本作品を、ベルリン古楽アカデミーがこれまた卓越したアンサンブルで煌びやかに鳴り響かせています。 「水上の音楽」は独奏楽器(ホルン、トランペット、フルート)と合奏による合奏協奏曲の様式で書かれており、管楽器がソリスティックに活躍し、明るく 華やかな雰囲気を演出します。実際にジョージ1世は演奏にいたく感動し、約1時間のこの曲を計3回演奏させ、50人の楽士に対するギャラが150ポ ンドかかったという話まで残っており、音楽も観客も非常に盛り上がった上演だったことがうかがえます。 「水上の音楽」はヘンデルの作品としては珍しく自筆譜が残っておらず、どのような曲順で演奏されていたか長らく謎に包まれており、様々な版(レートリッ ヒ版、クリュザンダー版、ハーティ版、ハレ版など)が存在します。曲の成立を踏まえてヘ長調、ニ長調、ト長調の3つの組曲を主流として演奏されています。 ベルリン古楽アカデミーは、各人のもつ名人芸と一糸乱れぬ精緻なアンサンブル、そして鋭敏なリズム感と絶妙なバランス感覚を駆使して、「水上の音楽」 に生命感を与え作品のもつイベント性をよい一層演出し、色彩豊かな演奏を繰り広げています。 (Ki)
HMC-902218
モーツァルト:ピアノ協奏曲集
ピアノ協奏曲第12番 イ長調 KV414
ピアノ協奏曲第11番 ヘ長調 KV413
ピアノ協奏曲第13番 ハ長調 KV415
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ)
フライブルク・バロック・オーケストラ
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指))

録音:2014年11月15-17日、フライブルク・アンサンブルハウス
ザイデンホウト&FBOによるモーツァルトのピアノ協奏曲集第2弾の登場。「モーツァルトの再来」とも称されるフォルテピアノの天才ベザイデンホウト。 今回も彼のマジックは冴え渡り、耳になじんだこれらの作品でも、新鮮な驚きを与え楽しませてくれます。ひとつひとつのパッセージが実に活き活きと愛 らしい表情に満ちています。また、ピアノをささえるオーケストラも実に細やか。愉悦の極みのモーツァルトです!ここに収められた3曲はいずれも1782 年頃に作曲され、管楽器を抜いた弦四部でも伴奏できるというもの。これは、モーツァルトが当時の演奏会のありよう、さらに玄人たちが私的な場所でも 楽しめるように、と当時のウィーンの市場に対して配慮した結果。もちろんここでは管楽器も含むかたちで演奏されております。作品を純粋に聴いてもモー ツァルトの才を感じますが、モーツァルトがマーケティングにも実に長けた人物であったことにもまた感心させられます。 (Ki)
HMC-902219
ブラームス:ヴァイオイン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108
シューマン:3つのロマンス op.94
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 op.100
ディートリヒ/シューマン/ブラームス:F.A.E.ソナタ
イザベル・ファウスト(Vn/1704 年製ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」)
アレクサンドル・メルニコフ(P/ 1875 年製ベーゼンドルファー(メルニコフ所蔵))

録音:2014 年9月
快進撃がとまらないイザベル・ファウスト。次なる新譜は、こちらも充実著しい盟友、アレクサンドル・メルニコフとのコンビによるブラームス&シュー マンです。 このブラームス&シューマン(&F.A.E.ソナタ)のプログラムは、2014年6月に日本でも公演があり、大きな話題となりました。既にファウストとメルニ コフはブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番を録音しており(HMC 901981(現在廃盤)。この時の録音でも同じベーゼンドルファーが用いられまし た)、これでファウストとメルニコフはブラームスのヴァイオリン・ソナタを全曲録音したことになります。 第3番の冒頭から、ファウストの振幅の大きな歌にメルニコフもぴたりと応えた最高のアンサンブルが展開されています。ファウストが奏でる音楽は非常 にやわらかで優しく、強弱や音色の幅も非常に豊か。そんなファウストにぴたりと寄り添うようにメルニコフが奏でるベーゼンドルファーの音色も、いぶし 銀のような音色から輝かしいものまでその幅広さに驚かされます。また、強弱の幅も実に豊かで、モダンのピアノよりも劇的に感じる瞬間もあるほど。ファ ウストとメルニコフ、充実著しいアーティストたちの作品に対する愛情と思いがつまった1枚となっています。 (Ki)

HMC-902220
チャイコフスキー:交響曲第1番 「冬の日の幻想」
幻想序曲「テンペスト」op.18
パブロ・エラス=カサド(指)
セントルークスO

録音:2014年11月7日、2015年10月30-31日、DiMennaセンター、ニューヨーク
HMFレーベルでの、FBOとのメンデルスゾーン・プロジェクト、およびシューマン・プロジェクトでも高く評価されている指揮者エラス=カサド。オペ ラでの活躍もあり、世界が注目する若手の一人です。そんなエラス=カサドが現在首席指揮者を務めるセントルークス管弦楽団とのチャイコフスキーの登 場です。 セントルークス管弦楽団は1974年からの歴史をもつ室内管弦楽団。近年では、音楽監督としてノリントン(1990-94)、マッケラス(1998-2001)、 ドナルド・ラニクルズ(2001-2007)らが歴任、エラス=カサドは4代目の首席指揮者です。2011年に楽団の首席指揮者に4年の契約で就任、契約 は更新され、2017年の9月まで、その関係はつづきます。 交響曲第1番はチャイコフスキー最初期の作品。全曲を通してあらわれる民謡風旋律をエラス=カサドは熱っぽく響かせています。カップリングは、海 を舞台とした劇的な「テンペスト」。メック夫人もこの作品を聴いてチャイコフスキーを支援するようになったというこのドラマティックな作品にちりばめら れた抒情的旋律の一つ一つを、エラス=カサドはたっぷりと歌わせています。 (Ki)
HMC-902221
IL TEATRO ALLA MODA〜当世流行劇場
ヴィヴァルディ:「オリンピアーデ」からシンフォニア ハ長調 RV 725〔1.アレグロ 2.アンダンテ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調 RV 282(オリジナル版)〔1.アレグロ・ポーコ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
スコルダトゥーラ調弦されたヴァイオリンの協奏曲 ロ短調 RV 391〔1.アレグロ・マ・ノン・トロッポ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV 228〔1.アレグロ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 RV 314a〔アダージョ〕
ヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV 323〔1.アレグロ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV 322*〔1.アレグロ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
「ヴィオリーノ・イン・トロンバ」のための協奏曲 ト長調 RV 313〔1.アレグロ 2.アンダンテ 3.アレグロ〕
「ポントスのアルシルダ王妃」RV 700より第1バレエ ト短調**〔1.ラルゴ 2.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲ト短調 RV316より第3楽章ジーグ(プレスト)***
ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調「キアーラのために」RV 372a、アンダンテ
ラルゴ RV 228(ピゼンデルの版?)
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
リ・インコーニティ

録音:2014年11月
フランス古楽界の新時代の担い手、ベイエ率いるリ・インコーニティ(名もなき者たち、の意)による、非常に生き生きとしたヴィヴァルディの登場。「F.クー プラン:讃歌集(HMC 902193/ KKC 5408)」でも高い評価を得たグループとあって、注目です。 タイトルにある「IL TEATRO ALLA MODA」は、バロック時代の作曲家・音楽評論家であるベネデット・マルチェッロが1720年代終わりに出版した、 当時の音楽・オペラをめぐる様々を風刺した書籍(邦訳書が出版されており、その書名は『当世流行劇場』)。この本の中でマルチェッロは当時最大の人 気を誇っていたヴィヴァルディを攻撃しています。貴族階級に属し、正統的な作曲技法のみを重んじて作曲するマルチェッロとは対照的に、ヴァイオリンを 自ら縦横無尽に弾き、劇場主らと組んで興業の部分にまで関わるなど、いわゆる商売の部分にも積極的だったヴィヴァルディ。ヴィヴァルディのこれみよ がしなヴィルトゥオジティ、作曲技法、オペラの派手な演出などをマルチェッロは本の中でこっぴどく書きました。しかし、書物から300年ほどたった今なお、 ヴィヴァルディの音楽の新鮮さ、才気煥発さ、鮮やかなコントラストなどが私たちを楽しませてくれているのは周知の事実。ベイエ率いるリ・インコーニティ は、ヴィヴァルディの様々な作品を新たなひとつの舞台作品の物語のように仕立て、ヴィヴァルディの音楽の斬新さや多様性をあらためて私たちに感じさせ てくれます。 ベイエの魅力である喜びに溢れたようなリズム、愛に満ちた明るい音色がアンサンブル全体にゆきわたり、非常に自由闊達なヴィヴァルディが展開され ています。1パート1人で展開され、互いのバランスのとりかたや前への出方など、呼吸のほどが実に見事なアンサンブルです。
HMC-902228
メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調OP.56「スコットランド」
交響曲第4番イ長調OP.90「イタリア」
パブロ・エラス=カサド(指)
フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2015年3月スペイン、オーディトリオ・イ・セントロ・デ・コングレス、ムルシア
注目のスペイン人指揮者パブロ・エラス=カサドによるメンデルスゾーン第2弾。第1弾は、バイエルン放送響との「賛歌」(HMC902151/ KKC5407)でしたが、今回は「古楽界のベルリン・フィル」とも称されるフライブルク・バロック・オーケストラとの演奏で、「スコットランド」と「イタリア」 を収録しました。エラス=カサドは、2011年本家ベルリン・フィルにデビューした際も「スコットランド」を取り上げており、本アルバムでも力演を聴か せてくれています。 1829年にメンデルスゾーンがスコットランドへ旅行した時の印象を書いた交響曲第3番「スコットランド」は、詩的な叙情を湛えた美しい旋律が魅力で、 大変人気のある作品です。そしてメンデルスゾーンの5曲の番号付き交響曲のうち「スコットランド」とともに有名なのが交響曲第4番「イタリア」です。 1830/31年にイタリアへ旅した際に作曲に取りかかっており、明るく躍動感に満ちたリズムと魅力的な旋律はメンデルスゾーンの代名詞といってもよいで しょう。 エラス=カサドは知的な解釈とスピード感溢れる指揮が特徴です。各パート間の流れを際立たせ、各楽器のバランスの取り方が見事で、作品のすみずみま でを見渡すことのできる情報量の多さ、そしてメンデルスゾーンの品格と快活さを失わない音楽を作り上げています。 (Ki)

HMC-902230(2CD)
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲(全曲)
ヴァイオリン協奏曲第1番 変ロ長調K207
ロンド 変ロ長調K269(261a)
ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ長調 K211
ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K216 a
ロンド ハ長調 K373
ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ長調 K218
アダージョ ホ長調 K261
ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K219
【※カデンツァ/すべてアンドレアス・シュタイアー作】
イザベル・ファウスト(Vn/ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」(ガット弦使用))
イル・ジャルディーノ・アルモニコ
ジョヴァンニ・アントニーニ(指)

録音:2015年3月21-23日、2016年2月4-8日/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
イザベル・ファウストのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲、全曲での登場。管弦楽はイル・ジャルディーノ・アルモニコ、さらに、カデンツァは鍵盤楽 器奏者のアンドレアス・シュタイアーの筆によるもの、と大注目の新譜です! 近年ますます充実著しいファウスト。その音色はますます輝かしさとやわらかさを増し、音楽の深化もとどまるところを知りません。直近のシューマン・ プロジェクトでも、作品に対する既成概念を払拭するような素晴らしいシューマンのヴァイオリン協奏曲を聴かせてくれました。このモーツァルトでも、 シューマン録音と同様、愛器スリーピング・ビューティにガット弦を張って録音に臨んでいます。アレグロ楽章でのファウストならではのまっすぐな音色、 緩徐楽章でのえもいわれぬ弱音の美しさ。刻々と変化する魅力の表情。そして管弦楽とのアンサンブルの妙!ファウストの音色と、イル・ジャルディーノ・ アルモニコのとろみがありつつエッジの効いた音色が実によく合っています。弦の美しさが最高の状態でとらえられた録音も見事。すべてが想像を越えた 素晴らしさです。 ファウストは、シュタイアーがピアノ協奏曲で素晴らしいカデンツァを自作で演奏していることに注目し、シュタイアーにヴァイオリン協奏曲のカデンツァ を作ってほしいと依頼したということ。シュタイアーは最初は躊躇したものの、最後は覚悟を決めて引き受けたそう。様々な研究を重ねた上でのシュタイアー のカデンツァ、こちらも大注目です! (Ki)
HMC-902238
パッヘルベル:4月の嵐〜組曲、カノン、アリア集
音楽の楽しみ〜パルティータ第5番ハ長調
いかに儚き、ああ、いかに空しき、人の人生よ*
音楽の楽しみ〜パルティータ第2番ハ短調
4月の嵐*
音楽の楽しみ〜パルティータ第6番変ロ長調
組曲4声のパルティータト長調
我が命とその十字架*
音楽の楽しみ〜パルティータ第3番変ホ長調
音楽の楽しみ〜パルティータ第4番ホ短調
善良なヴァルター、我らの市参事会員*
音楽の楽しみ〜パルティータ第1番ヘ長調
おお、偉大なムーサの光*
カノンとジーグ
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
リ・インコーニティ
ハンス・イェルク・マンメル(T)*

録音:2015年7月アルセナル文化センター
アマンディーヌ・ベイエ率いる古楽アンサンブル、リ・インコーニティによるパッヘルベルの室内楽、アリア集。パッヘルベルといえば、本アルバムの最 終曲として収録されている「カノン」が大変有名で、世界中で親しまれています。この曲は本来3本のヴァイオリンと通奏低音による「カノンとジーグ」 が対になった作品。軽快なテンポと3声部の絡みが立体的な色彩を構築し、素晴らしい手腕で対位法、カノン進行を処理しており、まさに彼の代表作と 言える楽曲です。 パッヘルベルは現代では「癒し」の音楽の代表のような扱いですが、アイゼナハ、エルフルト、シュトゥットガルト、ニュルンベルクなど、教会・宮廷オ ルガニストとして活躍、バッハ以前のドイツの作曲家として最も重要な人物の一人です。オルガニストとしても多忙でありましたが、大変な多作家でもあり ました。オルガン作品はもちろんのこと、その他の鍵盤楽曲、室内楽、声楽曲、典礼作品など多岐に渡っています。 室内楽曲のうち最も重要な作品が、1695年ニュルンベルクへ移ってから出版された<音楽の楽しみ>。この曲集は、2つのヴァイオリンと通奏低音に よる6つの組曲からなっています。組曲はソナタと一連の舞曲からなり、その多くがフランス風様式で書かれ、特に第4、5番は壮大なシャコンヌで締めく くられており、ドイツの語法から離れていった手法がうかがえます。ベイエ&リ・インコーニティの演奏はタイトル通り音楽の楽しさを表現するような、明 るく生き生きとした演奏を聴かせてくれます。また、テノールのハンス・イェルク・マンメルを迎え、アリアが組曲の間に収録されています。パッヘルベルのアリアのほとんどは、祭典、洗礼、葬式、 新年などの特別な行事のために書かれたもので、艶やかな独唱が響き渡る作品です。 (Ki)
HMC-902239
ラインの娘〜シューベルト、シューマン、ブラームス、ワーグナー
■モルペウスの娘
ワーグナー:ライン川の河底に(女声合唱、ハープ、4つのホルン、2本のコントラバス)
シューマン:子守歌Op.78-4(女声四重唱とハープ)*
ブラームス:私は角笛を苦しみの谷で鳴らすOp.41-1(4つのホルン)
■人魚
シューマン:ロマンス第1集Op.69-5「海の女神」
シューベルト:詩篇23番「主はわが飼い主」D.706(女声とハープ)
シューマン:ロマンス第2集Op.91-6「海の中で」
■セレナーデ
ワーグナー:ジークフリート〜ジークフリートの鐘(ホルン・ソロ)
ブラームス:女声合唱のための13のカノンOp.113-5「かたい決意」
シューベルト:セレナーデD.920(メゾソプラノ、女声合唱)
■嘆きの女たち
シューベルト:私は涙に濡れてD.131b(単純な3声のカノン)
シューマン:ロマンス第1集Op.69-6「礼拝堂」
シューベルト:挽歌D.836(女声合唱、2つのホルン、ピアノ/ハープ)
ワーグナー:神々の黄昏〜葬送行進曲(4つのホルン/ジェームズ ウィルコックス編)
■もの憂い恋のうらみ
イザーク(c1450-1517):インスブルックよさらば*
ブラームス:女声合唱のための13のカノンOp.113-2「愛の神は私に過酷な姿であらわれる」
 女声合唱のための13のカノンOp.113-13「もの憂い恋のうらみ」
■ラインの娘
ワーグナー:神々の黄昏〜ラインの娘(女声合唱、2つのホルン、ハープ)*
ブラームス:2つのホルンとハープを伴う女声合唱のための4つの歌[ハープは鳴り響く/シェークスピアの歌「死と来たれ」/庭師/フィンガルの歌]
*=ヴィンセント・マナック編曲
アンサンブル・ピグマリオン
ラファエル・ピション(指)
ベルナルダ・フィンク(Ms)
エマニュエル・セイソン(Hp)
アネケ・スコット(Hrn)
ヨゼフ・ワルター(Hrn)
オリヴィエ・ピコン(Hrn)
クリス・ラーキン(Hrn)

録音:2015年7月パリ、サン=テスプリ寺院
いま最もフランス古楽界で注目されている1984年生まれのラファエル・ピション。これまでにハルモニアムンディから「バッハ:レオポルト候のための葬送音楽」 (HMC.902211)や「ラモー:カストールとポリュックス」(KKC.5492)など、既成概念を覆すようなアプローチの録音を発表し現代古楽界に衝撃を与えています。 このアルバムは彼が率いるアンサンブル・ピグマリオンと、メゾソプラノのベルナルダ・フィンク、そしてハープのエマニュエル・セイソンをメインに迎え、ライ ン川に魅了された作曲家シューベルト、シューマン、ブラームス、ワーグナーらの女声合唱を中心としたプログラムを収録しています。 スイス、ドイツ、フランス、オランダにまたがって流れるライン川は、美しい少女に魅せられた水夫を誘惑し、船を遭難させるという「伝説」や神話が残され、 数々の歴史の舞台となり、ヒューゴ、ネルバル、ハイネ、アインヒェンドルフ、ターナーなど多くの作家、画家、芸術家を魅了し続けています。ワーグナーの「ラ インの黄金」では、ラインの川底に隠された黄金を守る3人の水の乙女たちが登場します。ピションとピグマリオンはその「乙女」とともに川の流れをたどろう というプログラミングで、それぞれの曲をいくつかのカテゴリーに分け父なるラインの秘密に迫っています。珍しい女声合唱曲の数々をカウンター・テナーとして も活躍するピションならではの解釈で聴かせてくれます。 (Ki)
HMC-902242
トラキアの伝統音楽〜サンデー・モーニング・セッションズ
フランク・ルリシュ:ハムサ
S.シノプロス:ニハーヴェント・セマーイー
ルトスワフスキ:ザッハー変奏曲
オスタド・モハメアド・レザ・ロフティ:ザブリとシュスタリ
作曲者不詳(伝承曲/アラビアの歌):Visite nocturne
作曲者不詳(伝承曲):私が鳥だったら
作曲者不詳(ギリシャの結婚の歌ほか):日曜日の朝
シェミラーニ兄弟:Dast e Kyan(即興演奏)
イェルク・ヴィトマン:デジタル・エチュード(2015)
作曲者不詳(バルカンの伝承曲):ハサピコ
ロス・ダリー:カルシラマ
トラキアの伝統音楽:7/8のダンス
ジャン=ギ アン・ケラス(Vc)
ソクラティス・シノプロス(リラ)
ケイヴァン・シェミラーニ&ビヤン・シェミラーニ(ザルブ/ダフ)

録音:2015 年 9-10月
ケラスがいざなう、時空を越えた旅路。蠱惑的なリズムに乗ってケラスが奏でる古の旋律と、打楽器、リラの音色が合わさって、古の人々が行き交う喧 騒が聞こえてくるかのよう。古楽から現代まで、おそろしいまでに精確な技術でいとも簡単にその垣根を越えるケラスによる、時代と地域を大きくまたがる プロジェクトの登場。タイトルのTHRACEとは、紀元前2,3世紀に栄えた文化交流も活発なトラキアのことで、歴史的に様々な地域のことを指しますが、 本アルバムでは、ギリシア、トルコおよびブルガリアの音の原風景がとらえられています。ケラスのチェロの音色と、シノプロスが奏でるリラの音色が混然 一体となり生まれる魅惑的な旋律、シェミラーニ兄弟のパーカッションの妙技にも引き込まれる1枚。幼馴染の名打楽器奏者シェミラーニ兄弟、そして12年来の知り合いであるリラの名手、シノプロスの繰り出すリズムと音色が織りなす世界に、ケラス は自分やチェロという存在を融け込ませています。注意深く聴けば紛うことなきケラスのチェロの音色なのですが、チェロという楽器の枠を越えた世界が 広がっています。2016年6月には本アルバムのメンバーとプログラムを携え来日、聴衆を熱狂させました。ケラス自身、「ずっと取り組みたかったプロジェ クト」と語るプロジェクト。変幻自在、きわめて柔軟なケラスの音楽力にあらためて驚嘆させられる1枚です。 本CD1曲目の「ハムサ」は現代の作曲家によるもの。5拍子で書かれているのですが、西洋音楽に慣れ親しんだ耳には馴染みのないリズムに感じられ、 1曲目から聞き手は一気に別世界へと引き込まれます。アルバムのタイトルにもなっているサンデー・モーニングは、ギリシアに伝わる結婚の歌をシノプロ スがアレンジしたもの。クレタ島では、結婚を祝う音楽に、リラは欠かせないと言います。ルトスワフスキの作品は微分音が多様され、伝統音楽の音響とマッ チします。また、ヴィトマンの作品デジタル・エチュード(フランス語のdigitalは「指の」の意もある)は、ブーレーズ追悼のために書かれたもので、弓 をまったく用いず、ピツィカートやチェロ本体をたたく音のみで構成されており、シェミラーニ兄弟のパーカッションにも通じます。全体をとおしてプログラ ムを見ないで聴くと、伝統音楽なのか現代音楽なのか、区別がつかないくらいに巧みに構成された1枚。チェロとリラの音色も絶妙にマッチします。ケラ スのような名手だからこそ為し得た、文化・文明の高度な融合がここにあります。 (Ki)
HMC-902244
ラモー:歌劇「イポリートとアリシー」組曲
ベルリオーズ:幻想交響曲
ダニエル・ハーディング(指)
スウェーデンRSO

録音:2015年10月、ベルワルト・ホール(ストックホルム)
充実著しいハーディングによる注目のアルバムの登場。1975年生まれのダニエル・ハーディング。2016-17シーズンからはパリ管弦楽団の音楽監督 にも就任、ますますの充実ぶりで世界が注目しています。ここで共演しているスウェーデン放送響でも2007年から音楽監督を務めてほぼ10年、互いに 好相性なのは、イザベル・ファウストと共演したバルトークのヴァイオリン協奏曲(HMC-902146/ KKC 5384)などでも既に広く知られるところです。 ここでハーディングが取り上げたのは、バロックの大家ラモーと、ロマン派の極みのベルリオーズ。いっけん遠い存在のようですが、歌劇「イポリート とアリシー」の初演が1733年、「幻想交響曲」の初演が1830年と、主要作品の初演で考えると100年も離れていません。イポリートとアリシーは 1733年10月にラモー初のトラジェディ・リリックとして初演されましたが、この作品で、ラモーは、アリアと合唱の役割を再考し、舞曲と描写的な管弦 楽曲で、器楽の面でも革命をおこしました。いっぽうの幻想交響曲も、具体的な表現の対象をもつ標題音楽の先がけとして、固定楽想などの革新的な技 法が用いられています。ハーディングはそれぞれの作品のドラマを際立たせながら、刺激的なハーモニーやリズムなど、オーケストラを巧みに導きながら 効果的に響かせています。フランスの巨匠による重要作品の核心に迫る演奏です。 (Ki)
HMC-972019(2CD)
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ Op.87 アレクサンドル・メルニコフ(P)

録音:2008年5,12月&2009年3月
レコード芸術誌でも特選、また、一晩での全曲公演(来日公演)でも非常に話題となった、メルニコフの「ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ op.87」。発売当初はDVDが付属しておりましたが、この度、仕様変更となり、ジュエルケースに収納され、DVDは付属しないかたちでの発売となります。 ※これに伴い、HMC.902019およびKKC.5105は廃盤となります。
ショスタコーヴィチ壮年期の「24 の前奏曲とフーガ」はその巨大さ、深さ、技術的難度ゆえ、ピアニストにとって最高峰のひとつとなっています。全曲 の録音も多くはなく、いまだに初演者ニコラーエワのものが超えるものなき決定盤の地位を保っています。しかし、今回ロシアの俊英メルニコフがまさに 命をかけてチャレンジした録音は驚くべき完成度で、この世のものとは思えぬ域に達しています。この音楽的深み、さらに時折見せる暗黒の情念など30 代とは思えぬ成熟度、さらにニコラーエワにはない21 世紀的な新しさなど、どこをとっても非の打ちどころなし、ついにニコラーエワの盤を超える演奏の 出現と思えます。 (Ki)


HMM-902261
テレマン:多数の楽器のための協奏曲集
協奏曲TWV54:D3ニ長調〔トランペット3,ティンパニ,オーボエ2,弦,通奏低音〕
協奏曲TWV53:h1ロ短調(ドレスデン版)〔フルート2,カルケドン,弦,通奏低音〕
協奏曲TWV44:43変ロ長調〔オーボエ3,ヴァイオリン3,通奏低音〕
ソナタTWV44:32ヘ短調〔ヴァイオリン2,ヴィオラ2,チェロ,通奏低音〕
協奏曲TWV53:F1ヘ長調〔マンドリン,ハンマード・ダルシマー,ハープ,弦,通奏低音〕
協奏曲TWV53:d1ニ短調〔オーボエ2,バソン,弦,通奏低音〕
協奏曲TWV54:D2ニ長調〔ホルン3,ヴァイオリン,弦,通奏低音〕
アダージョ(協奏曲TWV43:G5ト長調より)〔ヴァイオリン2,ヴィオラ,チェロ,通奏低音〕
ベルリン古楽アカデミー

録音:2016年9月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
1982年創立の名門、ベルリン古楽アカデミー最新盤。テレマンの多数の楽器のために書かれた協奏曲を集めたプログラムで、各奏者が繰り広げる文 句なしの超絶技巧と愉悦の音楽を堪能できます。少し珍しい楽器も取り上げられているのもまたおもしろいところ。TWV53: h1に登場するカルケドンは、 リュートの仲間。テレマンは400もの楽曲にこのカルケドンを指定しており、通常はバス声部を担当させていますが、時にハーモニーを奏でるためにも用 いています。カルケドンには様々な種類がありますが、テレマンの楽曲の音域などから、6弦・ロングネックの「ガリツォーナ」として知られる楽器を念 頭に置いていたと考えられます。この録音では、1718(または1728)にプラハで作られた楽器のコピーを用いて、ソナタのバス声部を演奏しています。 通常のリュートよりも少し低く太めでどこか素朴な味わいのある音色、注目です。他にもマンドリンとハンマード・ダルシマーが登場する協奏曲も、どこか オリエンタルな響きのするたのしい仕上がり。ベルリン古楽アカデミーによる愉悦の極みのテレマン、注目です! (Ki)
HMM-902262
バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 BB127, Sz119
管弦楽のための協奏曲 BB123, Sz116
ハヴィエル・ペリアネス(P)
パブロ・エラス=カサド(指)
ミュンヘンPO

録音:2016年9月26日-10月1日、ガスタイク、ミュンヘン
ミュンヘン・フィルがハルモニアムンディに登場。スペインの俊英指揮者とピアニストとの競演によるバルトークです。オーケストラを率いるのはパブロ・ エラス=カサド。古楽から現代もの、さらにオペラまで幅広く活躍する俊英によるミュンヘン・フィルとの初録音、注目です! バルトークの管弦楽の協奏 曲では、各楽器をこれ以上ないくらい効果的に響かせながら、見通しのよい音楽運びをしています。ミュンヘン・フィルの面々のうまさも際立つ名演です。 ピアノ協奏曲第3番では、ファリャ(HMC 902246)でも熱い音色で世界をうならせたハヴィエル・ペリアネスがピアニストをつとめます。ペリアネス独 特の透明感のある音色で聴く第2楽章は絶品。終楽章も、充実したエネルギーと抜群のコントロールで、最後まで一気呵成に聴かせます。 (Ki)
HMM-902263
シューベル:八重奏曲 ヘ長調 op.166, D803
5つのメヌエットと5つのドイツ舞曲 D89より〔原曲:弦楽四重奏曲/オスカー・ストランスノイによる八重奏編曲版〕
 第3番 メヌエット
 第5番 メヌエット
イザベル・ファウスト(Vn/ストラディヴァリウス‘スリーピング・ビューティ’(1704))
アンネ・カタリーナ・シュライバー(Vn/製作者不明、オランダ、1700年頃)
ダヌシャ・ヴァスキエヴィチ(Va/製作者不明、ボヘミア、1860年頃)
クリスティン・フォン・デア・ゴルツ(Vc/製作者不明、ウィーン、1800年頃)
ジェームス・マンロ(Cb/G.パノルモ、ロンドン、1827)
ロレンツォ・コッポラ(Cl/11キー、B管、ウィーン、1820年頃モデル/6キー、C管、J.B.メルクライン・モデル(1810年頃)/ともにアニエス・グエルーによるコピー(2010 ))
トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト(Hrn/Courtois neveu aine, Paris, 1802)
ハヴィエル・ザフラ(FgW. Triebert, Paris, 1805)

録音:2017年 7月5-7&9日、テルデックス・スタジオ・ベルリン
クラリネット、ホルン、バスーン、弦楽四重奏、そしてコントラバス、という編成のシューベルトの八重奏曲。シューベルトの室内楽でもっとも編成が大きな作 品で、これまでにも多くの巨匠たちが録音をしてきましたが、イザベル・ファウストが、豪華共演者陣と、ピリオド楽器で録音しました!シューベルトの、音楽に 生きる喜びが込められているともいわれる「八重奏曲」。心打つ旋律、そしてシューベルトの楽器の采配の妙に感動する瞬間の連続のような作品です。そしてき わめつけは絶美の第2楽章。各奏者の旋律の受け渡しなど、シューベルトの音楽の素晴らしさ、そして素晴らしい演奏者たちが「アンサンブル」することによっ て生じる化学反応にあらためて感じ入るばかりです。シューベルトの音楽世界の旅において、これ以上の仲間はなかった、とファウストが語るメンバーによる八重 奏曲。極上の70分となっています。
弦楽奏者はすべてフライブルク・バロック・オーケストラやオーストラリア室内管のメンバー、そして管楽器もフライブルク・バロック・オーケストラでもおなじ ものコッポラ(クラリネット)とズヴァールト(ホルン)、ザフラ(バスーン)といった、ピリオド楽器の最前線で活躍する奏者たち。彼らの奏でるピリオド楽器の、 親密な音色が、作品のもつ色彩感が鮮やかによみがえらせ、ひとつひとつのパッセージが活き活きと語り出しているようです。
シューベルトの八重奏曲は、1824年3月に作曲された、シューベルトの室内楽でもっとも編成の大きな作品。クラリネットを愛したフェルディナント伯のリク エストで作曲されました。伯爵は当時弁護士の家で行われていた音楽の夕べでしばしば演奏し、そこにシューベルトも出入りしていました。伯爵は、モーツァル トやベートーヴェンの弦楽四重奏の優れた演奏者としても知られたヴァイオリン奏者、シュパンツィヒとも共演していました。ベートーヴェンの七重奏曲が当時大 評判となっていたので、それと同様の作品を、とシューベルトに依頼したといいます。シューベルトの死後20年以上経過した1853年に第4,5楽章を除いた かたちで一度出版され、1875年に全曲出版されました。弦楽四重奏「ロザムンデ」や「死と乙女」と同じ時期に作曲され、直後には「美しき水車小屋の娘」 も完成するなど、非常に充実した時期の作品となっています。当時の交響曲や弦楽四重奏曲などのスタンダードであった4楽章構成でなく、ベートーヴェンの七 重奏曲と同じ6楽章の構成をとっており、これはディヴェルティメント、つまりはどちらかというと楽しみのためという色合いが強いものとなっています。天上の美 しさの旋律に満ちた作品です。
「5つのメヌエット」は演奏機会が少ない弦楽四重奏作品。この録音のために、2つのメヌエットを八重奏版に編曲して演奏しています。編曲をしたのはアル ゼンチン系フランス人のオスカー・ストランスノイ、ファウストの友人でもあり、室内オペラやカンタータ、歌曲などの分野でも知られています。シューベルトが 書いた宝石のようなパッセージのひとつひとつを見事に八重奏用に編みなおし、この作品の魅力を私たちに気づかせてくれます。 (Ki)
HMM-902268
イェルク・ヴィトマン(b.1973):ヴィオラ協奏曲(2015年)〜アントワーヌ・タメスティに捧げる
24のデュオより〜ヴァイオリンとチェロのための(アントワーヌ・タメスティによるヴィオラとヴァイオリンまたはチェロのデュオ編曲)〜第9番 Calmo (静かに)*/第14番 Capriccio (おどけて)*/第15番 Canto (歌)*/第16番 機械仕掛けの
小バレエ (パ・ド・ドゥ)**/第12番 カノン-断章**/第5番 Frage (問い)**/第6番 スケルツァンド (ウン・ポコ・ソステヌート)**/第21番 バイエルンのワルツ*/第22番 ラメント
狩の四重奏#
アントワーヌ・タメスティ(Va / 1672 年製ストラディヴァリウス「マーラー」)
ダニエル・ハーディング(指)バイエルンRSO
マルク・ブシュコフ(Vn)*、
ブリュノ・フィリップ(Vc)**

シグナムQ〔フロリアン・ドンデレル(Vn)、アンエット・ワルター(Vn)、シャンディ・ファン・ディーク(Va)、トーマス・シューミッツ(Vc)〕#

録音:2016年3月3-4日、ミュンヘン、ヘルクレスザール(協奏曲)、2017年10月22&30日、テルデックス・スタジオ、ベルリン(デュオ、弦楽四重奏)
当代きってのヴィオラ奏者、アントワーヌ・タメスティ。難関ミュンヘン音楽コンクールで優勝、世界のトップクラスのヴィオラ奏者として活躍しているほ か、今井信子氏とヴィオラ・スペースを共宰するなど、日本でもその名は広くしられるところです。ハルモニアムンディからの第1弾リリースとなる「ベル・ カント〜ヴィオラの声」(HMM 902277/ KKC 5761)は非常に高く評価されました。マントヴァーニの2つのヴィオラのための協奏曲をタベア・ツィン マーマンとの共演で初演するなど、その活躍の場とレパートリーはとどまるところを知りません。今回は、同じくこの時代を牽引する存在の作曲家にしてク ラリネット奏者、ヴィトマンの作品集で登場。 ヴィオラ協奏曲は、タメスティに捧げられた作品。concertoという単語はラテン語で戦い、競争、あるいは論争を意味し、ヴィトマンも、このラテン語 から創造をスタート。基本的にヴィオラはオーケストラと相対する存在として扱われています。ステージ上でも、通常ソリストは指揮台の横に立ちますが、ヴィ トマンはソリストをオーケストラの中に立たせます。しかも最初はソリストが楽器の指板やあごあてを叩いたりする音から始まります(この音が非常に美し く響くことに、まず驚かされます)。次第に打楽器が加わり、対話(口論?)となり、タメスティとオーケストラの一歩もゆずらぬ駆け引きで緊張感に満ち た第1楽章、静謐な世界の中でヴィオラが美しい低音を奏でる第2楽章、第3楽章の終盤ではタメスティのシャウトを合図にクライマックスを迎えます。 超絶技巧の第4楽章、そして「アリア」と題された終楽章(第5楽章)では、ヴィオラが美しくも悲しい旋律を奏で、最後は息絶えるように永遠に下降 するかのようなグリッサンドで曲が閉じられます。★24のデュオはもともとはヴァイオリンとチェロのためのデュオですが、ここではタメスティが、ヴィオラと、ヴァイオリンまたはチェロのためにアレンジ して演奏。HMNシリーズでも登場した気鋭の奏者と共演しています。 ★狩の四重奏は、名門シグナム四重奏団による演奏です。1楽章構成で、威勢のよい掛け声に始まり、古典派の狩の音楽を思い起こさせるように始まっ たかと思わせて、すぐにそれは不協和音や特殊奏法による音色で崩壊しかけますが、また古典派風に戻る、を繰り返す楽しい楽曲です。
ヴィトマンの作風の幅広さと、タメスティの美音を堪能できる1枚です。
■=イェルク・ヴィトマン=
世界的クラリネット奏者にして、世界的作曲家、そして指揮者でもある、音楽界を牽引する存在。ヨーロッパのオーケストラで彼 の作品を取り上げていないところはないともいわれるほど、作曲家としてポピュラーな存在です。また、クラリネット奏者として数多の指揮者、オーケスト ラと共演を重ねているほか、その作品は、バレンボイム、ハーディング、ケント・ナガノ、ティーレマン、ラトル、ヤンソンスらもしばしば取り上げています。 2018年1月にはクラリネット奏者として来日があり、その技量に聴衆は驚嘆しました。
HMM-902277
ベル・カント〜ヴィオラの声
ヴュータン(1820-1881):ヴィオラ・ソナタ 変ロ長調 op.36
ドニゼッティ:歌劇『連隊の娘』よりマリーのアリア「さようなら」
ヴュータン:ヴィオラとピアノ伴奏のためのエレジー へ短調 op.30
ドニゼッティ:歌劇『ラ・ファヴォリータ』よりレオノーレのアリア「私のフェルナンド」
ジャック=フェロル・マザ(1782-1849):夢〜ドニゼッティのラ・ファヴォリータに基づくエレジー op.92
カシミール・ネイ(1801-1877):無伴奏ヴィオラのためのプレリュード第15番
ベッリーニ:歌劇『ノルマ』よりアリア「清らかな女神よ」
ヴュータン:無伴奏ヴィオラのためのカプリッチョ ハ短調op.55
アントワーヌ・タメスティ(Va/ストラディヴァリウス「マーラー」1672年製)
セドリック・ティベルギアン(P/スタインウェイ)

録音:2016年10月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
1979年生まれのヴィオラの名手、アントワーヌ・タメスティ最新盤が、HMFから初登場。「ヴィオラ=深くあたたかみのある、いぶし銀のような」といっ たイメージを越えた次元で鳴り響く美しい音色、そして心地よく効いたドライヴ、あらゆる表現を可能にする完璧なテクニックに圧倒される1枚です。ピア ノはHMF久々の登場となるティベルギアン。タメスティが描くエレガントな世界を、ほどよく引き締まった、時に甘さも薫る音色で彩ります。 本CDのプログラムは19世紀パリのコンサートホールやサロンで聴衆を魅了し続けた作品で構成されています。ヴュータンはヴァイオリンで有名ですが、 ヴィオラにも名曲を残しています。歓迎すべき新録音の登場といえるでしょう。カシミール・ネイ(本名ルイ=カシミール・エスコフィエ)はサン=サーンス、 ヨーゼフ・ヨアヒムらとも音楽的交流があった当時のヴィオラの名手。1849年頃にヴィオラのための24の前奏曲を出版。これは、ヴィオラ奏者にとって、 ヴァイオリニストにとってのパガニーニの24のカプリースのような存在の曲集。タメスティは超絶技巧のフレーズの数々を難なく、エレガントに弾きこなし ています。他にもオペラの名アリアの旋律に酔いしれ、弦楽器の美しい音色に魅了され続ける65分です。
HMM-902278
ヴィヴァルディ:チェロと通奏低音のための6つのソナタ
ソナタ第5番ホ短調 RV 40
ソナタ第1番変ロ長調 RV 47
ソナタ第3番イ短調 RV 43
ソナタ第4番変ロ長調 RV 45
ソナタ第2番ヘ長調 RV 41
ソナタ第6番変ロ長調 RV 46
ジャン=ギアン・ケラス(Vc/1690年、ミラノ(製作者不明))
ミヒャエル・ベーリンガー(Cemb、Org)
リー・サンタナ(テオルボ)
クリストフ・ダンゲル(Vc)

録音:2017年10月
音楽への真摯な姿勢に貫かれた活動を展開しているチェリスト、ジャン=ギアン・ケラス。今回は、ガット弦と、バロック・スタイル・ボウ(シャルル・リシェ) で、非常に艶っぽく、時に親密でソフトにヴィヴァルディのソナタを聴かせます。
ヴィヴァルディ、というと、まるでプルーストのマドレーヌのように、自身の幼い頃を思い出すというケラス。熱心なアマチュアピアニストだった母は、ケラ スが言葉を話し出す前から、ヴィヴァルディらの室内楽も演奏しており、ケラスがチェロをはじめた頃からこれらのヴィヴァルディ作品は自分と共にあったと いいます。「ヴィヴァルディは聴き手の手をとって、実際に味わったり、見たり、踊ったりすることのできるような世界にいざなってくれる」と語るケラス。通 奏低音も、曲や楽章によって編成を変えるなど、曲のキャラクターが際だつように演奏しています。すべての曲が完全に手の内に入っている余裕も感じられる、 らくらくとした演奏。明晰であいまいなところのない譜面の読み込みと、すべてを弾きこなす完璧なテクニックで、ヴィヴァルディ作品の光と影を描きます。
チェンバロのミヒャエル・ベーリンガーは、フライブルク・バロック・オーケストラでもチェンバロ奏者としてツアーに参加している名手。ヒレ・パールとバッ ハのソナタを録音しています。リー・サンタナはアメリカのリュート・テオルボ奏者で、フライブルク・バロック・オーケストラでも活躍したほか、ヒレ・パー ルの夫君でもあります。クリストフ・ダンゲルはコワンらに師事しており、ムローヴァ、ジョシュア・ベルらと共演もしている中堅です。 (Ki)

HMM-902291
モーツァルト:レクイエム
[ジュスマイヤー版にもとづく、ピエール=アンリ・デュトロンによる補完版(2016年)]
ゾフィー・カルトホイザー(S)
マリー=クロード・シャピュイ(A)
マキシミリアン・シュミット(T)
ヨハネス・ヴァイサー(Br)
フラブルク・バロック・オーケストラ、
RIAS室内cho
ルネ・ヤーコプス(揮)

録音:2017年7月、テルデックス・スタジオ・ベルリン(録音ピッチ:A=430Hz)
ヤーコプスがついにモーツァルトのレクイエムを録音。自身カウンターテナー歌手としてキャリアをスタートさせ、歌手として、そして指揮者として経験値と鋭い耳、そして深い知識を持つヤーコプス。70歳を迎え(1946年10月30日生まれ)、満を持しての録音・リリースとなります。冒頭から実にやわらかな音色の管弦楽にまず心奪われます。その後の声楽もそれぞれの声部がくっきりと聴こえ、美しく調和しています。独唱者陣も全体の美しいやわらかな雰囲気をそこならずに、劇的な表情をみせています。ヤーコプスの近年の充実ぶりが結晶化した演奏の登場といえるでしょう。また、注目なのが、ハルモニアムンディから久々にLPもリリースされること。LPの魅力である自然な雰囲気を最上のかたちで得るために、細心の注意をもってレコーディングも行われています。
モーツァルトのレクイエムといえば、問題になるのが版。モーツァルトの死後、ジュスマイヤーによって完成された版で演奏されることが一般的ですが、ここでヤーコプスはフランスの若手作曲家ピエール=アンリ・デュトロンの手による、ジュスマイヤー版を尊重しつつ注意深く行われた補完版を採用。この版を用いてヤーコプスは2016年11月にヨーロッパでツアーを行っており、大成功を収めました。この録音はツアーの後の2017年7月に、CDとLPヴァージョン両方のリリースを念頭においた万全のレコーディング態勢のもと、行われました。
1791年夏、モーツァルトはレクイエム作曲の匿名の依頼を受けます。実際の依頼はフランツ・フォン・ヴァルセッグ伯爵からのもので、彼の若き妻が1791年2月に亡くなったことを受けての依頼でした。匿名であったのは、伯爵はお金を払って他の人に書かせた作品を自作として発表することが多かったから。伯爵の公証人により、依頼が伝えられました。その謝礼は50ドゥカート、フィガロの結婚で受け取った額の半分で、その一部は前払いでした。モーツァルトの家計は厳しい状況が続いており、この依頼は「棚ぼた」であったともいえます。モーツァルトは、10月初旬頃からレクイエムの作曲を始めたと考えられます。しかし10月30日に控えた『魔笛』初演のためにまだ6曲ほど書かねばならず、さらにクラリネット協奏曲(K622)を作曲するなど、モーツァルトは多忙を極めていましたが、それでも依頼を完成させようとしました。
ちなみにモーツァルトは宗教音楽の作曲にあまり積極的ではなかったとする考えがあります。しかし、1788年頃からモーツァルトは例えばロイターの宗教曲「デ・プロフンディス」を演奏するわけでもなく筆写しており、当時のウィーンの宗教音楽のスタイルを学ぼうとしていました。また、1787から1790年の間にかけて、モーツァルトはミサ曲の作曲も試みており、その断片からは様式の新しい試みも見られます。またモーツァルトはヘンデルのメサイアの編曲も手掛けています。1791年にはアヴェ・ヴェルム・コルプスも作曲しており、宗教音楽への興味が低かったとは考えられません。1791年に、ウィーンのシュテファン教会の副楽長に任命され、これはいずれ楽長に就任することが約束されたということで、むしろレクイエムの依頼は経済的にも音楽的にも良いタイミングのものだったといえるでしょう。レクイエムで、モーツァルトにしては珍しくスケッチも残しており、主題の扱いや、対位法へのさらなる傾倒など、自身の新しいアイディアを試みていたということでしょう。
レクイエムを構成する典礼文のうち、モーツァルトが完成させたのは冒頭の「Introit」のみ。他の部分は声楽ラインと、通奏低音を含むオーケストラの一部のみ、あるいは音楽は書いたものの、オーケストレーションはしていない部分が残されており、ラクリモサは8小節しか書いていません。サンクトゥス以降は何も書いていません。モーツァルトが実際にどのように仕上げようとしていたかを知ることはできません。
モーツァルトが亡くなってしまったものの、借金まみれで妊娠もし困窮していた妻コンスタンツェは、とにかくレクイエムの依頼を完遂、お金を得なければなりませんでした。そこで、モーツァルトの筆跡に似せて書くことのできる人物、ということを基準に、レオポルト・アイブラー、続いてマキシミリアン・シュタートラーを選んで補完作業をさせますが、どちらも完成させることができず、最終的に当時25歳のフランツ=クサヴァー・ジュスマイヤーに白羽の矢が立ったのです。ジュスマイヤーはサリエリの弟子であり、モーツァルトの下では学んでいませんでした。『皇帝ティートの慈悲』のレチタティーヴォを書くのを手伝い、また、『魔笛』のオーケストラ・パートを筆写していたので、晩年モーツァルトの周囲で仕事をしていた人物ではありました。ジュスマイヤーはモーツァルトが書いた音楽を先の2人が補完しようとしたものに基づいてオーケストレーションをし、さらにサンクトゥス、ベネディクトゥスとアニュス・デイを新たに作曲。このスコアが、依頼人のもとに届けられ、また、我々も最もよく耳にする版となっています。
ここでのデュトロンによる補完は、モーツァルトに来た依頼を完遂した人物、ジュスマイヤーが残した版に敬意を払って行われたもので、モーツァルトが最後までレクイエムを作曲したらどのようになっていたか、を探るためのプロジェクトではありません。あくまでもジュスマイヤーの版を尊重しながら、彼が犯したオーケストレーション上の作法の間違いなどを修正し改善する、というところにあります。「未完」であり、それがジュスマイヤーというまだ当時若かった作曲家により補完されている、ということがいまなお私たちの中の不満要因として燻っている現状を、現代の若き作曲家デュトロンが解消すべく挑んだ補完となっています。残された「歴史的」版に最大の敬意を払って補完された本版の結果の判断は聴き手一人ひとりにゆだねられていますが、ヤーコプスの演奏が素晴らしいということだけは、間違いない事実だといえるでしょう。 (Ki)

=録音について=
録音技師、ルネ・メーラーが担当したこの録音では、CDとLPで異なるソースを採用しています。CDでは30のマイクを使用、テルデックス・スタジ オ内で鳴り響いている美しい音楽の、演奏者のわずかな表情の違いに至るまで再現されています。そしてLPヴァージョンでは演奏家たちの中 央に設置された2つの八の字型マイクからの信号のみを採用、いわば録音の現場で鳴り響いている音がそのまま刻まれており、きわめて自然な 姿を感じられるもの。演奏会とは異なり、オーケストラと声楽(合唱・ソリスト)は向かい合うかたちで録音に臨んでおり、適切なポジションにマイ クを設置することにより、CD、LPのどちらも最良の自然なバランスが得られています。と同時に、CDとLPではまた異なる音を体感することがで きます。両ヴァージョンでぜひともお楽しみ頂きたい演奏です。
HMM-902299
メルニコフ・プレイズ4ピアノ
シューベルト:さすらい人幻想曲【グラーフ・フォルテピアノ使用】
ショパン:12の練習曲Op.10【エラール使用】
リスト:ドン・ジョヴァンニの回想【ベーゼンドルファー使用】
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの三章【スタインウェイ使用】
アレクサンドル・メルニコフ(P)

録音:2016年10月、2017年5月、7月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
何ごとにも深いこだわりを見せるメルニコフが、ピアノの機能を最大に発揮した難曲4篇を、4種の楽器で演奏・録音することにチャレンジしました。メルニコフによれば、作曲者が意図したことはふさわしい楽器を用いなければ忠実に再現できないとのこと。そのためには、作曲者が使っていたピアノ、もしくはその時代に周囲にあったものということで4つの楽器、グラーフのフォルテピアノ、色彩豊かなエラール、深みのあるベーゼンドルファー、華麗なスタインウェイを弾き分けています。どれもメルニコフならではの個性的解釈で面白さの極みですが、ショパンの練習曲が真骨頂。意外なほど思い入れのない「別れの曲」、七色にきらめく「黒鍵」と第1曲、凄みに満ちた「革命」まで一瞬も聴き手を飽きさせません。またかつてソ連でネイガウスが、「ミスなく弾けるのはギンスブルクだけ」と言った恐るべきリストの「ドン・ジョヴァンニの回想」(オリジナル版)の凄まじい技巧は師リヒテルを彷彿させる大きさ。これも金縛りにあったように動けなくなる演奏です。さらに凄いのはストラヴィンスキー。スタインウェイがうなりをあげる効果と、やはりロシア物はさすがの説得力。ピアノがメーカーによってこんなにも異なる楽器なのかと実感させてくれます。 (Ki)
HMM-902302
ドビュッシー:前奏曲集第2集(全12曲)
交響詩「海」(作曲者編による4手版)*
アレクサンドル・メルニコフ(P)
オリガ・パーシチェンコ(P)*

録音:2016 年10月19-22日、2017年 6月6-7日/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
★一聴して驚かされるのはその響き。「海」も「前奏曲集第2集」もドビュッシーが印象主義的作風を確立した作品として名高く、茫漠とした響きで再現 されることが多いですが、ここでは明快かつ明るい音色でくっきりと輪郭線を描いています。とはいっても即物的なものではなく、たっぷり歌っているのも 特徴です。「ビーノの門」「花火」の激しい部分も決して叩かずに凄まじい効果をあげているのがさすが。ドビュッシー自身の演奏はこのようなものだった かと妄想させられます。
カップリングはドビュッシー自身がピアノ4手用に編曲した交響詩「海」。手の接近や交差、複雑なトレモロの多用など演奏は極めて難しく、これまでの 録音も2台のピアノを用いることばかりでしたが、ここでは若手女流のオリガ・パーシチェンコとエラールの銘器を連弾。1986年生まれのパーシチェン コはリュビモフ門下で、フォルテピアノ、チェンバロ、オルガン奏者として非常に注目されています。この「海」もクリアで推進力に満ち、ドビュッシーが 頭で描いていたであろう日本の浮世絵のように鮮やかでクリアな色彩に目から鱗が落ちること間違いありません。 (Ki)
HMM-902303
ドビュッシー:最後の3つのソナタ集

(1)ヴァイオリン・ソナタ ト短調(1917)

(2)英雄の子守歌−ベルギー国王アルベール1世陛下とその兵士たちをたたえて(1914)
アルバムのページ(負傷者の服のための小品)(1915)

(3)フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ ヘ長調(1915)

(4)エレジー(1915)

(5)チェロ・ソナタ ニ短調(1915)

(6)燃える炭火に照らされた夕べ」(1917)
(1)イザベル・ファウスト(Vn/ストラディヴァリウス“スリーピング・ビューティ”)
アレクサンドル・メルニコフ(P)
(2)タンギ・ド・ヴィリアンクール(P)
(3)マガリ・モニエ(フルート/1880年、ルイ・ロット、製造番号2862/調整:ベルナール・デュプラ)
アントワーヌ・タメスティ(Va/ストラディヴァリウス「マーラー」、1672年製)
グザヴィエ・ド・メストレ(ハープ/エラール社製、19世紀末のルイ16世のスタイル/調整:レ・シエクル)
(4)タンギ・ド・ヴィリアンクール(P)
(5)ジャン=ギアン・ケラス(Vc) 
 ハヴィエル・ペリアネス(P)
(6)タンギ・ド・ヴィリアンクール(P)

録音:1-5, 9-13:2016年12月、2017年12月、2018年1-2月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
6-8:2017年6月、シテ・ド・ラ・ミュジーク、パリ
ハルモニアムンディがお送りするドビュッシー没後100周年記念シリーズ、「最後のソナタ集」と題し、ファウスト、ケラス、メルニコフ、メストレ、タメスティ らが参加しているという注目盤の登場です! ドビュッシーは晩年様々な楽器のための6つのソナタを作曲しようと考えていましたが、実際にはここに収録された3作を書き上げた翌年に亡くなってし まいます。この計画の最後となったのは、ヴァイオリン・ソナタでしたが、これはドビュッシーの文字通り最後の作品となりました。冒頭でメルニコフが奏で る繊細きわまりない和音から一気に世界に引き込まれます。ファウストの演奏は、独特のミステリアスでかわいたような空気を漂わせつつも、非常にきめこ まやかな表情づけで、一音一音、休符までも聴きの逃してはならぬ、と思わせられる演奏です。
フルート、ヴィオラとハープのためのソナタについてドビュッシーは友人にあてた手紙の中で「これは私が作曲の仕方を今よりは多少知っていた頃の作品だ。 何年の前のドビュッシー、そう、‘夜想曲’ の頃のドビュッシーのようだ」と語っています。「ビリティスの歌」や「六つの古代墓碑銘」と、古のフランスのク ラヴサン音楽の典雅さが融合したようで、独特の魅力にあふれた本作を、最高のメンバーで聴けます。マガリ・モニエは2003年よりフランス放送フィルハー モニーOの首席フルート奏者を務め、2004年のミュンヘン国際音楽コンクールで優勝した名手。ハルモニア・ムンディでは初登場となります。彼女 が演奏しているルイ・ロット(ルイ・ロット/1855年に工房を立ち上げ1951年まで存在していたオールド・フルートの代表格)のフルートは、ジョゼフ・ ランパル(1895-1983)そしてその息子ジャン=ピエール・ランパル(1922-2002)らが演奏していたもの、また、ハープはレ・シエクルも用いている楽 器で、まさにドビュッシーの頃の音色で楽しむことができるという意味でも貴重な演奏となっております。
最後の3つのソナタの中では最初に完成したチェロ・ソナタ。ここではケラスと、スペインのペリアネスという顔合わせによる演奏でお聴き頂きます。作 品の世界に一歩踏み込んだ、繊細な色彩の描き分けが見事。より細やかな表情づけがなされており、絶妙な間合いの中にも「あそび」が感じられる演奏となっ ております。なお、ケラスは2008年にアレクサンドル・タローとドビュッシーのチェロ・ソナタを録音しておりますが、そちらはシャープさが際だった演奏で、 10年の時を経ての変化にも感じ入る演奏となっております。
ピアノ独奏作品もすべて晩年のもの。奏でるのはタンギ・ド・ヴィリアンクール。フランスでは若くして名手としてソロに室内楽にバリバリと活躍、リスト のような超絶技巧はもとより、古典から現代ものまで完璧に弾きこなすテクニックは圧巻です。 ドビュッシーの晩年の作品世界の多様性に、名手たちのきめこまかな演奏によってあらためて感じ入る1枚となっております。 (Ki)
HMM-902258
マーラー:交響曲第9番 ニ長調 ダニエル・ハーディング(指)
スウェーデンRSO

録音:2016年9月8-10日、ベルワルトホール(ストックホルム、スウェーデン)
充実著しいハーディングによる、マーラー9番の登場!1975年生まれのダニエル・ハーディング。2007年からスウェーデン放送交響楽団の音楽監督 を務めてほぼ10年、ベルリオーズの幻想交響曲(HMC.902244/ KKC.5669)などでもその音楽で世界を圧倒しましてきました。2016-17シーズン からはパリ管弦楽団の音楽監督にも就任、ますますの充実ぶりで世界が注目しています。 マーラーが自らの手で完成させた最後の交響曲である第9番。これまでにも名演ひしめく大作ですが、ハーディングは持ち前の見通しのよい音楽をここ でも落ち着いて展開。作品に込められている、語り尽くされた壮大な物語におぼれることなく、マーラーが織り込んだ様々な細かな要素を効果的に響かせ ています。ひたすら長い道のりを歩むかのような終楽章も、最後まで一音も迷いなく自然に音楽が進んでいくようで、聴き手を引きつけて離しません。オー ケストラとハーディングがまさに一体となって展開するマーラー、大注目盤の登場です! (Ki)
HMM-902331
C.P.E.バッハ:チェロ協奏曲集
チェロ協奏曲 イ短調 H.432 (Wq 170)
交響曲ト長調 H.648 (Wq 173)
チェロ協奏曲 イ長調 H.439 (Wq 172)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
リッカルド・ミナージ(指)
アンサンブル・レゾナンツ

録音:2017年6月27-29日、聖ニコライ教会、パリー・オーディオ・ハンブルク
ケラスによる、この上なくエレガントなC.P.E.バッハの登場。音楽への真摯な姿勢に貫かれた活動を展開しているチェリスト、ジャン=ギアン・ケラス。 明晰であいまいなところのない譜面の読み込みに裏打ちされたその音楽は、ますます冴えわたる精度と透明度を増し、ケラスがさらなる高みへと登ってい ることを感じさせます。共演は、アンサンブル・レゾナンツ。過去の偉大な作品から現代音楽まで、切れのある解釈で聴き手を魅了する18人の名手よる 弦楽アンサンブルで、まさにケラスと絶好の相性の良さといえるでしょう。ケラスは2010-13年、アーティスト・イン・レジデンスを務めています(指揮 のミナージは、2018-20年のアーティスト・イン・レジデンス)。
ここに収録された作品は、C.P.E.バッハのベルリン時代、もっとも充実していた頃に書かれたもの。特にチェロ協奏曲は、ソロ楽器は名手のために書か れた華々しいヴィルトゥオジティで、ソロ楽器とオーケストラが対等のものとして扱われ、両者間の対話も魅力です。イ短調の協奏曲は、第1楽章冒頭せ きたてられたようなオーケストラの前奏の後、ケラスの奏でるチェロの入りがなんとも繊細かつエレガントで、きわめて印象的。その後のオーケストラとソ ロの美しいかけあいにぐいぐいと引き込まれます。終盤のカデンツァはケラスの真骨頂で、現代音楽かと思うような瞬間と超絶技巧にくぎ付けです。イ長 調の協奏曲はC.P.E.バッハの作品の中でも名曲と名高いものですが、終楽章のジーグに倣った急速な楽章は、アンサンブル・レゾナンツの巧さとケラス の超絶技巧を堪能できます。2曲の協奏曲の間にはさまれた交響曲は、まさに疾風怒涛のきわみ。モーツァルト以前の交響曲はピリオド楽器で、というの がなんとなく定着している中、モダン楽器によるこのなんとも鮮やかな演奏は、C.P.E.バッハの音楽そのものの楽しさをあらためて存分に味わうことので きるものとなっています。
HMM-902355
モンテヴェルディ:倫理的・宗教的な森
主は言われたU(Dixit DominusU)
わたしは神を賛美するU(ConfiteborU)
この神の聖なる信者よ(Iste confessorT)
おお汝目の見えぬものよ(O ciechi, ciechi)
すべての町よ喜び騒げ(Jubilet tota civitas)
サルヴェ・レジーナ(Salve Regina)
主よ賛美せよT(Laudate pueri DominumT)
主を賛美せよV(Laudate Dominum terzo)
彼らが大きな声で叫ぶ前に(Ut queant laxis)
十字架にかけられ(Crucifixus)
そして復活し(Et resurrexit)
彼は再び来るだろう(Et iterum)
おお汝聞く者よ(Voi ch’ascoltate)
サルヴェ・レジーナ(Salve Regina)
マニフィカトT
パブロ・エラス=カサド(指)
バルタザール=ノイマンcho&アンサンブル

録音:2017年5月9,11,13日、ムルシア(スペイン)
指揮者パブロ・エラス=カサドによるモンテヴェルディの登場。アンサンブルは、トーマス・ヘンゲルブロックが創立した、バロック期の建築家バルタザー ル・ノイマン(1687-1753)の名を冠したバルタザール=ノイマン合唱団&アンサンブル。モンテヴェルディの「倫理的、宗教的な森」から、選りすぐり の楽曲を収録していくプロジェクトの第1弾です!
モンテヴェルディは、1582年から1619年にかけて、10を下回らない数の楽譜(マドリガーレ、カンツォネッタ、『音楽の諧謔』、さらに「聖母マリア の夕べの祈り」など)を出版しました。しかし、1619年以降は、聖マルコ大聖堂やイタリアの宮廷のために膨大な数の作品を作曲していましたが、マドリガー レ集第8巻が出版される1638年まで、出版された楽譜はありません(膨大な数の作品が失われたと考えられています)。そして『倫理的、宗教的な森』 が出版されたのは1640年のことでした。モンテヴェルディのパトロンであったヴィンチェンツォ1世・ゴンザーガ(1562-1612)の娘、エレオノーラ・ゴ ンザーガにささげられています。当時、作曲家が楽譜を出版するためには、10ほどのパート譜(9部は声楽と器楽奏者のため、1部は通奏低音のため)、 さらに多様なスタイルの作品(40ほど)が収録されており、さらにその作品のいくつかはかなり大規模なものであることが要求されました。モンテヴェルディ は、この『倫理的、宗教的な森』に、彼の芸術の様々な側面を盛り込みました。古いスタイルのもの、新しいスタイルのもの、声楽から器楽曲、さらに 複合唱のための作品までをも盛り込みました。独唱または重唱+通奏低音のモテットも多く含まれ、これらは後のオペラの素地となっています。また、一 年を通しての礼拝の行事をまかなえるだけの宗教音楽も含まれています。第1部は5つのマドリガーレ、第2部はミサ、第3部は晩祷のための音楽、そ して第4部には「アリアンナの嘆き」を宗教曲にパロディした「マドンナの嘆き」をはじめとする4つのソロのモテット、という大きな4つの部分で構成 される曲集から、エラス=カサドがとびきりの楽曲を選り抜いて構成したプログラム、注目です。 (Ki)
HMM-902360
モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ集 vol.1
ソナタ ニ長調 K.306
ソナタ ホ短調 K.304
ソナタ イ長調 K.526
イザベル・ファウスト(Vn:1704年製ストラディヴァリウス‘スリーピング・ビューティ’)
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ:クリストフ・ケルン、2014年製/1795年製アントン・ヴァルター(ウィーン)・モデル、メルニコフ・コレクション)

録音:2017年8月
ファウストとメルニコフによる、注目のモーツァルト・シリーズ第 1 弾の登場。どの作品も、キャラクターの描き分けが実に鮮やか。モーツァルトのソナタ・ シリーズは、東京・王子ホールでも2017年10月に公演があり、その細やかなアンサンブルで絶賛されました。 今回は、1778年11月にパリで出版されたK.306と304、そしてドン・ジョヴァンニ作曲中に書かれたモーツァルトの最後のヴァイオリン・ソナタ K.526(1787年完成)という組み合わせです。 ニ長調 K.306は、このソナタが「ピアノとヴァイオリンのための」と正式には記されていることに納得の、ピアノが主となる部分が多い作品ですが、ファ ウストもメルニコフも絶妙なバランスを保ちながら対等に演奏しており、作品のもつエネルギーが存分に引き出されています。 ホ短調 K.304の有名な冒頭の、ファウストのすすり泣くような音色、第2楽章のメルニコフのソロなどは思わず涙のせつない美しさです。 イ長調のK.526は、モーツァルトの最後のヴァイオリン・ソナタ。輝かしい推進力に富む両端楽章にはさまれた、短調のかげりの濃い緩徐楽章は、少年 時代に親しかった友人アーベルの訃報に心を動かされて作曲されたと考えられています。バッハを思わせるような厳格な書法も用いられている充実作です。 ファウストのヴァイオリンの音色の変幻自在な美しさと精確なテクニックはもちろんのこと、メルニコフの奏でるフォルテピアノのおそろしいまでの表情豊か さ、そして二人の演奏のすべてを見事にとらえた優秀録音にも圧倒されるモーツァルトです (Ki)
HMM-902371
ハイドン:ピアノ・ソナタ集
ソナタ Hob.XVI:49 変ホ長調
ソナタ Hob.XVI:50 ハ長調
ソナタ Hob.XVI:32 ロ短調
ソナタ Hob.XVI:40 ト長調
ポール・ルイス(P)

録音:2017年 4月15日、8月20-22日、テルデックス・スタジオ・ベルリン
イギリスの名ピアニスト、ポール・ルイスによるハイドンのピアノ・ソナタ集の登場。ポール・ルイスは、2005年から07年にかけて、ベートーヴェン のピアノ・ソナタ集全集を録音、どれもくっきりと何の混じりけもない音楽で、ベートーヴェンの真髄を気負うことなく私たちに示してくれました。躍動す るリズム、清冽なタッチ、絶妙な間とセンス、優雅さと諧謔様々な表情、そして集中力が要求されるハイドンのソナタは、ポール・ルイスにまさにうってつ けの存在といえるでしょう。2017年11月には来日公演でHBBプロジェクトvol.1として、ハイドン・ブラームス・ベートーヴェンのピアノ作品を演奏(2018 年11月、HBBプロジェクトのVol.2とVol.3の来日公演が予定されております)。ハイドンの作品もあざやかに響かせ、絶賛されました。魔法にかかっ たように全ての音符が活き活きと語り出し、こんなにも豊かな表情がかくされているのかという驚きと発見に満ちたポール・ルイスによるハイドン、注目です! (Ki)

HMM-905280
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」 フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
レ・シエクル、アンサンブル・エデス

録音:2016年/フィルハーモニー・ド・パリ、シテ・ド・ラ・ミュジーク・ド・ソワソン、コンピエーニュ帝国劇場、セナール劇場、アミアン・カルチャーセンター、ライスハレ(ハンブルク)、スネイプ・モルティングス・コンサートホール(オールドバラ)(すべてライヴ)
「ダフニスとクロエ」は「春の祭典」の初演に先立つこと1年前の1912年6月8日に、同じモントゥーの指揮によりシャトレ座で初演されました。ロシア・ バレエ団からの依頼でしたが、バレエ的なリズムよりも旋律を重視しているとディアギレフのお眼鏡にかないませんでした。しかしラヴェル自身が「舞踏交 響曲」と称したように、オーケストラの性能を発揮できる好個の楽曲として人気コンサート曲となっています。
とはいえ時代楽器による録音は初めて。初演指揮者のモントゥーも1959年にLSOと録音しましたが、それをさらに純化させた演奏が出現しました。 ロトは時代楽器を用いるだけでなく、この作品の出版譜に散見される誤植を正すことも義務と考えました。さらに合唱を注目の実力派アンサンブル・エデ スが担うだけでなく、ラヴェルが詳細に指示した通り、舞台の両袖を活用して遠くから近づいてくる効果をはじめて録音で発揮させました。ラヴェルがオー ディオ的発想をこの時代に持っていたことを証明してくれます。全体としてこの曲の持つアルカイックな雰囲気が強調され、古代とも現代ともつかぬ夢の世 界を作り上げています。
今回もブックレットに弦楽器以外すべての使用楽器と制作年が明記され、貴重な資料となっています。ロトの演奏はますます大きくなり才気煥発。歴史 的な意義はもちろんながら、切れの良いリズム感、推進力など驚くほど魅力的な演奏を繰り広げています。
*今回からロト&レ・シエクルはActes Sudからハルモニア・ムンディの扱いになります。 (Ki)
HMM-905281
ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」(全12曲)
「シェエラザード」序曲*
クープランの墓#
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
レ・シエクル

録音:2016年10月31日フィルハーモニー・ド・パリ、11月2日ロンドン、サウスバンク・センター、11 月 4 日シテ・ド・ラ・ミュジーク・ド・ソワソン、2017年5月20日、9月9、17日フィルハーモニー・ド・パリ*
8 月13 日ブローニュ=ビヤンクール、ラ・セーヌ#
今回選ばれた3篇のうち、「マ・メール・ロワ」はピアノ連弾曲、「クープランの墓」はピアノ独奏曲として書かれ人気があり、さらに初期の「シェエラザー ド」序曲も連弾版がありますが、いずれもラヴェルが後に腕によりをかけてオーケストレーションして再創造しました。しかし流れ作業ではなく、「マ・メー ル・ロワ」は前奏曲、「糸車の踊り」と5つの間奏曲を新たに書き足し、規模を倍にしました。反対に「クープランの墓」は、ピアノ的な構造のフーガとトッ カータをはずして4曲にしています。どちらもラヴェルとしては小さな編成ですが、彼の天才的管弦楽法を駆使した精巧さで、極彩色の音響世界を創り上 げています。それを初演当時楽器の音色で聴くと、かえって今よりもすっきりとした新鮮な美しさに魅了されます。「シェエラザード」序曲はラヴェルの作品中ではあまり演奏されませんが、これもものものしいエキゾチシズムとは異なる清潔な響きとなり、印象一新。 実は「ダフニスとクロエ」や「ボレロ」と直接つながる世界であることを認識させてくれます。
今回もブックレットに弦楽器以外すべての使用楽器と制作年が明記され、貴重な資料となっています。ロトの演奏はますます精緻になり才気煥発。歴史 的な意義はもちろんながら、切れの良いリズムとスペード感など驚くほど魅力的な演奏を繰り広げています。 (Ki)
HMM-905291
(1CD+DVD)
ロト&レ・シエクル/「牧神の午後への前奏曲」
【CD】
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
バレエ音楽「遊戯」
夜想曲*

【ボーナスDVD】
ドビュッシー:民謡の主題によるスコットランド行進曲
バレエ音楽「遊戯」
夜想曲(全3曲)
【CD】
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
レ・シエクル、
レ・クリ・ド・パリ*
録音:2018 年1月/フィルハーモニー・ド・パリ

【DVD[NTSC]】
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
レ・シエクル
収録:2018年6月 第67回グラナダ国際音楽と舞踊祭。カール五世宮殿(アルハンブラ)。
今回選ばれた3篇のうち、「牧神の午後への前奏曲」と「遊戯」はニジンスキーの振付でディアギレフのロシア・バレエ団により初演されたもので、ロトの「ペ トルーシュカ」「春の祭典」「ダフニスとクロエ」の系譜上の作品となっています。また「夜想曲」はバレエ作品ではありませんが、初期の「牧神」と後期 の「遊戯」の中間に位置するものとして、作風の変遷を実感させてくれるようになっています。
「牧神の午後への前奏曲」は、ピリオド楽器による録音もありますが、ロトとレ・シエクルは格が違います。エラールのハープの繊細な音色、ノンヴィブラー トのフルートの不思議な響きいずれも超新鮮。それでありながら潤いと香りにも欠けていません。
「夜想曲」の「雲」は、ノンヴィブラート奏法でどこか雅楽のような響きを感じさせます。また「祭」は驚くほど強烈で大きな演奏で過去の巨匠の解釈 を彷彿させます。そしてレ・クリ・ド・パリの女声合唱が入る「シレーヌ」の、この世のものとは思えぬ世界こそドビュッシーが思い描いていた音と目から 鱗が落ちます。
ドビュッシー晩年の「遊戯」は1913年にパリで初演され物議を醸しましたが、2週間後に同じ団体がストラヴィンスキーの「春の祭典」を初演、一大スキャ ンダルとなったため不遇な扱いを受けてきました。ドビュッシー後期の前衛的で実験的な手法が難解と思われがちですが、ロトとレ・シエクルは、この作 品が実はとんでもないエロ音楽であることを認識させてくれます。
今回もブックレットに弦楽器以外すべての使用楽器と制作年が明記され、貴重な資料となっています。ロトの演奏はますます精緻になり才気煥発。歴史 的な意義はもちろんながら、切れの良いリズムとスピード感など驚くほど魅力的な演奏を繰り広げています。 (Ki)
HMM-905285
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調 フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
ケルン・ギュルツェニヒO

録音:2017年2月20-22日/シュトールベルク街スタジオ(ケルン)
ロトがついにマーラーの5番に挑戦しました。オーケストラは手兵レ・シエクルではなく、2015年以来音楽監督を務めるケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団。 創立190年を誇る同団体は、1904年にマーラー自身の指揮で交響曲第5番の世界初演を行ったという、これ以上考えられない特別なオーケストラです。
ロトの解釈は基本的にレ・シエクルを振る際と共通していますが、テンポも王道、ヴィブラート控え目、金管もまろやかに響かせるなど才気煥発ぶりが 光ります。アダージェットは押えた感情ながらワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の「イゾルデの愛の死」ような陶酔感で静かに盛り上がり、夢のよう な時を味わせてくれます。フィナーレの統率力ときびきびした推進力もロトならではで、もっと聴いていたくなる魅力満点です。
2017年のセッション録音で、強奏部でも豊かに響く録音も特筆もの。時代楽器演奏でないことを残念に思う向きもあるかもしれませんが、今回はドイ ツのギュルツェニヒ管で大正解。さらにレ・シエクルで培った「初演当時の響き」をここでも追求、今や少なくなった113年前の古き良きドイツのオーケ ストラのサウンドを蘇えらせています。マーラー好きでも目から鱗の落ちる、超注目盤の登場です! (Ki)
HMM-902337
A Portuguesa〜ポルトガル風の〜イベリアの協奏曲とソナタ集
コルベット(1680-1748):協奏曲「ポルトガルの」op.VIII-7 変ロ長調(協奏曲集「Le bizzarie universali」より)
デ・セイシャス(1704-1742):協奏曲 ト長調
スカルラッティ:ソナタ ト短調 K8(アレグロ)、ト長調 K13(プレスト)、ロ短調 K173(アレグロ)
エイヴィソン(1709-1770):合奏協奏曲第5番ニ短調(D.スカルラッティのハープシコードのための2巻の作品集による12の協奏曲集より)
ボッケリーニ(シュタイアー編):小弦楽五重奏曲「マドリードの通りの夜の音楽」(マドリードの夜警隊の音楽)op.30-6
アンドレアス・シュタイアー(Cemb、指)
オルケストラ・バッローカ・カーザ・ダ・ムジカ

録音:2018年2月、テルデックス・スタジオ、ベルリン
シュタイアーと行く、18世紀スペイン・ポルトガルの世界。A Portuguesa〜ポルトガル風の〜イベリアの協奏曲とソナタ集と題した、18世紀のイベリ ア半島にまつわる音楽集の登場です。ヴィルトゥオーゾ的要素もあるセイシャスの充実の協奏曲や、ボッケリーニがマドリードの喧騒を描いた作品から、イ ベリア半島の音楽の需要が高かった英国で生まれた、イベリア半島に由来する音楽までを網羅した非常に凝ったプログラム。D.スカルラッティのソナタで は相変わらずの霊感に満ち冴えわたるソロを堪能できます。
オルケストラ・バッローカ・カーザ・ダ・ムジカは2006年にローレンス・カミングスによって結成されたアンサンブル。2015年にシュアイターとブラン デンブルク協奏曲で共演しています。当盤ではシュタイアーが指揮をしており、オーケストラのために編曲も行っています。18世紀イベリア半島の音楽が活 き活きと響きます。
CD冒頭のコルベットは、イギリスの作曲家・ヴァイオリン奏者。1715-26年、イタリアに暮らしました。協奏曲集「Le bizzarie universali」を2冊(1728 年および1742年に)出版しています。文字通りだと「世界の珍しい物(人)」といった意味で、ポルトガルの他にも、ミラノ、シチリア、スペイン、といっ た様々な土地のスタイルを思わせる作品が入っています。ここでは「ポルトガルの」(といってもイタリア(コレッリ)のスタイルを思わせる部分が濃厚ですが) を題された曲を収録。第2楽章のノスタルジックさはポルトガルを思わせます。
セイシャス(1704-1742)は、18世紀ポルトガル音楽界の中心人物で、リスボンで同時期に活動していたドメニコ・スカルラッティから称賛されていた 存在。14歳でコインブラ大聖堂のオルガニスト、そして16歳からはリスボンで宮廷礼拝堂オルガニストに就任、以降亡くなるまでこの職を務めたことは、 彼が非常に早熟の天才であったことの表れといえるでしょう。1755年のリスボンの大地震でその自筆譜の大部分が失われたと考えられ、また、筆写譜も ほとんど残されていませんが、宗教作品、また、鍵盤のためのソナタなどは700以上書いたとされています。協奏曲は、コインブラ大学の図書館で現在保 管されているト長調(1742年頃)のものと、リスボンの図書館に保管されているイ長調(手稿譜、1730年頃?)のふたつがセイシャスのものと確認され ています。どちらも3楽章形式で、終楽章が活き活きとした舞曲になっているのが特徴で、ト短調のものの終楽章はイベリアの舞曲、イ長調の終楽章はイ タリア風のジーグの舞曲となっています。疾風怒涛様式をも感じさせる、充実した作品で、ヴィルトゥオーゾ性の強いもの。シュタイアーの切れ味抜群のソ ロも圧巻です。
18世紀の英国では、D.スカルラッティの音楽は、プロの音楽家にも、聴衆にも非常に人気がありました。英国の作曲家で、英国で初めての音楽批評 集を出版した人物でもあるチャールズ・エイヴィソンは、D.スカルラッティのソナタを合奏協奏曲に編曲、ドメニコのソナタの世界をさらにふくらませています。
ボッケリーニはイタリアの作曲家ですが、当時はチェロの大変な名手としても活躍しました。26歳でスペインの宮廷に招かれ、マドリードで後半生を送 りました。「夜の音楽」はもともと2つのヴァイオリン、ひとつのヴィオラとふたつのチェロのために書かれたもので、マドリードの町の、教会の鐘から食堂 で輪になって歌い踊る人々まで、躍動感ある生活を描写した音楽です。シュタイアーによる編曲を、オルケストラ・バッローカ・カーザ・ダ・ムジカの面々 による情景豊かな演奏でお楽しみいただけます。 (Ki)
HMM-902366
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調 ダニエル・ハーディング(指)
スウェーデンRSO

録音:2017年9月21-23日、ベルワルトホール(ストックホルム、スウェーデン)
第1楽章の冒頭から、荘重ながらやわらかさを併せ持つ音 色が美しくクリアに響き、目と耳が洗われるようです。第1弾の第9番(KKC 5883/ HMM 902258)と同様、大仰に構えたところは全く感じさせず、 楽譜の指示や細かなデュナーミクの指示に忠実に、響きのバランスが最高に美しいマーラーです。アダージェットもひたひたとした集中の、崇高な世界。 颯爽とした晴れやかさのうちにフィナーレが閉じられ、またひとつ新しい時代のマーラーの名演が生まれたことを実感する1枚です。 (Ki)

HMM-902325
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
序曲「フィンガルの洞窟
交響曲第5番 「宗教改革」
イザベル・ファウスト(Vnン/ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」1704年製)
パブロ・エラス=カサド(指)
フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2017年3月19-22日、バルセロナオーディトリウム第1ホール、Paul Casals
イザベル・ファウストが、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を録音しました!指揮は1977年生まれの今ヨーロッパで大活躍の指揮者エラス=カサ ド、管弦楽は「ピリオド・オーケストラのベルリン・フィル」とも称されるフライブルク・バロック・オーケストラという最高の布陣です。情熱と霊感に満 ちた第1楽章、天上を思わせる美しさの第2楽章、華麗の極みの超絶技巧の第3楽章からなる、クラシック屈指の人気曲である本作。ファウストの輝か しくまっすぐ聴き手の心に差し込んでくる奇跡の音色と、音楽に対する真摯な姿勢が、語り尽くされてきた名作にまたひとつ新鮮な感動をもたらしてくれま した。「天上の天使たちを喜ばせる協奏曲を」というメンデルスゾーンの意志がここにすべて集約されています。 ヴァイオリン協奏曲は、1844年に完成、その後も磨きをかけ、翌45年、メンデルスゾーンの盟友にして本作にも多大なアドヴァイスをした、ライプツィヒ・ ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスター、フェルディナント・ダーフィトによってライプツィヒで初演されました。初演時から大成功をおさめた本作 は、続くヨーロッパ各地の初演も名手が手がけています。1845年のドレスデン初演は当時15歳のヨーゼフ・ヨアヒム、1846年ベルリン初演はベルギー のユベール・レオナール(フランクのピアノ四重奏曲第1番を献呈された人物で、フォーレのヴァイオリン・ソナタ誕生時にも重要な役割を果たした)でした。 彼らが演奏しておそらく書き込みもされていたであろう実際の譜面はもう残されていませんが、それでも様々な資料が出版されており、それらを検証してい くと、19世紀と現代とでは演奏スタイルに異なる部分があると考えられます。たとえば開放弦の多用。ポルタメントの多用。ボウイングのスタイルも現代 とは異なっていました。そして、ヴィブラートは、継続的にではなく、要所要所で装飾的に用いられていたと考えられます。ファウストももちろんこれらの 資料につぶさにあたったうえでこの録音に臨んでいますが、ここに繰り広げられている演奏が呼び起こす実に新鮮な感動は、歴史的演奏や慣習、すべてを 越えた域にあるといえるでしょう。
また、2017年は、マルティン・ルターの宗教改革(1517)の500年記念にあたります。ここに収録された交響曲「宗教改革」は、ルターのアウク スブルクの信仰告白から300年にあたる1830年に完成されました。序奏で管楽器が奏でる「ドレスデン・アーメン」がなんとも痛切に響き、全体的に 非常に引き締まった音づくり。管楽器が奏でるコラールも荘重になりすぎず、終楽章も鮮やかなデュナーミクで颯爽とかけぬけるような演奏となっています。 同じく1830年に作曲された「フィンガルの洞窟」も、メンデルスゾーンがスコットランドに旅した時に感動した光景が鮮やかに眼の前に浮かぶよう。メン デルスゾーンの才能にあらためて感動し、エラス=カサドとフライブルク・バロック・オーケストラの力量にも圧倒される内容です。 (Ki)
HMM-902322
BWV… or not?〜偽物のバッハ
バッハ:ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのための組曲 BWV 1025 イ長調(S.L.ヴァイスのリュート組曲 SC47の編曲版)
ピゼンデル(1687-1755):ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ短調 BWV 1024(バッハ作とされていたが、現在はピゼンデル作とされている)
バッハ または/と C.P.E.バッハ:フルート,ヴァイオリン,通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV 1038(H.590.5)
C.P.E.バッハ:2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ短調 BWV 1036(Wq145/ H.569の初期版)
ヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルク(1727-1756):2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ長調 BWV 1037(DuerG 13)
バッハ:フーガ ト短調 BWV 1026
 フルート,ヴァイオリンと通奏低音のための“王の主題に基づく”ソナタ〜「音楽の捧げもの」BWV 1079より
リ・インコーニティ〔アマンディーヌ・ベイエ(ソロVn)、アルバ・ロカ(Vn)、マヌエル・グラナティエーロ(Fl)、バルドメロ・バルシエラ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、フランチェスコ・ロマーノ(バロック・リュート)、アンナ・フォンターナ(Cemb)〕

録音:2017年2月9-13日、ローマ
バロック・ヴァイオリンに新しい風を送り続けるアマンディーヌ・ベイエ&リ・インコーニティによる最新録音。「BWV … or not?」とちょっと気になるタイト ルでの登場です。J.S.バッハの作品目録では「偽作」に分類される、J.S.バッハが作曲したとされていた、あるいは、編曲した作品を集めたもの。バッハ以外の人 のテーマに基づいてバッハ自身が作曲した作品も最後に収録されています。 この「偽作」が生まれた要因は、J.S.バッハが他の人の作品を筆写した楽譜を後世の人がバッハ作品として出版した。あるいはJ.S.バッハは次男のC.P.E.バッ ハは、お互いの作品をよく筆写したため、時にJ.S.バッハの作品がC.P.E.バッハの作品として出版されることもあった、など、様々な要因によるもの。「偽作」と 言われるだけで、なんとなく色眼鏡でその作品を見てしまい、バッハの作品ではないとして片付けてしまいがちですが、ベイエ率いるリ・インコーニティの面々 は、そのしなやかなリズム感あふれるアンサンブルと音色で、それぞれの作品のもつ、実に豊かな創意で聴き手をたのしませてくれます。 (Ki)
HMM-902314
ハイドン:エステルハージのための協奏曲集
(1)ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 Hob.VIIa:1
(2)チェロ協奏曲 ハ長調 Hob.VIIb:1
(3)ヴァイオリン協奏曲 ト長調 Hob.VIIa:4
リ・インコーニティ
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
マルコ・チェッカート(Vc)

録音:2018年1月、テアトル・オーディトリウム(ポワチエ)
バロック・ヴァイオリン界を牽引するアマンディーヌ・ベイエと、彼女が創設したアンサンブル、リ・インコーニティによる、愉悦のきわみのハイドンの 協奏曲集。いずれも1760年代の作で、1761年にハイドンがエステルハージに仕えて間もない頃のもの。当時ハイドンは、自身がいかにすぐれた作曲家 であり、器楽奏者であるか、ということを折に触れアピールしていました。じっさい、ここにおさめられたような協奏曲をはじめ、この頃の作品は、ギャラ ント様式から、後に古典様式と呼ばれるものになる新しい音楽的対話を新しく構築した一人の素晴らしいアーティストの軌跡を示しています。 リ・インコーニティとしては比較的大きな編成(ですが、エステルハージの素晴らしいオーケストラと同様の規模)をとるこれらの作品ですが、ここでも彼 女たちの親密なアンサンブルは健在。あらゆる瞬間瞬間を、奏者たちが心から楽しんでいて、休符にまで彼らの幸せな笑顔が感じられるような演奏です。 (Ki)
HMM-902310
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
『聖セバスティアンの殉教(ガブリエーレ・ダヌンツィオの5 幕の神秘劇のための劇音楽)』の交響的断章
(「百合の園」「第一幕の法悦の踊りとフィナーレ」「受難」「よき羊飼い」)
交響詩「海」
フィルハーモニアO
パブロ・エラス=カサド(指)

録音:2018 年 1月、ヘンリー・ウッド・ホール&ロイヤル・フェスティヴァル・ホール
ハルモニア・ムンディによるドビュッシー没後100年リリース。パブロ・エラス=カサドとフィルハーモニア管による演奏です。英国のフィルハーモニア 管は1945年に創立、2008年より、エサ=ペッカ・サロネンが首席指揮者&アーティスティック・アドヴァイザーを務めており、その充実した演奏ぶり は世界が知るところです。名手ぞろいのフィルハーモニア管による「牧神」は文字通りめくるめく世界。様々な楽器が奏でる旋律に身をゆだねているうち、 あっという間に終わってしまうまさに夢のような演奏です。「聖セバスティアンの殉教」は、ドビュッシーの音楽語法の様々な要素が総決算的に濃密に詰まっ ている作品と言われますが、神秘性たっぷりで、ドビュッシーが築きあげた和声と色彩の宮殿が目の前に立ち上ってくるようです。「海」もまさに圧巻。エ ラス=カサドの大きなフレーズ感と前進感が心地よいテンポは、色彩の中を駆け抜けるような、まさに絵画的な世界。フィルハーモニア管の面々の巧さに も改めて感心させられます。ドビュッシー没後100年リリースを名乗るにふさわしい素晴らしい演奏です。
ドビュッシーの「聖セバスティアンの殉教」は、もともとは当時のセレブ的詩人、ガブリエーレ・ダヌンツィオが書いた4000行から成る聖史劇の詩の ための付随音楽。その物語は、異教徒たちによって、火あぶりの刑に処されそうになっている双子の兄弟を見たセバスティアン(のちの聖人セバスティアン(セ バスティアヌス))が、キリスト教に目覚め、不思議な力を得、様々な奇跡を起こすが、最後は自らも処刑されてしまうというもの。実際にすべての詩を朗 読しながら上演すると4時間以上もかかる大作ですが、その中でドビュッシーの音楽は一時間弱分ほどしかないことから、今日では完全版で演奏されるこ とはほとんどなく、このように四曲の抜粋から成る交響的断章か、音楽部分を抜粋して演奏されています。ドビュッシーがこの作品の作曲の契約書にサイ ンをしたのは1910年12月、詩が書き上がる予定日は翌11年3月、そして初演は5月、とすべてがギリギリの状態の中での契約でした。このような 明らかに困難と思われる仕事を引き受けたのは、当時のドビュッシーの経済状態の困難さがあったから、とされています。初演までのスケジュール、そし て初演に際しても様々な困難がありましたが、しかし、そんな状況での初演で、ドビュッシーは、自分が構想に描いていたような魅惑の和声の宮殿が彼の 目の前に現れ涙した、という記録が残っています。この作品が、彼の芸術的発展における特別な存在であることは間違いないでしょう。 (Ki)

HMM-902254
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
ショーソン:コンセール〜ヴァイオリン,ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 op.21
イザベル・ファウスト(Vn/1710年製ストラディヴァリウス「ヴュータン」)
アレクサンドル・メルニコフ(P/エラール、1885年頃製)
サラゴン・カルテット〔クリスティーヌ・ブッシュ(Vn)、リサ・インマー(Vn)、セバスティアン・ヴォルフファース(Va)、ジェシーヌ・ケラス(Vc)〕

録音:2016年6月、9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
ファウストは近年ヨーロッパでの活躍が目覚ましく、ソロに室内楽にオーケストラとの協奏曲、ピリオド楽器(古楽器)からモダンまで、あらゆるスタ イルと様々な時代のレパートリーを網羅する世界屈指の存在となっています。最近の録音でもモーツァルトの協奏曲全曲(KKC 5691/ HMC 902230)、 シューマンの協奏曲プロジェクト(KKC 5477、KKC 5617、KKC 5618)など充実の演奏を聴かせてくれていましたが、今回は楽器を「ヴュータン」 と愛称のついたストラディヴァリに持ち替えての演奏となります。メルニコフも、ファウスト、そしてケラスと共演したシューマンの協奏曲プロジェクトのほか、 プロコフィエフのソナタ集(KKC 5694/ HMC 902202)でも著しい充実ぶりを示しているだけに、ますます期待が高まる新譜の登場といえるでしょう。
フランクのソナタでは、メルニコフが紡ぎ出す前奏から、えもいわれぬ幻想的な雰囲気に思わず引き込まれます。ファウストの摩擦音が皆無のあの運弓 が繰り出す音色は、繊細にして幻想的。終楽章も颯爽としたフレーズ運びで、コーダの華やかな終始も晴れやかに終わります。
ショーソンは25歳のときに音楽の道を志し、パリ音楽院に入学、マスネのクラスに入りましたが、オルガン科の教授であったフランクに作曲を師事す るようになります。ワーグナーにも傾倒していました。同時期の作品には熱情的な「愛と海の詩」(1882~93年)や大作「アルテュス王」(1895年完成) やなど抒情性と色彩感豊かな代表作が並びます。この「コンセール」(1889〜91年)は、名旋律の玉手箱のような傑作。美しい転調に彩られた第1楽章、 懐かしさと切なさのシシリエンヌの旋律が美しく、ショーソンのリリシズムの粋に満ちた第2楽章、半音階が多用された荘重な第3楽章、そして八分の六 拍子で快速に展開する中、様々な旋律が回想され華やかに幕となる第4楽章。全体をとおして、ファウストの繊細極まりない表情は絶美。2004年結成、 18世紀のレパートリーを中心に活動を展開する中堅のアンサンブル、サラゴン・カルテットとのアンサンブルも完璧です。そしてメルニコフが陰になり日 向になり、音楽を引き締めています。
HMM-902252
バッハ:ソプラノのためのカンタータ集
しりぞけ,もの悲しい影(結婚カンタータ) BWV 202
信仰の道を歩め BWV 152
わたしの心は血の海を泳ぐ BWV 199
キャロリン・サンプソン(S)
イザベル・レーマン(リコーダーBWV152ソロ)
カタリーナ・アルフケン(オーボエBWV152ソロ)
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(ヴィオラ・ダモーレBWV152ソロ)
ファウケ・ヘス(ヴィオラ・ダ・ガンバBWV152ソロ)
フライブルク・バロックOラ(指/ペトラ・ミュレヤンス)
アンドレアス・ヴォルフ(Bs-Br)

録音:2016年5月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
バッハ・コレギウム・ジャパンでもおなじみのソプラノ、キャロリン・サンプソン。これまでに、BISレーベルから、多数の教会カンタータ集をリリース、 さらに世俗カンタータ(BIS 1411 [BWV 210, 211収録])、そして最近では歌曲集のディスクもリリースされておりましたが、このたびハルモニアムンディ・ レーベルから、フライブルク・バロック・オーケストラとの共演で、バッハのソプラノのためのカンタータ集がリリースされるはこびとなりました。BWV 152はソプラノとバスのためのカンタータで、教会カンタータの中で唯一ヴィオラ・ダモーレが登場する作品です。4曲目のソプラノのアリアでの、リコーダー とヴィオラ・ダモーレの作り出す天上的な響きもまた聴きどころです(ヴィオラ・ダモーレはゴットフリート・フォン・デア・ゴルツが担当)。サンプソンの 歌唱の喜びのメリスマでの超絶技巧の軽やかさ、全体を通しての明るい歌声に、フライブルクの面々の醸し出すほっこりとした器楽アンサンブルがまた愉し く、すがすがしい気持ちになれる1枚です。 (Ki)
HMM-902250(2CD)
ザ・ワーグナー・プロジェクト
[CD1]「神と人間」
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(1868)より
 第3幕前奏曲
 ザックス「ニワトコのモノローグ」
『トリスタンとイゾルデ』(1865)より
 前奏曲
 マルケ王「本当にそうしたと?」**
 イゾルデの愛の死
『ラインの黄金』(1869)より
 ヴォータン「暮れに太陽の瞳が輝いている」**
『ヴァルキューレ』(1870)より
 ヴォータンの別れと間の炎の音楽
[CD2]「贖罪」
『さまよえるオランダ人』(1843)より
 序曲
 オランダ人のモノローグ「期限は過ぎた」
『タンホイザー』(1845)より
 夕星の歌
『パルジファル』(1882)より
 第1幕前奏曲
 アンフォルタス「Ja - Wehe! Wehe! Weh uber mich!」
 聖金曜日の音楽
マティアス・ゲルネ(Br)
ダニエル・ハーディング(指)
スウェーデンRSO
トーヴェ・ニルソン(Ms)*
マッツ・カールソン(T)**

録音:2016年3月21-24日、2016年5月26-31日/ストックホルム、ベルワルトホール
ゲルネとハーディング率いるスウェーデン放送交響楽団による、ワーグナーの登場。ワーグナーの舞台作品から、「神と人間」そして「贖罪」をテーマに、 バリトンやバスのためのよりすぐりの場面、そして管弦楽を集めています。ゲルネは2017年9月のペトレンコ率いるバイエルン国立歌劇場「タンホイザー」 公演のヴォルフラム役でも絶賛されたことが記憶に新しい、まさに世界最高のバリトン。いっぽうのハーディングは2016年9月からパリ管弦楽団の音楽 監督にも就任するなど、ますます脂がのってきています。ワーグナーに特化したアルバムは今回が初ですが、前奏曲などはしばしば演奏会でも取り上げて きており、満を持しての録音といえるでしょう。織り込まれた様々な要素におぼれることなく、オーケストラを豊かに歌わせ響かせている指揮ぶりはさすが。 ゲルネの歌唱は、彼がまさに今世界最高峰のバリトンであることを実感させるに十分なもの。歌詞の一語一語に込められた深い表情と安定感に圧倒され ます。1967年生まれのゲルネと1975年生まれのハーディングによる、新しい世代の至高のワーグナーの登場といえるでしょう。 (Ki)
HMM-902227
シューベルト:ピアノ連弾作品集(1台4手のための)
幻想曲 へ短調 op.103 D940
4つのレントラー D814
2つの性格的な行進曲 D886〜アレグロ・ヴィヴァーチェ ハ長調
創作主題による8つの変奏曲 変イ長調 op.35 D813
6つの大行進曲〜ロ短調 op.40-3 D819
ポロネーズ ニ短調 op.61-1 D824
ロンド.イ長調 op.107 D951
アンドレアス・シュタイアー&アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ/Graf by Christopher Clarke)

録音:2015年3月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
シュタイアーとメルニコフ、なんとも豪華な二人の名手による、シューベルトの連弾作品集の登場です。ヨーロッパでは、一晩の演奏会で、シュタイアー がチェンバロでバッハの平均律を、そしてメルニコフがピアノでショスタコーヴィチの24の前奏曲とフーガを演奏するといった試みも行われており、ふた りのデュオはいまや世界が注目するところです。 19世紀、ピアノ連弾のための作品は人気があり、出版社はシューベルトに連弾作品を書くようしつこく依頼しました。短い生涯の間に、シューベルト は1台4手のための作品を少なくとも32のこしています。その曲想はレントラーや行進曲など様々で、最晩年に作曲された「創作主題による8つの変奏曲」、 「幻想曲」(D940)、「ロンド」(D951)の3作品はとりわけ傑作として今も愛されています。二つの稀有な才能によるデュオは、行進曲では知的な抑制感を保ちながら、遊び心も満載。幻想曲では、素晴らしい演奏もさることながら、フォルテ ピアノのペダルが織りなす響きの迫力に驚かされます。最後に収録された最晩年の作のロンドは、優しさときらめきに満ちています。シューベルトの心の 闇にどっぷり浸かるというよりも、二人の才能がシューベルトに新たな光を与えたような、希望を感じさせられる演奏となっています。 (Ki)
HMG-508398(2CD)
ベートーヴェン:室内楽作品集
[CD1]
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ集
ヴァイオリン・ソナタ.第7番ハ短調 op.30-2
モーツァルトの『フィガロの結婚』から「もし伯爵様が踊るなら」による12の変奏曲ヘ長調 WoO40
ヴァイオリン・ソナタ.第4番 イ短調Op.23

[CD2]
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第3番ハ短調 Op.1-3
 ピアノ三重奏曲第5番ニ長調 Op.70-1「幽霊」
フンメル:ピアノ三重奏曲第4番Op.65
[CD1]
アンドレアス・シュタイアー(ピアノフォルテ/コンラート・グラーフ, 1824)
 使用ヴァイオリン:ザルツブルク製(1700年cA.)(ボン、ベートーヴェン・ハウス所蔵)
録音:2005年10月

[CD2]
ダニエル・ゼペック(Vn /ロレンツォ・ストリオーニ(クレモナ、1780))
ジャン=ギアン・ケラス(Vc /ジョフレド・カッパ、1696)
アンドレアス・シュタイアー(ピアノフォルテ/コンラート・グラーフ, 1824)
録音:2006年7月
[CD1]は、ゼペックとシュタイアーによるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ。使用した楽器は、リヒノフスキーがベートーヴェンにプレゼントした 弦楽器のクヮルテット用4つの楽器の中のヴァイオリン。ボンのベートーヴェン・ハウスが初めて録音のための使用を許可したというなんとも意義深いも のです。ハ短調のソナタで聴かせる凄み、イ短調で聴かせる熱い哀愁など、鬼才二人のアンサンブルが冴えわたっています。 [CD2]のベートーヴェン初期の作品第3番は、お得意のハ短調。1 音目から3 人の間に飛んでいる火花が見えてくるようです。つづく第5番は、なんと いっても第2楽章のシュタイアーが見もの。「幽霊」のタイトルの由来にもなっている、この特徴的で幻想的な楽章を、病的に、そしてまぼろしのように演 奏しています。それに絡む2 人の弦も絶品としかいいようがありません。カップリングのフンメルは、ベートーヴェンがライヴァルと目していた人物。彼の ピアノ三重奏曲は、ロマンティックさと若々しい魅力に満ちており、ベートーヴェンの2作品とは趣は異なりますが、この夢のトリオのさわやかな魅力が味 わえる一枚となっています。 [原盤:[CD1]HMC 901919, [CD2]HMC 901955 (ともに廃盤)]
HMG-508388(2CD)
モーツァルト:ピアノ作品集
■CD1
組曲ハ長調K.399(385i)
ジーグ(小さなジーグ)ト長調K.574,
ソナタ第4番変ホ長調K.282,
グルックの歌劇『メッカの巡
礼』の「われら愚かな民の思うは」による10の変奏曲ト長調K.455,
幻想曲ハ短調K.475,
ソナタ第14番ハ短調K.457
■CD2
ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330
ピアノ・ソナタ第11番イ長調 K.331「トルコ行進曲付き」,
ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K.332
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)

■CD1
録音:2003年3月/ケルン
使用楽器:1785年製ヴァルターモデル;1986年モニカ・メイ製作によるコピー

■CD2
録音:2004年3月
使用楽器:1785年頃のウィーン、アントン・ワルター製フォルテピアノのコピー1986年、マルブルク、モニカ・メイ作製

(旧品番:HMC-901815、HMC-901856)
ソロに協奏曲に室内楽に、その芸と才気にますます磨きがかかっているシュタイアー。ハルモニアムンディからリリースした、伝説の「トルコ行進曲」を 含むモーツァルト作品集がお買得2枚組になって再登場です!打楽器の効果を生むペダルはついてない楽器なのに、そのショッキングな演奏と音色、即興 性に誰もがびっくりした名盤です。シュタイアー伝説の始まりともいえるトルコ行進曲を始め、シュタイアーの鬼才ぶりが遺憾なく発揮されている魅惑のモー ツァルトの世界が繰り広げられています! (Ki)
HMG-501498(2CD)
ヘンデル:メサイア ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
バーバラ・シュリック(S)、
サンドリーヌ・ピオー(S)、
アンドレアス・ショル(A)、
マーク・パドモア(T)、
ネイサン・バーグ(Bs)

録音:1993年12月
クリスティによる絶美のメサイアの復活。序曲から非常に美しい端正な高貴さに満ちており、演奏への期待が高まります。パドモアにピオー、そしてア ンドレアス・ショルら、非常に豪華な歌唱陣にも注目の名盤です。 (Ki)


HMU-907519
シューベルト:「美しき水車小屋の娘」 マーク・パドモア(T)
ポール・ルイス(P/スタインウェイ)

録音:2009年9月
「冬の旅」(HMC902066)が好評だったパドモア&ポール・ルイスによるシューベルト第2弾は、「美しき水車小屋の娘」。冒頭のピアノの重心を深くとったリズムからちょっと独特で、前奏を聴くだけで、この演奏への期待が否が応にも高まるというもの。歌唱のパドモアも滑舌鮮やかにミュラーの詩の世界を語ります。詩からも歌からも超越したところでパドモアが歌い、映写機のような役割を果たしていて、詩の世界だけが淡々と映し出されるようで不思議な感覚をおぼえます。そしてルイスのピアノがまた見事!やはりシューベルトの歌曲は、歌手が巧いことはもちろんですが、ピアニストによってその出来栄えは格段に違ってくるのだなということを実感。ポール・ルイスのピアノもパドモアに負けず劣らず雄弁、それでいて決して歌を邪魔することはありません。二人の崇高な精神の芸術家が、お互いを引き上げあって、かつてない高水準の「美しき水車小屋の娘」が生まれました。 (Ki)
HMU-907520
シューベルト:白鳥の歌D957
流れの上でD943*/星D939
マーク・パドモア(T)
ポール・ルイス(P)
リチャード・ワトキンス(Hrn)*

録音:2010年10月
ちょっと甘い歌声、言葉の美しい粒立ち、安定した歌唱で、宗教曲にリートに大活躍のパドモア最新盤は、日本でも注目度急上昇中のポール・ルイスとの共演によるシューベルト。徹底して「語り部」として詩人のメッセージを音楽にのせて聴き手に語りかけるパドモアの技にはますます磨きがかかっています。「私」をとことん滅し、時に極めて冷淡で、時にはっとするほど優しく、歌っているのですが「語って」いるというほうがしっくりくるような演奏ぶりは見事です。詩人が語り描く世界に自分が迷い込んだような気分になります。有名な「セレナード」での、えもいわれぬ気品ある優しさは必聴。ポール・ルイスのピアノがまた文句なく素晴しく、パドモアの無駄なものが一つもない歌にぴたりと寄り添い、詩人の描く世界を見事に描写しています。「流れの上で」はホルンとのトリオ。ベートーヴェンの死の翌年に書かれたもので、ベートーヴェンの「英雄」の葬送行進曲の優しいエコーとなっています。ゲスト奏者としてホルンを吹いているのは、1985年から1996年までフィルハーモニア管で首席奏者を務めた名手リチャード・ワトキンス。滋味あふれる音色による名演は、ホルン・ファンならずとも是非聴きたいところです。 (Ki)
HMU-907521
シューマン:リーダークライスop.24(全9曲)、
 詩人の恋op.48(全16曲)
フランツ・パウル・ラッハナー(1803-1890):ハイネの詩による歌曲集「Sangerfahrt」op.33
マーク・パドモア(T)
クリスティアン・ベズイデンホウト(フォルテピアノ)

使用楽器:エラール、パリ、1837年(EdwinBenuk,Enschede,オランダのコレクション)
録音:2010年6月
イギリス生まれのテノール、マーク・パドモアの最新盤は、天才フォルテピアノ奏者のベズイデンホウトのコンビによるシューマン。パドモアの声の美しすぎる子音の立ち方がとにかく印象に残ります。音楽に、これほど鮮やかに詩をのせて歌ってくれると、ハイネの詩自体が音楽的に書かれていることを実感します。そして、フォルテピアノの伴奏が大変に素晴らしい!フォルテピアノ独特の音色の立ち上がりが、パドモアの歌い方とマッチしています。もちろん音楽作り、音楽運びはさすがのベズイデンホウト、天衣無縫に、絶美の歌を聴かせます。19世紀の音楽界の重鎮にしてシューベルトの親友でもあった、フランツ・ラッハナーがハイネの詩に作曲した、ドラマティックな雰囲気が印象的な歌曲も5つおさめられた、充実の内容。旬のテノール、旬のフォルテピアノ奏者による至福の1枚です (Ki)
HMU-907506
第13回ヴァン・クライバーン国際コンクール・ライヴ金メダル
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの三楽章
ショパン:24の前奏曲Op.28
メーソン・ベイツ:ロマックスへの他愛ない嘘
リスト:スペイン狂詩曲
チャン・ハオチェン【張昊辰】(P)
1990年、上海生まれの19歳。辻井と金メダルを分かち合った中国期待の新星チャン・ハオチェン。曲芸的難曲として知られる「ペトルーシュカからの三楽章」を目にも鮮やかな技巧で弾ききっています。ショパンの前奏曲集も清潔な詩情にあふれ、辻井と並ぶ逸材だったことを納得させてくれます。 (Ki)
HMU-907528
モーツァルト:鍵盤楽器のための作品集Vol.4
幻想曲ニ短調K.397(初版)
ソナタ第9番ニ長調K.311
前奏曲とフーガK.394
ボーマルシェの喜劇「セビーリャの理髪師」のロマンス「私はランドール」による12の変奏曲変ホ長調K.354
ソナタ第5番ト長調K.283
幻想曲ニ短調K.397(現行版)
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ)

録音:2011年10月、リンドハースト・ホール内エア・スタジオ(ロンドン)
今世界で最も注目されるフォルテピアノ奏者の一人、クリスティアン・ベザイデンホウトが、鍵盤楽器のための作品集シリーズから待望の最新盤をリリー スしました!第3集(HMU 907499)に引き続く今回は、幻想曲、第5番と第9番のソナタ、前奏曲とフーガ、そして「私はランドール」による12の 変奏曲を収録。2012年5月末の来日リサイタルでも演奏され、高い評価を得たプログラムであり、本アルバムでもその評価を裏切らぬ素晴らしい演奏 を見せてくれています。演奏のたび、フォルテピアノの新たな可能性を見せつけてくれるベザイデンホウト。本アルバムでも、抜群の演奏技術、濁りのない 清廉な音色、厭味のない自然なテンポ感といった彼ならではの持ち味を遺憾なく発揮し、瑞々しさあふれる鮮烈な演奏を聴かせています。
本アルバムでは、幻想曲ニ短調の現行版と、その初版(今日知られるかたち(現行版)の最後10小節分が欠落している)の両方が収録されているの もポイント。この幻想曲ニ短調は、自筆譜などが残されておらず、1804年に出版された初版では、97小節までで中断、現行版の最後の10小節があり ません。初版の表題には「Fantaisie d’ Introduction…(導入の幻想曲)」とあり、後ろにソナタなどが続くことを想定して作られたものだったのかもし れませんが、1806年にブライトコプフ社が出版したいわゆる「旧全集」では、10小節が足され(ブライトコプフ社の顧問で主任検査員のアウグスト・ エーベルハルト・ミュラーの手によるとする見方が一般的)、完結した曲となっています。幻想曲ニ短調の冒頭、深淵からゆっくりと浮かび上がるように響 くフォルテピアノの音色は必聴の美しさ。即興演奏かと思わせるような、自由なタッチから生み出されるチャーミングな音世界に一気に惹きこまれます。ベ ザイデンホウトが初版の幻想曲のあとに選んだ作品は、ソナタ第9番。鮮やかなコントラスト、プログラミングの妙にもベザイデンホウトの才を感じます。 次はどんな音色を聴かせてくれるのだろうと、はやくも次作が楽しみになってしまいます。 (Ki)
HMU-907529(2CD)
モーツァルト:鍵盤楽器のための作品集VOL. 5-6
[CD1]
ソナタ 第11番 イ長調 「トルコ行進曲つき」 K.331
パイジェッロの歌劇「哲学者気取り」6つの変奏曲 へ長調 K.398
ロマンス 変イ長調 K.Anh.205
アレグレットによる12の変奏曲 変ロ長調 K.500
ソナタ.ハ長調 K.309
[CD2]
フランスの歌「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲ハ長調(キラキラ星変奏曲) K.265
ソナタ 第4番 変ホ長調 K.282
アダージョ.ヘ長調 K.Anh. 206a
ソナタ 第3番 変ロ長調 K.281
フランスの歌「美しいフランソワーズ」による12の変奏曲 変ホ長調 K.353
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ/ポール・マクナルティ製(2009年)、
アントン・ヴァルター&ゾーン、ヴィーン、1805 年製のコピー/アレクサンダー・スキーピング・コレクション)

録音:[CD1]2012年11月1-4日エア・スタジオ(ロンドン) [CD2]2013年1月21-24日エア・スタジオ(ロンドン)
フォルテピアノの申し子、ベザイデンホウト。リリース毎に天才のひらめきに満ちたモーツァルトを聴かせてくれている鍵盤楽器のための作品集シリーズ、 最新盤は「キラキラ星変奏曲」に「トルコ行進曲つき」ソナタなども含まれた、魅力的なプログラムとなりました。モーツァルトの再来、とまでいわれる こともあるベザイデンホウト。「キラキラ星変奏曲」で、その天衣無縫な歌い回しがどのように開花するかは注目に値するところです。トルコ行進曲つきの ソナタ、トルコ行進曲も注目ですが、第1楽章(主題と変奏)でも、極上の歌を聴かせてくれることでしょう。変奏曲「美しいフランソワーズ」は優美なテー マに様々な装飾を施していくような変奏曲。センス抜群の絶妙な装飾でも魅せるベザイデンホウトが、どのようにこの作品を響かせるか注目です!10月に 来日を控え、日本先行発売となります。 (Ki)
HMU-907532(2CD)
モーツァルト:鍵盤曲集.Vol.8,Vol.9
■CD1 (VOL.8)
ソナタ.ハ長調K.545
グレトリの歌劇「サムニウム人の結婚」の合唱曲「愛の神(行進曲)」による8つの変奏曲ヘ長調 K.352
組曲.ハ長調K.399/メヌエット.ニ長調K.355
ジーグ.ト長調 K.574
小さい葬送行進曲.K.453a
ソナタ.ヘ長調K.280
デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 ニ長調 K. 573
■CD2(VOL.9)
転調するプレリュード(K.624/626a)
ソナタ.ハ長調K.279
アレグロ.変ロ長調K.400
アレグロ.ト短調K.312
4つのプレリュード.K.284a
12の変奏曲.K.179/ソナタ.ニ長調K.576
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ)
ポール・マクナルティ2009年製(アントン・ワルター&サン、ウィーン1805年の複製)

録音:2013年1(K545)、5月(K179)、2014年12月, エア・スタジオ, リンドハースト・ホール(ロンドン)
活躍著しいフォルテピアノ奏者、クリスティアン・ベザイデンホウトのモーツァルト鍵盤楽器のための作品シリーズ第8&9弾を2枚組で発売。「初心者用」 のタイトルがつけられ、ピアノ学習者に定番の「ソナタ ハ長調 K.545 第15(16)番」。モーツァルトがイタリアへの旅の直後にほぼ同時期に書かれた 明るい曲調の「ソナタ ヘ長調K.280 第2番」と「ソナタ ハ長調 K.279 第1番」。第1楽章の冒頭主題が印象的なモーツァルト最後のピアノ・ソナタ「ソ ナタ ニ長調K.576 第18番」。ベザイデンホウトの演奏は、モーツァルトの閃きをダイレクトに伝え、今ここで音楽が湧き上がるよう。また共に収録され ている、種々の変奏曲や小品も、変化に富む歌いまわしで聴かせる、愛らしいアルバムとなっています。 (Ki)

HMU-907583(2CD)
バッハ:フランス組曲(全曲)BWV 812-817
+第2番 ハ短調 BWV 813の以下の楽曲
メヌエットU
クーラント(自筆譜に基づく(1722))
クーラント(H.N.ゲルベルのコピーに基づく)
クーラント(アンナ・マグダレーナ・バッハによるコピーに基づく(1725))
リチャード・エガー(Cemb)

録音:2015年8月、オランダ
古楽界のバーンスタイン」(米ナショナル・パブリック・ラジオ)とも称されるリチャード・エガー。指揮活動では時に鍵盤楽器を演奏しながらオーケ ストラを率い、協奏曲ではオルガン、チェンバロ、フォルテピアノ、モダンピアノを自在に操るソリストとして、そしてもちろん鍵盤楽器独奏者としてもカー ネギー・ホールやウィグモア・ホールでリサイタルを開催する鬼才の充実ぶりはとどまるところを知りません。このたび、そんなエガーによる、チェンバロ 独奏のバッハのフランス組曲が登場します。愛らしいものから重めのものまで変化に富むこのフランス組曲の個々の曲を慈しむように演奏しています。反復記号はすべて実施、エガーならではの流麗で自然な装飾音も魅力です。また、第2番ハ短調BWV 813で一般に演奏される稿には含まれていないメヌ エットU(少数の後期稿にみられる)、およびクーラントの別稿を収録しているのも興味深いところ。ヨハネ受難曲やマタイ受難曲の様々な稿を指揮した経 験ももつエガーは、バッハの作品でいくつかの稿が存在する場合、力強さや生々しさがより濃い初期の稿が好きだといいます。エガーの柔軟な感性に魅了 される内容となっています。 (Ki)

HMU-907593(2CD)
バッハ:パルティータ(全曲)
第1番 変ロ長調 BWV 825
第2番 ハ短調 BWV 826
第4番 ニ長調 BWV 828
第3番 イ短調 BWV 827
第5番 ト長調 BWV 829
第6番 ホ短調 BWV 830
リチャード・エガー(Cemb)/ジョエル・カツマン、アムステルダム(1991年製)/1638年リュッカース・モデル)

録音:2016年1月

フランス組曲(HMU907583/KKC5673)でも高い評価を得たエガーによる、バッハのパルティータ全曲の登場。パルティータは、バッハにとっての作品1、すなわち初めて出版された作品。1726年に第1番を、以降毎年第2番、第3番と1曲ずつ出版。1731年にまとめて6曲の曲集「パルティータ」として出版されました。当時の人々の趣味に沿うように組曲の形式をとりながら、その1曲1曲がひらめきと霊感に満ちた力作ぞろいです。エガーはすべての反復記号を実施、反復時になんとも密度の濃い装飾を施しており、反復であることを忘れさせます。エガーの冴えわたるひらめき、そしてそのひらめきをあますところなくとらえた濃密な録音は見事。
バッハの作品を論じるときにしばしば用いられる「数字」。このディスクでも、エガーは自身でライナーノートを書いていますが、この数字をベースに興味深い文章を寄せています。BACHをアルファベットの文字順に数えると[2,1,3,8]となります。第1番のプレリュードは21小節、アルマンドは38小節から成り、バッハは自身の名前を刻印するかたちで組曲の幕を開けたことにはじまり、第6番でも小節数や和音の種類など、様々な数字の意味について述べています。もちろんそんな分析的なことを抜きにして、エガーの鮮烈かつ説得力満点の演奏に圧倒される2枚組です。 (Ki)

HMU-907611
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン:歌曲集
ハイドン: 彼女は決して恋について話さないHob.XXVIa: 34(6つの創作されたカンツォネッタ第2集より)
聞いてください!私があなたに言うことを Hob.XXVLa:41(精霊の歌)
おとめの問いへの答え「私を忘れないで」 Hob.XXVLa:46
モーツァルト:すみれ K.476
ラウラに寄せる夕べの思い K.523
ドイツ語の小カンタータ「無限なる宇宙の創り主を崇敬する汝らが」K.619
ベートーヴェン:5月の歌(「8つの歌」op.52-4)
新しき愛、新しき生命(「6つの歌」op.75-2)
メフィストの蚤の歌(「6つの歌」op.75-3)
アデライーデ op.46
独りごと WoO.114
あきらめ WoO.149
希望に寄す op.94
連作歌曲「遥かなる恋人に寄す」op.98(全曲)
星空の下での夕べの歌 WoO.150
マーク・パドモア(T)
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ/ローゼンベルガー、1820年頃製/調律:A-430、不等分平均律)

録音:2014年5月
マーク・パドモアとベザイデンホウトという、なんとも贅沢な顔合わせによる歌曲集の登場。「シューマン:詩人の恋、リーダークライス他(HMU.907521、 2010年録音)」以来の録音共演となります。パドモアは、ベルリン・フィルのマタイ受難曲(KKC 9101)、ヨハネ受難曲(KKC 9098)でも世界的に話題となっ た、イギリスの名テノール。2014年末には東京・王子ホールでもポール・ルイスとシューベルトの三大歌曲を披露、録音もあわせ(「冬の旅」KKC 5398、「美 しき水車小屋の娘」KKC 5406、「白鳥の歌」KKC 5413)大変な評判となりました。パートナーをつとめるフォルテピアノの天才、ベザイデンホウトは、 モーツァルトの鍵盤作品集を着々とリリース、どれも高い評価を得ています。
ベザイデンホウトの奏でる前奏から、歌曲の世界が色鮮やかに眼前に浮かび上がります。ハイドン歌曲は英語。パドモアにとっては母国語とあって、美 しい発語・発音が際だっています。モーツァルトの「すみれ」でのベザイデンホウトの伴奏は絶品。パドモアも、ひとつひとつの言葉を慈しむように語り 歌います。ベートーヴェンの「遥かなる恋人に寄す」も遠くにいる恋人への想いが豊かなイメージとともに伝わってきます。





HMD-9809060
(1BluRay+1DVD)
ワーグナー:歌劇さまよえるオランダ人」 クワンチュル・ユン(バス/ダーラント)
インゲラ・ブリンベルイ(ソプラノ/ゼンタ)
ニコライ・シュコフ(テノール/エリック)
カイ・ルーッテル(メゾ・ソプラノ/マリー)
ベンジャミン・ブルンズ(テノール/舵手)
サミュエル・ユン(バリトン/オランダ人)
アレックス・オッレ(演出)
パブロ・エラス=カサド(指)
マドリード王立歌劇場O&cho

収録:2016年、王立劇場、マドリード
■Blu-Ray
画面:16:9
音声:DTS5.1
PCMステレオ
リージョン:All
字幕:伊独英、2h24’
■DVD(NTSC)
画面:NTSC 16:9
音声DTS5.1
PCMステレオ
リージョン:All
字幕:伊独英、2h24’
スペインの指揮者エラス=カサド、初めてのワーグナー、しかも映像での登場です。モンテヴェルディからブーレーズ、シューマンまで、なんでもものに してしまうエラス=カサド、初のワーグナーは「さまよえるオランダ人」。ふるさとスペインのオペラの殿堂、マドリード王立劇場での収録、スペインの前 衛パフォーマンス集団ラ・フラ・デルス・バウスに属するアレックス・オッレが手がけた演出です。映像を駆使しながらも奇をてらったところのない演出で、 序曲で舞台に投影される荒れる海の映像から、観客は物語の世界に自然に引き込まれていきます。歌唱陣も現代を代表するワーグナー歌いが集められた、 最高の布陣です。クワンチュル・ユンは、ネルソンス指揮RCOのオランダ人でもダーラントを務めていましたし、ゼンタ役で世界の歌劇場から引っ張りだ このスウェーデン出身のソプラノ、インゲラ・ブリンベルイは、この舞台でも揺るぎのない歌唱を展開しています。最後の場面まで、舞台演出も歌唱もオー ケストラも大きなひとつのうねりとなって観客を魅了しています。耳も目も大満足の「さまよえるオランダ人」の登場です。 (Ki)
















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