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ユーリ・アーロノヴィチ(指)バイエルン放送交響楽団 | |||||||||||||
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KAPELLMEISTER KMZ-S-121 (1CDR) |
録音年:1981年1月22日 ミュンヘン【ステレオ・ライヴ】 | ||||||||||||
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カップリング/グリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲 |
“熾烈な激変テンポの裏に隠された知的な設計力の凄さ!” |
当時この演奏をFMで聴いた私は、メンゲルベルクの時代に逆戻りしたようにうなテンポがまぐるしく変わるその演奏に腰を抜かし、指揮者の支持に徹底的に付いていくオケに舌を巻き、変人アーロノヴィチの名前はしっかり脳裏に焼きついたのでした。あれから20年以上たった今、こうして聴いてみるとやはり過激さの点では全く色褪せておらず、衝撃を新たにしましたが、しかしその極めて個性的な演奏は単なる思い付き的なものではなく、綿密な構築と並ぶ者のな共感のなさる技だったことが確信できたことが何よりの収穫でした。 まず第1楽章冒頭のテーマの歌わせからして独特のすすり泣き。テンポはどこまでも遅くレガートも多様。19世紀的な極めてロマンティックな解釈に唖然としますが、これが終楽章の最後まで一貫し、強力な説得力を持って迫り続けるのです。また、全体を通じて特徴的なのは、過ぎに訪れるシーンの楽想に応じ、その直前において確実に伏線を張ってニュアンスを形成しておくという構成力の素晴しさ!瞬発的な表現に長ける一方で、各フレーズを有機的に連動して大きく豊かな音楽に構築する手腕を持つ指揮者が少なくなる中で、この確かな力量はもっと広く認識されるべきでしょう。第2楽章は、単に心のこもった歌を超越した、濃厚なロマンの宝庫!クラリネット・ソロのシーン(ツボ12)はそれを最も顕著に象徴しており、大げさどころか、心の震えをそのまま投影した表現は鳥肌ものです!終楽章はダイナミズム、テンポ設定の操作がめまぐるしく変化し、19世紀的主情的表現の極みともいえますが、以下に記したように、スコアの意味を徹底的に掘り下げた結果によるものばかりで、決して表面的な効果を狙ったものでないことはもちろんのこと、これもあまり語られないアーロノヴィチの知的な造型力に脱帽することしきりです。 この過酷な指揮者の要求に応えきれるバイエルン放送響が相手というのも大成功の大きな要因となっています。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | チェリビダッケばりの超スローテンポ。柔らかなトーンでレガートを続け、物悲しさを強調。強弱の振幅は極力抑えているが、ルバートをこれほど多用し、主情的な表現に徹するのは珍しい。 |
ツボ2 | 憂いのニュアンスはそのまま踏襲するが、テンポはやや速めに転じる。 |
ツボ3 | 羽のように軽やか。 |
ツボ4 | 緊張感を持って呼吸が振幅。 |
ツボ5 | ここからこってりとした哀愁を漂わせ、テンポを落とす。 |
ツボ6 | スフォルツァンド直前の溜めが絶妙!アニマート以降は音量こそ上げないが、陶酔美の極み! |
ツボ7 | ここから主部冒頭のテンポに戻るが、副次主題直前で再びスローテンポとなり、次へ繋げる。 |
ツボ8 | 超スローテンポ。全身が解けそうな甘美な表情を漂わせる。このテンポの遅さはラザレフ双璧。ところが、この直後から再現部直前までは、アクセル全開で壮絶な推進力を見せる。 |
ツボ9 | 16分音符は曖昧だが、ここからテンポを速め、木管にスタッカートを効かせた進行が独特の緊張感を生んでいる。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 導入の弦は、何と一音一音に入念に表情を施し、全体も大きくフレージングさせるという素晴しいセンスを披露!ホルンは太く逞しい音色が特徴的。技術的にも万全で、心の底からら歌い上げている。絡む木管のセンスも抜群。 |
ツボ11 | この直前の弦のフレージングの入念なアゴーギクからこのフォルティシシモに至る伏線を張り、遂に壮絶な爆発を見せる。単に瞬間だけを捉えて表情を付け加えるという単純な演奏ではないことを象徴するシーン。 |
ツボ12 | このまま曲が終わってしまいそうな空前絶後の遅さ!しかもクラリネット・ソロ冒頭の音の発し方のなんという憂い!更に9連音は2+7連音風に後ろ髪を引かれるように奏でる! |
ツボ13 | ピチカートはメゾ・フォルテではなく、不安の表情を浮かべた弱音。 |
ツボ14 | 奇跡の究極芸と呼びたい感動的なシーン!直前からの加速が壮絶な上に、フォルティシシモの爆発力も音量のみならず内面からの情念の噴射となりまさに火の玉!その先は1小節たりとも同じテンポな存在せず、「チャイコフスキーはかくあるべし!」という強烈な確信に満ちた呼吸を展開。フィルテ4つの頂点の凄まじさも圧巻!バイエルンのオケだからここまでの演奏が可能だったのだろう。 |
ツボ15 | 弱音ではなく、意外なほど明瞭な音量で歌い上げるが、表情はロマンティックの極み!最後を締めくくるクラリネットは、これほど時間をたっぷりかけて余韻を持たせた例は他に例が無い! |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | ややテンポを落とす。 |
ツボ17 | アクセントの入れ方とアーティキュレーションの融合が実に巧妙。こういう知的な操作も分析的にならずに音楽的なニュアンスに転化できるアーロノヴィチの力量は、もっと認識されるべきだろう。 |
ツボ18 | 引き継ぐ側のクラリネット冒頭にややアクセントが付く。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | やや遅めのテンポで、威厳を持って開始される、強弱の設定が綿密で、ニュアンスが強力に立ち上がってくる。 |
ツボ20 | ホルンは基本的裏方だが、骨太な木管と共に強靭なハーモニーを築いており、合の手部分ではホルンが明確に立ち上がる。 |
ツボ21 | ティンパニのクレッシェンドは完全にスコアどおり。テンポは中庸だが響きが実に強靭。注目すべきは、58〜61小節は弦楽器群はフォルテ、62小節からフォルティッシモになるその描き分けを徹底して行ななっている点。またしてもスコアの読みの深さとその意味の体得ぶりに頭が下がる。しかも、74小節あたりから、さらにアチェレランドを敢行し82小節からが本当の主部のように扱うというのも前代未聞!その先はムラヴィンスキー並みの壮烈な高速進行を持続。 |
ツボ22 | わずかにアクセントを生かしているようにも聞こえるが、とにかく凄い突進力なので、それどころではない。 |
ツボ23 | 低弦の表情を引き立たせるためか、何とここで急激にテンポダウン!木管の絡みと共にかつて無いリアルな音像が展開される。 |
ツボ24 | これまでの最高速テンポに変わると思いきや、主部冒頭のテンポを採用。 |
ツボ25 | 鈍い音。 |
ツボ26 | 直前で壮大なテンポ・ルバート!その上で再び主部冒頭のテンポを取る。 |
ツボ27 | かなりの高速で突進するが、452小節からテンポを落とす。463小節からは休符も含めた全ての音価を最大に引き伸ばしてスケール感を煽る。 |
ツボ28 | 8分音符の音価は極めて長い! |
ツボ29 | 張りのある弦、明確な管の響きが見事に融合した清々しい進行。 |
ツボ30 | 弦もトランペットも音を切る。 |
ツボ31 | 改変なし。503小節はスフォルツァンドを敢行。 |
ツボ32 | 全体の勢いからしてもう少し強く張り出しても良いと思うが、なかなか勇壮な響きを聴かせてくれる。 |
ツボ33 | プレスト(504小節)以降、一貫して高速インテンポ。最後の締めくくりも意外にもストレートだが、ティンパニを最強打するという演出がニクイ! |
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