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朝比奈隆(指)大阪フィルハーモニー交響楽団 | |||||||||||||
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キング KICC-685 |
録音年:1982年7月10日尼崎アルカイックホール 【デジタル・ライヴ録音】 | ||||||||||||
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“日本人が本来持っていた感性で成し遂げた「チャイ5」録音の最高峰!” |
「朝比奈ファン」という「括り」が出来始めたのが、ちょうどこのレコードが発売された頃ではなかったでしょうか。当時は日本人指揮者とオケによる新録音が今ほど多くはなく、批評家の見方もどこか「技巧的な不備」を理由に、名門オケとの演奏と比較して冷たい論調になる傾向もありました。それを考えると昨今の日本の演奏家に対する評価はそのような偏見も少なくなったという点では、感性の許容量が増えたとも言えるでしょう。この「チャイ5」の録音が当時どのように評されていたか記憶は定かではありませんが、これほどの名盤が今までCD化されなかったことがまず不思議で(「悲愴」などは既CD化)、他の演奏との比較などではなく、この演奏そのものの素晴しさに多くの人が気づき感動することを願ってやみません。 さて、初発売以来実に25年ぶりに再会したこの「チャイ5」、こんなに感動的なものだったかと驚きを禁じ得ません!とにかく音楽が熱く熟しきり、骨太で野武士的な立ち居振る舞いと、師メッテル譲りのロマンチシズムが一体となって織り成す解釈の重みは並大抵の説得力ではなく、朝比奈ファンならずとも「これぞ日本の誇り!」と叫びたくなるはず。いかにも朝比奈らしい、襟を正しながらも大きな見得も確信を持って切り尽くす技の妙が随所に登場します。 第1楽章冒頭のクラリネットの音色からして通り一遍のものではなく、望郷のロマンが濃厚。展開部ではどんな些細な裏の声部でも確実に発言し、音楽が脈々と息づいていることを肌で感じさせます。 最大の聴きものは第2楽章!45小節の経過句でホルンを注人に比ぼかせるのは前代未聞。しかもそのハーモニーからスーッと副次主題へと滑り込む自然さ!このセンスの素晴しさは筆舌に尽くしがたく、普段朝比奈の芸を軽く見ている人には是非聞いてもらいたい瞬間です。しかも、この副次主題を奏する弦の感動的なこと!響きといいアゴーギクの陰影といい、こんな琴線に触れるニュアンスは滅多に聴けません。142小節以降も、この曲のあらゆる名盤の中でもさらに群を抜く逸品(ツボ14)。第3楽章は予想通り、ワルツにしてはやや無骨かなと思わせながら開始しますが、中間部以降はこれまた意外、音楽的な興が花開き、大阪フィル自体の好調ぶりを示すがごとく、見事な声部連携の妙を繰り広げます。終楽章もスケールの大きな巨匠芸の極み。テンポ設定の切り替えし、強弱配分など、頑固ながらも決してスコアを絶対視するだけではない朝比奈芸術の柔軟な呼吸感をとことん突きつけられ、ひれ伏すしかありません。小林研一郎も小澤征爾も立派な演奏を繰り広げていますが、頑固なまでに日本人的な感覚と精神力を貫き通したこの演奏こそ、世界に誇るべき「チャイ5」だと思います。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | クラリネットの音色が実に深々と響いて共感たっぷり。低弦はこれと分離して響くが、これまた心のこもった奏で方。22小節以降のクレッシェンドから、クラリネットはかなりの強音で主張。 |
ツボ2 | テンポはアンダンテに近い。クラリネットとファゴットが均等のバランスで美しく響く。 |
ツボ3 | デリケートだが、無骨さも残す。 |
ツボ4 | 楽譜どおり実直に再現、女々しさは皆無で朝比奈の骨太な構築を垣間見る瞬間。 |
ツボ5 | これは素晴しい!テンポをここからグッと落とすが最初のタイを思い切り引き伸ばしながら、クレッシェンドの過程でも呼吸と表情の陰影を微妙に変化させるなど、他の指揮者からは聴けない芸当!第2主題の奏で方の最高峰として忘れるわけにはいかない。 |
ツボ6 | スフォルツァンドの意味を徹底的に掘り下げた絶品アプローチ!呼吸の深さといい渾身のアゴーギクといい、ここまで徹した演奏も珍しい。の脳 |
ツボ7 | 弦をはじく質感が良く伝わり味わい深い。 |
ツボ8 | テンポを落として甘美に歌い上げるが、ここでも決して媚びることはなく、172小節からの半音階下降も一音ごとの隈取が実に明確。それでも心の深部から滲む共感がひしひしと迫る。 |
ツボ9 | 勇壮そのもの。堂々たるたテンポで、多少ゴツゴツ感を残しながら進行。16分音符はわずかに聞こえる程度。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 弦の序奏は響きの厚さが印象的。一音ごとの変化を与えるなどの小細工なしで、あくまでも実直に音楽を紡ぎだす。ホルンは巧味こそないが水墨画のような音色が妙に心に響く。 |
ツボ11 | 一筆で一気に振り下ろした書のような凄み!無骨さとマンチシズムの見事な融合。 |
ツボ12 | テンポはやや遅めに設定。管のソロはそれぞれ特徴に乏しいが、明瞭な録音がその輪郭を如何なく伝えている。 |
ツボ13 | 元のテンポに戻る。表面的には淡々としているが、その後のピチカートには思いが溢れており、決して淡白な進行に陥らない。 |
ツボ14 | 朝比奈の絶頂期の凄さを知っている人でも、これを聴けば腰を抜かすこと必至!とてつもなく大きな呼吸の持久力、灼熱のパッションを内面から噴射させる手腕、フォルテ4つの命がけの咆哮…、どれを取ってもこれ以上望みようがない感動技! |
ツボ15 | 繊細でありながら線は決して細くなく、最後の一音に至るまで強固な意志が根底に流れているのが、朝比奈ならでは。 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | ややテンポを落とす。 |
ツボ17 | 弦のレスモンポンスが意外にも良好な上に、各声部との連携が実に有機的で、単に鳴っているだけの音など全くない。あまりのニュアンスの豊かさに、思わず引き込まれる。 |
ツボ18 | ややぎこちない。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 意外にもやや速めのテンポで颯爽と進行。、トランペットの絶妙な強弱ニュアンスが不安な心理を掻き立たせるのは聴きもの。 |
ツボ20 | ホルンは裏方に徹する。あくまでの主旋律中心だが、全体に漲る緊迫感が尋常ではない。43小節からガクッとテンポを落とし不安な警告を傾向を強調するのは朝比奈ならでは。 |
ツボ21 | ティンパニは58小節冒頭、62小節、66小節でそれそれ一撃を置く。テンポはカラヤンよりもやや遅め。 |
ツボ22 | 完全に無視。 |
ツボ23 | もっと力感があってもよいと思われるが、全体とのバランスはきわめて良好。 |
ツボ24 | 直前でぎりぎりまでテンポを落とし、軽くルフト・パウゼをおいてから開始。やや速めのテンポ設定。 |
ツボ25 | 強打ではないが、意思は伝わる。 |
ツボ26 | 直前で大きくテンポを落として古いスタイルの片鱗を窺わせるが、体に完全に染み付いた手法なので説得力大。提示部冒頭のテンポに戻る。 |
ツボ27 | やや速めのテンポ。451小節でガクッとテンポを落とし、荘重な雰囲気を醸し出す。 |
ツボ28 | 楽譜の音価どおり。 |
ツボ29 | チューバが良く効いている。大きなスケールで心のそこから歌い上げている。全ての音をテヌート気味に粘って奏でているが流れに淀みがなく重厚な響きをたっぷり堪能できる。 |
ツボ30 | 弦は音を切り上げるが、鋭角的にならずに最後まで弓を保持しているのが特徴。トランペットは音を伸ばし気味にする。このトランペットの何と輝かしい勝利感に満ちていること! |
ツボ31 | 改変なし。 |
ツボ32 | やや距離感があるが明快。 |
ツボ33 | インテンポを基調としているが、最後の4小節でテンポを落として安定感のある締めくくりを築く。 |
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