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チャイコフスキー:交響曲第5番
エンリケ・バティス(指)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ: ニコラス・ブッシュ(?)
ASV
CDQS6097

廃盤
録音年:1986年(?)  【ステレオ録音】
メキシコ州立響
EB-2

演奏時間: 第1楽章 13:37 / 第2楽章 13:11 / 第3楽章 6:00 / 第4楽章 12:32
・CDQS6097のカップリング/チャイコフスキー:「くるみ割り人形」組曲(バティス&RPO)
EB-2のカップリング/チャイコフスキー:「眠りの森の美女」ワルツ、「くるみ割り人形」組曲(バティス&RPO)
“暴れるだけじゃない!バティスの芸術性を随所に感じる一枚”
後年の再録音とは別人のように正攻法で、直截な迫力を最優先する方には物足りないと思いますが、この腰の据わったテンポ感と内面から込み上げる濃厚な詩情は決して無視できません。特に第2楽章は、静かに水平に流れるだけの演奏とは一線を画し、冒頭から低弦が意味深くうねり、全編を貫く奥行きのある幻想性、深い呼吸感を湛えながらの山場の築き方は、破天荒ぶりばかりが語られるバティスの真の芸術性を示すものです。終楽章もテンポこそ中庸ですが、安定した造型と拍節感が見事で、ロンドン・フィルが共感の限りを尽くしているのがひしひしと伝わります。更に注目はティンパニ・パート!様々な音程を追加した独特の版(ロストロポーヴィチ盤も同様)が用いられており、これが変に浮き立つことなく全体に溶け合って不思議な色彩を生んでいる点に、耳を凝らしてみてください。ただ、残響が若干多目で、音増がぼやけ気味なのが残念!
第1楽章のツボ
ツボ1 悲しみに浸らず、むしろ勇気付けるように朗々と吹くクラリネットは印象的。弦のうねりも濃厚。
ツボ2 ここでもクラリネットはパリッとした響き。続くフルートが、冒頭でひっくり返る寸前のような音を出す。
ツボ3 楽譜どおり。
ツボ4 特に細かい振幅をつけずにさらっと流れる。
ツボ5 曲弱の幅は大きくないが、一途な憧れをぶちまけるような勢いを感じさせる。アゴーギクは最小限。
ツボ6 ここでもスコアの強弱指示にあまり囚われないで一直線。特にフォルティッシモ部分に照準をあわせて激情を噴射させるわけでもない。
ツボ7 多少ピチカートがずれるが、許容範囲内。その直後のクラリネットの合いの手が妙に脳天気。
ツボ8 懸命に共感を込めているが、「表情豊か」というほどではない。
ツボ9 前のテンポのまま突入。フォルティッシモの次の16分音符への配慮などない。
第2楽章のツボ
ツボ10 最初の弦のうねりが、濃霧のように立ち込めて独自の幻想性を表出。ホルンも安定したフォームでセンス抜群。
ツボ11 じっくり腰をすえて歌い込み、フォルティッシモ直前でリタルダンドして、見事な高潮点を築いている。ホルンの隠し味も絶妙。
ツボ12 このクラリネットも、音色が妙に明るいのが残念!
ツボ13 直前の「運命動機」の総奏の鳴りっぷりは、バティスの真骨頂。となると、続くピチカートは、もっとハジけて欲しい。
ツボ14 ここから再度「運命動機」が再現される10:55までの間は、全体を通じて最も感動的な箇所!バティスの大柄な造型と、ビシッ!と決まったアゴーギクが渾然一体となり、熱いカンタービレを披露。
ツボ15 楽譜どおり。
第3楽章のツボ
ツボ16 冒頭部でテンポを落とし、そこからゆっくりと元のテンポへ戻る(後半も同様)。
ツボ17 長い残響のせいで、細かい動きが聞き取りづらい。音色にもう少し均一感が欲しい。
ツボ18 連鎖自体はまずまずだが、音色的にスムースに移行しているとは言えない。
第4楽章のツボ
ツボ19 おごそかな雰囲気を湛えいるが威圧感はなく、とても丁寧な滑り出しだが、特に威厳は感じず、かといって繊細を極めるわけでもなく、やや焦点が曖昧。弦のピチカートが妙に克明なのが面白い。
ツボ20 木管とホルンはほぼ同等のバランスで奏でられるが、1:55程から突如ホルンが前面に出て、トランペットへ繋ぐという小技が登場!
ツボ21 ティンパニが一度山を築いてから、弦が切り込む。主部冒頭は一撃アクセントを挟まずにトレモロをキープする、ほぼスコアどおりの進行。驚くのはその後の74小節目!ティンパニが、コントラバスと同じ音をユニゾンで叩く!このようなティンパニ改変は、随所にある。
ツボ22 全く無視。
ツボ23 特に強調はされていない。録音のせいで、手応えが感じにくい面もある。
ツボ24 主部冒頭のテンポを取り、そのテンポを維持。
ツボ25 控えめなアクセント。
ツボ26 直前で一瞬リタルダンドして、すぐに元のテンポに戻る。
ツボ27 ややリタルダンドして、トランペットのファンファーレからはすぐに元のテンポに戻る。
ツボ28 やや8分音符を長めにとる。直後のティンパニのトレモロが絶品!全体に見事にブレンドさせながら、均整のとれた連打を披露し、最後の一音のアクセントにもセンスと品格を感じさせる。
ツボ29 凄みを利かせた金管の8分音符の刻みに導かれて、勝利の凱旋のように進行。
ツボ30 切るでもなく、滑らかにつなげるでもなく、スコアどおり。
ツボ31 改変なし。その後のトロンボーンがボコボコ突出するのが面白い。
ツボ32 自然な高鳴り方。
ツボ33 リタルダンドして終わるが、あまり重量感は感じられない。



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