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チャイコフスキー:交響曲第5番
アンタル・ドラティ(指)ミネアポリス交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ/
Bearac
BRC-1839
(1CDR)
録音年:1955年 ミネアポリス、ノースラップ・ホール 【モノラル録音】
演奏時間 第1楽章 12:45 / 第2楽章 10:49 / 第3楽章 5:15 / 第4楽章 11:34
カップリング/モートン・グールド:弦楽のためのスピリチュアル
“トスカニーニ以上のザッハリッヒな音楽作り!”
ドラティのオーケストラ・ビルダーとしての手腕が徹底的に発揮された演奏、という以外にちょっとコメントのしようがない演奏です。マーキュリーへのステレオ録音でもその片鱗は窺えますが、最晩年の懐の深い名録音を全く予想させず、この時期のメカニックな音の切り詰め方、情感に触れるのを禁じたストイックな演奏は、少なくともそのスタンスについてはトスカニーニやセル以上とさえ言え、聴き手に対しても、音楽を味わってもらおうという気持ちは排除して、音符を正確に鳴らすことのみに心を砕いていたように思えます。オケ全体にはやる気が漲り、響きも終始引き締まっていますが、あまりにも伸びやかさと広がりに欠け、窮屈なことこの上ありません。音の切り上げ方がどこを取っても、スパッと切って捨てるように聞こえ、第1楽章展開部など、メトロノームの前で演奏してるかのような無機質さ。第3楽章中間部や終楽章では、その引き締まった造型が曲想にマッチしている面もありますが、ここまで感傷を排されてしまうと、聴き手としては困ってしまいます。なお、このレーベルは良質のLPを復刻している専門レーベル(CD-Rではありません)ですが、元々オリジナルの録音がドライに捉えられていることと、この盤に限っては音のピッチがやや高く、補正した上で試聴したことを付け加えておきます。
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットの音色はドライで、フレージングもかなりザッハリヒ。弦とともに明確に縦の線が揃っているが深いニュアンスは感じられない。
ツボ2 かなりの快速テンポ。リズムをメカニックに刻み、感傷を排して直進。録音のせいか響きもニュアンスに乏しいので(、味わいに欠ける。
ツボ3 筋肉質アクセント。勢いに任せる感じ。
ツボ4 推進力を維持。
ツボ5 特に表情に変化はない。歌うそぶりさえ見せない。チェロとコントラバスの声部が多少強調されている。
ツボ6 スコアどおりに実行しているが、ここでも余韻に乏しい。さすがにアニマートからわずかにテンポが落ちるが、どこか機械的。
ツボ7 更にテンポを上げて駆け上がる。見事に揃ったピチカートで、オーケストラ・ビルダーとしてのドラティの資質を垣間見える。
ツボ8 ここから何の前触れもなく急激にテンポを落とすのでかなり唐突に聞こえてします。しかし「表情豊かに」からは程遠く、意識的に歌を避けているとさえ思える。
ツボ9 完全にインテンポ。16分音符は聞き取れる。極度に筋肉質の進行が、ここでやっと音楽と合致した感じ。
第2楽章のツボ
ツボ10 意外にも強弱の陰影が豊かで繊細!ホルンは輪郭が不明瞭なうえに残響に乏しい録音のために、単に音符を追っているようにしか聞こえない。これと絡む木管も同様。
ツボ11 わずかにテンポは落とし、強い弓圧で弾き切っているが、音楽が広がらない。
ツボ12 細かいちりちりノイズにかき消され輪郭が不明瞭。
ツボ13 全く等間隔でリズムが刻まれ、機械的。
ツボ14 響き自体は力強いのだが、フレージングが全く伸縮せず、実に窮屈。
ツボ15 今までの進行の中ではかなり繊細に歌っているほうだが、語りかけて来るものがない。
第3楽章のツボ
ツボ16 インテンポのまま突入。
ツボ17 ここは面目躍如!全く破綻なし。特に弦の妥協のない正確さは驚異的!
ツボ18 クラリネットとファゴットの連携は曖昧。
第4楽章のツボ
ツボ19 標準的なテンポ。5小節からの弦のテヌートを省略しているので余計にドライに聞こえるが、響きの均整は見事に取れている。
ツボ20 ホルンはほとんど裏方に徹している。
ツボ21 ティンパニは一切クレッシェンドせず、トレモロのまま。66小節のアクセントさえ行なわない。テンポは標準的。弦の刻みの強靭さがここでは最大に功を奏し、その威厳が素晴らしい。
ツボ22 アクセントは無視。
ツボ23 バスはよく張り出しているが、音の輪郭がやや甘く、力感もそれほど感じられない。
ツボ24 直前でわずかにテンポを落とし、ここからテンポを速める。
ツボ25 微かに聞こえる程度。
ツボ26 主部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 インテンポで直進。男性的な逞しさが満点。
ツボ28 8分音符の音価は完全にスコアどおりだが、最後のタイの引き延ばし音が異様に短い。
ツボ29 筋肉質な音楽つくりが曲の雰囲気にぴったりマッチ。
ツボ30 予想通り、弦もトランペットも厳格に音を切っている。ここまで徹底しているのも珍しい。
ツボ31 弦の音型を合わせてトランペットが斉奏し、完全にトランペットが主役。テンポもここから急き込む。
ツボ32 はっきり骨太の音色が勇壮。モルト・メノ・モッソから荘厳なテンポ設定。
ツボ33 最後はテンポを速めてそのまま直進。


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