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クリストフ・エッシェンバッハ(指)フィラデルフィア管弦楽団 | |||||||||||||
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Ondine ODE-1076 (1SACD) |
録音年:2005年5月 【デジタル・ライヴ録音】 | ||||||||||||
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カップリング:「四季」〜1月「炉ばたで」、2月「謝肉祭」、3月「ひばりの歌」、4月「松雪草」、5月「五月の夜」、 6月「舟歌」/クリストフ・エッシェンバッハ(P) |
“エッシェンバッハの繊細な感性が完全に生かされた第2楽章の素晴らしさ!” |
ストコフスキー、オーマンディと受け継がれたフィラデルフィアの豊麗なサウンドの魅力は、サヴァリッシュのもとでは影を潜めていましたが、エッシェンバッハはこのオケのトレードマークともいえるこの作品を奏でるにあたって、かつてのフィラデルフィアのふくよかなサウンドを復活させ、そこに自身の共感を盛り込むことを最初から念頭においていたのではないでしょうか?もちろんオーマンディ時代の団員は少ないはずですし、ONDINEの録音自体が柔らかいトーンで捉えられているので、どこまでがエッシェンバッハが築いた音色なのかは定かではありません。しかし、サヴァリッシュが維持したアンサンブル能力の高さに加えて、明らかにメロウな色彩感覚が加味されており、その点だけでもエッシェンバッハとフィラデルフィア管が早くも思相愛の関係になっていることが十分に窺えます。このチャイ5の素晴らしい点は、まずエッシェンバッハがこの曲のイメージを完全に確立しきっている点。どこにも表現に迷いがなく、単にスコアどおりの表現であっても、新鮮な感覚に彩られているのです。また厳しさよりも優しい情感を優先しているのも特徴的で、録音の性質と相俟って、力強いパワーには不足しますが、それを補ってあまりある魅力が満載です!特に第2楽章の素晴らしさは語りつくせぬほどで、「白眉」と言える瞬間が少なくとも4箇所以上存在します!まず4:14からの弦による副次主題のフレージング!何も奇を衒わず、フィラデルフィアの響きの質感に全てを託した渾身の歌は、零れる涙を優しく掬い取るような表情を湛えています。クラリネット・ソロ以降も同様。しかも、7:23からわずかにテンポを落とすセンスは、エッシェンバッハの感性が只事ではないことを示しています。終結部に入る直前で、これほど音を大切に吟味している演奏も珍しく、最後に副次主題を弦が繰り返すシーンに至っては、2連音の丁寧な扱いをはじめ、古今を通じて最も感動的な演奏の一つとなっています。終楽章の造型にも全く揺るぎがなく、表情が完全に音楽的な説得力に結びついていますが、実際に会場で鳴っていた音楽はもっと生々しい迫力に溢れていたものだとも想像され、音の線がより明確に捉えられた録音であったなら、更に感動的な名盤になったことでしょう。その点だけが残念でなりません。ところで、忘れてならないのがカップリングの「四季」。久々のピアニストトしてのエッシェンバッハの録音ですが、これが実に感動的!「炉ばたで」のなんと優しくまろやかな語り口!テーマが最初に奏でられるときと後半で再現されるときとでは絶妙に音色のトーンを変えるセンス、弱音で急速に駆け上がる瞬間に漂う憂い、最後の和音の可憐さ!この5分間だけでも言葉を失います!打って変わって「謝肉祭」ではリズムの跳躍とアゴーギクの自然さの見事な融合は、まさに天才的。「五月の夜」では、気品に満ちたアルペジョが心のときめきを反映。エッシェンバッハの音楽性には、指揮でもピアノでもどこか暗さが内包されており、南欧的な開放感と無縁の内向性が支配している要に感じられますが、そのことを再認識するのが「舟歌」。テーマの滑り出しは意外なほどインテンポでストレートに滑り出しますが、音が完全に頭をもたげきらないうちに優しく沈みこんでいく感触が何ともやるせなく、涙を誘い、中間部からテーマの再現に移る瞬間の絶妙な間合いの余韻にも酔いしれます。また、タッチも極上の美しさ!全曲でないのが実に残念でなりません。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | クラリネットよりも弦にやや比重をかけたバランス。温かな情感が息づき、序奏後半に進むにつれて、弦の響きに厚みを増し、表情が濃くなる。強弱の陰影感も素晴らしい。2度目の4分音符のテヌート下行でリタルダンド気味にして、早速主情的な表現を見せる。テンポは標準的。 |
ツボ2 | クラリネットとファゴットのユニゾンが実に繊細で温かな音色を奏でる。 |
ツボ3 | フワッと優しい感触。 |
ツボ4 | スコアどおりだが、どこか後ろ髪を惹かれるような哀愁が感じられ、オーマンディ時代を思わせるふくよかな音色感も魅力的。 |
ツボ5 | スフォルツァンドは無視し、全体をレガートで大きくフレージングを振幅させる。124小節に差し掛かるまでに徐々にリタルダンドして哀愁を掻き立たせる。 |
ツボ6 | フォルティッシモは声高に叫ばず、全体に優しいトーンを大切にしている。 |
ツボ7 | まろやかなピチカート。縦の線も良く揃っている。 |
ツボ8 | 実に優しげな表情!際立って個性的ではないが、エッシェンバッハの人間性がそのまま反映したような慈愛に満ちたフレージング。 |
ツボ9 | インテンポのまま突入。16分音符はほとんど聴こえない。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | フレージングを大きく捉え弦の両翼配置も効を奏して、空間一杯に音像が広がる。ホルンが絶品!心の底から歌い、音符を正確に追っているだけの瞬間など皆無。クラリネットとの絡みも絶妙。繊細なオーボエの音色もこのホルンと見事に連携が取れている。 |
ツボ11 | 音量だけで言えばもっと大音量のフォルティシシモも可能だろうが、絶世の美しさを誇る副次主題のフレージングが内面のヴォルテージを高めていく中での一つの頂点として築かれ、音楽的な説得力が絶大! |
ツボ12 | このクラリネットは感動的!スラーとテヌートを繊細に描き分け、音色も美しい。 |
ツボ13 | 一見何の特徴もなく響いているようだが、ピチカートの一つ一つに表情が感じられる。 |
ツボ14 | 直前の大きなテンポの溜めこみ方が迫真!フォルティシシモ以降の息の長いフレージング能力もエッシェンバッハの力量の高さと感受性を見事に象徴するもので、吸い込まれそうなほどの求心力を誇る。しかも弦の響きの均一感!こんな豊麗な響きは近年のフィラデルフィア感から聴かれなかったもの。フォルテ4つの頂点も縦割りサウンドではなく、今までの音色イメージを踏襲した温かな広がりを醸し出している点は、とても賞賛しつくせない! |
ツボ15 | 感動的!特に173小節からの減の2分音符の奏で方は絶対にお聴き逃しなく!前に進むのをためらうようなこんな表情は他では味わえない!ロストロポーヴィチ(旧盤)ほど耽溺していないにもかかわらず、こんな切ない表現が可能だとは! |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | ファゴット冒頭で一度テンポを落とす。フルートの入りでもテンポを落とす。 |
ツボ17 | ニュアンス一杯!もちろんメカニックの響くことはなく、団員一人ひとりが音楽の持ち味を理解していることが伝わってくる。 |
ツボ18 | 近接マイクでないのがかえって功を奏し、一本のラインで美しく繋がっている。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | テンポは標準的。ここでも威圧するような表現はとらず、人間的な温かみを維持。 |
ツボ20 | ホルンはほとんど裏方。 |
ツボ21 | ティンパニは、スコアどおり3回クレッシェンドを繰り返す。テンポはまさにアレグロ・ヴィヴァーチェだが、決してエキセントリックにならない。 |
ツボ22 | わずかにアクセントあり。 |
ツボ23 | 線が克明ではなく、張り出しも強くはないが、むしろ全体との溶けあいが美しい。 |
ツボ24 | 直前でギリギリまでテンポを落とし、ここからまたもとのテンポに戻る。 |
ツボ25 | 決してエッジは立っていないが、意思を持った一打。 |
ツボ26 | そのままのテンポで進む。 |
ツボ27 | ことさらテンポは速めない。452小節でテンポを落とす古いスタイルを踏襲。 |
ツボ28 | 8分音符はかなり長め。 |
ツボ29 | 充実感満点の弦の響き! |
ツボ30 | 弦は音を切る。トランペットは491小節では音を切り、493小節ではレガート気味。 |
ツボ31 | 改変型。 |
ツボ32 | 実に美しく轟いている。 |
ツボ33 | ほとんどインテンポ。 |
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