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ユストゥス・フランツ(指)フィルハーモニー・デル・ナティオネン | |||||||||||||
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QUADROMANIA 222178-444[QU] (4CD) |
録音年:1996年7月 【ステレオ・ライヴ録音】 | ||||||||||||
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カップリング/交響曲第2番、第4番、第6番「悲愴」、グリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲 |
“恐るべき不統一感で統一された駄演” |
このオーケストラは、バーンスタインの肝煎りでヨーロッパの有能を集めて創設され、現在は生前にバーンスタインの薫陶を受けたフランツがその意識を受け継ぎ、このオケを率いています。演奏は実にひどいものです。若い奏者はやる気満々である反面、確固たる音楽性に凝り固まっていない分、指揮者がそれらを統合して芸術品を築かなければならないことは言うまでもありませんが、ここでのフランツはその資質に欠け、オーケストラを効果的に鳴らす技術や、表現に一貫性を持たせる配慮も持ち合わせているとは思えません。何をしたいのか全く見えてこない演奏よりはましですが、全ての表情が思いつきのように唐突なので、心地よい衝撃にならずストレスになるばかりです。一見とてつもない爆演に聴こえますが、例えばバティスとメキシコ響の演奏と比較すれば、この演奏が音楽的な爆発になっていないことが歴然で、オケが大胆なニュアンスを音楽的表情に変換させるまでには至っていないのは、指揮者になぜそうしなければならないかを説く力量がないか、自身の音楽性に確信が持てないかのどちらかでしょう。ピアニッシモはどこまでも痩せ、フォルティッシモは音が大きいだけ。おまけに、風呂場のような残響も煩わしく、録音のレンジも微妙に変化するので、聴いていて気が気ではありません。こんな指揮者と付き合わなければならない若い奏者たちが気の毒でなりません。カップリングの他の曲も、見事なまでに思いつきの音楽に徹しており、以前CSで放送されたプロムスでの演奏もこんな感じでした。フランツは、ピアニストとして丹念な音楽作りをしていただけに残念でなりません。なお、このCDには録音年の表記がどこにもないので発売元に問い合わせたところ、自分たちにも分からず、おそらく1990年代であろう、という回答しか得られませんでした。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | 晩年のバーンタインばりに、スローテンポ。物々しく暗く旋律を漂わせる。クラリネットは全てテヌートで、全く息継ぎなしで10小節吹き通す。色彩ニュアンスには欠ける。 |
ツボ2 | 序奏の雰囲気からして全く場違いな軽快な弦の刻みが飛び出す。速めのテンポもあまりにも唐突。 |
ツボ3 | 全く何も感じずに音をなぞっているだけ。 |
ツボ4 | 呼吸は平板。2つの8分音符には何とそれぞれアクセントを付けている。スコアに書かれた強弱の振幅の意味を感じ取っていないとしか思えない。 |
ツボ5 | ここはスコアの強弱標記を最大限に生かしている。やる気満々の生命力が漲る。131小節の結尾のディミニュエンドがは、次のフレーズにつなげるのに美しく作用している。 |
ツボ6 | 前のテンポをほとんど崩さず、比較的スムースに進行。小節の頭で若干ポルタメントがかかる。アニマートからやや減速するが、それほど声高には歌い上げていない。 |
ツボ7 | 目立った特徴はない。 |
ツボ8 | 共感を込めて深々と歌っていると思ったら、175小節でいきなりピアニッシモにする小手先芸が登場して雰囲気ぶち壊し。おけもその意味を感じきっていないので、わざとらしいことこの上なし。 |
ツボ9 | 16分音符は聞こえる。響きがなんとも散漫。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 低弦の導入は不気味なほど無呼吸状態。第2ヴァイオリンの入りは実に入念。ホルンは危なげがなく、美しい。 |
ツボ11 | 一生懸命弾いているが、音楽に起伏がない。 |
ツボ12 | 技巧的に全く問題なく楽々と吹いているが、どこか嘘っぽい。テンポは変えていない。 |
ツボ13 | ハーモニーを気付けていないばかりか、変に弱々しく、音になっていない。 |
ツボ14 | 弦の響きが一貫して単調。しかもまたもや突然のピアニッシモを挟み、フォルテ4つの頂点では呼吸が全く硬直している。 |
ツボ15 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | インテンポでもなく、テンポを落とすでもない中途半端な突入。 |
ツボ17 | 各声部がバラバラ。 |
ツボ18 | 一本のラインで繋げようという配慮が感じられない。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 弦は相変わらず響きが雑然としているが、一音ごとに力感が漲る。テンポは標準的。 |
ツボ20 | 木管とホルンはほぼ同等のバランス。 |
ツボ21 | 冒頭手激烈にクレッシェンドした直後に弦の猛スピードで飛び込む。ティンパニは一定音量でトレモロのまま。とにかくこのスピード感は爽快だが、あまりの速さにピチカートなど全く響いておらず、緊張感を伴っていない。ムラヴィンスキーみたいにしたかったのだろうが…。 |
ツボ22 | 全く無視。 |
ツボ23 | せっかく全身の力を込めて弾き切っているのに、周りのパートが騒がしいので、全体像が美しくない。 |
ツボ24 | 同様の速いテンポのまま。 |
ツボ25 | よく響かない。 |
ツボ26 | そのまま快速。 |
ツボ27 | 無難なテンポ。 |
ツボ28 | 8分音符の音価は長め。 |
ツボ29 | 弦のテーマがまたもや強弱変化が不自然。アーティキュレーションも一貫性がまるでない。 |
ツボ30 | 弦ははっきり切るが、トランペットはテヌート気味。 |
ツボ31 | 残響が多過ぎてはっきりしないが、改変型と思われる。 |
ツボ32 | ごく普通の鳴り方という程度。その直後からアッチェレランド開始。この加速ぶりは、このために取って置いたかのよう。 |
ツボ33 | 560小節でまたもや音量を落とす。せっかくの力感をなぜ寸断したがるのか、全く理解に苦しむ。最後の4つの和音ではややテンポを落とすが重量感はない。 |
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