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ワレリー・ゲルギエフ(指)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 | |||||||||||||
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PHILIPS 475-6718 |
録音年:1988年7月 ザルツブルク祝祭大劇場 【デジタル・ライヴ録音】 | ||||||||||||
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“ゲルギエフ&VPOの相思相愛ぶりが灼熱の感動に直結!” |
ゲルギエフは、「春の祭典」や「展覧会の絵」など、自身の閃きとダイナミズムに規制をかけることなく臨める作品に対してはとてつもない衝撃をもたらしますが、交響曲という構成の枠組みがある作品では、どこかそのパワーの持って行き場うぃ失い、演奏全体が生煮えになることが多い気がしてならないのですが、チャイコフスキーの後期三大交響曲の中でもっとも古典的なフォルムを持つこの第5番に関しても、例外ではありません。日本でのPMFオーケストラの演奏や、あらゆる非正規録音にその印象は常に付きまとうのです。ただこのザルツブルク・ライヴに限っては、「ハルサイ」寄りの肉体的な躍動が随所に顔を出し、交響曲としての構成の均衡と渾身のダイナミズムが見事に融合して感動的な演奏に仕上がっています。この録音当時、ゲルギエフがVPOの指揮台に初めて登場して1年しか経っておらず、指揮者とオケが、付き合い始めた恋人同士のように双方の魅力に強力に惹かれ合う精神的な高ぶりも大きく作用しているのでしょう。 第1楽章は、前半は暗い情念を懐に蓄えたまま進行しますが、展開部の直前あたりから秘めた情念を次第にあぶり出し、展開部に入ると求心力の高いゲルギエフの棒はま済ます冴えてVPOに気迫にも拍車が掛かります。圧倒的頂点を築いた後に訪れる再現部は、再び暗いの内省のニュアンスに戻りますが、そのコントラストの激しさは比類なし。第2楽章もきわめてコントラストが強く、108小雪からの総奏のこの上ない壮麗さは強烈なインパクトを残します。第3楽章は中間部が必聴!肉体派ゲルギエフの音楽性が露骨に出た瞬間で、パート感の掛け合い妙がスリリング。終楽章は167小節からの運命動機の斉奏に象徴されるように、オケ全体を完全に掌握しきったことを如実に物語る強力な存在感!そして、終結部直前の追い込みから曲の最後までの緊張感の持続と、VPOがVPOであることを忘れたような捨て身の推進力と血管を全開にした灼熱の音の塊も、ゲルギエフの同曲の他の録音では見られない現象です。これは、ゲルギエフの交響曲録音の最高峰といっても過言ではありません。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | 低弦がゲルギエフらしいドスを効かせるなか、クラリネットはほの暗く憂いのニュアンスを湛える。全体に響きは熱く濃厚なロマンが横溢。アクセントも味が極めて濃い。 |
ツボ2 | テンポはやや遅め。VPOの道味を生かした程よい粘り気が哀愁を誘う。 |
ツボ3 | VPOらしさがそのまま出た箇所。かすかに上行ポルタメント気味ですすり泣くが、媚びた嫌らしさはない。 |
ツボ4 | 意外とストレートに流す。ちまちまと立ち止まらず、全体に一呼吸でフレーズを進攻させる。第1楽章結尾で、堰を切った様にアッチェレランドがかかる。 |
ツボ5 | 第2楽章冒頭のスフォルツァンドと、その5小節後のメゾフォルテの描きわけが絶妙。 |
ツボ6 | 徹底的にテンポを落として共感をあらわににする。VPOの弦の魅力も全開。 |
ツボ7 | ガラッと雰囲気を変えて小気味よいレスポンスでピチカートが駆け上がる。テンポもアップ。 |
ツボ8 | 再びテンポを落とし、甘美なニュアンスを心の底から表出。 |
ツボ9 | 16分音符はやや不明瞭。テンポは実に慎重で一歩一歩噛み締める進行。金管の強奏とティンパニの打ち込みのブレンド感が見事で、勇壮な雰囲気に満ち溢れている。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | ウィンナ・ホルンの場合、曖昧模糊とした雰囲気になりがちだが、ここではその音色の魅力がプラスに作用し、慈しむような優しさに包まれる。オーボエの巧さも特筆もの。 |
ツボ11 | 厚いハーモニーがギュッと凝縮され、求心力の高い呼吸を披露。 |
ツボ12 | ほとんどの演奏は、この箇所を出来るだけ滑らかに進行させるのが常だが、ここではゴツゴツとした感覚を残しながら苦悶のニュアンスが漂う。 |
ツボ13 | ピチカートの一音一音が、これほど身を切られるように切々と伝わる演奏も珍しい。 |
ツボ14 | フォルテ4つの頂点まで持ちこたえるスタミナの凄いこと!VPOの弦も管もこれ以上不可能という最強音を出し尽くし、壮絶な山場を築く。 |
ツボ15 | きわめて繊細で慎重なフレージング。決して女々しくならない。 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | テンポを落としてから入る。 |
ツボ17 | 目まぐるしいパートの連動が高速テンポに乗せて赤裸々に繰り広げられ、面白いことこの上なし。アクセントの挿入のセンスが抜群に良く、速めのテンポによるこの箇所の演奏としてはトップクラスの素晴しさ。 |
ツボ18 | 一つの楽器のように、とまでは行かないが美しい連動。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 威厳に満ち、安定感のあるテンポと響き。2つの16分音符の縦の線が0:29から多少ずれるが、大きな問題ではない |
ツボ20 | ホルンは完全に裏方。木管と低弦主導で進行。 |
ツボ21 | ティンパニは完全にスコアどおり。テンポはカラヤンに近い。ティンパニがかなり生々しく捉えられているが、その他のパートも量感があるので、手応え満点。 |
ツボ22 | 完全に無視。 |
ツボ23 | まさに体当たりで唸りまくる。 |
ツボ24 | 直前でテンポを落とすが、提示部冒頭のテンポで進行。 |
ツボ25 | 弱くはないが、明確にアクセントとしては位置付けていない。 |
ツボ26 | そのままのテンポ。 |
ツボ27 | ゲルギエフの体臭全開で高速疾走!トランペットの3連音は崩壊寸前だが、この域をいは誰にも止められない。 |
ツボ28 | 楽譜の音価どおり、極めて堅実な!他のパートが休符の間、ティンパニが463小節からクレッシェンドを繰り返す。この演奏に際して、リハーサル中に様々なアプローチを試みたとゲルギエフがインタビューで語っているが、この箇所もそのアイデアの一例だろう。但し、他のゲルギエフの録音では一切行なっていない。 |
ツボ29 | この冒頭部分の演奏の一つの理想形!ティンパニが物を言い、一切の綺麗事を廃して世界に君臨するような威厳を徹底的に誇示。 |
ツボ30 | 弦もトランペットも音を切る。 |
ツボ31 | 改変なし。 |
ツボ32 | 明瞭に聴き取れるが、もっと音が割れる寸前まで出しまくって欲しかった。 |
ツボ33 | 546小節からインテンポ。最後の2小節で念を押すようにテンポを落として締めくくる。561小節結尾の一音の極限のフィルティッシモは何度聞いても鳥肌!! |
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