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エリアフ・インバル(指)フランクフルト放送交響楽団 | |||||||||||||
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コロムビア COCO-70652 |
録音年:1989年3月9日、10日 フランクフルト・アレテ・オーパー 【デジタル録音】 | ||||||||||||
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ブラッハー:パガニーニの主題による変奏曲 |
“一切妥協なし!自身のロマンティシズムを投影し尽くしたインバルの快挙!” |
マーラー指揮者として名を馳せたインバルが、その暗い音色的な志向と一体となったロマンティシズムはここでも美しく結実しています!各楽章の特性を捉えた上で、リズムに乗せて快活に突き進む推進力を最後まで封じ込め、届きそうで届かない希望の光に懸命に立ち向かおうとするニュアンスが、独特の牽引力で聴く側を引き付けるのです。テンポ決して過激な設定を施すことはないですが、場面の変わり目のメリハリやアーティキュレーションの徹底した実行力は尋常ではなく、スコアを掘り下げながら自身の解釈を貫徹させた演奏として、ほとんど例のない仕上がりと言えます。その徹底ぶりは軽く流されがちな第3楽章で特に顕著で、羽のような軽さを求める向きには不満が残るかもしれませんが、その緻密な設計と共感表出の両立のさせ方は類例を見ません。終楽章の後半、モデラート以降の運命動機の確固たる音の切り上げ方は更に前例がなく、しかもその一見あからさまの意図が作品の自然な流れに障害を与えるどころか、「格調高い再構築」として説得力を持っているところに、インバルの並外れた才能を感じないわけにはいきません。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | インバルらしい仄暗い色彩と粘着質のフレージングが琴線に触れ、クラリネットの音色は美しい。序奏部全体を通じて、弦とのバランスも良く、主要動機の意味を過不足なく聴き手に伝えている。 |
ツボ2 | やや遅めのテンポで引きずるように弦がリズムを刻む中、木管のテーマが陰りを帯びた音色で語る。 |
ツボ3 | 上の音に上がるのをためらうような悲しみが宿り、決して拍節を縦に刻まない。 |
ツボ4 | ケンペほどではないが、わずかにテンポを落とし、溜息をつくようにて沈み込む。 |
ツボ5 | 冒頭のfpは無視し、4小節分を大きく一息で呼吸させる。繰り返しの120小節からは更に陰影が濃く、結尾でリタルダンド。しかも啜り泣きを誇示せず、美しい弦の響きを維持している。 |
ツボ6 | 強弱の差は抑え、基本的にインテンポの中で一音一音が感じきったニュアンスを発している。 |
ツボ7 | ffで活気付いて駆け上がるのではなく、今までの余韻を温存しながらデリケートに弾む。テンポはわずかに速める程度。 |
ツボ8 | 意外にも一切間を空けずにすぐに副次主題へ移行。第3主題のように新たな存在感を与えることなく、全体の構成を見通した上での配慮かもしれない。 |
ツボ9 | 16分音符はよく聞き取れない。ティンパニの威力に頼ることなく荘重な雰囲気を湛え、この楽章全体の統一したトーンつくりを見事に貫徹させている。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 冒頭の弦は4小節と5小節の間で間をしっかり取る。ホルンは音色的な特徴こそ希薄だが、音符に音を乗せるだけにとどまらず、余韻をかみ締め、音の末端まで音楽を感じた素晴らしい表現。絡む木管も同様。 |
ツボ11 | ここでも大げさな高揚は見せず、美しい抑制が効いているが、内面に力感をふんだんに湛えている。 |
ツボ12 | このクラリネットも実に儚い美しさを漂わせる。 |
ツボ13 | インテンポではあるが、今までの傾向どおり、機械的なものではなく、各音に余韻が漂う。 |
ツボ14 | 142小節最後の8分音符を16分音符に変更。キリッとしたフレージングを志向するインバルの趣味によるものだろう。ちなみに、同旋律を弦で奏する45小節も同様の処理を行なっている。呼吸も渾身。 |
ツボ15 | 優しく微笑みながら語り掛けるが芯は、音楽の芯はしっかり立ち上がっているのがインバルらしい。 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | わずかにテンポを落とすが、元のテンポが遅いので、すぐにはテンポを戻さず、ゆっくり時間をかけてテンポを戻すのが特徴的。してから進行。 |
ツボ17 | 音色自体にケンペ=BPO盤の様な魅力に乏しいものの、この中間部の陰りの濃さは古今を通じてトップクラス。スパッと吹っ切れて愉悦に浸る演奏が多い中、この表現意欲は天晴れ。 |
ツボ18 | 木管の連携は輪郭が明確ではない。223小節からの弦の長いタイが最後の末端まで引き切って、直後にテンポを落として優しく囁くという細心の配慮が見事。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 懐が深く大きなフレージング。決して威圧的なものではなく、どこか屈折した悲しみを秘めているのはここでも同じ。テンポはごく標準的なもの。 |
ツボ20 | ホルンはほとんど裏方だか、後半わずかに浮上。 |
ツボ21 | ティンパニは58小節でアクセントを置くのみ。テンポはカラヤンに近い。ここでも完全に生命力を前面に出すことなく暗さを引きずっている。98小節から延々と続くホルンの8分音符の刻みが弱音からffに達するまでの過程まで漏らさず表現しつくした非常に稀有な例。 |
ツボ22 | 明確にアクセントを施す。 |
ツボ23 | バスは強く張り出すことはないが、主張は感じられる。ヴァイオリン・パート極めて克明。 |
ツボ24 | ほとんどインテンポ。 |
ツボ25 | 聞き取れるが線は克明ではない。 |
ツボ26 | 直前で一旦テンポを落とした後、元のテンポ。 |
ツボ27 | 直前でテンポを落としてからテンポアップ。全パートのバランスが良好。 |
ツボ28 | 8分音符の音価は完全にスコアどおり。 |
ツボ29 | ここで初めて全て雲が晴れ、高らかに勝利を謳歌する。 |
ツボ30 | 弦もトランペットも厳格に音を切っているが、ここまでその意図をあからさまなほど徹底させた例はほとんどない。 |
ツボ31 | 改変あり。 |
ツボ32 | 明快な音色。 |
ツボ33 | 546小節から完全インテンポのまま終結。一切の小細工を要しないということを納得させられる締めくくり方! |
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