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チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64
ルドルフ・ケンペ(指)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団    
第2楽章ホルン・ソロ:
TESTAMENT
SBT-1100
録音年:1959年5月2日〜6日 ベルリン・グリューネヴァルト教会 【ステレオ録音】
演奏時間 第1楽章 15:41 / 第2楽章 12:59 / 第3楽章 6:32 / 第4楽章 13:10
カップリング/歌劇「エフゲニ・オネーギン」〜ワルツ、手紙の場面、ポロネーズ('57)
“当時のBPOの音色美とケンペの誠実さが完全融合した、歴史的名演奏!”
ケンペにとってもBPOにとっても、これは間違いなく最高の傑作の一つです!オケの響きは、まだカラヤン色に染まりきっておらず、フルヴェン時代のコクと深みを湛えた音色、アンサンブルのセンスは惚れ惚れするほどで、全楽章を通じて、惰性で鳴っている箇所など皆無と言っても過言ではありません。とにかく音そのものが音楽的なのです。その魅力を十分認識した上で、自身の誠実な構築と歌のセンスを自然な形で盛り込んで、至高のチャイ5像を築いたケンペの力量は、どんなに賞賛しても足りません。全体を通じてアゴーギクは最小限に止めながら、勘所のみテンポ操作を行い、第1楽章ではメンゲルベルク同様のテンポ・ルバート見せるなど、表情のメリハリのセンスも素晴らしく、ケンペが決して堅物ではないことを如実に示しています。決して直截なダイナミズムを狙った演奏ではないので、感覚的な痛快さはありませんが、それによって醸し出されるニュアンスの溢れ出しは、これに勝るものがありません。第2楽章の草書風の呼吸の妙、古今を通じて最も遅いテンポに属し、それでいながら全く流れが停滞しない第3楽章は、まさに木目調の風合い!こういう部分は、できることならLPで聴いて、その音の粒が全身の皮膚に直接浸透するのを体感していただきたいものです。
第1楽章のツボ
ツボ1 深みを湛えたクラリネットの音色と歌のセンスは史上トップクラス!支える弦もしっかりと芯のある音で意味深く迫る。
ツボ2 やや遅め遅めのテンポ。ここでも木管の音色が魅力的。
ツボ3 デリケートで優しさに満ち溢れている。
ツボ4 73小節結尾で、メンゲルベルクと同様の絶妙なテンポ・ルバート!しかも気品が漂う!展開部でも同様。
ツボ5 インテンポのまま、毅然とした表情。
ツボ6 情に溺れず、楽譜どおりに弾きながら、熱い共感が漲る。
ツボ7 このピチカートも芯の強い見事な響き。
ツボ8 前の箇所から少しも間(ま)を置かずにスムースに移行するのが洗練の極み!ほとんどインテンポで流れるが、決して無機質にならない。
ツボ9 ややテンポを速める。このフルートとオーボエのコクと凄みは比類なし!16分音符の頭は、ほとんど聞こえない。
第2楽章のツボ
ツボ10 当時のBPOの弦の威力が全開。テンポは粘らず洗練されているが、訴え掛けが強い。ホルンは過度な弱音を避け、朗々と鳴るが、音色もフレージングも格調高く、男の哀愁を感じる。テクニックも万全。クラリネットの芯のある音色も印象的。
ツボ11 小手先の力で圧倒せず、自然な膨らみが醸し出す。
ツボ12 ここもインテンポで決然と進行するが、説得力絶大。同じことを凡庸なオケと指揮者がやったら、何も湧き上がってこないだろう。
ツボ13 ピチカートの後半の方で少しリタルダンドする。響きはここでも充実の極み。しかも、主題をヴァイオリンが弾き始めてからも、このピチカートが終始強靭に支え続ける。
ツボ14 圧巻!コクと輝きを兼ね備えた全斉奏が熱く高揚し、フォルテ4つで見事な頂点を築く。
ツボ15 ここも一見淡白なインテンポだが、深い部分での共感が磐石。LPで聴くと、一層胸に染み入る。
第3楽章のツボ
ツボ16 全体にテンポが遅めなので、ここもほとんどテンポを変えずに入る。
ツボ17 直前のピチカートの凄みが、強烈なインパクト!中間部では、全パートに渡り、ムラなく音色の魅力が備わっているのが、よく分かる。現在のBPOとはまるで別物。
ツボ18 危なげなし。
第4楽章のツボ
ツボ19 音の末端まで感じきった弦は、しなやか、かつ勇壮。テンポは標準的。
ツボ20 ホルンは終始裏方。その分、弦の強靭な支えの発言力が凄い。
ツボ21 ティンパニは、冒頭で少しクレッシェンドし、そのままの音量で最後まで通す。一撃追加は一切ない。弦は実直にリズムを刻み、その弦の威力で音楽を熱く凝縮させる。ベートーヴェンを聴くような精神的な深みが横溢。テンポは標準よりやや遅め。このテンポのおかげで、各パートの巧さがより一層引き立つことになる。
ツボ22 若干アクセントあり。
ツボ23 バスのみが突出せず、極端に大きい音も出していないが、音の輪郭が克明で、心をえぐるように響く。
ツボ24 主部冒頭より若干速いテンポ。
ツボ25 音は強くないが、全体のバランスから見て適切に思われる。
ツボ26 提示部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 少し速まる。金管の響きは、はここでも輝かしいさとコクが魅力。
ツボ28 8分音符は長め。
ツボ29 手作りの温もりと神々しさを併せ持つ響きで、運命の勝利を高らかに謳い上げる。
ツボ30 弦は切るが、トランペットはつなげるようにして吹いている。
ツボ31 スコアどおり。やや意外。
ツボ32 絶叫しないが、格調高くよく響く。
ツボ33 最後の4小節で若干テンポを落とす。決して叩き付けるような力感を誇示せず、淡白な締めくくりだが、全体の響きの充実ぶりによって独特の手応えを感じる。


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