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パウル・クレツキ(指)バイエルン放送交響楽団 | |||||||||||||
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EMI CZS-5754682 (2CD) |
録音年:1967年5月19日 ミュンヘン・ヘラクレス・ザール 【ステレオ・ライヴ録音】 | ||||||||||||
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カップリング/ベルリオーズ:「ベンベヌート・チェルリーニ」序曲(フィルハーモニアO.
'51※)、シューベルト:「ロザムンデ」間奏曲(RPO.
'58)、ドヴォルザーク:スラブ舞曲Op46-6.7、Op72-2(フランス国立放送局O.
'61)、メンデルスゾーン:序曲「静かな海と楽しい航海」(イスラエルPO.
'54※)、ブラームス:交響曲第4番(チェコPO.
'65※)、ワーグナー:ヴェーゼンドンクの歌〜第5曲(フィルハーモニアO.
'58)、チャイコフスキー:イタリア奇想曲(フィルハーモニアO.
'58) ※はモノラル録音。全て初CD化。 |
“想像を絶する波乱の満ちた驚愕のチャイ5!” |
EMIが発売した「20世紀の偉大な指揮者シリーズ」は、どれも製作者の見識の高さを感じさせる選曲内容になっているのには驚かされますが、全曲初CD化のクレツキ盤はまさにその好例。未だその真価が広く認識されているとは言いがたいクレツキの芸術性を様々な曲目から味わうことができると同時に、ユダヤの血の底力とも言うべき怒涛の感性に圧倒されることになるのです。「チャイ5」は、聴き手の裏をかくようなアクセント、強弱付加、テンポ設定、突発的な激情、極端なすすり泣き…。とにかく楽譜なぞっているだけの部分は皆無に近く、感覚的に奇異に聞こえる部分が頻出しますがそれらをバラバラに放置するだけではなく、チャイコフスキーの本音を汲み取っているかのような説得力と独特の緊張感で一貫しているので、最後まで引き込まれてしまいます。第1楽章の冒頭は異様な遅さで悲哀を込め、第2主題へ救いを求めるように加速を強める迫真のドラマ性、、96小節のティンパニの不思議な突出効果が鮮烈。展開部は決死の進行が続き、手に汗握ります。第2楽章は、クレツキの知られざるイメージ力、弱音を多用せず、何気ない木管の副旋律もくっきり浮き立たせるので、表情が千変万化。最後に現われる運命動機の絶叫と直後の不安の沈静のコントラストも、指揮芸術の極みと言えます。第3楽章がここまで濃密に描かれ、トリオに差し掛かるまでに、フレーズの見事な奔流によって手応えを十分に感じさせる演奏は滅多にありません。しかもそのトリオは、急速なテンポで一気呵成に突き進みながら、オケの機能美をフル稼働して、持てる表現力の全てをぶちまけているのには唖然とさせられます。終楽章も、冒頭から弦が入念にフレージングを行い、ピチカートにも強靭な意志を込め、一筋縄ではいかない展開に終始。表面的な迫力では到底追いつかない深いニュアンスと真の激情が、胸に深々と迫ります。楽器のバランス配分も独特ですが、全てが真実の叫びとして発せられるので、そのインパクトは絶大!コーダの想像を絶するテンポ設定もスリル満点で、他のパターンなど想定させない確信に満ち溢れています。オケが一丸となっての打ち込みようも尋常ではありません。最高の音楽センスと機能美を兼ね備えたオケとして知られますが、ここではそれに加え、音色が、かつてこのオケから聴いたこともない色彩で統一されているのには驚きを禁じえません。クレツキが、完全にオケを掌握し、自身のイメージを浸透させている何よりの証しでしょう。実は凄いのはこのチャイ5だけではありません!見事な凝縮力としなやかなフレージングが完全一体化したメンデルスゾーンの「静かな海と楽しい航海」序曲は、どんなに言葉を尽くしても足りないくらい感動的!序奏部は透明感と深々とした海の広がりそのもののテクスチュアに溢れ、主部突入の壮絶な呼吸の飛翔、リズムの果てしない沸き立ちが聴き手の全身を揺さぶります。当時のイスラエル・フィルのヴィルトゥオジティにも驚愕!全世界の隅々にまで発するメッセージのように鳴り渡るこの演奏の右に出るものがあるでしょうか!「イタリア奇想曲」は独特のテンポ設定の妙にご注目!スラブ舞曲は、なんとコンサート・ホール音源!原盤は失われているのでもちろん「板起し」ですが、そこまでして収録した理由が痛いほど分かります。Op46-6のふんわりとした情感、木管のスタッカートに宿るチャーミングな風情には、身がとろけそうになります。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | クラリネットも弦も一様に野太い響きで濃い陰影を湛える。テヌートも雰囲気満点。 |
ツボ2 | チェリビダッケ並みの超スローテンポで開始。木管はそのテンポに完全に乗り切れず、やや走り気味だが、暗い雰囲気を保っている。 |
ツボ3 | 確実な弓圧でしっとりと奏でる。 |
ツボ4 | ややテンポ・ルバートが掛かる。 |
ツボ5 | 綺麗な弧を描くような強弱の振幅ではなく、小節ごとに発作的に音量が強まったり弱まったりするのが異様。それがチャイコフスキーの屈折した心情を映すかのように胸に迫る。 |
ツボ6 | どこか不安げな呼吸の揺れが鮮烈。 |
ツボ7 | 病的な色彩の放射が不気味!縦の線の乱れがその印象をさらに強めている。 |
ツボ8 | 低弦の問い掛けが異様に強く、それに対して高音域の弦が抵抗するかのようにうねる様が妙に艶かしい! |
ツボ9 | ほとんどテンポを上げないが、緊張がじりじりと高まり、フォリティシシモの箇所から壮絶なパワーで激高! |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 弦の導入は、強弱よりも各音の入念は表情付けを重視。ホルンは安定感抜群。ホルンが吹いている最中、コントラバスが意味ありげにゴリゴリ動くのが異様。 |
ツボ11 | 直前まで加速しておいて、ここで激情を一気に開放する。全くもったいぶらず、ストレートな呼吸。 |
ツボ12 | クラリネットの響きはやや明るめで線が明確。ファゴットも巧い。しかし共に何か切迫した雰囲気を携えている。 |
ツボ13 | 直前のアッチェレランドが凄い!全休止が訪れるまで全く掛けない無謀運転はまさに決死!その後だけに、このピチカートの囁きの意味深さは絶大。 |
ツボ14 | テンポの揺れ自体は少なめだが、音の熱さが尋常ではない。フォルテ4つの頂点の前後の築き上げも決して起用ではないが、崖っぷちの危機感を煽って壮絶。 |
ツボ15 | この泣きながら必至で笑顔を見せるような表情は、他では聴けない! |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | ややテンポを落とす。2度目も同様。 |
ツボ17 | ここから一段テンポを上げる!しかも表情の多彩さは眩いほどで、このオケの機能性と音楽性が最高次元で大全開!この部分に関してはこれに披見する演奏は少ない。このテンポのまま最後まで行ってしまうと思いきや、なんと再現部ではいつの間にかもとのテンポに戻っている!恐ろしい技!! |
ツボ18 | 太い線で下行。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | テンポは中庸。相変わらず弓圧が強く、表情も入念を極める。 |
ツボ20 | ホルンをかなり強調。しかし木管の力感も並ではない。 |
ツボ21 | 主部突入前の48小節(2:28)で、ティンパニが一度クレシェンドするのがユニーク。主部冒頭は小さなクレッシェンドを繰り返しながらささやかなトレモロに終始するだけだが、その弱音トレモロが妙に意味深い。一方の弦の刻みは、唐突に裸の音で切り込み、段階的に音量を強めるのには刹那的な怖さを覚える。テンポ自体は中庸。 |
ツボ22 | ほとんど無視。 |
ツボ23 | レガート気味に、お化けのように潜入して来るのが不気味! |
ツボ24 | 今まで全くその片鱗すら見せなかった超快速テンポに激変! |
ツボ25 | その勢いに任せて強打するかと思うと、これが最弱音でポン。参りました! |
ツボ26 | 主部冒頭のテンポに戻る。 |
ツボ27 | 快速テンポ。急速なパッセージを引き続ける弦が必死で緊張を煽る。 |
ツボ28 | 本来の音価よりやや長め。最後にティンパニの一撃を置くが、その響きが素晴らしい! |
ツボ29 | テンポは通常よりやや速め。トランペットの副旋律を徹底的に抑え、弦の音像を際立たせている。それによって高潔なフレージングに一層輝きを増している。 |
ツボ30 | 弦もトランペットもテヌート寄り。 |
ツボ31 | 改変版。502小節でのティンパニが大強打でリズムを間違えて崩壊寸前になるのでヒヤッとするが、すぐに立て直す。 |
ツボ32 | それほど大音量ではない。 |
ツボ33 | 終わりに差し掛かる555小節から急にテンポを上げ、最後から4小節前でまたテンポを落とし、再び最後の2小節で快速で和音を叩きつける。実に手の込んだ演出だが、全て音楽的にも響き的にも充実しきっているので感動に直結。 |
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