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小林研一郎(指)アーネムPO&日本POの合同オーケストラ | |||||||||||||
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オクタヴィア OVCL-00295 (1SACD) |
録音年:2007年3月6日 サントリー・ホール 【デジタル・ライヴ録音】 | ||||||||||||
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“総勢160人の巨大オケが繰り広げる熱演の意味” |
いくら演奏に定評があり、発売するたびに確実に売れるからといって、ここまで節操なく同じ曲をリリースし続ける意味がいったいどこにあるのでしょうか?チャイ5フェチの私でさえ理解に苦しみます。チャイ5のディスクの数で言えばムラヴィンスキーの方が圧倒的に多いですが、言うまでもなくそれらは録音を前提としてものではありませんし、カラヤンの場合はオーディオ的な進歩と共に更なる自己実現を目指したという側面がありました。しかしコバケンの場合は、その確信に満ちた迫力満点のアプローチは毎度天晴れだと思いますが、オケを変えたという点以外に新たな発見がなく、どれが一番の名盤かとなると、結局録音状態やオケのレスポンスの良さで判断するしかありません。しかもこの録音、ライナーの中で小林氏自身の言葉として紹介されているように、「2つの合同オケの演奏によって通常にはない熱狂を聴衆にもオケにも体感してもらい、音楽の味わいも際立たせたい」というのが狙いだったようですが、この一見矛盾するような「熱狂」と「味わい」という要素が、最後まで結合しないまま過ぎ去ったという印象を拭えないのです。この日舞台に上がったオケの総人数は約160人!ホルン8人、コントラバス16人など、ほぼ全てのパートにおいて通常の約倍の人員を配していますが、感動も迫力も倍になっているかというと全くそんなことはなく、むしろ音像が混濁するために音楽がビシッと立たず、走り慣れていない巨象を無理矢理引っ張り回したような、とでも言いましょうか、とにかく音楽の内面に手のつける暇もなくただ勢いで突っ走ってしまった演奏なのです。さらに困ったことに、オクタヴィア録音の悪い癖がまたしても表面化。エンジニアの単なる趣味と思われる特定の楽器のクローズアップが見え見えで、今回はティンパニが異常なまでに克明に鳴っています。感覚的に痛快に感じる場面もありますが、どこもかしこも同じ明瞭さで鳴り響くことなどあり得ず、あまりにも浅はかな仕事と言わざるを得ません。音楽の陰影を感知するセンサーが製作陣には欠落しているのではないでしょうか?ディスクとして演奏を後世に残そうと考えるならば、当日の演奏の印象ではなく、ディスクからどういう音楽となって再現されるのかを、真摯に謙虚に聴き込んでもらいたいと、製作陣にもコバケン本人に対しても心から願うばかりです。ディスクを聴く人にとっては、そこから出てくる音が全てなのですから! アーネム・フィルも日フィルもコバケンの流儀を完全に会得しているので、独自のテンポの設定には俊敏に反応し、その他の音楽的な要求にも真正面から対応していることは十分感じらせます。ショスタコーヴィチの祝典序曲を聴くような感覚で接すれば、こんな楽しいチャイ5は他にありません。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | クラリネットの最初の18分音符がなんと3連音になっている、おそらく4本以上で吹かせたせいで縦の線がずれたのだと思うが、核心中の確信のテーマがこれでは致命的。それにも増して、弦の音量が大き過ぎ、著しく興が削がれる。全体に大味なだけで音楽的に聴き手に語り掛けるものが置き去りにされている。 |
ツボ2 | 軽快なリズムに乗せ、早めのテンポで推進力のある音楽を展開。クラリネットとファゴットはきれいに溶け合ってはいるが、録音のせいか音像がぼやけている。 |
ツボ3 | 特に配慮はしていないが、勢いに乗せて浮上。 |
ツボ4 | テンポが速いため、スラーの切れ目が明確ではないが、全体に意志の強い音を発していて説得力がある。 |
ツボ5 | ここから急激にテンポを落とし、徹底的に感傷的にすすり泣く。そのニュアンスに嘘っぽさはないが、それまでの男性的な進行とはあまりにも正反対で、それがコントラストを成すのではなく唐突な現象になってしまってるのが残念。 |
ツボ6 | この上さらにテンポを落として感傷に浸る。ムーディに凝り固まってしまったため、今度はこの部分のスフォルツァンドも、フォルティッシモの飛翔も表情が引き立たない結果となってしまった。 |
ツボ7 | 人数が多い分、ピチカートには深みが出ている。 |
ツボ8 | 高弦のテクスチュアが美しい。 |
ツボ9 | ここから急加速するのは、コバケンのいつもの常套手段だが、このコントラストがもっともクッキリと表出され、成功しているのはこれかもしれない。もちろん16分音符は不明瞭だが、この際問題ではない。ただし、その後少しずつテンポを落とした後、コバケンは荘重なサウンドをイメージしていると思うのだが、その点では中途半端。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 導入の弦は量感がありすぎて物々しい。ホルンは音色が美しくテクニックも上等だが、ニュアンスが平板で、呼吸も浅い。びくびくしたようなオーボエも気になる。 |
ツボ11 | ティンパにのみを突出させてごまかさないところが良い。グワンッと音楽を浮上させる高揚感が、それまでの感傷的なアプローチとマッチしている。 |
ツボ12 | なんとクラリネットの9連音が7連音!そうだとしたらこれまた前代未聞の致命傷。聞き違いだろうか? |
ツボ13 | かなり強い音で響かせて実に勇ましいが、この後に続くフレーズとの兼ね合いを考えると、なぜここまでいきり立つのか理解できない。 |
ツボ14 | 雄渾なティンパニの一撃が絶品!フォルテ4つの最高潮点は160人の人数を考えればもっと壮大なものになってよいはずだが、ごく普通の出来ばえ。 |
ツボ15 | 大味で、心身と染み入るような繊細さに掛ける。180小節以降の入念な沈静のさせ方はさすがコバケン!ただ、181〜182小節のテンポの落とし方は呼吸が不自然に長く恣意的に響く。 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | テンポを落とす。 |
ツボ17 | 拍の頭にアクセントをつけて推進力を加味する工夫を施す。レスポンスは俊敏とは言えず、弦が必至なのに対し管楽器がほとんど飾りのように響いているのも惜しい。 |
ツボ18 | まるで聞こえない!もちろん強調する必要はないが、オケの編成が普通ではないのだから、それこそ録音編集でバランスを修正するべきだったのではないだろうか? |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 標準的なテンポ。弦同士の溶け合いも良好。 |
ツボ20 | ホルンは裏方に徹している。この間終始弦がもぞもぞと煩わしい。44小節から、突如ティンパニが盛大に鳴り響く。硬いバチに変えたのだろうか?あまり良い趣味とは言えないようだが…。 |
ツボ21 | コバケン節全開!超快速でアクセルを踏み続けて痛快この上なし。58、60、62、64、66小節の各頭に強烈な一撃アクセント置くのはコバケン独自の流のアイデアだが、どの録音よりも音が明快で横面をぶん殴っているかのよう。やや編集でクローズアップした感は否めないが、ここまで露骨にやられると楽しんだほうが勝ちかも。 |
ツボ22 | アクセント大好きなコバケンらしく完全に履行。しかも説得力絶大。 |
ツボ23 | 普通の量感。 |
ツボ24 | 主部冒頭と同様のテンポ。 |
ツボ25 | なぜかやや鈍い。 |
ツボ26 | 直前で一瞬テンポを落とし、後は主部冒頭のテンポ。 |
ツボ27 | ここも快速。トランペットは安定している。 |
ツボ28 | 楽譜に忠実と言える。とにかくティンパニが盛大! |
ツボ29 | 開放感満点。コバケンが両手を左右に広げ、不動のまま天を仰いでいる様子が唸り声からも伺える。 |
ツボ30 | 弦もトランペットもレガート気味 |
ツボ31 | 改変型。 |
ツボ32 | 近年稀に見る音の小ささ。他の音量に掻き消されてしまっている。 |
ツボ33 | 504小節のプレストから加速。546小説からはほとんどの指揮者がテンポを落とすが、ここでさらにテンポアップするのがコバケン流。興奮のツボを心得ているコバケンならではの技。あとはそのまま猛進し、最後の4小節でテンポを落とし重厚に締めくくる。 |
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