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チャイコフスキー:交響曲第5番
クルト・マズア(指)フランス国立管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ: SARAH NEMUTANU
Naive
V-5040[NA]

録音年:2005年6月2日、3日 サン=ドゥニ大聖堂(サン=ドゥニ音楽祭) 【デジタル・ライヴ録音】
演奏時間: 第1楽章 15:33 / 第2楽章 12:47 / 第3楽章 6:01 / 第4楽章 12:51
“マズアとフランス国立管の良好関係を示す好演”
ほとんど旧盤と同じアプローチを踏襲しており、マズアの表現手法がしっかり確立していることを如実に示しています。しかし、よく指摘されるマズアの音楽作りのスケール感不足が、この録音では露呈されてしまっている気がしてなりません。また、大聖堂の残響で音が拡散してしまい凝縮力の強い音は臨むべくもなく、ダイナミズムに更に歯止めをかけています。したがって、弱音でしなやかに歌う箇所はきわめて美しい表情が湧き上がるものの、ティンパニを伴うトゥッティでは、全くといってよいほどエネルギーが増幅されず、フォルテもフォルティシシモも同じようにしか聞こえないのです。しかし、ティンパニがはっきり聞こえない録音は、古い録音にいくらでもあります。そのハンディだけで、音楽的な興が削がれてしまうということは、やはりマズアの音楽作りの限界を示しているのかもしれません。フランス国立管の演奏そのものは実に素晴らしく、ライヴならではの些細な傷(第1楽章101小節から106小節までのティンパの音が通常と異なるのは奏者のミスか?)はあるものの、第1楽章再現部で主題を吹くファゴットが感動的であるなど、個々の奏者のセンスも素晴らしいものがあり、マズアの指示に真摯に応えていることも十分に伺い知ることができます。ここでマズアがやろうとしていることは、旧盤で既に徹底的に行なっているものなので、この再録音の意義は、オケとの良好関係を示すに止まってしまったようです。
第1楽章のツボ
ツボ1 濃密なレガート、クラリネットと弦のバランスが美しく、暗い情感を見事に表出。特に2本のクラリネットから引き出されるの色彩の彩は、フランス的な香気も感じさせて魅力的。旧盤と甲乙付けがたい素晴らしさ。
ツボ2 足を引きずるような弦のリズムに乗せ、クラリネットとファゴットが互いに好バランスを保ちながら哀愁たっぷりに歌う。、前の雰囲気を見事に受け継いでいる。アレグロのリズム感を避け、沈鬱なニュアンスで一貫。
ツボ3 何と柔らかく儚いすすり泣き!この一瞬のクレッシェンドがこんなに心に迫る演奏は実に稀!
ツボ4 旧録音同様、愁いを帯びた脱力の表情が心を打つ。
ツボ5 スフォルツァンドをそれほど意識せず、しなやかなフレージングを重視。
ツボ6 基本的にインテンポだが、繊細な息づかいが流石に老練の技。フォルティッシモは決して声高にせず、デリカシーを維持。
ツボ7 フランス的な軽やかさが印象的。
ツボ8 旧録音と同じく、各小節最後の8分音符で弓を一杯に使いきり、粘りながら歌う表彰が独特だが、旧録音ほど徹底はしていない。
ツボ9 前の部分からインテンポのまま進行。冒頭16分音符はやや曖昧。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦は、旧録音と同様、一音ごとに丁寧にニュアンスを盛り込んだスケール感豊かな表情。ホルンは、大聖堂の残響と一体となって美しい。
ツボ11 それほどスケールは大きくないが、個々ではティンパニが全体に見事にブレンドされ、音楽的な効果をもたらしている。
ツボ12 インテンポで突入するが、70小節で更に音量とテンポを落として情感を込める。
ツボ13 縦の線がピタリと合っているが、やや機械的。その後の弦とオーボエの対話は美しい。
ツボ14 心から熱いフレージングを繰り広げているようだが、録音のせいか、どうも力感に欠ける。
ツボ15 特に印象的な歌わせ方ではないが、心はこもっている。
第3楽章のツボ
ツボ16 思い切りテンポを落とし、フルートが加わる70小節でももう一度テンポを落とす古いスタイル。ファゴット奏者(サックスのように響く)の音楽的なセンスが光る。
ツボ17 意外とリズムが思い。
ツボ18 あまりにもだらしない下行。
第4楽章のツボ
ツボ19 旧盤同様、慎重な滑り出し。テンポはやや遅め。音量は控え目。
ツボ20 木管も含め全体に弱音を通がホルンはよく聞こえてくる。ティンパニが初めて登場する直前まで音量を抑制するのは旧盤同様だが、あまり表情に結びついているようには感じられず、メロウな印象しか残らない。
ツボ21 ティンパニは終止ピアニッシモとしか聞こえない!65小節でやっと浮上するが、いかにもエッジが甘い。テンポは標準的なもの。
ツボ22 旧盤よりも明確にアクセントを置いている。
ツボ23 力感がまるで感じられない。
ツボ24 ここからテンポをアップするが、音自体の腰が軽く、推進力を感じさせない。
ツボ25 無気力な一打。これなら叩かない方がマシ。
ツボ26 提示部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 音が熱しきれておらず、奮が高まらない。
ツボ28 スコアに忠実。
ツボ29 冒頭木管3連符の猫撫で声のような音量の弱さは何を意味するのだろうか?どう考えても不可解。弦の主題も当然ただ上品なだけにならざるを得ない。
ツボ30 弦もトランペットも音を切っているが、ともに曖昧。
ツボ31 改変なし。
ツボ32 良く鳴っているが、勇壮さは感じられない。
ツボ33 旧盤同様、最後で一気呵成の勢いのまま締めくくるが、音が着地せずにフワフワ浮いている感が否めない。


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