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チャイコフスキー:交響曲第5番
森正(指)東京都交響楽団  
第2楽章ホルン・ソロ:
フォンテック
FOCD-9237

録音年:1967年6月30日 東京文化会館 【モノラル・ライヴ録音】
演奏時間 第1楽章 13:53 / 第2楽章 11:27 / 第3楽章 5:24 / 第4楽章 12:30
※カップリング/ロッシーニ:「どろぼうかささぎ」序曲、マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲、ヴォルフ・フェラーリ:「聖母の宝石」間奏曲
“未だ知られざる森正のドラマティックな音楽センスが遂に明らかに!”
日本の楽壇を支えてきた多くの指揮者の中で、森正ほど「堅実な職人」というイメージがぴったりな人はいないでしょう。しかし、朝比奈、山田一雄、渡邊暁雄といった指揮者のような円熟を迎える前にこの世を去ってしまい、その堅実さ以上の強い印象を残さずにこの世を去ってしまったのは実に残念でなりません。録音においてもポピュラー名曲集の類いが目立ち、まとまった大曲をほとんど遺さなかったせいか、彼の評価は未だ確立していないのではないでしょうか?私自身、その極めて真面目な指揮ぶりと共に、「手堅いけれども面白みに欠ける」というイメージを持ち続けてきました。しかしこのチャイ5を聴いて、そのイメージが一変しました!当時は録音体制が今のように整っていなかったらしく、この音源もカセットテープからの起しで、冒頭の弱音部分ではヒスノイズが気になりますが、それ以降はそんなことをすっかり忘れさせるほど、揺るぎない設計力とフレージング能力に裏打ちされた熱い音楽が展開されるのです。第1楽章序奏では、ニュアンスの深みを感じ取りにくかったものの、主部、展開部と進むにつれて、月並みな演奏どころではないという確信は強まるばかり!まず弦も管も音にハリがあるの驚き、特にフォルティッシモのトゥッティでの音の勢いはただ大きな音というのではない、真の力感が漲っています。展開部の熱さは古今の名盤にひけを取らず、静かな再現部冒頭へどのように持っていくのか不安になる程です。その力感を見事に踏襲しながら滑り込む再現部がまた素晴らしく、オケの意欲も更に増強。全楽章を通じて、テンポの絶妙な操作、フレージングの文節で丁寧に一呼吸を置いて見通しを良くして美しい流れを築くセンスが冴え渡り、オペラでならした人ならではの安定感と求心力が漲るドラマティックな音楽作りは、いくら賞賛しても足りません。オケの機能性や音の古さを超える感動は、このような本当の意味で真摯な態度で掘り下げた演奏にしてはじめて可能なものだと、改めて痛感した次第です。とにかく、以下の「ツボ」に記したように、魅力的なシーンの連続です!したがって「レコ芸」の月評(まともに聴いたのでしょうか?)とは見事なまでに逆です!ちなみに、カップリングのロッシーニも目の覚めるような快演!しかし、残り2曲は音のピッチが高いです。これはあるまじき現象です!この問題点によって推薦は躊躇すべきところですが、「チャイ5」の存在価値の大きさゆえ、ここではあえてExellentとさせていただきます!
第1楽章のツボ
ツボ1 ヒスノイズに隠れてニュアンスが良く伝わらないが、デリケートにややテヌート気味に歌っている。クラリネットと弦のバランスも良好。
ツボ2 やや遅めのアンダンテで、物憂げなニュアンスを表出。
ツボ3 わずかに上行ポルタメントがつく。
ツボ4 非常に模範的という範囲。
ツボ5 ここに差し掛かる前に推進力を加味し、音に勢いを増す。ここから全く別の遅いテンポにスパッと転じて連綿と歌い上げ、強弱振幅には求心力が漲っている。
ツボ6 フォルティッシモの箇所で、テンポこそ変えないが熱いフレージングか心に響く。
ツボ7 小気味良く、やや速めのテンポで駆け上がり、見事に別の場面を築いている。
ツボ8 ほんのテンポを落とす程度で、洗練味と男性的な推進力を維持しながらフレージング。ここでも結尾でポルタメントあり。
ツボ9 何と16分音符が聞き取れる!ここからテンポを速め、ベイヌムを思わせる火の玉のような高揚を見せて圧巻!こういう突進力が森正にあるとは今まで不覚にも気付かなかった!
第2楽章のツボ
ツボ10 弦の歌わせ方は一見普通だが、情に溺れずに深遠さをしっかり湛えている。ホルンは巧みはないが誠実な歌い回しが好印象。クラリネットは素朴。
ツボ11 感動的なフォルティシシモ!まさにオペラチックな呼吸の妙!
ツボ12 クラリネットもファゴットもあっけらかんとした響き。主役が弦に移ってから、長いフレーズの途中で随所に一呼吸を入れるセンスが見事!
ツボ13 量感のあるピチカート。
ツボ14 ここも凄い!全ての音が熱いだけでなく、無駄に絶叫しているだけの演奏とは一線を画し、止むに止まれぬ共感の限りを込めた全身での呼吸の凄みで圧倒。
ツボ15 何とハリのあるフレージング!。しかも微妙に音価が変動し、不思議な余韻を残しながら消え去る。
第3楽章のツボ
ツボ16 出だしでわずかにテンポを落とす。
ツボ17 機能性は劣るが、それをストレスに感じないのは、全団員が純粋に音楽に打ち込んでいる証し。
ツボ18 音の粒立ちまでは聞き取れない。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。際立った個性は感じさせないが、響きにハリとコシがあり、静かな緊張を孕んでいる。トランペットを支える弦のピチカートが立派。
ツボ20 木管とホルンはほぼ同等バランス。
ツボ21 58小節で一撃。その後トレモロを続けてスコアどおり。テンポはカラヤンに近く、着実に足場を固めながらの進行に風格が漂う。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 明快には聞こえてこないが、全体のバランスは良い。
ツボ24 この直前でぎりぎりまでリタルダンド。ここから主部冒頭のテンポに戻る。
ツボ25 特に強調はしていない。
ツボ26 主部冒頭のテンポ。
ツボ27 インテンポで見事な高揚感!突如、452小節で一気にテンポを落として荘重さを加味。
ツボ28 ティンパニ連打の響きが素晴らしい!最後に一撃を置かなくても、このような響きなら音像がビシッと締まる。469小節の8分音符はやや長め。
ツボ29 実に確信に溢れた素晴らしい進行。弦の運命動機と同時進行の金管の符点リズムが、ここまできっちり守られた例は稀少!これらが渾然一体となった響きの何と有機的なこと!
ツボ30 弦は」明確に音を切っているが、トランペットは一貫していない。
ツボ31 従来の改変型と思われる。
ツボ32 多少ふらつくが、良く鳴っている。
ツボ33 実に凝ったテンポ設定!終わりに差し掛かった55小節でアッチェレランド。そのまままっしぐらと思いきや、562小節〜563小節だけテンポを落とし、最後の2小節をサクッと終える。


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