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チャイコフスキー:交響曲第5番
小澤征爾(指)シカゴ交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ: デイル・クレヴェンジャー
BMG
BVCC-7349
録音年:1968年7月8日 シカゴ・オーケストラ・ホール  【ステレオ録音】
演奏時間 第1楽章 14:01 / 第2楽章 12:14 / 第3楽章 5:54 / 第4楽章 11:57
※カップリング/ムスルグスキー(R.コルサコフ編):はげ山の一夜
“後年の「小澤らしさ」の芽ばえ”
小澤が1964年からラヴィニア音楽祭の音楽監督として活躍し、シカゴ響の信頼を集めていた頃の録音。この頃の小澤は、音楽の運び自体が若々しく、オケも心から若きマエストロの要求に応えようとしているのが分かります。しかし、演奏者側の満足は必ずしも聴き手の感動に結びつくものではありません。この演奏は何よりもそのことを痛感させ、この妙なギャップは、後の小澤の象徴的な現象となったような気がしてなりません。そもそも、この曲をどういう風に感じ、どう伝えたいのか、一向に音に現われてこないのです。かといって、スコアを徹底遵守しているわけでもなければ、思い切り自分の個性を発散しようともしないのですから、この録音の意図自体が全く分かりません。全体に呼吸も浅く、表情は曖昧。持ち前の真面目さがかえって音楽を小さくしてしまっている部分も散見されます。これが潜在能力の極めて高いシカゴ響でなかったとしたら、どうなっていたことでしょう。ここでは、ただただ当時のシカゴ響の力量の素晴らしさを知ることに徹した方が良さそうです。
第1楽章のツボ
ツボ1 テンポは標準的。陰影はそれほど深くないが、スコア表記に沿った表情が着実に紡ぎ出され、素直な進行を続ける。
ツボ2 とても律儀なリズムの刻み。木管も優秀。
ツボ3 多少アクセントが付く。
ツボ4 特徴なし。
ツボ5 116小節も120小節も、タイで繋がった音符を長めに引き伸ばし、丁寧に歌っているが、呼吸はそれほど深くはない。
ツボ6 テンポを変えず、アニマート以降も表情は変わらない。
ツボ7 誠実な運び。
ツボ8 いかにも呼吸が浅い。
ツボ9 ここからややテンポを速め、音にも確信が漲るが、どこか小振りな印象。
第2楽章のツボ
ツボ10 最初の弦の導入から爽やかな印象。クレヴェンジャーのホルンはここでも巧いが、全体に表情が固い。
ツボ11 直前の呼吸の溜めが不十分。
ツボ12 クラリネットもファゴットも実に巧い。小澤の指示と言うより、各奏者の力量の賜物。
ツボ13 弱音で優しくつま弾くが、それ以上の表情は出てこない。
ツボ14 ここも一途な推進力を見せるが、如何せん呼吸が浅く、フォルテ4つの地点まで音圧を支え切れていない。
ツボ15 優しい風情が漂うが、弦の響きにコクがない。
第3楽章のツボ
ツボ16 出だしで少しテンポを落とす。
ツボ17 もちろん完璧なアンサンブルだが一点の曇りもないが、どこか表情が固く、表情が香ってこない。
ツボ18 巧い。
第4楽章のツボ
ツボ19 やや速めのテンポで、威厳を醸し出そうとしているが不十分。生真面目さが先に立つ。
ツボ20 ホルンは裏方。
ツボ21 冒頭でクレッシェンドしてすぐにディミニュエンド。62小節と66小節でも山を築くが、エネルギー増減に生かされていない。テンポは中庸。極めて堅実。シカゴ響だからこそ立派に響いているが、ことさら表現意欲というものが感じられない。
ツボ22 全く無視。
ツボ23 全体のバランスの範囲内で音が押し出ている。
ツボ24 音価は長め。主部冒頭のテンポ。
ツボ25 強打ではないが、明確に聞える。
ツボ26 テンポ変わらず。
ツボ27 ごく無難なテンポ。452小節と454小節で大時代的なテンポ・ルバートを見せるが、あまりにも突飛。
ツボ28 8分音符の音価は長め。
ツボ29 爽やかという以上の表情がない。テンポは無難。
ツボ30 弦もトランペットも、テヌート気味。
ツボ31 改変なし。
ツボ32 良く鳴っている。しかも完璧な音程。
ツボ33 一切冒険せず、安全運転のまま終結。重量感に欠ける。


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