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チャイコフスキー:交響曲第5番
小澤征爾(指)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ: ゲルト・ザイフェルト
DG
431603
廃盤
録音年:1989年4月25〜26日 ベルリン・フィルハーモニー  【デジタル録音】
演奏時間 第1楽章 14:44 / 第2楽章 12:54 / 第3楽章 6:07 / 第4楽章 12:10
※カップリング/序曲「1812年」
“伸びやかさを欠いたベルリン・フィル”
特に第1楽章で、木管が異常にマイクに近く、雰囲気が台無しになっているのがまず残念。小澤の表情は過去の録音に比べて安定感を増しているだけに、良好バランスであったなら、もっと心に迫る瞬間があったかもしれません。しかしそれにしても、BPOというチャイコフスキーと相性抜群のスーパー・オケを相手にしても、音楽の作りがどこか窮屈で、沸き立ってこないのは、これが小澤の限界ということなのでしょうか?一見、隅々まで良く鳴り、技術的にも完璧なので、立派な演奏に聞えますが、「誠実」という枠の外から出ず、一向に音楽が自立して迫ってこないのです。そもそも小澤自身、この録音を聴いて胸が打ち震えたのでしょうか?少なくとも、この録音で聴く演奏は、音楽を構築するという概念が存在せず、指揮者なしの合奏のようにしか聞えないのです。同じベルリン・フィルを振ったアバドの演奏と比べると、音楽を受け止める許容量の違い、歌の質感、全てにおいて差があまりにも大きすぎます。「小澤はライヴに限る」と言ってしまえばそれまでですが、少なくともこうして超有名曲を録音する以上は、独自の音楽観を出してもらわなければ困ります。
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットが妙にオンマイク気味。しかも変な箇所で息継ぎしている。
ツボ2 クラリネットの、フルート共に強弱ニュアンスが濃厚。続く弦は繊細。これに絡む木管が全てマイクに近く、バランス劣悪。
ツボ3 音量を抑えてデリケートに奏でているのが、今までの録音と異なる。
ツボ4 丁寧な下行ライン。絡む木管の全てがマイクに近く煩わしい。
ツボ5 いかにもBPOらしい陰影の濃いフレージング。タイの引き伸ばしはなく、ごく自然。
ツボ6 入念に歌ってはいるが、なぜが真に迫ってこない。
ツボ7 無表情に近い。
ツボ8 今までの録音同様、アゴーギク皆無のストレートな歌い回し。
ツボ9 16分音符は聞き取れる。響きの量感が見事だが、全体のフォルムがどこか固い。
第2楽章のツボ
ツボ10 呼吸が深く、じっくりかみ締めるような弦が印象的。ホルンの音色は芯が強く、技術的に全く危なげなし。
ツボ11 最初のフォルティシシモで音量は大きくなるが、そのエネルギーを持ちか耐えられず、呼吸が次第に浅くなる。
ツボ12 少しテンポを落とす。クラリネットは巧すぎるほどだが、どこか人工的に響く。
ツボ13 低弦部の余韻が残りすぎて、響きのバランスが崩れている。
ツボ14 アクセントも良く効き、速めのテンポで直進し、響きも充実。BPOの弦特有のうねりを以ってしても、呼吸の浅さが出てしまう。小澤の限界を痛感。
ツボ15 綺麗なフレージングだが、心に迫ってこない。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほとんどテンポを落とさない。
ツボ17 各パートが細切れで飛び出てくる感じ。ニュアンス豊かな連携に聞えない。
ツボ18 パーフェクト!特に2度目が。
第4楽章のツボ
ツボ19 これまでの中で、この冒頭1〜2分の響きが最も意味深い。意志も漲り、威厳に満ちている。
ツボ20 ホルンはよく聞こえるが、木管と共に豊かな色彩を生んでいるような響き方ではない。
ツボ21 冒頭でクレッシェンドして一撃を置き、すぐにディミニュエンド。62小節でもアクセントを置く。オーボエ・登場する82小節から急にテンポが速くなるのが不自然。編集で繋げたのか?
ツボ22 少し生かしている。
ツボ23 よく聞えるが、表情はない。続く木管の音がが全て丸裸で聞え、非音楽的。
ツボ24 主部冒頭のテンポ。
ツボ25 実に意味深く響く。
ツボ26 テンポ変わらず。
ツボ27 無理のない快速テンポ。ベルリン・フィルのパワー全開。それなのに聴き手に訴え掛けてこないのはどういうわけか?
ツボ28 8分音符の音価は長め。
ツボ29 ホルンの跳躍音型の輝きを筆頭に見事な響き。気力もここへ来て充分に漲り、声部のバランスも良くなっている。リズムにも張りがある。
ツボ30 弦もトランペットも、テヌート気味。
ツボ31 改変なし。
ツボ32 良く鳴っている。
ツボ33 過去の小澤のチャイ5の中で最も重量感がある。テンポも安定。


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