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アントニオ・パッパーノ(指)ローマ・聖チェチーリア音楽院管弦楽団 | |||||||||||||
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EMI 3532582[EM](2CD) |
録音年:2006年7月3日 【デジタル録音】 | ||||||||||||
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カップリング:交響曲第4番、第6番「悲愴」 |
“録音では捉え切れなかった、パッパーノのパッションと歌心” |
アバドやムーティ、シャイーなど、イタリア人指揮者にはチャイ5の名演が少なくないだけにパッパーノにも期待しましたが、これを聞く限り、指揮者としての誠実なアプローチはしっかり認識でき、表現方法もケーッしてルーティンなものに陥っておらず、随所に決め細やかな配慮も見られますが、お得意のカンタービレは熟し切れておらず、音楽が高揚しても7割程度に熱が抑えられたような印象が最後まで拭えないのは、半分は録音、またはホールに原因があるものと思われます。決してぼやけた音ではないのですが、音色的な魅力が感じられず、トゥッティの迫力も不足。これはパッパーノの本来の姿ではないように思われてなりません。そんな中でも、第2楽章楽章、32小節以降にチェロが朗々と奏でるカンタービレはヴィブラートの魅力と共に惹きつけられ、75小節から第2Vn〜第1Vnと橋渡しする語り口も、弦の両翼配置効果が生き、ニュアンスが真に迫るものがあります。終結部直前、全体がフォルティッシシモで同じ音を3連で鳴らす箇所は、最後の2音はトランペットとトロンボーンのみが別の音を吹きますが、この隠し味的なハーモニーをはっきり感じさせるというのも、ほとんど他に例がありません。ただ、全体に甘美なチャイコフスキーの旋律を丁寧に生かされている反面、汗が感じられず、終楽章で金管が張り切る場面でも、肩の力を抜きすぎている点が引っ掛かります。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | クラリネットは色彩的な魅力に乏しいイが、弦は陰影豊か。全体にレガート寄りの表現。28小節と30小節のスフォルツァンドの弦の響きが豊かなハーモニーを醸し出しているのにはハッとさせられる。 |
ツボ2 | テンポは中庸、ピアニッシモの指示を忠実に反映させているのが特徴的だが、弦にテーマが移行してからもピアニッシモのままで繊細に歌う例は珍しい(スコアではピアノに変わる)。 |
ツボ3 | ピアニッシモの風情を生かし、実にデリケート。 |
ツボ4 | フォルティッシモの膨らみとディミニュエンドの沈静のコントラストがくっきりと描き分けられている。 |
ツボ5 | 4小節を大きなレガートで大きく呼吸させている。 |
ツボ6 | ここも強弱の差を明確に描き分けているが、やや神経質な印象も残り、アニマート以降でより大きく飛翔して欲しいところだが、音楽が膨らまない。 |
ツボ7 | 第1音がコルクの栓を抜いたような音がする。 |
ツボ8 | ピアニッシモ(スコアの指示はピアノ)で繊細に歌い、最初のクレシェンドも抑制。時間をかけてじっくりと展開部直前の高揚に持ち込みたいのだろうが、熱し切らないうちに展開部に突入してしまう感じ。 |
ツボ9 | 16分音符は曖昧。最後に逞しい造形力を見せるが、録音のせいか、響きに豊かな質感を感じさせない点が残念。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 冒頭の弦はピアニッシモをやや多用し過ぎてムーディーに流れすぎる。ホルンの技巧は全く危なげなし。音色も一貫して美しいが、ロングトーンではやや間が持たない印象を受け、アゴーギークのテンポの取り戻し方もぎこちない。但し、この間に弦が美しいニュアンスを香らせている。 |
ツボ11 | ここも大きく爆発することなく抑制が効き、しなやかなカンタービレを重視。 |
ツボ12 | クラリネットは実に巧いが、その分、陰りが不足。 |
ツボ13 | 縦の線は揃っている方だが、ことさら豊かな響きではない。 |
ツボ14 | ティンパニはそれなりに強打しているが、なぜか軽い印象。フォルテ4つの爆発も、音量に比例して音楽の熱の高まりがあまり感じられない。ホールの響きのせいか? |
ツボ15 | 実に丁寧だが、それ以上に香ってくるものがない。 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | これはユニークなアイデア!ファゴット・ソロの入りを63小節2拍目の頭から4分音符で開始(1:15〜)。そのままインテンポでなだれ込む。どこからヒントを得た解釈だろう? |
ツボ17 | 弦の細かい16分音符の動きを克明に弾こうと意思が際立ちすぎて音楽に弾力を欠く。 |
ツボ18 | 二人の奏者の変わり目が分かってしまうが、まずまずの連携。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 悠然と堂々と進行するが、音に重みが不足。テンポはごく標準的。 |
ツボ20 | ホルンは完全に裏方。終始3連音を刻み続ける低弦は微妙に先走り気味。 |
ツボ21 | テンポは意外なほどゆったりめ。ティンパニは、主部の直前でクレシェンドし、主部冒頭で音量を落とす、という私個人的に最も理解に苦しむ手段を選択。61小節と65小節でもスコアどおりクレッシェンドを施しているが、ディミニュエンドの指示はどこにもなく、まして冒頭において急にディミニュエンドを行なうのは、音楽を意味もなく小さくする以外の何物でもない、と思うのだが。それが大きなうねりとなって押し寄せるのであれば別の話だが、このように単に強弱を繰り返すだけというのは困りもの。 |
ツボ22 | アクセントを実行。 |
ツボ23 | 力感は伝わってくるが特に強調することはない。 |
ツボ24 | 主部冒頭のテンポ。 |
ツボ25 | 鈍い音。 |
ツボ26 | そのままインテンポ。 |
ツボ27 | ここもほぼ主部冒頭のテンポと同じ。 |
ツボ28 | 楽譜の音価より長め。ティンパニは最後に一撃を置く。 |
ツボ29 | 単に健康的な進行という以外、特徴なし。 |
ツボ30 | 弦は4分音符と付点2分音符の間をはっきりと切るが、トランペットは、491小節は音を切り、493小節はレガート気味に吹いている。 |
ツボ31 | 改変型。 |
ツボ32 | 意識して聞けば明快に鳴っているが、なぜか存在感が薄い。 |
ツボ33 | 最後の2小節だけテンポを落とす常識的な締めくくり方。 |
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