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チャイコフスキー:交響曲第5番
ロリス・チェクナヴォリアン(指)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ/
TOWER
TWCL2005
(2CD)
録音年:1977年 ロンドン・キングスウェイ・ホール ステレオ録音
演奏時間 第1楽章 12:39 / 第2楽章 11:27 / 第3楽章 5:16 / 第4楽章 11:45
カップリング:交響曲第4番(ナショナルPO)、交響曲第6番「悲愴」(LSO)
“熱血チェクナヴォリアンの不完全燃焼”
チェクナヴォリアンはあのバティスに似た熱血漢のイメージがつきまといますが、音のイメージ力、オケに対する伝達力など、バティスに及ばないことを痛感せざるを得ません。もちろんやる気は満々。しかし、どこまで行っても主旋律主体で平凡に流れ、スコアに書かれているテンポや強弱の指示を守らないばかりか、自分の個性でスコアを咀嚼した形跡もないこの演奏は、何をどう聴いていいのか戸惑うことしきりです。オケを力一杯鳴らすのは結構ですが、フォルテがいくつ付いていても、その差が音のヴォルテージに繋がらず、第1楽章〜3楽章は、速めのテンポを基調とした前向きさを前面に出しながら、終楽章のみ巨匠然とした運びを見せようとして、統一感を欠いていることなどから分かるように、この曲自体をどう捉えているのかが聴き手に伝わってこないのは本当に困ってしまいます。直感型の指揮者の場合、第3楽章のようにほとんど演出を施しようのない楽章では、ふとした瞬間にキラッと光る指揮者のセンスに出会うのが楽しみなものですが、ここではメトロノーム的なインテンポに終止し、それどころではありません。終楽章の運命動機の斉奏(167小節)直前でルフト。パウゼを挟むのはワルターなどごく少数派なので意外ですが、これも流れを寸断しているだけで意味不明。レコーディングのスケジュールがよほど強行だったのでしょうか?もっと時間を掛けて練り上げたら、LPOの持ち味を生かした素晴らしい演奏になった気もするだけに残念でなりません。この1年前にはロストロポーヴィチとあの歴史的名演を残しているLPOですが、まだその余韻を拭いきれなかったのかもしれません。なお、ティンパニパートは、バティス、ロストロポーヴィチ同様、LPO独自の改訂版が用いられていますが、この演奏を聴くと、この改訂が最も音楽的に響くのは、ゆったりしたテンポの時に限るような気がします。
ところで、ご存知の通り、このCDは全国のどのショップでも購入できるわけではありません。もちろん湧々堂でも扱えません。レコード業界の特に制作サイドのやる気のなさは既に申し上げましたが、小売においても、その使命感を放棄したメーカーと組んで独占的な販売に走るという状況を堕落のドン底と呼ばずになんと言ったらいいのでしょう?これらの数々の録音は誰のものですか?こういう売られ方をすることを前提に演奏家は録音したのではないはずです。「初CD化の録音を安く独占的に売れば儲かる」ということしか発想できない人たちに、全く同情の余地はありません。
第1楽章のツボ
ツボ1 ドライな感触でテンポにも粘りを見せずにサラッと進行。クラリネットのブレンド感はそれほど感じさせないが響きは安定。低弦が立派に響き、10小節のクレッシェンドはかなりアグレッシブ。その後、クラリネットを強力にうねる。
ツボ2 アンダンテからは程遠い速さ!しかし、も間も、それに続く弦も音楽としてよく消化し美しい流れを獲得。テンポが速い!リズムが弾むがmどこか機械的。木管の投げやりの吹き方が腹立たしい。ホールが響かないせいもあるが、強弱がまるでなく、ニュアンスを出そうとしていないのは明らか。
ツボ3 テンポが速いので素っ気なく通り過ぎるしかない。弓圧が強い。
ツボ4 スコアどおり。
ツボ5 共感をたっぷり込めて厚いフレージングを聴かせるが、スコア内の表情に止まっている。弦の響きはやや美感に欠ける。EMIやDECCAでのLPOの弦の響きとは異なり、ややザラついいて聞こえるのはマスタリングのせいか?
ツボ6 テンポをほとんど動かさず、ここもスコアの範囲内。
ツボ7 やや金属的。
ツボ8 余韻をかみ締めず、すぐに副次主題へ入る。ほんの少しテンポを落とし、インテンポで洗練された雰囲気が美しい。
ツボ9 直前から少しテンポアップ。残響に埋没して管の16分音符は聞き取れない。勇猛果敢に締めくくろうとするがLPOが響きを醸成しきれていない。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦の響きは十分に厚味を感じるがニュアンスは少ない。ホルンはいたって平凡。オーボエとの対話感も不足。
ツボ11 チェクナヴォリアンの根源的な力感不足を露呈。呼吸も音のヴォルテージも高まらず、音量が少し強かった程度の印象。
ツボ12 インテンポで突入。音の輪郭が異様なほど克明。
ツボ13 ハーモニーのバランスが悪すぎる。
ツボ14 性急な印象しか与えず、オケの弾きにくそう。その後フォルテ4つの頂点に向かって急加速をかけるが、その頂点がズブズブ…。
ツボ15 哀愁を湛えず淡々と進行。テンポが不安定。
第3楽章のツボ
ツボ16 完全インテンポテンポのまま突入。
ツボ17 なぜか部分的にテンポが前のめりになり縦の線がずれる箇所がある。
ツボ18 最後の一音までよく聞こえるが、テンポが速いので下降の妙は感じ取れない。
第4楽章のツボ
ツボ19 オーソドックスなテンポ。やる気は漲っているが風格や威厳といった表情には欠ける
ツボ20 ホルンは完全に裏方。
ツボ21 冒頭でクレッシェンドするのみで、後は一定音量でトレモロ。テンポは意外にも中庸。64小節のホルンのフォルティッシモをきちんと生かしているのも意外。その後そのテンポを持ちこたえるのがキツそう。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 見事な音の量感!しかし力感が伴わない。
ツボ24 インテンポのまま。
ツボ25 強打ではないが、音楽的な一打!奏者のセンスの勝利!
ツボ26 ここでもテンポ不変。
ツボ27 ここでもテンポ不変。
ツボ28 8分音符はやや長い。ティンパニは最後までトレモロのまま。
ツボ29 比較的遅めのテンポで、風格を前面に出した素晴らしい斉奏。
ツボ30 弦もトランペットもテヌート気味。
ツボ31 改変なし。
ツボ32 546小節からのフォルテ4つに差し掛かってもヴォルテージをアップさせない。547小節あたりからほんのわずかにテンポを上げるのがきわめて不自然。ホルンは良く鳴っている。
ツボ33 ホルンの強奏以降は最後までインテンポ。トランペットばかりが目立ち、弦の緊迫の動きが完全に置き去りにされている。


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