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チャイコフスキー:交響曲第5番
ウラディミール・ヴァーレク(指)プラハ放送交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
SUPRAPHON
SU-3862(4CD)

録音年:2004年10月 デジタル録音
演奏時間: 第1楽章 13:20 / 第2楽章 12:08 / 第3楽章 5:54 / 第4楽章 11:55
※チャイコフスキー:交響曲全集(4CD)
“作品への共感不足か?単なる練習不足か?”
一般にチェコのオーケストラは、従来より重心の低いカロリー価の高い音は出さず、メロウな管楽器、絹のような弦楽器など、それ以外の特質を堅持している場合が多いようですが、指揮者の側にアンチェルやスメターチェクのような確固とした造形力と表現力が備わっていないと、単にペラッとした薄い響きのままで終わってしまうことも少なくありません。このオケもいかにもチェコ的な鳴り方を示してはいますが、放送オケという性格からか、かなりグローバルな響きの比重も高くなっています。しかし、このチャイ5を聴く限り、「手堅く作品の持ち味を引き出す良い指揮者」というヴァーレクへに今までのイメージは崩れ、最後まで中途半端な印象を拭えず、メッセージも伝わってきません。例えば、あのアンチェル&チェコPOの「新世界」の名盤は、分厚い響きで大迫力を示すといったものではないですが、「スケールが小さい」とは決して言われません。これはアンチェルに精緻なダイナミズムと、オケの特質をプラスに転換させる能力が備わっているからに他なりません。しかし、ここでは、アンチェルのような高次元を望まないまでも、当たり障りのないテンポ設定で手堅くまとめたという域は出ず、そういう演奏で有名名曲で録音する意味がどこにあるのでしょうか?オケの各奏者の技量は相当高いにもかかわらず、音色の統一が不徹底な箇所、どう考えても場の雰囲気にそぐわない響きを見過ごしていも理解に苦しみます。一見表面的に整った演奏は往々にして「洗練された演奏」と評されることがありますが、それを目指した痕跡が感じられない演奏までそのように一括りにしてしまうのはいかがなものでしょうか?フォルテが1つでも3つでも、音のパワーにあまり変化を見せないということが、音楽をいかに平板にしてしまうかという実例と呼ぶしかなさそうです。ただ、第2楽章のホルン・ソロの素晴らしさは強調せずにはいられません!ところで、他の曲でも同じように平均的な演奏に終始しているかというと、実は違うのです!特に「第2番」は、テンポ設定といい、フレーズに滲む共感の熱さとといい全く別人!それこそスメターチェクの芸風を彷彿とさせる強烈な緊張が全体に迸っているのです!特に両端楽章に見る強靭な意思の持久力、内面から込み上げる響きの熱さはとても賞賛し切れません。これが本当のヴァーレクだと信じたいです!!
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットは粘り気皆無ですっきりと立ち上る。テンポもやや速め。アゴーギクの最少で淡白な進行で味わいは乏しい。弦とのバランスが良好。。
ツボ2 余韻を感じる暇もなく主部に移行する。ここでもテンポはやや速め。すっきり爽やかに進む。クラリネットとファゴットは良く溶け合っているが表情が希薄。
ツボ3 スラーを意識せず、途中で弓を返しているように聞こえる。
ツボ4 とても綺麗に流れるが、音に共感が感じられない。
ツボ5 ここは美しい!同様に爽やか路線だが、スコアどおりのアーティキュレーションを実行することで気品が漂う
ツボ6 強弱の差、テンポの落とし方も最少にとどめている。
ツボ7 ピチカートの第1音が金属的。前の部分から引き続きインテンポ。
ツボ8 172小節からフレーズが下降するシーンで顕著なように、この主題の一つの頂点を感じ取ってはいるようだが、それが音になって現れていない。
ツボ9 なんと、16分音符と8分音符をタイでつなげている(つまり、次の弦の音型と同じ動きになっている)!対話のバランスをとろうとしたヴァーレクの配慮だろうか?音楽の作りが小さく、サッサと終わろうとしている印象が拭えない。
第2楽章のツボ
ツボ10 最初の弦の響きは美しいが、同じテヌートを繰り返している感じ。ホルン・ソロが感動的!チェコの伝統的なヴィヴラートはほとんど影を潜めているが、そのかすかな名残が余情を掻き立てると共に、メロウな音色とフレーズを感じるセンスがが結びついた素晴らしいニュアンスを表出している。
ツボ11 ややパワー不足。根源的な力感が指揮者に不足しているのか、フォルティッシモ以上が全体に弱腰。
ツボ12 テンポはインテンポ。クラリネットの音色はやや明るく、常に立ち上がりがは明快。9連音の一つ一つがはっきり聞き取れるほどだが、やや情感不足。続くファゴットも同様。
ツボ13 直前の盛り上がりも含めて、表情が薄い。
ツボ14 直前のテンポの溜めが浅く、フォルティシシモの意味も感じられない。
ツボ15 なんと楽観的な歌いまわし!この楽想から何を感じ取っているのかサッパリわからない。
第3楽章のツボ
ツボ16 一瞬テンポを落とす程度。
ツボ17 中間部の前半は一貫して木管が大人しいが、83小節で突如アクセントを伴って立ち上がるのがユニーク。
ツボ18 クラリネットとファゴットの間に距離感があり、フレーズが一本のラインで繋がっていない。
第4楽章のツボ
ツボ19 符点4分音符と16分音符の間で音を切っているが、その切り方に確信が感じられず、求心力も弱い。その後トランペットが妙に明るく飛び込むのにはビックリ!この場面でこういう響きはあり得ない!
ツボ20 ホルンはほとんど裏方。むしろホルンと同じ音型を吹くファゴットを引き立たせている。
ツボ21 ティンパニは、冒頭に一撃を置く。その後は完全にスコアどおり。テンポは中庸。チェコのオケにしては厚みのある響きを醸し出し、威厳も保たれているが、82小節からのオーボエ・ソロのフレーズは、最初の8分音符が16分音符のように音価を詰めて吹いているので、変に野暮ったい。
ツボ22 少しアクセントを掛けているようにも聞こえるが、ことさら意識してはいないようだ。
ツボ23 強靭ではないがよく鳴っている。しかし、途中で一瞬エネルギーが衰弱するのが不思議。246小節からの木管のアンサンブルの芯の逞しさは敢闘賞!このニュアンスが全体に一貫していたら、とてつもない名演になっていたことだろう。
ツボ24 インテンポのまま。
ツボ25 硬質にセンスよく響いている。他の箇所でもこのティンパニ奏者は、全体のバランスに配慮したハイセンスな叩き方を披露している。
ツボ26 ここもインテンポのまま。
ツボ27 テンポを速めず荘重さを維持しているようと努めているようだ。トランペットの輝きと、ティンパニの巧さが光る。
ツボ28 8分音符の音価はスコアに忠実。ティンパニは最後に一撃を置く。
ツボ29 弦は美しいアンサンブルを披露しているが、トランペットがここでも脳天気。
ツボ30 弦は明確に音を切っているが、トランペットは曖昧。
ツボ31 改変なし。
ツボ32 決して強奏ではないが良好なバランスで鳴っている。
ツボ33 ややスケール感に不足するものの、504小節以降の響きは熱い共感が込められた素晴らしいもので、テンポの奇を衒わずに安定した進行のまま幕を閉じる。最後のティンパニのセンスにご注目!


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