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チャイコフスキー:交響曲第5番
タマーシュ・ヴァーシャリ(指)ハンガリー放送交響楽団     
第2楽章ホルン・ソロ:
HUNGAROTON
HCD-32171

録音年:2000年4月20日ブタペスト音楽院 大ホール  【デジタル・ライヴ録音】
演奏時間 第1楽章 14:59 / 第2楽章 12:43 / 第3楽章 5:48 / 第4楽章 13:12
カップリング/序曲「1812年」、交響的バラード「ヴォエヴォーダ」
“もうピアニストとは言わせない!指揮者としてのヴァーシャリのセンスが大全開!”
ピアニストとして著名なヴァーシャリは、ショパン等の素晴らしく詩的な演奏でもその才能を窺い知ることができますが、指揮でも完全に堂に入った、と言うより、彼にしか持ち得ない個性を十分に感じさせ、その独特の牽引力によって最後まで聴き手の心をつかんで離しません。このチャイ5は一見、堅実一本の演奏のように聞こえるかもしれませんが、各フレーズはもちろん、全休止に至るまでその意味を丹念にすくい取り、それぞれを緊密に連携させ、自然に緊張の糸を張り巡らす手腕には驚くばかりです。第2楽章で、弦が副次旋律を弾き始める前の4分休符の間(ま)に、これほど音楽的な意味を感じさせる演奏は他に思い当たりませんし、終楽章も外面的な迫力を狙うことなく音楽の意味を本当に感じていなければ表出し得ない一貫した表情が大人の味わいを引き出しています。金管の運命動機はやや地味と思いきや、次第に風格を増し、ティンパニの最強打などを通じて、各場面を画一化せずに鮮やかにニュアンスを湧き立たせているのにも驚きを禁じ得ません。再現部以降の音の量感と巨匠風の懐の深さ、大音量での楽器のバランス、アーティキュレーションの清潔さにも完全降伏。なんと最後のエンディングでは、下手すると小手先で終わりかねない大胆なテンポ設定をない、その音楽的技量の広さにもビックリ!これは決してライブの熱いノリだけでない、真に音楽的な説得力を持った名演奏です。同じピアニスト出身のコチシュと共に、今後の活躍を期待せずにいられません。なお、第1楽章の再現部直前の302小節以降、ティンパニが小節を見落とし、延々と1小節づつずれて叩いてしまうというアクシデントがありますが、見事に帳尻が合い、致命的なことにはなっていません。カップリングの2曲も名演!「1812年」を真摯な態度で入念に音化し尽し、スペクタクルな面白さのツボも押さえた演奏は稀ではないでしょうか?コーダの畳み掛けも軽薄さ皆無で、圧倒的な力感で確かな感動を誘うのです。録音の少ない「ヴォエヴォーダ」も必聴!色彩のきらめきと、急緩自在で真のドラマに肉薄するアゴーギクのセンスに引き込まれ、オケの技量と表現力の高さにも唖然とさせられます。
第1楽章のツボ
ツボ1 ため息混じりに呟くようなクラリネットが印象的。弦とのブレンドも良好で、しっかりと音のイメージが練られている。テンポは粘らず、やや速め。
ツボ2 デリケートな弦の刻みに続き、木管が憂いと気品を湛えた音色で奏でる。
ツボ3 とても繊細。
ツボ4 しなやかな呼吸。
ツボ5 全ての音に魂が宿り、呼吸感も絶妙!
ツボ6 柔和な雰囲気をかもし出しながら豊かに音楽が伸縮する。
ツボ7 内容満点のピチカート。テンポは、前のテンポから変わらない。木管とアルコの弦との対話も実に入念。
ツボ8 ここも実に丹念なフレージングで、表面的に綺麗に流している箇所などなく、心から歌っている。
ツボ9 大巨匠風の足取りで、響きが充実を極め、格調高く締めくくる。フォルティシシモの504小節で、金管の音型に一部をスラーでつなげるのがユニーク。こんな隠し技を盛り込み、音楽的な説得力をも持たせるとは、並みの力量ではない。
第2楽章のツボ
ツボ10 低弦をメゾフォルテ気味にしっかり響かせて、呼吸も入念に行っている。ルンが素晴らしい!全体と美しく溶け合いながら、しっかりと独自の香りを放ち、2連符で始まる20小節目をややテンポを速めて駆け上がり、流麗にフレーズをつなげるセンスもお見事!
ツボ11 フォルティシシモの頂点を突出させず、前の部分からの横の流れを重視している。
ツボ12 感覚的にサラッとしているが、なかなかハイセンス。
ツボ13 全ての音をたっぷりと響かせ、しっかり発言している。
ツボ14 安易に音量で圧倒せず、内面の緊張の高まりで見事な頂点を築いている。特に弦の入魂ぶりは圧巻!
ツボ15 この演奏のように、弦のみならず、対旋律の管楽器も含め、全体が深々としたニュアンスを湛えきっている演奏は、決して多くない。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほんのわずかテンポを落とす程度。くっきりとファゴットの入りを引き立たせている。
ツボ17 ここも決して気楽に流して済まさず、各声部の緊密な連携を築いている。
ツボ18 無難な出来ばえ。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。風格を誇示せず、繊細なニュアンスが優る。
ツボ20 木管とホルンはほぼ同等のバランスで、美しくブレンドしている。
ツボ21 ティンパニは冒頭でクレッシェンドし、皮が破裂しそうな最強の一撃を投入するのにはビックリ!その後はトレモロのまま。テンポは標準的。
ツボ22 全く無視。
ツボ23 勢いのある立派な響きが聴かれる。全体との溶け合いがまた絶妙!
ツボ24 少しここからテンポアップ。
ツボ25 激烈な最強打!心臓の弱い人は要注意!!しかし、この一撃が、次の金管の重厚な響きと完全に連動していることに気付かされる。
ツボ26 主部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 やや速めのテンポで緊張を煽る。弦が細かい音型を決死の形相で弾きまくっているのが目に浮かぶほど。
ツボ28 8分音符の音価はやや長め。
ツボ29 テンポは標準的で、目立って特徴的なことはないが、全体の響きが完璧なバランスで迫り、無駄に鳴っているパートなどない。本来当たり前のことだが、そういう演奏は決して多くない。
ツボ30 弦もトランペットも、音を切っている。
ツボ31 改変なし。この箇所のテンポの落とし方と、圧倒的な音像の聳え方は圧巻!
ツボ32 渾身の大強奏!
ツボ33 最強のティンパニのトレモロが凄い威力!しかも、最後の4つの打ち込みでテンポを落とすのではなく、逆に加速して、あどれなりんを放出したまま終わる痛快なエンディング!こんな手の込んだ技が小手先芸に聞こえないのだから凄い!


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