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チャイコフスキー:交響曲第5番
ブルーノ・ワルター(指)NBC交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Music&Arts
M&ACD-4273M
(2CD)

録音年:1940年3月9日  【モノラル・ライヴ録音】
演奏時間: 第1楽章 12:44 / 第2楽章 13:11 / 第3楽章 5:38 / 第4楽章 14:13
カップリング/ウェーバー:「オベロン」序曲、シューマン:交響曲第4番、ベルリオーズ:序曲「海賊」、「ファウストの劫罰」から、ワーグナー:序曲「ファウスト」序曲
“メンゲルベルクもお手上げ!? ワルター唯一の「チャイ5」は最大の怪演!!”
2曲ともワルター唯一の録音ですが、「チャイ5」は、ワルターの録音のみならず、クラシックの全録音史上、ここまでスコアの指示を拠り所にしない演奏というのも珍しいのではないでしょうか?第1楽章から、壮年期のワルター特有の過激なアッチェレランドとトスカニーニばりのアクセント処理が縦横無尽に飛び交い、ロマンティックなどと言っていられないくらい過激な演奏ですが、終楽章に入ると、更にハチャメチャ度アップ!テンポの激変ぶりが更にエスカレートし、異常事態となっています!曲が止まりそうになるギリギリの大減速が頻出したかと思うと、コーダはテンポを煽るだけ煽って、底抜けの躁状態で「してやったり!」と言わんばかりのエンディングを迎えるのですから、まともな理屈を並べるだけ無駄というものです。確かに録音年代からして、この曲の当時の演奏スタイルは、メンゲルベルクに象徴されるような、ロマンティックなスコア拡大解釈型が主流だったとはいえ、いくらなんでもやり過ぎだという意見がほとんどでしょうし、これらの過激な表情付けの全てが、事前にリハーサルで指示しておかない限り再現できないものばかりだということを考えると、明らかに確信犯であると見て間違いないでしょう。では、その動機は?この作品の真価に近づく最善の方法は、スコアに書かれている指示以上に、その背後に隠れた作曲者のドロドロした感情の起伏を作品のフォルム崩壊寸前まで溢れさせることだと結論付けたからではないでしょうか?これを聴いて頭を抱えてしまうか、これぞまさしく音楽家の鏡!と受け取るかは、聴く人次第だと思いますが、誰が何と言おうと自らの感性を信じ、それを貫徹させた熱い表現意欲と勇気を誰が笑えるでしょうか?凡百な演奏を聴くよりも何倍も意味深いことだと思いますし、私は実際に感動してしまいました。それこそ、どんな耳してるの?と言われそうですが…。ただ、CD棚から取り出す頻度は高くないことも事実ですが。録音はやや渇き気味で、いかにもNBC響らしい響き。
※MUSIC&ARTS盤は、終楽章のピッチが低いようです。
第1楽章のツボ
ツボ1 テンポは標準的なものだが、クラリネットは各16分音符の音価を短く詰めて吹き、演歌調になっているのが早速ユニーク。強弱の振幅の付け方も濃厚。
ツボ2 多少ここから速くなる。響きに艶がなく、素朴な進行だが、心がこもっている。
ツボ3 それぞれに上行ポルタメントがつく。
ツボ4 ワルターにしては淡白。
ツボ5 この直前からアッチェレランドがかかり、そのまま第2主題へ突入。
ツボ6 前のテンポをほとんど崩さず、比較的スムースに進行。小節の頭で若干ポルタメントがかかる。アニマートからやや減速するが、それほど声高には歌い上げていない。
ツボ7 小気味良く、インテンポで進むが、無機質になっていない。
ツボ8 徹底的にテンポを落としそうだだが、意外にも洗練された気品を感じさせる。ポルタメントも控えめ。
ツボ9 ここから超快速に転じる。トスカニーニ的に剛直なインテンポに徹するが、あまり強靭には響かない。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦は一音ごとに濃厚な表情を付ける。ホルンはあまりニュアンスが感じられない。
ツボ11 金管を突出させ、決然としたフォルティシシモ。
ツボ12 クラリネットは巧いが、陰影が感じられない。
ツボ13 量感のあるピチカート。オケの特質か、やや機械的に響く。
ツボ14 絶妙なアゴーギクを駆使して熱く盛り上がるが、呼吸は意外と膨らまない。
ツボ15 優しい風情が漂うが、弦の響きにコクがない。
第3楽章のツボ
ツボ16 出だしでぎこちなく一瞬テンポを落とす。
ツボ17 低弦が凄いアクセントを効かせたり、テーマに戻る直前に弦が強烈なピチカートを披露したりと、トスカニーニ的なニュアンスが顔を出す。
ツボ18 よく聞き取れない。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。第1楽章冒頭同様、16分音符を短かめに処理。しっかりとした弓圧で鳴らし切る。
ツボ20 木管よりもホルンを前面に立てる。
ツボ21 この直前から、物凄いテンポ・ルバートが出現し、ただなるぬ予感。ティンパニは、主部に入る直前で一山築き、後は66小節までほとんど音量を変えずにトレモロのまま。テンポがチェリビダッケばりに遅い上に、全ての音が克明なアクセントを伴って、強力にリズムを打ち込んでいく。86小節でバスを異様に突出させて、凄みを煽る。また、その先118小節のフォルティシシモの頂点から、いきなりテンポを落とし、そのまま167小節まで失速寸前状態をキープ。この手法は、再現部でも同様。
ツボ22 ほとんど無視。なんとこの後の運命動機再現箇所でも、更にテンポを落とし。この運命動機が現われるたびに最初の部分でテンポを落とす。その先は微妙にテンポを上げていく。
ツボ23 この直前の部分でやっと失速状態から立ち上がるが、それも束の間!ここからまたまた大失速。しかも、全声部が一丸となり、凄いテヌートで怪物的なうねりを見せる。
ツボ24 この直前が、極度の失速状態なので、ここからテンポを上げてはいるが、通常と比べたらまだまだ遅めのテンポ
ツボ25 強く打ち込んではいるが、よく響かない。
ツボ26 基本的に前のテンポのまま突入するが、微妙にテンポが揺れている。
ツボ27 ここまで進行してきた中で最も速いテンポにはなるが、「きわめて速く」からは程遠い
ツボ28 この超低速にもかかわらず、8分音符を正確な音価で刻んでいるのが、ワルターらしい。
ツボ29 実に強靭なリズムの打ち込み。凄い威厳!
ツボ30 弦もトランペットも、しっかり音を切っている。この統一感もワルターならでは。
ツボ31 従来の改変型と思われる。この山場の501小節で、またもや大テンポ・ルバート実行
ツボ32 ごく普通の鳴り方という程度。その直後からアッチェレランド開始。この加速ぶりは、このために取って置いたかのよう。
ツボ33 加速したまま終わるのかと思いきや、562、563小節のみテンポを落として、最後の4つの打ち込みは急速に終わらせる!。


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