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TCO-0001(3SACD)
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クリーヴランドO/新たなる世紀
(1)ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番 イ短調 op.132(弦楽オーケストラによる演奏)
(2)ヴァレーズ:アメリカ
(3)ヨハネス・マリア・シュタウト(b.1974):Stromab
(4)R.シュトラウス:イタリアから
(5)ベルント・リヒャルト・ドイチュ(b.1977):Okeanos(オルガン協奏曲)[世界初録音]
(6)プロコフィエフ:交響曲第3番ハ短調 op.44 |
フランツ・ウェルザー=メスト(指)
クリーヴランドO
(1)録音:2019年7月12日
(2)[録音:2017年5月25,26,27日
(3)[録音:2018年1月11,12,13日
(4)録音:2019年5月23,24,25日
(5)パウル・ジャコブ(Org)
録音:2019年3月14,15,16,17日
(6)録音:2018年9月27,30日
すべてクリーヴランド、セヴェランス・ホールでの録音 |
内容は、現在の音楽監督を務めるフランス・ウェルザー=メストが指揮し、また自身が選曲した3枚
組。この約20年間の両者の足どりの中から特に優れた極めつけの演目がセレクトされています。
現在音楽監督を務めるフランツ・ウェルザー=メストは2002年からこの職にあり、タイムズ誌は、メストの下でのクリーヴランド管の、そのヴィルトゥオー
ゾ性、音の優雅さ、豊かな色彩、そして室内楽のような音楽の結束力をたたえ、「アメリカのベスト・オーケストラ」であると評しています。メストの下でオーケス
トラは挑戦的なプログラム、そして委嘱への積極的な取り組み、さらにオペラの取り組みも増やし、若い聴衆も獲得してきています。エデュケーション・プログ
ラムも充実しており、まさに世界をリードするオーケストラといえます。メストはウィーン・フィルへの客演も多く重ねているほか、ウィーン国立歌劇場の音楽
監督(2010-2014)、チューリヒ歌劇場でも長年音楽監督を務めています。ブルックナー教会からキレニー・メダルを授与されているほか、ケネディ・センター
から芸術部門の金メダルを授与されるなど、世界でその功績が高く評価されています。オーケストラの歴代の音楽監督はニコライ・ソコロフ(1918-33)、アル
トゥール・ロジンスキ(1933-43)、エーリヒ・ラインスドルフ(1943-46)、ジョージ・セル(1946-70)、ロリン・マゼール(1972-82)、クリストフ・フォン・ドホ
ナーニ(1984-2002)。こうした指揮者たちとのヒストリカル音源もリリースされるか心待ちにしながら、新レーベルの誕生を祝いたいところです。
レーベル第1弾は3枚で構成されています。[CD
1]は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を、オケの全弦楽セクションで演奏したもの。メストの細かな表情づ
けと、弦楽器セクションのうまさ、そして美しさが際立った演奏となっています。カップリングは大規模でパンチのきいたヴァレーズの「アメリカ」という、なんと
も興味深い組み合わせです。新しい作品を聴くことにより、過去の作品の理解も深まり、その逆も然り、ということを提示しています。[CD
2]は、シュタウトと R.シュトラウスの作品を収録。シュタウトはインスブルック出身の作曲家で、ウィーン音楽大学で学び、哲学と音楽学も修めています。その作品は日本でも読
響が五嶋みどりをソリストに迎えた公演でも演奏されているほか(ヴァイオリン協奏曲「オスカー」)、2018/19のシーズンにはオペラがウィーン国立歌劇場
で初演されるなど、まさに今活躍している作曲家のひとりです。R.シュトラウスの「イタリアから」は、あまり演奏されない初期の管弦楽作品ですが、情景が鮮
やかに眼前にうかぶような演奏となっています。[CD
3]はセヴェランス・ホールの名高い大オルガンとオーケストラによる協奏曲。作曲者のベルント・リヒャル
ト・ドイチュは1977年オーストリアのメートリンク出身。2011年度武満徹作曲賞第2位を受賞しました。その作品は東フィルなども取り上げている、世界的
な作曲家です。このオルガン協奏曲は、ウィーン楽友協会とウィーンRSOの委嘱によるもので、2014-15年に作曲されました。題名の「Okeanos」は
ギリシャ神話では世界を網羅する河川のような意味。4楽章(緩―急―緩―急)から成り、それぞれの楽章は4大元素である水、空気、地、火と関連付けられま
す。オルガンの壮大な響きと管弦楽の融合が魅力な、壮大な作品です。そしてカップリングは極めつけのプロコフィエフの交響曲第3番。ハープ2台に打楽器も
多数活躍する大規模な作品ですが、冒頭からものすごいボルテージの高さ。メストの知と情熱のバランスがとれたリードと、オーケストラの持ち味であるサウ
ンドにより、理想的な演奏が誕生しています。 (Ki) |
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TCO-0002(1SACD)
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シューベルト:交響曲第9番「ザ・グレイト」
クルシェネク:Statisch und ekstatisch, Op. 214(静的で恍惚とした)〜室内オーケストラのための10の楽章 |
フランツ・ウェルザー=メスト(指)
クリーヴランドO
収録:2020年3月12,13日/クリーヴランド、セヴェランス・ホールでのライヴ |
世界がたいへんな時代に産声を上げたクリーヴランドOのレーベル、TCO。注目の第2弾は、2020年3月という、まさにコロナ禍の中行われた
特殊な演奏会の記録の登場となりました。2020年3月12日木曜の午前、オーケストラの事務局長は、12日と13日の演奏会はホールは開けず、政府か
ら100人以上での集まりを禁止する旨が発表されたことを受け、一部のパトロンとスタッフだけを客席に入れての演奏会、そして13日の演奏会も同様に何
名かのスタッフだけがセヴェランス・ホールの真っ青な客席に座った状態で演奏は行われました(ちなみにこの後しばらくセヴェランス・ホールは閉鎖され
ました)。極限まで集中した中で演奏は行われ、メストは、この演奏は自分の中でも稀有のもので、生涯忘れられないものになる、と語っています。クルシェ
ネクの作品は2020年5月に予定されていたオーストリアへのクリーヴランド管のツアーでも予定されていた作品で、それとシューベルトを合わせて組まれた
プログラムです。 クルシェネクの作品は厳密でひりひりするような緊張感と、様々な要素が複雑に組み合わされた、奏者に極度の集中を要する作品。この演奏会の特殊な状況、
そしてクリーヴランド管のメンバー一人ひとりの卓越した能力があったからこそ為し得た稀有の名演が展開されています。
シューベルトはメストにとっても特別な作曲家。ディテールのひとつひとつに注意を払い、それらを注意深く創意豊かに発展させつつ、メランコリー、あこが
れ、そして悲しみといったさまざまな感情が込められたシューベルトの作品を、ほぼ無聴衆の特殊な演奏会という状況で演奏することによって、シューベル
トの作品がもつ孤独のようなものがより濃厚に表れている瞬間もあるように感じられます。今なお続く不安な状況に、メストとクリーヴランド管からの心から
の共感と、極上のエールのようにも響く稀有の演奏となっております。 (Ki) |
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TCO-0004(1SACD)
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R.シュトラウス:3つの交響詩
(1)「マクベス」 op.23
(2)「ドン・ファン」 op.20
(3)「ティル・オイゲンシュピーゲルの愉快ないたずら」
op.28 |
フランツ・ウェルザー=メスト(指) クリーヴランドO
録音:(1)2021年10月2-9, 14, 17日
(2)2021年10月7-9日
(3)2021年10月7-9日
すべてオハイオ州クリーヴランド、セヴェランス・ミュージック・センター、マンデル・コンサート・ホール(ライヴ) |
クリーヴランド管自主レーベルの第4弾の登場!今回は、オーケストラの磨き抜かれたサウンドと比類なき芸術がこれ以上なく発揮される、R.シュトラウスの交響
詩3篇という、その音色を想像するだけでたまらないプログラムです。
R.シュトラウスの初期の交響詩「マクベス」「ドン・ファン」「ティル・オイゲンシュピーゲルの愉快ないたずら」の3篇を収録。ウェルザー=メストはR.シュトラ
ウスの指揮にかけてもとりわけ高い評価を得ておりますが、ここでもシュトラウスが音で描いた物語、様々な景色や音色、感情が、これ以上なくかぐわしく、オーケ
ストラの壮麗なサウンドとともに薫りたちます。
R.シュトラウスは9つの交響詩をのこしています。ドン・ファンとティルはとりわけ高い人気をほこる作品で、これらをきっかけにR.シュトラウスの名声が一挙
に世界で高まったといえるものです。2021年10月におこなわれた観客ありのライヴの収録。2020年3月以降コロナのためにシャットダウンされていた演奏会
がついに再開されたオープニング演奏会のプログラムの一環の録音です。ブックレットには、ウェルザー=メストのR.シュトラウスについての文章が掲載されており
(英語のみ)、シュトラウスの作品の魅力をより深く広く知ることができます。
=ウェルザー・メストの言葉(抜粋) 歳を重ねるにつれ、音楽を通して人生を論じ、生きていることの真理を浮き彫りにするR.シュトラウスのユニークかつ均衡のとれた能力に、ますます深く尊敬す
るようになってきています。シュトラウスの、音楽に対する知識と理解、つまり音楽の歴史とその感情を揺さぶる力についての知見は、他のどの作曲家と比べても
比べようがないくらいにものすごいものがあります。それに加えて、人間の感情、人間の思考、知的な哲学に対する鋭い理解と、音楽で物語を語ることの巧みさが
あります。 シュトラウスの音楽作品がこれほどまでに生き生きとして感動的なのは、作曲家としてだけでなく、人間とは、生きるとは何か、ということについての観察者であ
り、問いかけ人としての彼の能力が、比類なきものだからなのです。 (Ki) |
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TCO-0005(1SACD)
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ジョージ・ウォーカー:アンティフォニー
シンフォニア第4番「Strands」
ライラック*
シンフォニア第5番「Visions」 |
フランツ・ウェルザー=メスト(指)
クリーヴランドO
ラトニア・ムーア(S)*
録音:2020年10月、2021年10月、2022年3月 |
フランツ・ウェルザー=メストが率いるクリーヴランド管のレーベル最新作は、2022年が生誕100年となるアメリカを代表する作曲家、ジョージ・ウォーカー
(1922-2018)の作品集!ピューリッツァー賞を受賞した声楽とオーケストラのための作品「ライラック」、そして弦楽合奏のための「アンティフォニー」およびシ
ンフォニア第4番&5番を収録しています。
「ジョージ・ウォーカーの音楽はとても濃密で、それが10分ほどの作品だとしても、30分の長さのほかの音楽と同じくらい精神的に疲弊します。トリッキーであり、
難しく、要求が多く、挑戦的で、激しさと本物の声があります。私はそれを非常に楽しんでいます。」(ウェルザー=メストの言葉)
ジョージ・ウォーカーは、1996年に音楽家として初めてピューリッツァー賞(音楽部門)を受賞した、アメリカを代表する作曲家。1922年、ジャマイカからの移
民で医師であった父と、アメリカの政府の印刷局で働いてウォーカーの才能を早くから認めた母のもとに生まれました。オバーリンでピアノを学んだのち、カーティ
ス音楽院でピアノと作曲を学び、1945年、同音楽院初の黒人の卒業生となりました。クリーヴランド管との縁は、1947年4月にまでさかのぼります。当時就任
2年目に入ったばかりの音楽監督、ジョージ・セルに「親愛なるマエストロ・セル、はじめてお便り申し上げます。この弦楽合奏のためのアダージョをご覧いただき
たく存じます。この曲を気に入っていただき、演奏していただけることを願っています。・・・」という手紙とともに、作品を送ったのです。セルはこの時この作品
を演奏はしませんでしたが、のちにこれは「弦楽のためのリリック」という名で傑作のひとつに数えられることとなりました。ウォーカーは、生涯を通じて、自分の
音楽を世界の偉大なオーケストラや有名なホールで演奏してもらうために闘い続けました。ウォーカーは2018年、彼の作品に再び注目が集まるのを見届けるこ
となく、96歳でこの世を去りました。 本盤の中でも特に注目なのが、声楽とオーケストラのための作品「ライラック」。ウォルト・ホイットマンによるエイブラハム・リンカーンへの追悼詩「When
Lilacs Last in the Dooryard Bloom'd」の4節に合わせたこの作品で、ウォーカーは、この作品でピューリッツァー賞を受賞しました(ボストン響による委嘱作、世界
初演は小澤征爾の指揮によって1996年に行われました)。無調作品ですが、歌の旋律は常にハーモニーに彩られて、ライラック、鳥、星というこのテキストの3つ
の重要な要素が効果的に音で描かれてゆきます。 (Ki) |
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