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新譜速報 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック 廉価盤 シリーズ
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チャイコフスキー:交響曲第5番
アイヴァー・ボルトン(指)ザルツブルク・モーツァルテウムO
第2楽章ホルン・ソロ:
録音:2008年1月5日 ザルツブルク・祝祭大劇場(デジタル・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 15:42 / 第2楽章 14:16 / 第3楽章 5:49 / 第4楽章 12:56
カップリング/モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番/L・フォークト(P)、R・シュトラウス:ドン・ファン
“初のピリオド・アプローチによる「チャイ5」
おそらく、音盤として登場する初のピリオド・アプローチによるチャイ5。アイヴァー・ボルトンはOEHMSレーベルのモーツァルトなどで最近脚光を浴びている指揮者で、2004/05年のシーズンからこのモーツァルテウム管の音楽監督も努めています。演奏は問題山積。まずヴィブラートを抑えたそのアプローチ。このオケはブリュッヘンやノリントンとの競演も多く、その奏法が十分浸透しており、ボウトン自身もその辺には少なからずこだわりを持っている指揮者なので、当然といえば当然の結果なのですが、問題はそのアプローチの是非ではなく、その不徹底ぶり。第1楽章のテーマは提示部、再現部とも共通しているようにかなりこだわりガ感じられ、それなりに効果を上げていますが、そのこだわりが長続きせず、肺活量が著しく落ちた病人のように呼吸は小さく、大きな音を出すのに怯えているかように音量は終始控えめ。再現部直前で露骨に顔を出すノンヴィブラートの弦のテヌートは意味不明。第2楽章に入るとそのノンヴィブラート自体が曖昧となり、豊かなカンタービレを築きたい衝動が優り、だったらなぜ最初からそうしないのかと素朴な疑問が涌いてしまいます。そんな中、あまりにも衝撃的なのが第2楽章67小節からのクラリネット・ソロ(ツボ12)!奏者の自由に任せたニュアンスではなく、明らかにボウトンの指示と思われるので、この指揮者、決してロマンティックナ感情を持ち合わせていないわけではないのです。ただ、第3楽章で顕著なように響きのトーンがあまりにも暗く、呼吸も響きも伸びないのはどうしたことでしょう。デジタル録音でノイズこそありませんが、吸水率が異様に高いスポンジのように(リミッターが掛かっている?)音楽が空間に広がらずに、瞬間的に消えていってしまうので、音楽の興が著しく削がれるのです。したがって金管が輝かしく鳴り渡る瞬間も皆無に近く、終楽章の盛大な「運命動機」斉奏も素朴すぎてブルックナーのよう。ただ、終演後の拍手はかなり盛り上がっているので、実際の演奏はもっと艶やかで瑞々しい感覚に溢れていたのかもしれません。
第1楽章のツボ
ツボ1 冒頭のクラリネットは、冒頭2小節が極めて弱音、3小節目かから一気に音量を上げ、ノン・ヴィブラートの弦がそれを支える。クラリネットと弦のバランスを巧妙に入れ替えるなど工夫の痕が見られるが、全体の表情はやや神経質。
ツボ2 テンポはやや遅め。4小節を一区切りとした律儀なアーティキュレーション。強弱の微妙な揺れを随所に盛り込んでいる。クラリネットとファゴットのバランスが絶妙。
ツボ3 滑らかさに欠ける。
ツボ4 ニュアンスに陰りがなく、スコアどおりの範疇を出ない。
ツボ5 ここはアーティキュレーションを細分化せず、大づかみなフレージング。
ツボ6 共感に欠けている訳ではないが、心を振るわせるまでには至っていない。
ツボ7 特徴なし。
ツボ8 スコアどおり誠実に歌っているが、響きのニュアンスを抑えつけられた様な印象が拭えず、いまひとつグッと来ない。
ツボ9 インテンポのまま突入。16分音符の立ち上がりは曖昧。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は、付点2分音符を一つずつ均等に弾かせているが、声部が増えても音楽が広がらない。ホルンはまろやかな音色で美しい。
ツボ11 ここでは弦のヴィブラート解禁。フォルティシシモは決してスケールは大きくないが、アンニュイな雰囲気がしっかり敷き詰められ、共感が音に根付いている。
ツボ12 このクラリネットは前代未聞の濃厚ニュアンス!しかも何と感動的なこと!!9連音は曖昧だが、それすら音楽的に聞こえるほどテンポ・ルバートと強弱対比が絶妙の極み。続くファゴットはこれに比べると普通だが、Tempo1に差し掛かるまでのシーンは精妙なニュアンス指示が完全にプラスに作用した瞬間として印象深い。。
ツボ13 直前の全休止が長すぎる。ピチカートは弱めで、ニュアンスも減退。
ツボ14 熱い共感に満ちた呼吸を繰り広げ、フィルテ4つも盛大なティンパニのおかげで盛り上がるが、モノクロの響きと無骨な音楽作りがブルックナーを連想させる。
ツボ15 ヴィブラートかノン・ヴィブラートか曖昧なまま綺麗な流れてしまう。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほんのわずか落とす。
ツボ17 なんだが響きも動きもゴツゴツしていて愉しくない。
ツボ18 きわめて優秀。
第4楽章のツボ
ツボ19 巨匠風のゆったりしたテンポ。響きは厚くないが、風格はある。
ツボ20 ホルンは完全に裏方。主役の木管の決して音をエッジを立てることなく、むしろ弦を主体としてバランスをとっている。主部直前はもったいぶったようなテンポルバートがやや煩わしい。
ツボ21 ティンパニは終始控えめ。ほぼスコアどおりの叩き方。テンポは中庸。風格味を出そうとするのは良いが、音楽が前へグワーッと進まず、リズムの腰がやや弱いのが何とももどかしい。
ツボ22 やや曖昧ながら、アクセント敢行。
ツボ23 意志が弱い。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ
ツボ25 響きは鈍い。
ツボ26 そのままインテンポ。
ツボ27 金管が弱すぎる。
ツボ28 ティンパニ連打は、なぜか唐突に盛大な鳴りっぷり。音価はやや長め。
ツボ29 微温的リズムの刻みが再開。ノンヴィブラートガ雰囲気を削いでしまい、とにかく伸びやかさを欠く。弦は音を切るが、トタンペットは曖昧なまま。ない。
ツボ30 弦は音を切るがトランペットは曖昧なまま。
ツボ31 499小節で突如音量を落とすムラヴィンスキー型。しかし効果は薄い。トランペット改変無し。
ツボ32 プレスト移行の進行が野暮ったさ丸出し。トランペットもホルンも鳴りは良くない。
ツボ33 ここでも最後にティンパニが頑張っているが、なぜかむなしく響く。

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