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カール・アウグスト・ビュンテ(指揮) |
ベルリン交響楽団 |
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BELLA MUSICA
BM31.2424(1CD)
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演奏時間: |
第1楽章 |
16:02 |
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第2楽章 |
13:35 |
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第3楽章 |
6:13 |
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第4楽章 |
13:37 |
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カップリング/ブラームス:セレナード第2番 |
“頑強な造形力を駆使した、野武士的チャイコフスキー!” |
カール・アウグスト・ビュンテは1925年、ベルリン生まれ。チェリビダッケなどに師事し、ベルリン交響楽団を中心に指揮活動をしてきた指揮者。東京芸大指揮科教授も務め、日本のオケを振ったこともあります。あまりに才能が乏しく、本国を追われるようにして日本に東京芸大の職にありついたという噂もありますが、肝心の音楽は、このチャイ5を聴く限り、そんな噂は信じるわけに行かない極めて感動的なもの!まさに「こうでなければ!」と言いたくなるニュアンス、決して思いつきでは不可能な意味深く味わいのある表情の連続なのです。全体的に、一昔前のドイツのの巨匠風の頑強な精神と構築力を湛え、職人的な堅実な音楽作りが圧倒的な説得力を生んでいます。フレージングは決して先を急がず、じっくりと熟成させながら行い、第1楽章展開部や終楽章に象徴されるように造型の大きさも本物。第3楽章の0:06から下降ポルタメントなど、近年はもちろんのこと、一昔前でも例のない路面ティ聞くな表現が散見されるのも特徴的です。しかし、古臭さを感じさせず、何よりオケの奏者の音楽センスと一体化した一途な共感が最後まで揺らぐことがないのは嬉しい限りです。
ただ、これを言い出したらキリがないですが、この演奏、本当にビュンテの演奏でしょうか?実は1960年のライヴとしては録音が良すぎるのです。日本の代理店のインフォメーションではなぜかモノラル記されています(CDに記載はなし)が、ヘッドフォンで何度聴いてもクリアで定位も明確なステレオ録音で、Orfeoなどの西ドイツ系放送音源でも1960年でここまで明瞭なステレオライヴというのは殆ど無かったことを考えると首を傾げざるを得ません。感覚的には1970年台のステレオ・ライヴという印象です。
とにかくこの演奏は掛け値なしの名演であることは間違いありませんので、ぜひご賞味いただきたいものです。【湧々堂】
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第1楽章 |
ツボ1 |
冒頭のクラリネットは、音色的に特徴はないが、テヌートを重視してじっくり歌い込んでいる。表情もきめ細やか。 |
ツボ2 |
テンポは標準よりやや遅め。慎重な足取りで丁寧にニュアンスを紡ぐ姿勢が今印象。オケのアンサンブル能力の高さが窺える。 |
ツボ3 |
楽譜通りで特徴なし。 |
ツボ4 |
堂に入った呼吸。強弱の際はあまり意識していない。 |
ツボ5 |
スラーを意識せず、4小節を一息で通過する一般的な歌わせ方だが、さっさと前へ進むだけの演奏とは明らかに異なり、余韻を感じながら心から歌い上げている。 |
ツボ6 |
強弱のコントラストを強調せず、自然な進行。フォルティッシモも声高に叫ばない。 |
ツボ7 |
わずかにテンポを上げて場面転換を図る。ピチカートは小粒だが美しい、 |
ツボ8 |
このシーンに象徴されるように、これみよがしにすすり泣くようなフレージングを避ける姿勢は首尾一貫したスタイル。 |
ツボ9 |
ややテンポアップ。冒頭は完全に埋没。この時点で内燃力が頂点に達し、この後も聴き応え満点の名演が続くことを大いに期待させる。 |
第2楽章 |
ツボ10 |
弦の導入は、バランス的にややぎこちないが、美観を欠くほどではない。続くホルンが聴きもの!完全無欠なテクニシャンではないが、ほんのりと滲む柔らかいヴィブラートといい、強弱ニュアンスの的確な再現といい、十分に音楽を感じきっている。特に音量が上がり過ぎる傾向がある20小節の2連音でも、その音量バランスは絶妙。 |
ツボ11 |
特定の楽器が突出することのない、豊かは広がり! |
ツボ12 |
クラリネットもファゴットも非常に巧い! |
ツボ13 |
この直前で、今まで見せなかった壮絶な粉砕力を示す。それと見事な対比をなしてピチカートは哀愁をた讃えて響く。休符間の余韻にも御注目!驚くべきは続いてアルコで弾かれるテーマ。112小節(8:08付近)符点二分音符の後に下降ポルタメントを施して、一息でフレージング!これが実に魅惑的で、取ってつけたようなあざとさもない。ボンクラ指揮者にこんな芸当ができるだろうか? |
ツボ14 |
立派!緊張感の弛緩もなく、一貫して渾身の呼吸を飛翔させている。 |
ツボ15 |
媚びた表情を排した清潔なフレージング。 |
第3楽章 |
ツボ16 |
一旦わずかにテンポを落としてから元のテンポに戻る。 |
ツボ17 |
愉悦感は乏しいが、いかにもドイツ的な朴訥とした後味があり、巧いだけの無機的な演奏とは一線を画す。 |
ツボ18 |
もう少しラインの明瞭さが欲しいところ。 |
第4楽章 |
ツボ19 |
実に威厳に満ち溢れたニュアンス!第1楽章冒頭同様に念を押すようにじっくりとした足取りが確実に決まっている。 |
ツボ20 |
ホルンはほとんど裏方。強弱のニュアンスの繊細な配置がここでも印象的。 |
ツボ21 |
テンポはカラヤンに近い標準タイプ。ティンパニは、一貫してトレモロを続け、最後の一拍のみクレッシェンド。野武士的な勇壮さが実に魅力的! |
ツボ22 |
完全無視。 |
ツボ23 |
強烈な風圧感はないが、線が克明で、この瞬間に音楽が小さくなるようなことはない。 |
ツボ24 |
主部冒頭よりほんのわずかに速いテンポに変化。 |
ツボ25 |
強打ではないが克明。 |
ツボ26 |
そのままインテンポ。したがって、主部冒頭より少しテンポは速い。このパターンは非常に珍しい。 |
ツボ27 |
これまた感動的な高揚感!3連音の破綻もなし。 |
ツボ28 |
完全にスコアどおりの音価を遵守。体を張ったティンパニも素晴らしく、最後の一撃もツボ! |
ツボ29 |
いかにもドイツ的な堅実なフレージング。485小節(11:01)でポルタメントが掛かるのが極めてユニーク。 |
ツボ30 |
弦は明確に音を切るが、トランペットはテヌト気味に吹奏。 |
ツボ31 |
スコアどおりで改変なし。 |
ツボ32 |
深みと輝きを兼ね備えた立派な響き!まさに理想の極地! |
ツボ33 |
完全無欠のインテンポ!灼熱の精神をギュッと閉じ込めた音像が最後の一音まで漲っており、手に汗握ること必至! |