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      シャルル・デュトワ(指揮) | 
    
    
      | モントリオール交響楽団 | 
    
    
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      DECCA 
      425-503(1CD) | 
      
      
        
          
            | 録音:1988年10月 モントリオール/聖ユスターシュ教会(ステレオ) | 
           
        
       
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            | 演奏時間: | 
            第1楽章 | 
            14:46 | 
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            第2楽章 | 
            13:27 | 
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            第3楽章 | 
            6:09 | 
            / | 
            第4楽章 | 
            11:55 | 
           
        
       
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      | カップリング/幻想序曲「ハムレット」 | 
    
    
      | “緊張と緩和の完全融合!自己の美意識に貫徹した驚異の名演!” | 
    
    
      
      
        
          
            デュトワのハイセンスな音楽作りは誰もが認めるところですが、これを聴いてそのセンスが古今の指揮者と比べても桁違いであることを痛感。ロシア的な野趣の表出に焦点を当てると、少なからず表現にデフォルメが伴うものですが、そういった要素はデュトワにとって重要ではなく、常に最優先課題は、その作品が最も美しく流れ、自然に鳴り響くこと。したがって時にはスコアの指示を無視していますが、それはスコアの読みの浅さからくる素通りとは異なり、音楽的良心がそうさせていることが分かるので、聴き手を納得させる力を孕むのです。またその手法が、ドキッとする演出を加えるよりも多くの聴き手に説得力を与え、時代を問わず存在意義を持ち続けること、またどんな作品にも通用するということをデュトワは熟知しているのでしょう。 
            しかし、この手法は時に安全運転的なつまらない演奏になりかねません。ところがデュトワにはその心配も全くないのです。そういう安心感と共に心に宿る演奏を確実に実現させるため、オケの機能美は欠かせませんが、その引き出し方がまた絶妙なのです。 
            デュトワは自己の美意識に沿った厳しい要求も相当に出しているはずですが、各奏者は全く萎縮せず、むしろ伸びやかに自分自身の表現のように演奏しており、これは昔のトスカニーニ流儀でもなければ、昨今の仲良しグループ的な自己満足の演奏とも異なる、まさにデュトワ自身が掴んだ流儀であり、その根底には音楽への無垢な愛情が不可欠です。 
            例えば第3楽章。テンポ、フレージング,音色、パート間の連動等、全てにわたってこれ程「最良なもの」を厳選し尽くした演奏はなく、ギリギリまでオケをしごいた痕跡も感じさせないという自然な流動性には唖然とするばかりです。 
            ただ「自然な流麗さ」といっても、楽想によってはそれだけでは物足りないシーンも当然存在します。例えば、第1楽章展開部の直前や、終楽章主部の行進曲風の場面。これらのシーンでは金管群に通常の「メロウさ」を捨てて地鳴りのような響きを要求しているのです。カラヤンとスタイルが似ているとも言われがちなデュトワですが、音楽への愛がどこへ向かっているのか、その違いを感じさせます。 
            デュトワは、決して模範解答を目指している指揮者ではないのです!【湧々堂】 | 
           
        
       
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      | 第1楽章 | 
    
    
      | ツボ1 | 
      冒頭のクラリネットは、ホールの残響と程よく融け合った洗練された響きが美しい。弦とのバランスも良好。後半で低弦の発言力が次第に増す。 | 
    
    
      | ツボ2 | 
      テンポは標準的。木管群は暗さを強調せず、パステル調。決して粘らず、しかも軽薄さを感じさせないのがデュトワのセンス。 | 
    
    
      | ツボ3 | 
      しなやかな流れを強調せず、あくまでも自然体。 | 
    
    
      | ツボ4 | 
      強弱の振幅は小さめにとり、フレージングの自然さを大切にしている。 | 
    
    
      | ツボ5 | 
      スラーの細かい区切りを無視して、4小節間を一息でフレージング。このキマリ方が絶品! | 
    
    
      | ツボ6 | 
      ここもフレーズ推進性を優先。130小節結尾でわずかにリタルダンドする。これまた操作性を感じさせない自然さ! | 
    
    
      | ツボ7 | 
      軽やかなニュアンス表出のために、いかにもロシア的な強靭なピチカートは避けている。合いの手のオーボエの響きは、ちょっと安っぽい。 | 
    
    
      | ツボ8 | 
      わずかにテンポを落とす程度で、耽溺した表情は避けている。そこに気品が漂う。 | 
    
    
      | ツボ9 | 
      やや多めの残響にもかかわらず、16音符が聞き取れるのは驚異的! | 
    
    
      | 第2楽章 | 
    
    
      | ツボ10 | 
      弦の導入の響きは意外にも厚く、強靭な芯が宿る。デュトワがなんとなく雰囲気でごまかす指揮者ではないことの証し。ホルンはデュトワのトーンに則した明るめの色彩。やや陰影に欠けるが一音一音を着実に吹いており】好印象。 | 
    
    
      | ツボ11 | 
      流麗かつ大きな膨らみを伴った呼吸の見事なこと! | 
    
    
      | ツボ12 | 
      クラリネットからファゴットという引き継ぎを感じさせない、フレーズのしなやかな連動性は、古今を通じてダントツ!技術的にも盤石。 | 
    
    
      | ツボ13 | 
      実に丁寧で温かみのある響きを敷き詰め、続く主題へとスムースにつなげる。 | 
    
    
      | ツボ14 | 
      寸分の破綻も見せない驚異的な呼吸!爆発力ではなく開放感を極限まで押し広げる手法の最高の成功例。 | 
    
    
      | ツボ15 | 
      単に美しいだけの演奏との違いをまざまざと痛感させるシーン。心のこもり方が違う!176小節最後の音の頬を撫でるような響きは必聴!! | 
    
    
      | 第3楽章 | 
    
    
      | ツボ16 | 
      一瞬テンポを落とす程度。 | 
    
    
      | ツボ17 | 
      この楽章の最高演奏の一つ。冒頭から、一貫して真面目に一音ごとの意味を感じながら進行。停滞感を生みやすいアプローチにもかかわらず、確実にめるメルヘンチックなニュアンスを表出しながら、音楽が前へ前へと流れる。 | 
    
    
      | ツボ18 | 
      これこそ理想! | 
    
    
      | 第4楽章 | 
    
    
      | ツボ19 | 
      堂々たる威厳を示しつつ高圧的にならず、気品を確保。 | 
    
    
      | ツボ20 | 
      ホルンはほとんど裏方。 | 
    
    
      | ツボ21 | 
      テンポは標準的。ティンパニは完全にスコア通り。決して扇動的な素振りを見せず、ここでも音楽の流れを再優先。 | 
    
    
      | ツボ22 | 
      アクセント指示は無視。 | 
    
    
      | ツボ23 | 
      明瞭な録音によって、音の線がしっかり捉えられており、きちんと歌っていることが分かる。 | 
    
    
      | ツボ24 | 
      主部冒頭と同等のテンポ。 | 
    
    
      | ツボ25 | 
      殆ど聞こえないくらいの弱音。部分的なデフォルメを嫌うデュトワの趣味の表れと言えましょう。 | 
    
    
      | ツボ26 | 
      そのままインテンポ。 | 
    
    
      | ツボ27 | 
      ややテンポアップするが、切迫感を強調せずに進行、それでいながら無機質な響きがひとつもない! | 
    
    
      | ツボ28 | 
      スコアどおりの音価。 | 
    
    
      | ツボ29 | 
      弦の巧さに舌を巻く!もちろん重戦車的な進軍とは正反対。 | 
    
    
      | ツボ30 | 
      弦は音を切り、トランペットはやや中途半端。 | 
    
    
      | ツボ31 | 
      改変型。 | 
    
    
      | ツボ32 | 
      極めて明朗。 | 
    
    
      | ツボ33 | 
      最後の一音まで完全イン・テンポ。最後の4つの四分音符の全てにアクセントを施し、終始の安定感を盤石なものとしていいる。 |