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ラドミル・エリシュカ(指) |
札幌交響楽団 |
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パスティエル
DQC-1581(1CD)
税込定価
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録音:2016年10月14-15日 札幌コンサートホールKitara・ライヴ |
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演奏時間: |
第1楽章 |
15:19 |
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第2楽章 |
14:00 |
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第3楽章 |
5:48 |
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第4楽章 |
12:49 |
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カップリング/ドヴォルザーク:スケルツォ・カプリチオーソ、スメタナ:交響詩「ワルンシュタインの陣営」 |
“偏狭なイメージに囚われず、丁寧にスコアを読み解くことで達成した究極の造形美!” |
2008年に実演で聴いたエリシュカと東京都響との「チャイ5」(CD化熱望中)は、私にこの作品の魅力を再認識させただけでなく、指揮者という存在の意味、筋金入りの職人気質がもたらす普遍的な芸術性を徹底的に思い知らされたという点で、決して忘れられない経験でした。いわゆる「爆演」ではなく、丁寧に造型を積み上げるタイプの「未知の」演奏家に対し、終演後にスタンディングオベーションが沸き起こったのも新鮮な驚きで、日本はに良いものを的確に感知できる聴衆がjこんなにいるのかと、誇らしく思ったのも昨日のことのように思い出します。
この札響のライヴを聴いて、2008年に感じた楽譜に対する読みの深さ、共感の熱さ、声部バランスの統制力は偶然ではなかったことを再認識。これだけ微に入り細に入りスコアの隅々までこだわっては収拾がつかなくなるところですですが、エリシュカの手にかかると、元々そういう作品だという自然体の佇まいを持って聴き手に伝わり、どこにもストレスを感じずに心にしっかりと届くのです。「穏健なジョージ・セル風」とでも言いましょうか、精妙な声部バランスを保持しながら、発する音は常に清潔。スラブ的な色彩は隠し味程度に抑え、あくまでも音楽が持つ造形美を導き出すスタイルを貫徹していますが、それを実現するためのこだわりが尋常ではなく、とてもその全ては書き切れません。一例を挙げれば、場面転換時に一瞬挿入するルフト・パウゼ。それも、よほど注視しなければ気づかないほど控えめなところがミソで、その小さな積み重ねが盤石の造形美に繋がっているのです。特に第2楽章はエリシュカの芸術性の高さが凝縮されており、108小節(7:36〜)のピチカートが始まる直前で大きくテンポを落としているのは、唯一スラブ的色彩をを強調しているシーンと言えますが、それでも重戦車のような響きに傾かないところがエリシュカのセンス。第3楽章の見通しの良いテクスチュアも同様です。終楽章の150小節(4:39〜)で2分音符の音価を最大限まで保ってほんのりとした余韻を醸し出すのも、他に類例なし!
単にスコアの指示をを鵜呑みするではなく、音楽の面白さをデフォルメするのでもない、指揮者という存在の立ち位置と使命を全うした演奏スタイルは、他の札響とのライヴでも、N響との実演でも全く変わりなし。真に「良質な演奏」を引き出す極意を体得するまでに要した時間と努力を考えると、ほんとうに頭が下がります。【湧々堂】 |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
冒頭主題において丹念な拍節感とアゴーギクが絶妙に相俟って独特の哀愁を醸し、 この作品への共感の深さを実証。木管と弦とのバランスの保ち方も見事。しかもク
ラリネットの巧さが尋常ではない!28小節のスフォルツァンドでは、「悲愴」最終 楽章コーダのような"溜め"を伴い、その意味深さも比類なし。 |
ツボ2 |
クラリネットとファゴットは均等に融合。テンポは標準的。 |
ツボ3 |
スコアどおり。 |
ツボ4 |
73小節で僅かにテンポを落とし、旧スタイルの片鱗を見せる。 |
ツボ5 |
そのままインテンポ進行だが、各音価値を微妙に増減させることで、内面的な切なさを炙り出す老練技。 |
ツボ6 |
アニマートから大きくリタルダンドして、深い呼吸で歌い上げる。その後、清潔さを維持しながら主張するピチカートにも要注目。 |
ツボ7 |
わずかにテンポ・アップ。 |
ツボ8 |
低弦と高弦の対話の妙味をここまで堪能させてくれる演奏は他になし! |
ツボ9 |
イン・テンポのまま進行。冒頭音は比較的よく聞こえる。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
冒頭の弦は、極めて新な流れの中で丁寧に情感を表出。音色への配慮も伺える。ホルンは遅めのテンポにも間延びせず、音楽を感じているので心に響く。ホルン・ソロが終わった28小節から、クラリネットソロ、ファゴットソロの各冒頭に僅かにルフトパウゼを挿入。これぞまさにハイセンスな職人芸! |
ツボ11 |
内向的なフォルティシシモの最良の形。 |
ツボ12 |
ここでもクラリネットの巧味が光る。サラリと歌い上げながら綺麗事で済ませていない。ファゴットも心から歌っている。 |
ツボ13 |
この直前で大きくテンポを落としておいて、ピチカートからホルン主題と同じテンポを設定。 |
ツボ14 |
表面的な興奮の煽りとは一線を画し、深く息の長い呼吸を持続させる妙味を堪能。 |
ツボ15 |
息を潜めるような弱音を用いず、清々しく浄化された音楽としてアプローチ。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
導入で少しテンポを落とす程度。 |
ツボ17 |
停滞感がなく、見通しの良いテクスチュアを確保。 |
ツボ18 |
特に1回目で美しく連動を聴かせる。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
テンポはやや遅め。徹底して楷書の進行。 |
ツボ20 |
木管の主旋律の下支えに徹している。 |
ツボ21 |
テンポはやや速め。ティンパニは、ほぼスコアどおり。おスコアを遵守。 |
ツボ22 |
目から鱗!アクセントというより、ここで一旦軽く踏み込むイメージで演奏しており、それにより旋律線がキリッと締まる! |
ツボ23 |
特に強調なし。 |
ツボ24 |
ほとんど同じテンポのまま進行。 |
ツボ25 |
硬質の意思漲る一撃 |
ツボ26 |
そのままイン・テンポ。 |
ツボ27 |
ほぼ主部冒頭と同じテンポ。 |
ツボ28 |
スコアに忠実な音価。ティンパニ連打もスコアの指示通り。 |
ツボ29 |
健康的で清々しい響き。土俗的な色彩とは無縁。 |
ツボ30 |
弦は音を明確に切るが、トランペットはレガート気味に吹かせている。 |
ツボ31 |
改変なし。ここも、強弱の付加も含めて職人芸の極み。この箇所は本来は音の改変など必要としないことを実証。 |
ツボ32 |
強奏ではなく、トランペットとの調和を保ちながら透明感を持って鳴り響く。 |
ツボ33 |
最後までイン・テンポ進行だが、最後の4分音符前で一旦軽い全休止を挟む。 |