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イーゴリ・ゴロフチン(指) |
モスクワ交響楽団 |
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NAMI RECORDS
ARS-3004(1CD)
入手不可 |
録音:1994年9月 モスクワ モスフィルム・スタジオ 【ステレオ】 |
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演奏時間: |
第1楽章 |
15:21 |
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第2楽章 |
13:53 |
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第3楽章 |
5:44 |
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第4楽章 |
12:25 |
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カップリング/カップリング/幻想序曲「ロメオとジュリエット」 |
“伝統的な解釈に沿いつつも自身のセンスを貫徹するゴロフチンの矜持!” |
★指揮のゴロフチンは1956年モスクワ生。6歳からピアノの英才教育を受け、その後指揮にも興味を持って独学でを勉強し、1975年モスクワ音楽院の指揮科に若干19オ歳で合格。コンドラシンに師事しました。卒業後はイルクーツク交響楽団の首席指揮者に就任。この録音当時はモスクワ交響楽団の首席客演指揮者を務めていました。モスクワ交響楽団は1989年に露米合弁企業によって創設され、旧ソ連時代の一流オケの団員で構成。Marco Poloレーベルにマリピエロの交響曲全集を録音しています。ここで聴く限り、弦の人数が少なく感じるのは録音のせいでしょうか?ただそれも気にならなくなるほど、ゴロフチンの真摯な棒さばきと共感の熱さによって、この曲の魅力を十分に伝わる演奏に結実しています。決してスコアの読みが緻密なわけではありませんが、スコアを近視眼的な捉え方をせずに大局を見据えた安定感はむしろ心地よく、また馬力だけで突っ走る安直さとも無縁なので、音楽に一本筋の通ったストーリー性と情感を与えることにも成功しています。
第1楽章では、旧ソ連様式の意地を見せる場面の散見され、特にコーダの金管の張り出し方は民族の意地を見せつけるかのよう。第2楽章はゴロフチンの指揮のセンスを感心することしきりで、4:15の休止をたっぷり確保したり、クラリネット・ソロ(67小節以降)直前の山場で強烈なフォルティッシモをぶつけずにふんわり包み込むような呼吸で情緒を膨らませたり、142小節以降の大きな呼吸は本物の共感がどれだけの説得力を生み出すのか再認識させます。終楽章でまず驚くのが序奏部の荘重な響きの醸し出し方。「チャイ5」のあらゆる録音の中でも傑出した好バランスを誇り、全ての指揮者が手本とすべきと思うほどの充実した響きを導き出しているのです。主部以降は高速で駆け抜けるロシア指揮者の王道アプローチ。このオケの最大の敢闘賞はトランペット。その美しい輝きは2:21からの響きでたっぷり実感いただけるでしょう。
これだけ多くの魅力を湛えた名演だけに、部分的に響きが薄くなる点や、残響がやや過剰で音像がキリッとしない点が実に残念でなりません。【2024年8月・湧々堂】 |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
クラリネットの音色は太く暗く隈取りが濃厚。いかにも旧ソ連時代の伝統を思わせる。テンポは標準的だがリズムの重心が低く、独特の粘着性がある。 |
ツボ2 |
テンポは標準的。弦は粘着質だが木管は洗練されたリズム感で進行。 |
ツボ3 |
軽い弓圧でサラリと進行。 |
ツボ4 |
弦と木管が「同等のバランスで響く。 |
ツボ5 |
イン・テンポのまま、殊更スラーは意識せずに進行。強弱のコントラストも強調しないが情感はかんじられる。 |
ツボ6 |
テンポの動きは最少。フォルティッシモは意識せず。 |
ツボ7 |
残響が多めで、細かい質感が感じ取りにくい。 |
ツボ8 |
ハイセンスなフレージング。殆どイン・テンポを基調としているが、フレーズ結尾でたっぷりとテンポを落とす。 |
ツボ9 |
テンポは速めない。16分音符は不明瞭。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
冒頭の弦は、音価をたっぷりと確保し温存しながら進行。ロシアの大地を彷彿とさせる。ホルンは技術は盤石だが、もう少し弱音のニュアンスが欲しいところ。その後のオーボエは、ハイセンス! |
ツボ11 |
直前までの優美な流れを壊さないように配慮した、ふっくらとしたフォルティッシモを実現。 |
ツボ12 |
テンポは殆ど変わらず。クラリネットもファゴットもソ連の強い香気を感じさせる巧さだが、もう少し陰りがほしい。 |
ツボ13 |
一音ごとにニュアンスを確認しながら進行。109小節で更に音量を落とす配慮も自然。 |
ツボ14 |
ここからテンポアップする演奏が多い中、ここまで築いてきたスケール感を絶やさないようにゆったりとしたテンポを貫く呼吸の持久力が見事。フォルテ4つの頂点の築きも素晴らしい。 |
ツボ15 |
表面的な弱音だけで乗り切る演奏が多い中、ここでの素朴で素直なフレージングには心洗われる。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
ほとんどイン・テンポ。 |
ツボ17 |
テンポは特に急速な訳ではないが、各パートの出し入れを克明に実行することで着実に色彩感を表出。 |
ツボ18 |
克明ラナインを描く。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
かなりの低速。この場合、音像がスカスカになる場合が多いが、粘着性を維持することでそれを回避。 |
ツボ20 |
ホルンは完全に裏方。 |
ツボ21 |
ムラヴィンスキーに近い超高速。ティンパニはスコアどおり。 |
ツボ22 |
ほとんど無視。 |
ツボ23 |
量感がやや乏しい。 |
ツボ24 |
主部冒頭と同じテンポ。 |
ツボ25 |
強打なし。 |
ツボ26 |
そのままイン・テンポで爽快に直進。 |
ツボ27 |
テンポはイン・テンポで突入。トランペットがパーフェクトな出来栄え! |
ツボ28 |
8分音符の音価は、スコアどおり。このテンポ感には、音価をたっぷり過去補する手法は適さない。ティンパニ一撃なし。 |
ツボ29 |
量感豊かというわけではないが、リズムの重心を低くたもっているため、荘重な雰囲気が出ている。 |
ツボ30 |
弦はレガートに近いが、わずかに音を切っている。トランペットは完全にレガート。 |
ツボ31 |
改変なし。全体のバランスが絶妙! |
ツボ32 |
トランペットの輝きに比べると、ぼやけている。 |
ツボ33 |
イン・テンポだが杓子定規ではなく、風格に満ちている。 |