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マレク・ヤノフスキ(指)BBC交響楽団 | |||||||||||||
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Belsona Classics BECL-0154 (2CDR) |
録音:1984年7月26日 ロイヤル・アルバート・ホール(ステレオ・ライヴ) | ||||||||||||
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カップリング/ムソルグスキー:はげ山の一夜(原典版)、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番(Pソロ/P・ドノホー) |
“決してロマンの安売りをしない、ヤノフスキの頑なまでの職人芸!” |
いかにも地味で堅実。そんな演奏の場合は、ドキッとするような衝撃はなく、感動も薄いのが普通ですが、この演奏はそんな誠実路線を貫きつつも、終始一貫ぶれない構築力と、BBC響の巧味が相俟って、この作品を味わい深いものに仕上げています。特に、テンポを激変させて、いかにも熱いロマンを注入させるといった手法にはきっぱりと背を向け、ただただ共感一筋、スコアから音楽的な響きを紡ぎだす事に集中した成果が見事に結実させるヤノフスキの手腕は見事としか言いようがなありません。第1楽章冒頭クラリネットから、そのアプローチの方向性は示されており、色彩的な広がりはないものの、魂の宿りを感じさせます。展開部以降は次第に音楽に推進力が加味されますが、そこには強引さは一切なし。アゴーギクは最小限に抑え、基本的にインテンポですが、それは現代的というよりも、職人的な頑固なこだわりのあらわれ。響きも重厚路線とは対極にあり、むしろ室内楽的な精緻さ。それでいながら音楽は軽くならず、説得力を持って聴き手に迫るのですから、最後まで気が抜けません。 この作品に野人的な迫力しか求めない方は別として、この演奏を通じて、丹念な音作りと、アプローチを一貫させることにより全体像を確信を持って築くという作業の偉大さを、一人でも多くの方に痛感していただきたい願わずにはいられません。 ちなみに、カップリングの「はげ山の一夜」は原典版によるドロドロ・ヴァージョンですが、後付けでニュアンスなど付け足さなくとも、作品自体凄いということを信じて一途に演奏するスタンスはここでも同じ。結果的に、このヴァージョンの凄みを十分に堪能させる素晴らしい演奏となっています。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | 堅実なフレージングに温かな詩情が流れる。クラリネットと弦のバランスが良く、誇張のないニュアンスも心に迫る。アクセントも角を立てず、優しい風情。 |
ツボ2 | 冒頭の弦の刻みは、ごく標準的なテンポながら憂いを感じさせる。 |
ツボ3 | フワッとした浮上感はないが、寂しげな雰囲気が音の末端にまで浸透。 |
ツボ4 | ここも全く誇張がなくインテンポでサラッと流れるが、その後に続く木管の連携も含めて、温かみのあるフレージングが魅力的。 |
ツボ5 | この直前まで鉄壁のインテンポを貫徹するのが珍しい。そこには妙な強引さはなく、音楽の推進力を自然に表出させる結果となっており見事な見識。第2主題はわずかにテンポを落とす。ボウトノスフォルツァンドは鋭利に傾かず、あくまでも全体のしなやかなフレージングを見越した穏健な表情。しかし、音楽が微温的に響くことはなく、絶妙な引き締まった音像が繰り広げられる。 |
ツボ6 | ここのスフォルツァンドも同様。発作的なアクセントではなく、後ろ髪を引かれるような憂いがしっかりとニュアンスとして表出されている。フォルティッシモも抑制が効き、デリケート。 |
ツボ7 | 縦の線が見事に揃った素晴らしい響き。 |
ツボ8 | 第2主題同様、ここでも直前までいささかもテンポを落とさず、この副次主題からガラッとテンポと表情を変える。まさに洗練された技。 |
ツボ9 | 全くインテンポのまま突入。しかもその先もその推進力を絶やさず、最後約10小節だけで音楽を沈静化。過剰なアゴーギクを避け、ここという照準を見定めてテンポの変動を施すヤノフスキの一貫した手法を象徴するシーン。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 低弦の冒頭は予想以上に付点二分音符ごとの表情が濃密で、ヴァイオリンが加わり、ホロンが参加するまでに、次第にハーモニーの洗練度を高める手腕に脱帽!ホルンは、一瞬突発的に大きな音を発する以外は最上の出来栄えで、ホールにも良く溶け合い、心から歌い込んでいる。クラリネットは控えめ。 |
ツボ11 | 冒頭のフォルティシシモはまさに理想の極み!充分のスケール感を感じさせつつも、放射しきれないくすぶりを抱えた、深みのある音像。 |
ツボ12 | クラリネットは明るすぎて陰影にも乏しい。 |
ツボ13 | なんと。ピチカートの第1音を弾くまで、約7秒間という休止を置く。それでも音楽が停滞するどころか、新たな場面に立ち向かう準備として必要不可欠と納得させられる。そして、ピチカートはかなり強靭!次第に音量を弱めて木管ソロに繋げるが、多くの指揮者が行なうこの手法にも職人的な統制力を感じさせる。 |
ツボ14 | 何度も繰り返すが、指揮者の音楽への共鳴度と呼吸が本物かどうか見極める格好の場面だが、まさにこの演奏は理想的。音量的にはもっとドカンと度肝を抜くようにぶちまけることも可能だろうが、アゴーギクの配分のセンスといい、最後の再高潮の格調の高さといいめったに耳にできない完成度! |
ツボ15 | 一切媚びることのない、むしろ淡白な進行。1楽章同様、ここでも最後のクラリネット・ソロで、最高のデリカシーを込めて切々の歌い、これが実に心に染みる。 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | ほとんどテンポを変えずに進行。 |
ツボ17 | 俊敏なヴァイオリンの動きには全くストレスがなく、愉悦の極み。管との連動もしなやか。 |
ツボ18 | やや曖昧だが、一本のラインできれいに繋がっている。あいまいだが、 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 堅実で格調の高さを感じさせるフレージング。テンポはごく標準的。 |
ツボ20 | ホルンはほとんど裏方に徹している。 |
ツボ21 | ティンパニは冒頭一撃はなく、スコアどおりのクレッシェンドを慣行。テンポはカラヤンに近い標準なもの。はったりめいた表情が一切なく、ここまで地味だと、いよいよこれから核心に迫るといった緊迫感を与えにくいはずだが、安心して曲に浸らせてくれる不思議な牽引力が働いている。 |
ツボ22 | 完全に無視。 |
ツボ23 | 健闘しているが、むしろヴァイオリンの刻みの方に比重を置いている。 |
ツボ24 | ここから明確に一段テンポアップ。 |
ツボ25 | キリッとした固いバチによる響きが冴えている。 |
ツボ26 | 主部冒頭のテンポに戻る。厳密にはそれよりもやや速い。 |
ツボ27 | かなりの快速で緊迫感も十分。しかし室内楽的といえるほど響きは制御され尽くされており、改めてヤノフスキの職人技に感服。 |
ツボ28 | 楽譜の音価よりも若干長い。 |
ツボ29 | 冒頭の管のユニゾンから明瞭に響かせ、見通しのよいハーモニーを確保しながらも、しっかりと地に足のついた音像を築いている。響きを量感たっぷり。そこへ素晴らしいい放射力を誇る弦が飛び込む。弦のしなやかなレガートもヤノフスキの趣味を反映。 |
ツボ30 | 上記のとおり、弦は終始一貫レガートで奏でているが、トラペットは音を切っている。 |
ツボ31 | 改変なし。スコアどおり。 |
ツボ32 | 明瞭ではあるが、ニュアンスが曖昧。 |
ツボ33 | 基本的に最後までインテンポ。最後の2小節は、ティンパニの克明な打ち込みと共に決然とした意思を持って締めくくる。 |
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