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新譜速報: 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック 廉価盤 シリーズもの マニア向け  特価品!!
殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
河地良智(指揮)
Yoshinori Kawachi



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番
河地良智(かわち よしのり)
東芝フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:園原茂
LIVE NOTES
LN-3190(2CD)
購入不可
録音:1996年5月6日 カーネギー・ホール(ニューヨーク)【ライヴ】
演奏時間: 第1楽章 15:51 / 第2楽章 12:52 / 第3楽章 6:03 / 第4楽章 15:50
カップリング/アメリカ合衆国国歌、日本国歌、ドヴォルザーク:チェロ協奏曲(岩崎洸;Vc)、山田耕筰:赤とんぼ、スーザ:星条旗よ永遠なれ
“オケ団員とその関係者にとっての美しい思い出”
指揮者の河地良智は、桐朋学園大学指揮科に学び、齋藤秀雄、秋山和慶に師事。1989年の東芝フィル(東芝グループ従業員により構成)の創設以来指導にあたってきました。この録音は、同オケの初の海外公演の演奏を収めたもの。
 アマチュアオーケストラには、プロには出来ない体裁に縛られない思い切りの良い演奏を期待したいところですが、ここに聴く演奏はあくまでも身内向けにのイベントとしての性格が強いように思います。聴衆も家族や企業関係者が大半だったのか、終楽章の全休止で盛大な拍手も起こります。また、通常のプロ・オケならば、たとえビジネスライクな演奏であっても作品の素晴らしさを広く知ってもらおうとする意思が心の奥底に宿っていると思うのですが、彼らにはそれと同等の使命感が最初からありません。つまり、感動を届ける先までの射程距離がそもそも短いと言えます。そのことの限界をこの演奏では思い知らされました。
 もちろん真面目に音楽と対峙しているのはわかります。しかし、技術的な限界は如何ともし難く、その点を踏まえた最大公約数的なアプローチも交えなければならない指揮者の苦労も独特のものがあることでしょう。したがって、この演奏だけで指揮者の力量を判断することは出来ないと思いますが、はっきり言えることは、テンポ選択のセンスの高さ。やや古い時代の慣習を踏襲している点もありますが、全てが的を得て意味を持ったニュアンスに結実しています。第3楽章前半の自然なテンポの揺らぎや、終楽章主部直前のリテヌート、172小節の運命動機の斉奏でガクッとテンポを落としてスラブ色を強調するなど、光るものがあります。ただ、そこに音の凝縮度が不足していたり、持久力が足りなかったりするのは、ただただオケの限界としか言いようがありません。
 一方、終結部に向かうファンファーレの直前の弦が決死の圧を込めて弾きまくったり、全休止後の技術的な難所の少ないテーマの歌い込み方などは本当に見事なので、もっと時間を掛けて難所をクリアしてから本番を迎えていたなら、「関係者」以外の心も打つ素晴らしい演奏になっていたかも…とを考えると残念でもあります。【2024年12月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 かなり主情的なスローテンポ自体に強いこだわりを感じるが。色彩的な陰影は乏しいのが残念。
ツボ2 序奏部でで醸し出したニュアンスを踏襲し、やや遅めのテンポで開始するが、木管はそれに似つかわしくない明るい音色。
ツボ3 緊張のためか、伸びやかさに欠ける。
ツボ4 ニュアンスに特徴はなく、淡々と進行するのみ。
ツボ5 4小節感を一息でフレージングするが、呼吸の振幅が感じられない。
ツボ6 フォルティッシモのPoco meno animatoに慎ましい表情を与える意図が不明。
ツボ7 場面転換のコントラストが弱い。もしくは、ニュアンス変化への配慮不足。
ツボ8 極めて単調。
ツボ9 インテンポのまま。16分音符は聞こえない。コーダへ向かう緊迫感が欠如。
第2楽章のツボ
ツボ10 ホルンは、音の外さないようにするのが精一杯の印象。ニュアンスをじっくり育む余裕がどこにもない。
ツボ11 呼吸が浅くフレージングが性急。
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットもファゴットもぎこちない。
ツボ13 普通の出来ばえ。特徴なし。
ツボ14 フォルテ4つに向かうまでのプロセスは響きも凝縮しており、緊張感もそれなりに増すが、最高頂点で音像が崩れるのが残念。
ツボ15 弦全体があまりにも一本調子。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。
ツボ17 特に弦がもたつき気味。
ツボ18 個々の奏者の技量不足で、一本のラインが築けていない。
第4楽章のツボ
ツボ19 格調高いニュアンスを明確に打ち出す。
ツボ20 ホルンは木管と終始同等のバランスで見事な協調を見せつ。
ツボ21 ティンパニは、主部冒頭58小節、62小節、66小節で、一撃あり。テンポは標準的。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランス。
ツボ24 主部冒頭のテンポ。
ツボ25 はっきり打ち込むが、それほど強靭ではない。
ツボ26 主部冒頭のテンポ。手前の311小節で一瞬テンポを落とす。
ツボ27 標準的なテンポ。452からテンポを落とす。
ツボ28 本来の音価よりも長め。
ツボ29 確信に満ち溢れた堂々たる響き!プロのオケでもめったに実現できないニュアンス。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。
ツボ31 改変型。
ツボ32 明瞭だがやや腰が弱い。
ツボ33 このように546小節の「モルト・メノ・モッソ」を意を忠実汲んだ粘着質の進行を実現させたた演奏は意外と少ない。締めくくりに相応しい。


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