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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY:Symphony No.5 in e minor Op.64
ウラディーミル・ランデ
VLADIMIR LANDE



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ランデ ウラディーミル・ランデ(指)サンクト・ペテルブルク交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
MARQUIS
MAR-81421
録音年:2010年6月 サンクト・ペテルブルク、メロディア・スタジオ【ステレオ】
演奏時間: 第1楽章 13:19 / 第2楽章 10:53 / 第3楽章 5:33 / 第4楽章 10:44
カップリング/ピアノ協奏曲第3番/マキシム・モギレフスキー(P)
“オケにほとんどお任せモード。指揮技術の拙さを露呈…”
ユストゥス・フランツ盤以来の、久々に困った演奏の登場です。指揮のウラディーミル・ランデはオーボエ奏者としても活躍(同レーベルにはプーランク等の室内楽の録音もあり)している人で、サンクト・ペテルブルク響の首席客演指揮者ですが、指揮技術の低さには唖然とするばかりです。あえて言えば勢いに任せた演奏というところですが、とにかく以下に記したように、音色、テンポ、強弱、ハーモニーといった音楽を形作る要素をほとんど何も注入していないと言っても過言ではありません。特にテンポの変動を伴う箇所はほぼ全てがなし崩し的に流しているだけに過ぎず、まさに棒のテクニック自体が欠如しているとしか思えません。イン・テンポにはイン・テンポとする意味があり、スコアの指示を無視するにはそれなりのヴィジョンがと音楽的な説得力がなければ意味が無いことは言うまでもなく、例えばフェドセーエフのライヴ盤のように、通常テンポを落としてゆったりと歌う箇所でも決然とインテンポで進行し、強固な意志の力を孕ませ、新鮮な感動を呼び起こすといった例と比べれば、その差は歴然です。いや、技術以前に、この作品に対する共感とイメージが出来ているのであれば、それを口頭で説明することだって可能なはずですが、そんな痕跡も存在しないのですから、一体何のために音楽をやっているのか理解に苦しみます。
特にあらゆる要素が渾然一体となった第2楽章はどこからどう聴いても稚拙で、音楽的な感興を削ぐ場面の連続。高速テンポで勢いに任せれば一応形にはなる終楽章提示部冒頭やコーダは、結果的には馬力のある立派な演奏に聞こえますが、それとて音楽を感じて心の底から表現した結果の音とは違います。
少なくともこのような超有名作品においては、過去にどんな演奏のどういう要素が人々に感動を与えてきたかを実感した上で、さらなる新鮮な感動を築けると確信できてから録音に望んでほしいものです。

第1楽章のツボ
ツボ1 冒頭クラリネットは、技術的には巧いが、やや淡白なフレージングで、音色のニュアンスも平板。弦も同様。
ツボ2 標準的なテンポ。クラリネットとファゴットは見事に溶け合う。憂いを強調せず、リズムには推進力を感じさせる。
ツボ3 スラーは意識せず、ストレートに進行。
ツボ4 このスラーの意味にも特に囚われず、普通のスタッカートに終始。弦のフレーズ全体に勢いはあるものの、響きが薄い。
ツボ5 イン・テンポのまま突入。冒頭のスフォルツァンドは無視。そのまま4小節を一括りとしてフレージングすることにより、スラーによるアーティキュレーションや強弱のニュアンスが消滅している。
ツボ6 なんと、sffの指示も無視。全くメリハリがなく、フワフワしたメロディーが流れるだけ。フォルティッシモの到達感も皆無。
ツボ7 直前の小節の締めくくりがいかにも不器用。唐突に、しかも情けないほどの弱音ピチカートで開始。テンポのニュアンス、強弱の陰影などの概念がランデにはないのだろうか?
ツボ8 ここでも直前のテンポ移行への準備のないまま、意思を感じないインテンポで副次主題にいきなり突入。「極めて表情豊かに」という指示をここまで無視する演奏も珍しい。
ツボ9 インテンポで突入。八分音符の頭は不明瞭。ティンパニの打ち込みの強さにロシア的な野趣を感じさせるものの、全体的に響きの制御が弱い。最後の4小節は耳を疑うほどハーモニーがアンバランスで、ファゴットのみが浮き上がったまま終わる。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の低弦は、全体のフレージングを意識しないまま各付点2分音符を奏でているだけで、深々とニュアンスなど程遠い。ホルンソロは音楽を心感じているものの、巧味に欠ける。続くオーボエは脳天気に響く。
ツボ11 呼吸がいかにも浅い。
ツボ12 クラリネットもファゴットも無難な演奏。テンポのニュアンスを変えないのはここでも同じ。
ツボ13 無機的な響きの連続。これに絡むオーボエはこれまた素っ頓狂な響き。オーボエ奏者でもあるランデがこの響きを良しとする理由が全く分からない。
ツボ14 ここまでで十分すぎるほど指揮技術の拙さを実感できたが、この難所では遂に素人芸が全開!直前のテンポの溜めなど最初から眼中になく、次第に音量は大きくなるものの呼吸がそれに伴わず、全てが空中分解。微妙なアゴーギクなどこの指揮者には望むべくもない。
ツボ15 このテンポの速さは何事だ?!余韻を感じる暇を与えずスタスタ進行することにどんな意味を持たせるというのか?
第3楽章のツボ
ツボ16 ここもインテンポ。
ツボ17 声部の入れ替えの妙を全く介せず、各奏者はそれぞれの持場で演奏しているだけ。
ツボ18 輪郭が明瞭かどうかという以前に、この走句の存在自体を全く意識していないような扱い。
第4楽章のツボ
ツボ19 標準的なテンポ。16小節のホルンの警告から何故かテンポ・アップ。弦の響きは雑然としている。
ツボ20 木管とホルンはほぼ同等のバランスだが、ハーモニーに美感が伴わない。
ツボ21 ティンパニは一定音量でトレモロ。クレッシェンドは無し。テンポは高速。ここで初めてテンポ自体に意志を宿らせ、見事な高揚感を築く声部バランスも偶然なのかとても良好で立体的な音像で迫る。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 低弦よりもファゴットの響きが目立つバランス配分がユニーク。
ツボ24 インテンポ。
ツボ25 茫洋とした響き。
ツボ26 インテンポ。なお、これも偶然の産物かもしれないが、324小節からの第2ヴァイオリンとヴィオラの細かい8分音符の刻みを克明に生かしている点は注目(提示部冒頭も同様)。
ツボ27 テンポ設定はここでも無策だが、結果的に推進力の維持に繋がっているとも言える。
ツボ28 音価はやや長め。ティンパニは、最後にアクセントあり。
ツボ29 第1音が中途半端な鳴りっぷり。やや速めのテンポで風格よりも楽げな雰囲気重視。
ツボ30 弦は音を短く切るが、トランペットはテヌート。
ツボ31 改変無し。499小節から弦を主体に進行し、金管はそれに埋没させる形。ただ、このスタイルを取るなら、もっと弦に輝かしさが欲しいところ。
ツボ32 露骨な強調はしていないが、バランスよく全体に溶け合っている。
ツボ33 546小節からの「テンポ・メノ・モッソ」の指示を生かしているのが意外。しかもここから最後の小節までの推進力と響きの凝縮力は素晴らしい。最後の2小節のみテンポを緩める。



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