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ジャナンドレア・ノセダ(指) |
ロンドン交響楽団 |
第2楽章ホルン・ソロ: Diego Incertis Sanchez
ディエゴ・インセルティス・サンチェス(客演) |
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LSO Live
LSO-0858(1SACD)
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録音:2019年11月3日ロンドン、バービカン・ホール(ライヴ) |
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演奏時間: |
第1楽章 |
14:04 |
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第2楽章 |
12:26 |
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第3楽章 |
5:45 |
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第4楽章 |
12:29 |
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カップリング/リムスキー・コルサコフ:組曲「見えざる町キーテジと聖女フェヴローニヤの物語」 |
“もっと出来たはずでは?ノセダの表現意欲が空回り気味のライヴ” |
バービカン・ホールのデッドな響きも関係していると思いますが、N響との共演でも明らかなように、全身汗だくで音楽への一途な愛を具現化するノセダにしては、この作品の暗さも悲しみも郷愁も憧れも浮かんでこないのは残念でなりません。随所で思い入れたっぷりの表情を湛えるのですが長続きせず、一貫性にも欠けますし、イタリア人らしい歌心は本物ですが、あくまでも健康的な心理状態の人間から見たチャイコフスキーであり、この作曲家独自の闇の世界に下りて共に泣く素振りを見せません。それならそれで、明るい希望に焦点を当てたアプローチをすればよいのですが、そうでもなさそうなので、聴いていて落ち着きません。
第1楽章コーダのコントラバスがまるで聞こえないのも意味不明。テンポの緩急の操作にゆとりがないのも気になります。
特に第2楽章は呼吸が性急に感じるシーンが多く、じっくり腰を下ろして歌うのを恥ずかしがっているかのよう。そのため、音像も大きく広がらないのです。第3楽章の第1音が音価が長いですが、豊かなホールトーンの中で行えば雰囲気が出たでしょうが、このホールでは無理だったようです。
全楽章を通じて最も響きとニュアンスが安定しているのは終楽章でしょう。ただ、アプローチに一貫性を欠くのは同じですが…。なお、全体にティンパニ・パートをかなり大胆に改変しているのが目立ちますが、ほとんどがロストロポーヴィチ&LPO盤の改変をそのまま踏襲しているようです。ちなみにティンパニのナイジェル・トーマス(Nigel
Thomas)はデビュー当時LPOの副主席を務めていたこともあるので、その際のパート譜をそのまま使用したのかも知れません。ただ、ロストロ盤では、ティンパニが一定の節度を持ってオケ全体と巧くブレンドする形で響いていたのに対し、ここではかなり露骨に響いてしまうこともあり、特に終楽章の179小節以降やコーダの490小節からのトランペットによる主題斉奏に合わせるティンパニは、違和感が強すぎて笑いそうになるほど。演奏後の拍手はなし。最後だけを録り直したのでしょうか?最後の数小節は響きの凝縮度が高いのはそのせいかも知れません。
録音にしろ生演奏にしろ、入念な準備をした上で自信と確信を持って聴き手に音楽を届けるという常識は、もはや通用しない時代に入ってしまったのでしょうか?【2023年7月・湧々堂】 |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
テンポは中庸。クラリネットと弦のバランスラ良好。6、15、17、19小節を一息で吹かせている。20小節からのアニッシモのスコア指示を忠実に実行。イタリア人らしいフレージングセンスを見せる。 |
ツボ2 |
中庸テンポよりやや速め。木管の色彩はやや明るめでリズムも軽妙。 |
ツボ3 |
序奏部のスラー重視型からすれば、ここはもっと繊細なしなやかさが欲しいところ。 |
ツボ4 |
陰りのないスコア通りの音運び。 |
ツボ5 |
胸を焦がすような熱いフレージングが絶品! |
ツボ6 |
ここは表情が平板。 |
ツボ7 |
急速に駆け上がるのみで、ニュアンスに欠ける。 |
ツボ8 |
心から歌ってはいるが、テンポを落としきれていないので、歌に伸びやかさが不足し、どこか歌いにくそう。 |
ツボ9 |
響いはいるが、16分音符は不明瞭。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
冒頭の弦は、空間の広がりが感じられず、ニュアンスの焦点も定まらない。ホルン・ソロを務めるサンチェスは、2023年現在フィルハーモニア管の奏者で、ここでは客演参加。前半は硬さがあるが徐々にニュアンスが板についてくる。しかし、ホールのドライな響きが足を引っ張っている気がする。オーボエは明らかに共感不足。 |
ツボ11 |
呼吸が性急、音量だけ上げててテンポを全く落とさないという不自然さは、どういうことか? |
ツボ12 |
最悪。テンポアップはスコア指示通りだが、クラリネットもファゴットも無機質この上なし! |
ツボ13 |
ピチカート直前の休止が異常に長い。 |
ツボ14 |
ここもテンポの伸縮性に欠けるので、音量の大きさを支えきれないままに音楽がなし崩し的に進行してしまう。 |
ツボ15 |
スコア通り。ニュアンス不足。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
ほとんどイン・テンポだが、ここは性急感がなく、巧くフレージングが形成されている。 |
ツボ17 |
特徴なし。 |
ツボ18 |
美しいラインを形成している。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
神妙に落ち着いた雰囲気を讃えつつも、呼吸が浅いのが残念。 |
ツボ20 |
ホルンは裏方に徹している。 |
ツボ21 |
テンポは標準的。ティンパニはスコア通り。 |
ツボ22 |
軽くアクセントがあるように聞こえる。 |
ツボ23 |
強烈な響きではないが、しっかり意思を持った強い響きが聴き取れる。 |
ツボ24 |
ここからテンポアップしたいのか、インテンポで進みたいのか、曖昧。 |
ツボ25 |
中途半端な強打。 |
ツボ26 |
わずかにテンポを落とす、 |
ツボ27 |
少しだけリテヌートした後に高速進行。切迫感足りないのが残念。 |
ツボ28 |
8分音符は本来の音価に近い。最後にティンパニの一撃アクセントはなし。 |
ツボ29 |
堂々たる進行。 |
ツボ30 |
弦は、ロシア勢以外では珍しいスラー重視のフレージングだが、芯が軟弱、トランペットはスラーなし。いかにもちぐはぐ。 |
ツボ31 |
弦の動きに合わせる改変型。 |
ツボ32 |
よく響いてはいるが、力感に乏しい。 |
ツボ33 |
インテンポを基調とした見事な締めくくり。響きの凝縮度も高い。 |