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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
ハム・シニク(指揮)
Shinik Hahm



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番
ハム・シニク
テジョン・フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Daejeon
Philharmonic
Orchestra
自主制作

品番なし
録音:2004年6月12日キメル・パフォーミング・アーツ・センター・フィラデルフィア(ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 14:46 / 第2楽章 13:01 / 第3楽章 6:03 / 第4楽章 13:22
“音楽に対するビジョンが見えない指揮ぶりに困惑するばかり…”
★またもや、聴き通すのが辛い「チャイ5」に遭遇してしまいました!指揮者のハム・シニクは1958年生の韓国系アメリカ人。これは彼が2001年から2006年まで大田(テジョン)フィルの音楽監督兼首席指揮者を務めていた頃のアメリカ公演のライヴ録音。この人はイェール大学音楽学部の指揮科の教授でもあるそうですが、何をどう教えているのか皆目見当がつかないほど、指揮者としての条件を著しく欠くと言わざるをえません。強弱、明暗、硬軟といった音色ニュアンスが殆ど感じられず、テンポの緩急のみで「それらしく聴かせる」のが精一杯といった感じ。オケは技術的に一級とは言えませんが、「悪いオケというのはない。悪い指揮者がいるだけ」と言われるように、限られた技術力の中でも可能な表現や修正点はいくらでもあり、そういう対処の痕跡が見当たらないのはどういうことでしょうか?
 その最もわかりやすい例が終楽章。主部冒頭は4拍子の進行にも関わらず縦の線が乱れるのは明らかに棒のテクニックの欠如でしょうし、101小節からの付点リズムがまるで付点ないかのようにグダグダなのをこの本番まで修正できていないというのは、それで指揮者と呼べるでしょうか?しかも、その状態でアメリカでの晴れ舞台に臨もうとするのですから言葉がありません。
 わずかながらに個性的な解釈もないわけではありません。例えば、終楽章157小節からのスラーを全て取り払って軽妙なリズムを浮上させようとしており、一瞬なるほどと思わせますが、残念ながらやり方が中途半端でただの衒いとしか響かないのです。
 一体この人の指揮姿はどうなのだろう動画サイトを検索すると、あるわあるわ!その事実にまず軽い戦慄を覚えましたが、指揮姿を見て全て腑に落ちました!左手が手持ち無沙汰のようにブラブラしている、または楽想と関係ない動きをしている、要求したい音のイメージを腕の動きに投影できていない等、ツッコミどころ満載なのです!音楽作りの不徹底さは、素人に毛の生えたような棒のテクニックにも起因していると感じた次第です。指揮を専門的に学んでいなくても、音楽の本質を聴き取ろうとする方なら私の言わんとすることをお察しいただけるのではないでしょうか。
 そんな中、たった一つ心から美しいと感じた瞬間がありました。第2楽章2:58からのチェロの歌い込みは。これはまさに迫真。これほど心に食い入ることはめったにないということだけは付け加えておきたいと思います。  【2025年6月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸テンポ。クラリネットに対し弦の音量が大きめ、クラリネットの繊細なニュアンスが掻き消され気味。
ツボ2 ここでもやや弦の圧が強い。マイク設置の関係か?
ツボ3 音程は正確だが、なんと無機質な音!ここまで魂を抜かれたようなフレージングというのも珍しい!
ツボ4 強弱という概念が存在しないのかのように一本調子。
ツボ5 なぜかここから突如ニュアンス付けがスタート。スコアに沿った表情が浮かぶ。
ツボ6 感情を発散させるでも内省に浸るでもない中途半端なニュアンス。
ツボ7 小気味よく推進性を讃えた表情が好印象。
ツボ8 美しく歌おうとはしているが、弦の音色に美観が欠けており、ニュアンスも繊細さからは程遠く、そもそも音楽への共感の仕方を体で理解しているようには感じられない。これが韓国スタイルだと決めつけたくはないが…。
ツボ9 16分音符の頭はよく聞き取れる、途中かなテンポアップするのは珍しい。最後の一音は低弦がほとんど聞こえずファゴットのみが浮上するのは明らかにイビツ。
第2楽章のツボ
ツボ10 なんとアタッカで突入。動画でも同様なので考えがあってのことだろうが、その意図は理解不能。編集でインターバルをカットしすぎただけかもしれない。ホルンは、ここまでの傾向からしたらなかなかに深々としたニュアンスを讃えている。しかし、ここでも時折圧の強い弦がその繊細な空気に横槍を入れる。
ツボ11 全く力感が抜け落ちている。
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットもファゴットも普通の出来栄えに終始。
ツボ13 ハーモニーのバランスの制御が中途半端。
ツボ14 指揮者のルバートのセンスが良いのが分かる。ただ、それを緊張感を維持しながら音のパワーの変える力量に欠けているように思う。
ツボ15 音色が美しくない。そもそもピアニッシモでもないし、繊細なカンタービレには程遠い。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。
ツボ17 各パートの連携が弱く、ただ弾いているだけの感が否めない。
ツボ18 見事に一本のラインが築けている。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的だが、変な音の引き伸ばしがあり気持ちが悪い。
ツボ20 ホルンは完全に脇役。他の声部はバランスが悪い。
ツボ21 テンポは標準的なものよりよりやや遅めティンパニは、一定音量でトレモロ。
ツボ22 アクセントを完全に無視するだけでなく、スラーも取り払ってリズミカルな表情を与えようとしているが、不徹底。
ツボ23 全体がほぼ同音量。
ツボ24 主部冒頭より少し早いテンポ。
ツボ25 鈍い音。
ツボ26 主部冒頭とほぼ同等のテンポ。
ツボ27 標準的なテンポ。直前からテンポを落とす。トランペットの8分音符の音が弱い。お気楽に吹いている証拠!
ツボ28 本来の音価よりもかなり長め。芝居がかった見得が素人臭くて鼻につく。
ツボ29 弦にこれほど一体感がないのも珍しい。合奏する意思がないかのよう。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。
ツボ31 改変なし。
ツボ32 明瞭だが強靭さに欠ける。
ツボ33 先走り気味に進行し、最後にテンポを落として集結。音に重量感がない上に、ティンパニのロールの最後を手で抑えて余韻を断ち切っている(動画も同様)ので、音楽の推進力が途切れ、一層尻軽な感じになっている。


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