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アジス・ショハキモフ(指) |
ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団 |
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WARNER CLSCCICS
5419.753851(1CD) |
録音:2022年10月13-14日 ストラスブール |
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演奏時間: |
第1楽章 |
14:33 |
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第2楽章 |
13:14 |
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第3楽章 |
5:40 |
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第4楽章 |
11:47 |
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カップリング/幻想序曲「ロメオとジュリエット」 |
“先人から学ばず自身の主張も持たない不毛な録音!” |
ショハキモフは1988年、ウズベキスタン生まれ。指揮をウラディミール・ネイメルに師事。なんと13歳でウズベキスタン国立交響楽団を指揮してデビュー。2016年に「ネスレ&ザルツブルク音楽祭青年指揮者コンクール」で優勝。2021/2022シーズンよりストラスブール・フィルの音楽監督に就任していますが、経歴詐称を疑うほど、ここに聴く内容は酷すぎます!
まず「ロメジュリ」から聴き始めましたが、苦悩も憧れもなく、ただ無難に音楽が推移するのみ。弦のヴィブラートを抑えているのも表現の幅と重みを損ねるだけであまりにもニュアンスに乏しいのです。
嫌な予感を胸に恐る恐る交響曲を聴くと、これが予想を上回る愚演ぶり!とにかく気持ち悪く、他にいくらでも素敵な録音があるのですから、こんな演奏に耳を傾けていては時間の無駄だと断言します!
問題のひとつは、オケの技量の低さ。人数も少ないのでしょうか?ここぞという箇所の量感が悉く乏しいのです。ただ、指揮者に確固とした作品に対するイマジネーションと牽引力があれば、聴き手に音楽の素晴らしさを使えることは可能なはずです。それがないのが大問題です。第1楽章で首をひねるのが、楽譜の指示の遵守の基準が曖昧なこと。フレージング能力の低さも信じがたいほどで、副次主題の一見丁寧な歌い方は、チャイコフスキーらしさの象徴として扱いたかったのでしょうけれど、その意図が見え見えでしらけるばかり。しかも、いちいち拍を感じながら進行するので、しなやかで大きなフレージングに発展しようがないのです。このストレスは再現部でさらに増大。展開部は、音楽が大きくくねることがなく、音量がマックスに達してもエネルギーの増幅に繋がりません。9:47からの木管が連動の中で、フルートだけが意志薄弱な音を発し、終いには聴こえなくなるという怪現象も現れる始末。
第2楽章は、フレージング能力のみならず、呼吸のタイミング、オケの牽引力の低さも露呈。山場の142小節以降の緊張感の緩さは悲しくなります。
第3楽章は、テーマを2小節ごとに分節を区切るのが煩わしく、ここでも歌のセンスの無さに呆れるばかり。後半の3:13からは突然テンポが上がるのは、もはや情緒不安定としか思えません。気持ち悪さはまだ続きます。
終楽章、主部のテーマのテヌート指示を無視するのも意味不明、主部直前の50小節のホルンからテンポに緩急を付けるのも意味不明、171小節からの堂々たる運命動機の斉奏部の付点2分音符で、金管がいちいちフワッと力を抜くのも意味不明。重戦車のように言わないまでも、そういう物々しさを避けたいのなら、それに優る輝かしいニュアンスを放たなければならないはずです。、展開部に入る直前の音を引き伸ばす(6:20)のは完全に素人芸!バトンテクニックの欠如?いずれに音楽が間延びしているのは明らか。確かに急激な場面転換ですからその気持もわかりますが、チャイコフスキ自身が俊敏な切り替えを望んでいたことは想像に難くありません。
そして、気持ち悪さの極めつけは、502小節のシンバル追加!私見では、メンゲルベルク等の戦前派の佇まいがある指揮者や、ストコフスキー等の豊麗な色彩にこだわるスタイルの中で放たれるならまだしも、決して色彩的とは言えないジョージ・セルが同様の処理をしているのもしっくりせず、ましてやこの様な稚拙な演奏を繰り広げた最後に悪あがきのように華々しくシンバルが炸裂すると、怒りを通り越して、クラシック音楽の未来に絶望感を抱くばかりです。
こういう無意味なCDを恥ずかしげもなくリリースするワーナー・クラシックスというレーベル、私には得体の知れない化け物としか思えません。【2024年7月・湧々堂】 |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
テンポは中庸。休止の間を長く取りすぎている箇所があり、木管同士のバランス、低弦と木管のバランスが崩れる箇所もあるのが残念。 |
ツボ2 |
近年の主流である、苦悩をにじませない健康的な進行。特にテーマの16分音符と8分音符の間隔を詰めて軽快に運べる神経が理解不能。 |
ツボ3 |
楽譜通り。 |
ツボ4 |
このスラーは楽譜通り。クレッシェンドとデクレッシェンドでフォルティッシモに膨らませる指示も忠実に実行しているのは珍しい。 |
ツボ5 |
ここのスラーの指示はすべて無視して一気に歌わせる。 |
ツボ6 |
スフォルツァンドの意味を噛み締めた素敵なニュアンス。フォルティッシモは抑制気味。 |
ツボ7 |
最初のピチカートがなんとも寝ぼけた音。もちろんスコアのフォルティッシモには程遠い。 |
ツボ8 |
かなり大胆にテンポを落とすのは良いが、前のシーンの余韻を持ち込まずに全く別の音楽のように響く。デリケートなフレージングも取って付けたような説明調。 |
ツボ9 |
16分音符が明確に立ち上がって聞こえる!最後の最後でも深刻さと無縁の無難な音楽が続く。最後にティンパニが最弱音で一音だけポンと叩く指示を忠実に実行している! |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
弦の導入は最低の出来。レガートを避けるのも解釈としてはあり得ると思うが、これでは音楽が停滞するばかりでニュアンスが一向に表出されない。根本的なフレージングに能力に疑問を持たざるを得ない。ホルンは遅めのテンポに乗り切れていない。 |
ツボ11 |
型通りのルバート。フォルテ3つとは思えぬパッションの欠如。 |
ツボ12 |
クラリネットはままだが、フォゴットは9連音がかなりいい加減。 |
ツボ13 |
無機質。 |
ツボ14 |
素人臭さ全開!入念にアゴーギクを駆使しているようでいて音楽のエネルギーの増減が伴っておらず、途中で音価が必要以上に伸びたりと、音楽全体がまるで凝縮していない。 |
ツボ15 |
デリケートに歌っているが、表面的。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
わずかにテンポを落とす。 |
ツボ17 |
潤滑油が足りないような弦の動き。ここからどんなニュアンスを感じろというのか! |
ツボ18 |
綺麗に連動できているように聞こえる。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
テンポは標準的。テヌートの指示を無視!確信を持った歩みを演出したかったのだろうが、それならば徹底する意思が弱すぎる。 |
ツボ20 |
ホルンはほとんど裏方。 |
ツボ21 |
快速テンポ。ティンパニはほぼスコア通り。弦の滑り出しがもたつき気味。 |
ツボ22 |
完全に無視。 |
ツボ23 |
無難なバランス。 |
ツボ24 |
主部冒頭と同等のテンポ。 |
ツボ25 |
そこそこ響いている。 |
ツボ26 |
そのままイン・テンポ。 |
ツボ27 |
直前でテンポを大きく落とすがか、量感が伴っていないのでやたら大げさに響く。436小節からは快速で進行するが、これも切迫感なし。 |
ツボ28 |
本来の音価よりかなり長いうえに、最後の一音が間延び。 |
ツボ29 |
お気楽なお散歩気分。 |
ツボ30 |
弦もトランペットも音を切る。 |
ツボ31 |
スコア通り。 |
ツボ32 |
良く鳴っているが、根源的なパワーが欠如。 |
ツボ33 |
イン・テンポ。セッション録音なのにスタミナの限界か?最後がパワーが消沈。 |