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協奏曲S〜ショスタコーヴィチ


レーベルと品番、ジャケット写真は管理人が所有しているものに拠っていますので、現役盤と異なる場合があります。



ショスタコーヴィチ/SHOSTAKOVICH

Arabesque
Z-6610
ピアノ協奏曲第1番、交響曲第1番、「黄金時代」〜序奏、ポルカ、舞曲
ギャリック・オールソン(P)、ギルバート・レヴァイン(指)クラコフPO
 1989年 デジタル録音
“打鍵の威力のみに頼らない、強靭な精神持久力!
まさに極めつけといえる、自作自演の録音が存在する中で、それ以外のチョイスをするのは難しいですが、そんななかでもひときわ精彩を放っているのがこの演奏!オールソンの硬質でブリリアントなタッチの魅力が曲想とぴったりマッチした素晴らしい演奏です。第1楽章、アレグロの入ってからのリズムの跳躍の強靭さ、決して音を割らない強打鍵の威厳が実に見事。第2楽章では、悲しいフレーズを更に涙でで染めるのではなく、宿命に動じずに立ち向かう精神的な強さが漲ります。ベートーヴェンの第4協奏曲の第2楽章のオケとピアノのコントラストを思い起こさせる、対話と融和が織りなす絶妙な雰囲気作りも印象的。終楽章のタッチの明快さ、濁りのない高潔さは、オールソンの真骨頂!マーチ風の中間主題でけたたましく跳躍する音型が鋭利に突き抜ける様は痛快そのもの。長いトランペット・ソロを打ち破る大一撃の威力も絶大。その後の加速は、一切の人間性を放棄したような刹那的な暴走を続けますが、高速マシン的な無機質さや軽薄さとは無縁の意思の強さを最後まで貫徹した響きが、聴き手に確かな手ごたえを残してくれるのです。この曲では、トランペット・ソロが一人だけ変に浮いて聞えることがありますが、ここでは全てが一体となったニュアンスが素晴らしく、レヴァインの実に手堅く、オールソンも心行くまで自身の音楽性を飛翔させているのがわかります。なお、交響曲のピアノ・ソロもオールソンが担当。


豪ELOQUENCE
4666642[EL]
ピアノ協奏曲第1番、交響曲第5番*
ジョン・オグドン(P)、
ネヴィル・マリナー(指)アカデミーCO、イシュトヴァン・ケルテス(指)スイス・ロマンドO
*
録音:1972年、1965年*(ステレオ)
“オグドンに輪をかけて意欲むき出しのマリナーに驚愕!
'70年代の全盛期のオグドンのピアニズムは、ここでも全開。持ち前の結晶化されたタッチが諧謔的な楽想のニュアンスを更に押し広げ、メカニックな打鍵の応酬も並外れた求心力を誇ります。人なつっこい人間的な表情に満ちているのも特徴的で、第1楽章最後のテーマの再現も暗く沈み込むというよりも、淡い希望の光を帯びています。第2楽章も苦悩一辺倒ではなく、DECCA特有のピアノの音の捉え方も関係していると思いますが、どんな強打鍵にも温かみを感じさせます。終楽章も力みは一切なし。宙を舞うようなその高速タッチは爽快さ以上の意味を持って迫り、極めて集中力の高い演奏を展開。グリッサンド以降、ピアノに立ち向かうどころか、完全にピアノを征服し尽くして、これほど軽々と突き進む演奏も珍しいでしょう。ところで、この演奏で意外にもな衝撃的なのはマリナーの指揮!どんな作品でもそつなくこなすイメージの強いマリナーですが、オグドンとの相乗効果がよほど巧くいったのか、迫真の表現に徹しているのです。特に終楽章のヴィルテージの高さにはには手に汗握ります。トランペット・ソロの巧さも古今通じてトップクラス。一方、ケルテス指揮の交響曲は、アンセルメの指揮で引き出されるあのサウンドが、実に柔軟なレスポンスをもって飛び交っているのがまず興味深いところですが、ユニークなテンポ設定をはじめ、ケルテスの並々ならぬ感性を改めて痛感させ、聴後は爽やか。


PHILIPS
475-7575
チェロ協奏曲第1番*、チェロ協奏曲第2番
ハインリヒ・シフ(Vc) 、
ヨハネス・リツコフスキー(Hrn)*、マキシム・ショスタコーヴィチ(指)バイエルンRSO
録音:1984年4月(デジタル)
“尋常ならざる共感の深さを示した歴史的録音!
美しい音色と洗練されたスタイリッシュな演奏に定評のあるシフは、ここでもドロドロの情緒纏綿たる表情を避け、ポーカーフェイスのまま終始一貫していますが、それがかえって、あまりの苦悩のために人間的な感情が失せてしまったかのような不気味な冷気を感じさせるのです。しかも内面には溢れんばかりの熱気を孕み、特に第1番の終楽章など壮絶の極み!また、オケの機能美と音楽性の高さを完全に引き出したマキシムの指揮が、単に作曲者の息子という理由を超えた普遍的な説得力に溢れているのも大きな魅力!首席ホルン奏者、リツコフスキーのソロが、これまた巧いのなんの!シフの音楽性とピタリとマッチしたニュアンスの美しさ、録音の素晴らしさの点で、他の録音を大きく引き離しています。

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