DG
4690692(4CD)
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ヒンデミット:交響曲「画家マチス」、
フランク:交響曲、
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲* 、
シベリウス:交響曲第2番&第5番 、
R.シュトラウス:交響詩「ティル・オレインシュビーゲルの愉快な悪戯」、
交響詩「ドン・ファン」、
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番 |
セルジュ・チェリビダッケ(指)
スウェーデンRSO、
ジャクリーヌ・デュ・プレ(Vc)*
録音:1970年 ステレオ・ライヴ |
“シュトゥットガルト時代を迎える前のチェリビダッケの芸風を伝える貴重な遺産” |
これを聴くと、既にこの頃から、チェリビダッケの冷徹なまでのスコアの読み、テクスチュアへのこだわりを通じて、作品本来のあるべき姿を再現しようとする姿勢が現われているのが分かります。第1部“天使の合奏”冒頭の弦の極限のピアニッシモから、さっそくチェリ特有の透徹の世界が現出され、文字通りの天上のニュアンスが流れます。主部は、羽根のような感触で一貫しながらも、リズムは芯から沸き立ち、潔癖なハーモニー・バランスと共に見事な推進力を見せます。最後の一音では、早くもチェリの気合の唸り声が聞かれるほど、気力も充実。第2部では、暗く沈んだ響きを排して常に透明度の高い音像を確保し、クリスタルを思わせる硬質の輝きを静かに放ちます。金管のフレーズの神々しい高揚と、共感溢れる呼吸の振幅も実に見事。第3部で、第1音の立ち上がりが認識できないほどの最弱音で始まり、そこから息の長いフレーズの静と動のメリハリをつけて緊張の空間を醸し出していくのもチェリの真骨頂で、1:37からの異様に長く持続するティンパニ連打を一つの頂点として構築しているのは、その象徴でしょう。テンポの速い魑魅魍魎の饗宴場面は、美感を損ねずに圧倒的力感を誇示する金管の咆哮が圧倒的な威厳で襲い掛かり、コーダの“アレルヤ”吹奏の輝きもまさに渾身の熱さ!【湧々堂】 |
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DISKY
DB-707432(10CD)
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ヒンデミット:交響曲「画家マチス」*、
バルトーク:ディヴェルティメント、
リスト:交響詩「タッソー」、他 |
コンスタンチン・シルヴェストリ(指)
フィルハーモニアO
録音:1958年(モノラル)*、他 |
“シェエラザード、フランクの交響曲と並ぶ、シルヴェストリの最高傑作!” |
ヒンデミットの第1曲の出だしのふくよかに広がるニュアンスから、爆裂するシルヴェストリの印象とかけ離れた真摯な意気込みを感じさせます。一音ごとにかなり濃厚な表情を施し、モノラルながら原色タッチの色彩で統一しているのも如実に伝わってきます。第1部の主部など、まるでバルトークの舞曲のうな生命感が、一定の緊張感と共に絶え間なく脈打ち、独特の重量感を持って聴き手に迫ります。第2部も分厚いテクスチュアの中に濃厚なロマンを満遍なく盛り込み、全ての表情がダイレクトの心の迫りますが、ここでも木管のソロをはじめとして、チェリビダッケのような高潔さとは違う、生々しい人間の息づかいを感じさせるのが特徴的です。終曲は、シルヴェストリならではの腹の底からの凄みを利かせた推進力が炸裂。しかもアンサンブルの凝縮力が尋常ではなく、オケの技量も最大に引き出しているので、手応えも破格です。シェルヘンなどにも言えることですが、シルヴェストリの抑え難い表現意欲とダイナミズムが、機能性とセンスを兼ね備えたオケによる強固なアンサンブルの中で醸成された時に、どれほどの説得力を生むものか、この録音がはっきりと教えてくれます。
バルトークも絶品!いかにも現代的なシャープさを売りにする演奏が多い中、ハンガー農民の逞しい生命力を前面に押し出したこの演奏は、かけがえのない価値を誇っています。第1楽章のリズムの重心はあくまでも低く、響きは土俗的で重厚。絶妙なアゴーギクと共に、次々と多彩なニュアンスを羽ばたかせながら、深い郷愁を湛えています。第2楽章の美しく均整のとれたリリシズムも心に切々と響きます。これが作曲された頃は、ナチスが政権をとった不安の時期でしたが、ここではそのイメージを直結させたというより、もっと人間の潜在的な苦悩の抉り出した様相を呈しています。7:04以降の戦慄のニュアンスなどは、シルヴェストリが醸し出した最もシリアスで真に迫るものではないでしょうか。終楽章の根源的なバイタリティに溢れたリズムの弾力も素晴らしいですが、終結近く(6:24)の、ピチカートで始る束の間の夢のようなチャーミングな表情は、何としてもお聴き逃しなく! |
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