湧々堂HOME 新譜速報: 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック 廉価盤 シリーズもの マニア向け  
殿堂入り:交響曲 管弦楽 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック SALE !! レーベル・カタログ チャイ5



フランス・レーベル・サマー・セール2024






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品番 内容 演奏者
APARTE
AP-248
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Cellopera
モーツァルト:「ドン・ジョヴァンニ」より 窓辺においで(マンドリン:ジュリアン・マルテイノー)
 「魔笛」より 愛の喜びは消え
 「ドン・ジョヴァンニ」より 彼女の心の安らぎこそ
ベッリーニ:「カプレーティとモンテッキ」より ああ、幾たびか
ロッシーニ:ウィリアム・テル幻想曲
ドニゼッティ:「愛の妙薬」より 人知れぬ涙
ヴェルディ:「リゴレット」より いつかあなたに会ったときから(四重唱)
 「仮面舞踏会」より 死にましょう、でもその前に
 「ドン・カルロ」より 彼女は私を愛したことがない
プッチーニ:「トスカ」より 星は光りぬ
 「蝶々夫人」より ある晴れた日に
チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」より 青春は遠く過ぎ去り
ワーグナー:「タンホイザー」より 夕星の歌
オッフェンバック:「ホフマン物語」より ダイヤモンドの歌
 「ホフマン物語」より 舟歌による幻想曲
 「ラ・ペリコール」より ほろ酔いのアリエッタ
チャイコフスキー:「スペードの女王」より ポリーナのロマンス
オフェリー・ガイヤール( チェロ )
トマシュ・ヴァブニツ(指)
モーフィング 室内O

録音:2020年6月22−25日、ウィーン
気品としなやかさを兼ね備えたフランスの女性チェロ奏者、オフェリー・ガイヤール。王道レパートリーからアイデアと演出の妙が効いた遊び心ある作品までし なやかな感性で弾きこなす人気チェリストのガイヤールの最新盤は、「Cellopera/チェロペラ」と題した、オペラの名アリアをチェロで奏でるという内容。 ガイヤールはこのアルバムの制作のきっかけをこのように話しています。「20年以上前、エクサン・プロヴァンス音楽祭で、ダニエル・ハーディング指揮の「ドン・ ジョヴァンニ」の上演でチェンバロ奏者のエマニュエル・アイムと共に通奏低音として参加した時のことです。歌手の一人がリハーサルを欠席した際に、マーラー・ チェンバー・オーケストラのソロ・チェリストが、オッターヴィオ(T)が歌うアリア「彼女の安らぎこそ」を弾いたのです。それは私にとって恵の瞬間であり、 新しい音楽の窓が開いたのです。もちろん幼い時からオペラには触れてきましたし、往年の名歌手たちの歌唱も私の心に残っています。そして私の、チェロでオ ペラを奏でたいという欲求とオペラの傑作たちに対峙するときにパウル・クレーの「芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、目に見えないも のを見えるようにするものです。」という言葉を思い出し、この追求と探求の旅に出ることを決心しました。皆様にきっと楽しんでいただけることでしょう。」 チェロは人間の声に近い楽器と言われていますが、ガイヤールの潤いを湛えた繊細な音色や時に力強く、時に親密に語りかける音楽は、より作品の魅力が増し、 オペラ、チェロの両者の新たな扉を開く1枚となっています。
AP-237
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ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
F.A.Eのソナタ〜スケルツォ
ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調Op.78「雨の歌」
ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調Op.100
ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調Op.108
アイレン・プリッチン(Vn)1725年ジャック・ボキー製
マクシム・エメリャニチェフ(P)1875年製ニューヨーク・スタインウエイ

録音:2020年2月24-28日/サン=ピエール・ルーテル教会(パリ)
1987年に旧レニングラードで生まれ、2011年ヴィエニャフスキ国際コンクールで優秀賞、同年のチャイコフスキー国際コンクールでも入賞したアイレン・プリッ チン。彼がマクシム・エメリャニチェフとブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲に挑戦。
エメリャニチェフはムジカ・エテルナの通奏低音の妙技と存在感で注目され、プリッチンも来日公演時にコンサートマスターを務めるなど、ともにクルレンツィス の薫陶を受ける期待の若手だけに興味津々。エメリャニチェフの指揮はロジェストヴェンスキーが師ですが、クルレンツィスとゲルギエフの影響を強く受け、2018 年に東京SOを振ったブラームスの交響曲第1番は絶賛されました。ブラームス好きを公言する彼がここではピアニストとして登場。それもフォルテピアノで はなく、ソナタ作曲と同時期1875年製のニューヨーク・スタインウエイで雄弁極まりない伴奏を披露しています。 若々しさと音楽の大きさをあわせもつ名盤の登場、ご期待ください。 (Ki)
AP-258
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ドレスデンのオーケストラのためにVol.1「序曲」
ヨハン・ダーヴィト・ハイニヒェン:ソナタ「エルベ川上のディアナ」
ヤン・ディスマス・ゼレンカ:オラトリオ「青銅の蛇」ZWV 61〜邪悪な者を退けた
同:オラトリオ「贖い主の墓前の悔悛者たち」ZWV 63〜序奏
テレマン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調TWV 53:D5
ハイニヒェン:ミサ曲第12番〜聖霊にして
E同:ミサ曲第9番〜コンチェルティーノ/十字架に付けられ
クヴァンツ:2つのフルートの為の協奏曲ト短調QV 6:8a
ヨハン・ゲオルク・ピゼンデル:ソナタ ハ短調
ファッシュ:2群のオーケストラの為の序曲
ゼレンカ:神の御子のミサZWV 20〜キリストよ憐れみたまえ
ハイニヒェン:協奏曲ヘ長調
コリーヌ・デュティユール(Ms)、
ステファン・マクラウド(Br)、
ステファノ・ロッシ(ヴァイオリン)ほか
アレクシス・コセンコ(指)
レ・ザンバサドゥール、ラ・グランド・エキュリ

録音:2020年11月30日-12月2日/ロワイモヨン修道院
1709年から半世紀間、ザクセン選帝侯アウグスト一世及び二世時代のドレスデンはヨーロッパ最高の音楽家を集め、そのオーケストラは「世界で最も壮大」と 賞されていました。大バッハがワイマールやライプツィヒで活躍していたのと同時期、ドレスデンの宮廷で繰り広げられた華麗でまばゆいばかりの作品を集めたシ リーズの第1弾は「序曲」。
関係作曲家たちは、そのオーケストラの機能を最大に生かした作品を生み出しました。多くは歌手が主役を務めますが、器楽奏者たちの名人芸も反映されていて 聴き応え満点。フルート奏者で指揮者のアレクシス・コセンコが2010年に創立した若い古楽器団体レ・ザンバサドゥールの妙技にひたれます。 (Ki)
AP-261
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NOT ALL CATS ARE GREY
リゲティ:弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」
バルトーク:弦楽四重奏曲第2番イ短調
デュティユー:夜はかくの如し
ハンソンQ【アントン・ハンソン(Vn)、ジュール・ドゥサップ(Vn)、ガブリエル・ラフェ(Va)、シモン・デュシャブル(Vc)】

録音:2021年4月
2013年に結成されたハンソン四重奏団、第2弾は「夜」をキーワードとする作品集。第1弾のハイドン(AP213)では、「ALL SHALL NOT DIE」という意 味深いタイトルがつけられておりましたが、今回は「NOT ALL CATS ARE GREY」。これは、「暗闇ではネコはみなグレーに見える」という英語のことわざ(見た 目は大事じゃない)にひっかけたもので、暗闇(夜)にインスピレーションを得て書かれた作品が並びます。デュティユーの名曲にして難曲「夜はかくの如し」は非 常にふくよかで音楽的。堆積した音色が織りなすハーモニー、無機的とも思える音型のひとつひとつに血がかよった、あたたかみすら感じられる演奏。「夜」のもつ 秘密めいた雰囲気や情景が美しく様々にうかびあがってくるようです。
ハンソン四重奏団は2013年に、ハット・ベイエルレ(ヨーロッパ室内音楽アカデミー)、エベーヌ四重奏団、そしてジャン・シュレムらのアドヴァイスによって結 成されました。ハイドンの弦楽四重奏曲を柱にしながら、細川俊夫、ヴォルフガング・リーム、マティアス・ピンチャーらといった現代の作曲家作品までをも演奏す るマルチな才能を持つアンサンブルです。2016年ジュネーヴ国際音楽コンクール第2位、同年ハイドン室内音楽コンクール第2位(ハイドン・プライズ、 聴衆賞、20世紀作品のベスト演奏賞も同時受賞)するなど世界がその実力を認めています。 (Ki)
AP-263
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アンドレアス・ショル〜カンシオネス
(1)ブローウェル:イギリス民謡集〜彷徨える人/サリー・ガーデン/流れは広く*
(2)同:アン・アイディア(エリの為のパッサカリア)
(3)同:愛の歌集(全3曲)*
(4)バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007
(5)シュテルツェル:あなたがそばにいれば*
(6)バッハ:すべての善きものの源泉BWV445*
(7)同:主よ、人の望みの喜びよBWV147*
(8)ブローウェル:新しい単純な練習曲〜シマノフスキ讃
アンドレアス・ショル(C.T)*
エディン・カラマーゾフ(リュート(4)-(7)、ギター(1)(2)(3)(8))

録音:2018年11月13-16日
スタジオ7フレンドシップ(キードリヒ)
ヤーコプスの秘蔵っ子としてハルモニア・ムンディから衝撃のデビューを果たしたアンドレアス・ショルも、今年54歳の大ベテランとなりました。彼が数年来コン ビを組んでいるボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身のリュート、ギター奏者のエディン・カラマーゾフと共演したアルバムをAparteレーベルからリリース。久々の待 望新譜となります。
ショルといえば古楽のイメージが強いものの、彼とカラマーゾフふたりのためにレオ・ブローウェルが2015年に編曲した5つのイギリス民謡集から3篇を披露。 名曲「サリー・ガーデン」の情感は人生経験を積んだショルの深い音楽性を示してくれます。
またロルカほかスペイン語の詩による「愛の歌集」も絶品。「主よ、人の望みの喜びよ」が収録されているのもサービス精神を感じさせます。
嬉しいのはカラマーゾフのソロも含まれていること。ブローウェル作品に加え、バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」(全6曲)をリュートで披露。バーゼル・スコ ラカントールムでホプキンソン・スミスに師事したカラマーゾフは、ショルのみならずヒリアード・アンサンブルやスティングとも共演する幅広さ。最高の癒しの時を 提供してくれます。
AP-272
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バッハと新ウィーン楽派
バッハ:トッカータ ホ短調BWV914
シェーンベルク:3つのピアノ曲Op.11
バッハ:トッカータ嬰ヘ短調BWV910
ベルク:ピアノ・ソナタOp.1
バッハ:トッカータ ニ短調BWV913
ウェーベルン:変奏曲Op.27
ホルテンス・カルティエ=ブレッソン(P)

録音:2021年2月/サル・コロンヌ(パリ)
ホルテンス・カルティエ=ブレッソンはフランスを本拠に活躍する女流で、いとこは高名な写真家アンリ・カルティエ=ブレッソン。彼女は長年パリ音楽院で教鞭 をとるかたわら精力的に演奏活動も行なっています。
今回はバッハのトッカータ3篇にシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンら新ウィーン楽派大作曲家の初期ピアノ曲をはさみ、一種異様な組合せを示しています。 しかし新ウィーン楽派の音楽はモチーフの展開、線的な書法、感情を極力排するなどロマン派、古典派と通り越しバッハの世界に近いことを証明しています。
カルティエ=ブレッソンはシェーベルクやウェーベルンでも無機的にならず、微妙なニュアンスあふれる演奏を聴かせてくれます。 (Ki)
AP-274
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ロンドンの夜
1. ジェームズ・オズワルド(1710-1769):彼女は何も着ていないときがいちばんかわいい(ソロ・ヴァージョン)
2. チャールズ・アヴィソン(1709-1770):ラルゴ(スカルラッティにもとづくコンチェルト・グロッソ第5番より)
3. フランチェスコ・ジェミニアーニ:合奏協奏曲 ニ短調 H.143「ラ・フォリア」
4. ヘンデル:シンフォニア(セルセ HWV 40より)
5-8. ポルポラ(1686-1768):チェロ協奏曲 ト長調 INP 18
9. ヘンデル:"わたしの痛みを信じてください(Credete al mio dolore)"(アルチーナ HWV 34 第3幕より)
10. ヘンデル:合奏協奏曲 変ロ長調 op.3-2, HWV 313より第2楽章
11. ヨハン・アドルフ・ハッセ:フーガ(グラーヴェ) ト短調
12-14. ジョヴァンニ・バッティスタ・チッリ(1724-1808):チェロ協奏曲第2番ト長調 op.14-2
オズワルド:15. The Murrays March 16. My Nanio 17. 彼女は何も着ていないときがいちばんかわいい( アン サンブル・ヴァージョン)
18. ジェミニアーニ:音楽芸術における良い趣味の理論より”The night her silent sable wore(夜が静かに毛皮をまとい)”
19. オズワルド:パンチボウルの底
20. ジェミニアーニ:音楽芸術における良い趣味の理論より”Oh Bessy Bell and Mary Gray”(ベッシー・ベルとメリー・グレイ)
21. ヘンデル:聖チェチーリアの祝日 HWV 76より
”音楽が元気づけたり鎮めたりすることのできない感情があるだろうか?What passion cannot music raise and quell!”
プルチネッラ、オフェリー・ガイヤール(Vc/1737年製フランチェスコ・ゴフリラー、指)
サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ/ 9)、
ラケル・カマリーナ(S/ 21)、
ルシール・リシャルドー(Ms/ 18, 20)、
ガブリエル・ピドゥ(Ob/ 10)

録音:2021年9月27-30日、2022年1月30日
オフェリー・ガイヤール。フランスの女性チェロ奏者として、その繊細かつふくよかな音色と音楽、さらに、凝ったコンセプトのCDで、聴き手を魅了しつづけてい ます。今回のテーマはロンドン。ロンドンには特別な思い入れがあるというガイヤール。「Dreams」(AP.001)を録音したのはアビー・ロード・スタジオで、デュ・ プレと同じマイクを使って録音したこと、あるいはマンチェスターでのチェロ・フェスティヴァルでシュタルケルにであったことなど、ロンドンや英国に滞在する時に はいつじも素敵なことがおこるそう。
そんなロンドンには、かつてより多数の音楽家たちが住み、活躍していました。1700年代には、ヘンデルをはじめ、ジェミニアーニ(Vn奏者として有名 ですが、チェロ・ソナタ op.5の存在で、チェロの音楽史でも重要視されています)、ポルポラ(ファリネッリやハイドンの師で、晩年はオペラから離れ、チェロの音 色に声楽性を発見し、素晴らしいチェロ協奏曲を完成させた)ら、実に多くの音楽家がロンドンにひしめきあっていました。また、スコットランド出身のオズワルドは、 ロンドンに移り、チェロ奏者でありましたが、ジョージ三世の作曲家として使え、スコットランド民謡を主題にした作品を多く書きました。また、ジェミニアーニも、イ ギリス民謡の香りが色濃く感じられる作品を書いています。
ガイヤールとプルチネッラは、当時のロンドンのこうした活気や熱気に満ちた作品を一晩の演奏会のように仕立て、私たちに提示してくれています。ガイヤールの 音色にうっとり、さらに、ゲスト参加しているピオーのヘンデルの「アルチーナ」のアリアの素晴らしさ!豪華声楽陣のゲスト参加も、この1枚をひときわ豪華なもの にしています! (Ki)
AP-277
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アルヴォ・ペルト:スターバト・マーテル
フラトレス(1977/1983)〜弦楽と打楽器
我が心はハイランドに(2000/2013)〜カウンターテナー、弦楽三重奏、ピアノ
天にまします我らの父よ(2005/2013)〜カウンターテナー、弦楽
鏡の中の鏡(1978)〜ヴィオラとピアノ
何年も前のことだった(1984)〜カウンターテナー、ヴァイオリン、ヴィオラ
巡礼者の歌(1984/2021) 〜カウンターテナー、弦楽
スンマ(1977/1991)〜弦楽
スターバト・マーテル(1985/2021) 〜カウンターテナー、ソプラノ、テノール、弦楽
アレクサンドラ・クジャク(S)、
アンドレアス・ショル(C.T)、
ロベルト・アラーニャ(T)
トマシュ・ヴァブニツ(指)モーフィング室内O

録音:2021年9月12-16日/カジノ・バウムガルテン(ウィーン)
ペルトの作品は世界的な名手たちにより演奏、録音されていますが、またひとつ超豪華な演奏陣によるアルバムの登場です。ペルトのピュアな美をアンドレアス・ ショルの美声で楽しめるのも格別ですが、人気急上昇のポーランドのソプラノ、アレクサンドラ・クジャクと現在の夫君ロベルト・アラーニャと「スターバト・マーテ ル」に挑戦しているのに驚き。
ペルトの「スターバト・マーテル」はカウンターテナー、ソプラノ、テノールの弦楽三重奏のために書かれていますが、ここではモーフィング室内Oリーダー のヴァブニツによる弦楽オーケストラ版による豊かな響きで披露。心洗われるひとときを体験できます。
他もショルによるペルトの透明かつ静寂な4篇が収められ、現代でありながら中世のような音世界が広がります。名録音で知られるリトル・トリベカが繊細な息 遣いまで再現。酷暑の清涼な気持ちにさせてくれます。
モーフィング室内Oはリーダーのヴァブニツを指揮者に、「ウィーン弦楽合奏団」の名で今年12月に全国ツアーが予定されています。 (Ki)
AP-288
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私の歌に
マーラー:リュッケルト歌曲集〜私は快い香りを吸いこんだ/美しさをあなたが愛するなら/私の歌をのぞき見しないで/私はこの世に捨てられ
リスト:ローレライ/喜びに満ち、悲しみに満ち/汝天上にある者/愛し合うことは素晴らしいことだろう/おお、愛しうるかぎり愛せ
コルンゴルト:3つの歌曲Op.22/不滅なるものOp.27の5
R・シュトラウス:4つの最後の歌
サラ・トローベル(S)、
ヘルムート・ドイチュ(P)

録音:2021年8月31日-9月4日/マルクス・シティックス・ホール(ホーエネムス)
サラ・トローベルは「メトロポリタンの歌姫」と称されたヘレン・トローベルと大指揮者ギュンター・ヴァントの姪孫にあたるドイツのソプラノ。ヘルムート・ドイチュ の伴奏とあいまってドイツ・リートの魅力を満喫できます。
ここに収められた4名の大作曲家はいずれもメロディ・メーカーで、R・シュトラウスを除くとドイツ人ではないものの、すべてドイツ語の詩に曲がつけら れています。リスト作品のうち「ローレライ」と「汝天上にある者」は「歌の本」、「おお、愛しうるかぎり愛せ」は有名な「愛の夢第3番」の原曲なのも興味をひか れます。 (Ki)
MIRARE
MIR-474
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ集
ソナタ 第5番ヘ長調 op.24「春」
ソナタ第6番イ長調 op.30
ソナタ第10番ト長調 op.96
オリヴィエ・シャルリエ(Vn)
エマニュエル・シュトロッセ(P)

録音:2019年8月28-30日、音楽院オーディトリウム(パリ17区)
名手二人だから到達したシンプルな美しさ、これ見よがしなところはなく、それでいてそこかしこに漂うフランスならではのエスプリただようベートーヴェ ン。オリヴィエ・シャルリエはラ・フォル・ジュルネ音楽祭などで来日も重ねているフランスの名手。シュトロッセもクレール・デゼールとのピアノ・デュオ などでもおなじみのフランスの名手です。シャルリエの奏でる曇りのない音色、そしてシュトロッセの清潔感あふれるタッチがつむぎだすデュオは、まさに シンプルな美しさにあふれています。 (Ki)
MIR-552
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ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第7番ニ長調(K.271a(271i))(カデンツァ:ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ)
リヤ・ペトロワ(Vn)
使用楽器:1735年カルロ・ベルゴンツィ‘Helios’
ジャン=ジャック・カントロフ(指)
シンフォニア・ヴァルソヴィア

録音:2020年9月14−18日、ワルシャワ
ブルガリア出身の俊英、リヤ・ペトロワとカントロフ率いるシンフォニア・ヴァルソヴィアによるベートーヴェンとモーツァルトのヴァイオリン協奏曲。リヤ・ペト ロワは、「今この困難な時にこそ、この二つの音楽的力が強い名曲を録音したいと思い取り組んだ」といいます。そして「名ヴァイオリニストでもあるカントロフ は、この2作を知り尽くしており私の音楽を素晴らしくサポートしてくれました」と。ソリスト、オーケストラ、指揮者の様々な個性が融合し、生命力あふれる音楽 を披露しています。 ベートーヴェン唯一のヴァイオリン協奏曲であり、ベートーヴェンが「ハイリゲンシュタットの遺書」の頃の絶望的状態から蘇り、名作を次々と生み出した「傑作の 森」と言われる時期に書かれています。雄大なスケールの中に気品ある旋律が特徴的な音楽ですが、ソリストには高度なテクニックというより総合的な音楽作り が要求され、ヴァイオリニストが演奏する協奏曲の中では特に難しいといわれています。カントロフの好サポートを受け、リヤ・ペトロワは伸び伸びとした演奏を 聴かせてくれています。 さらには、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第7番では、ピアニストとしての才能はもちろん作曲家としても異才を放つジャン=フレデリック・ヌーブルジェのカ デンツァを使用しています。あふれ出る若き才能とカントロフの円熟の指揮により新たな名演が登場しました。 (Ki)

MIR-321
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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集
ピアノ・ソナタ第2番イ長調Op.2-2
ピアノ・ソナタ第9番ホ長調Op.14-1
ピアノ・ソナタ第14番「月光」嬰ハ長調Op.27-2
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110
レミ・ジュニ エ(P)

録音:2016年9月
2013年のエリザベート王妃国際コンクールで第2位に輝いたフランスの若手ピアニスト、レミ・ジュニエ。MIRAREレーベル2枚のアルバムがこの 度発売されます。第1作目は「パルティータ第4番」「イギリス組曲第1番」「トッカータ(BWV911)」、そして「最愛の兄の旅立ちに寄せて」というバッ ハの作品集(MIR-268)でしたが、今回はベートーヴェンのピアノ・ソナタ集。「月光」ソナタは昨年の来日公演の際にも披露され、卓越したテクニックと 繊細な表現力で聴衆を魅了しました。第1楽章では、静寂の中から浮き上がる神秘的な旋律を美しく、ひんやりとした音色はどこか澄んでいて、厳かな 夜を思わせます。軽やかさのある第2楽章は、絶妙な音色とニュアンスで聴かせます。そして第3楽章では情熱をむき出しにしたようなエネルギー溢れる 音楽を作り上げています。各作品が語りかけてくる声に耳を傾けるような、ベートーヴェンの音楽に真摯に向き合った演奏です。 2017年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにも出演予定で、今後の活躍が一層楽しみなピアニストです。 (Ki)
■ミ・ジュニエ
1992年モンペリエ生まれ。2013年、20歳でエリザベート国際コンクール第2位に輝く。パリ国立音楽院を経て、現在はハンブルク大学にてコロリオ フに師事。NYのカーネギー・ザンケルホールやパリのオーディトリウム・ドゥ・ルーヴルなどでリサイタルを、また指揮者ではエマニュエル・クリヴィヌ、 エド・デ・ワールトなどと、オーケストラではルクセンブルク・フィル、サンクト・ペテルブルク・フィルなどと共演。バッハ作品のデビュー・アルバム(Mirare) がディアパゾン金賞を受賞。
MIR-560
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ヘンデル&スカルラッティ
ヘンデル:「忠実な羊飼い序曲」 HWV 8aより序曲(アンタイ編)
 組曲 ニ短調(アルマンド HWV 436
 クーラント HWV 437、
 サラバンド HWV 438、
 メヌエットと変奏 HWV 436、ジーグ HWV 438)
 組曲第5番ホ長調 HWV 430
D.スカルラッティ:ソナタ ホ短調 K147、ソナタ イ長調 K24、ソナタ イ長調 K 429、ソナタ ニ長調 K443、ソナタ と短調 K12、ソナタ ト短調 K546、ソナタ 変ロ長調 K16
ピエール・アンタイ(Cemb)
1685年に生まれた三人の偉大な作曲家、バッハ、ヘンデルとD・スカルラッティ。そのうちの2名、ヘンデルとドメニコの作品を収録した1枚。ヘン デルとドメニコは当時から鍵盤の名手として名を馳せていました。18世紀に活躍した音楽学者のチャールズ・バーニーは、二人をチェンバロの最高の名手、「天国 の双子」と表現しています。ピエール・アンタイが、二人の名手の作品を、雄弁かつ華麗に演奏しています。アンタイの実力にあらためて驚かされる1枚です。 (Ki)
MIR-572
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ドビュッシー、アーン、ストラヴィンスキー
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
レイナルド・アーン:ヴァイオリン・ソナタ ハ長調
ストラヴィンスキー:協奏的二重奏曲
アイレン・プリッチン(Vn)
ルーカス・ゲニューシャス(P)

録音:2021年12月1-3日/サンクトペテルブルグ放送局
クルレンツィス率いるムジカ・エテルナ初来日時のコンサートマスターを務め話題となったアイレン・プリッチン。2019年の第16回チャイコフスキー国際コンクー ルのヴァイオリン部門4位でしたが、その前(2015年第15回)のピアノ部門第2位だったルーカス・ゲニューシャスと魅力的なアルバムを作りました。
ドビュッシー(1917)、アーン(1926)、ストラヴィンスキー(1932)のオリジナル曲を並べていますが、それぞれ1910年代、20年代、30年代のパリ文化移 りかわりを香らせつつ作曲者たち独自の美学を示しています。
大歓迎なのがレイナルド・アーンのソナタ。魅力的なメロディにあふれ近年録音も増えていますが、真打の登場となります。プリッチンは一目惚れで虜になったそ うで、彼に紹介されたゲニューシャスも「自分の人生の困難な時期を慰め癒してくれ、以来アーンはシューベルトと同等に彼の音楽的思考を支配する存在になった」 と絶賛しています。
両者の思いの強さにより、単に流麗でさわやかなだけでなく、ベルエポック文化への苦い郷愁や相方だった文豪プルーストとの親密な対話など複雑な思いが見 えて来て、この作品の新たな評価へつながる見事な演奏となりました。
MIR-576
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ラフマニノフ・ピアノ曲集
楽興の時Op.16(全6曲)
前奏曲嬰ハ短調Op.3の2「鐘」
前奏曲ニ長調Op.23の4
前奏曲ト短調Op.23の5
前奏曲変ホ長調Op.23の6
前奏曲変ロ長調Op.23の2
ルイス・フェルナンド・ペレス(P)スタインウェイD使用

録音:2019年12月26-30日/マドリード
スペインの人気ピアニスト、ルイス・フェルナンド・ペレスのミラーレ・レーベル第7弾はラフマニノフ。ペレスといえばアルベニスやグラナドス、モンポウなど母国 スペイン作品のイメージが強く、切れ味の良く弾むリズム、湿り気のない音色、大らかな音楽性が魅力でした。
しかし意外にもペレス最愛の作曲家はラフマニノフで、記念すべき7枚目のディスクは彼の作品集にしたいと思っていたとのこと。ここでは初期の重く内省的な 「楽興の時Op.16」の全6曲をはじめ、ペレスが10歳の時初めて習ったラフマニノフ作品である「鐘」など5つの前奏曲を披露。
技巧派で大きな手に恵まれたペレスは楽々とラフマニノフを征服していますが、もともとスペインは情念と哀調でロシアと似た気質もあり、フラメンコのように情 熱的なラフマニノフとなっていて聴き応え満点です。 (Ki)
MIR-598
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ヴィリアンクール・プレイズ・フランク
交響詩「ジン」
前奏曲,コラールとフーガ
交響的変奏曲
前奏曲、アリアとフィナーレ
タンギ・ド・ヴィリアンクール(P)
クリスティーナ・ポスカ(指)フランダースSO

録音:2021年4月26-29日/ブルージュ・コンセルトヘボウ
1990年生まれのフランス期待の名手ヴィリアンクールが、2022年アニヴァーサリー・イヤーのフランクに挑戦しました。ピアノ独奏曲の代表作「前奏曲、コラー ルとフーガ」「前奏曲、アリアとフィナーレ」に加え、ふたつの協奏作品も収めたフランクのピアノ音楽を満喫できるアルバム。
大器晩成と言われるフランク円熟期の作ばかり。いずれも外面的効果は薄いものの、フランクならではの難技巧にあふれ、またオルガン的な壮麗さにも満ちてい ます。さらに和声や循環主題などワーグナーの影響も感じさせます。
ヴィリアンクールは5年前にリストのワーグナー編曲を全曲録音したことが糧になっていることが技術、解釈に反映されているのか説得力満点なのに驚かされま す。もちろんフランス的な洒脱さもあり、理想的なフランク像を作り上げています。
交響詩「ジン」と交響的変奏曲は、エストニア出身の女性指揮者クロイスティーナ・ポスカ指揮フランダースSOと共演。ポスカは1978年生まれ、オペラ指 揮で注目されました。「ジン」はヴィクトル・ユーゴーの作品に基づき、また交響的変奏曲も物語性を感じさせるため、彼女のドラマ作りの巧さが光ります。
MIR-600
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ヴラディゲロフ:作品集
(1)10の印象Op.9【慕情/抱擁/ワルツ・カプリス/愛撫/優雅/告白/笑い/情熱/驚き/諦め(エレジー)】
(2)ブルガリア組曲Op.21【行進曲風に/歌/チェーンダンス/ラチェニッツァ】
(3)前奏曲Op.15
広瀬悦子(P)
※ベヒシュタイン使用

録音:2021年4月5-7日/サンマルセル教会(パリ)
リリースするディスクがすべて絶賛されている広瀬悦子の最新盤は、何とヴラディゲロフ作品集。最近作品リリースが目につく存在でもあり、広瀬悦子の演奏で 聴くことができるのは大歓迎と申せましょう。
パンチョ・ヴラディゲロフ(1899-1978)はブルガリアの民俗音楽をバルトーク的な手法で見事な芸術音楽に仕上げた同国を代表する作曲家。日本でもお馴 染みのレオニード・クロイツァーにベルリンでピアノを師事し、弟子に名ピアニストのアレクシス・ワイセンベルクがいることからも、ピアノ曲が特に優れているとさ れます。
ここでは数多い彼のピアノ曲から特に魅力的な3作品全15曲が選ばれています。10の印象のなかの3篇とブルガリア組曲はオーケストラ版でも親しまれてい ますが、ここではオリジナルのピアノ版で楽しめます。ピアノの方がヴラディゲロフの思いを雄弁に語っていることが感じられます。
ブルガリア独特のリズムと独特な東方的感覚に加え、ピアノの名手の作ゆえ技術的にも非常に難しい作品ばかりですが、広瀬悦子のピアニズムにぴったり。広瀬 は数年来ヴラディゲロフ作品に惹かれ、この企画も彼女の強い希望で実現させた渾身の一枚。コロナ自粛期間中にじっくり取り組んだ成果が説得力あふれる演奏 に結実しているのも聴きもの。広瀬本人による日本語解説も読み応え満点です。 (Ki)
MIR-630
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Un monde fantastique〜幻想的世界
リスト:グノーのファウストのワルツにもとづくパラフレーズ
シューマン(リスト編):「春の夜」(リーダークライス op.39-12)
シューマン:クライスレリアーナ op.16
シューマン(リスト編):献呈 op.25-1
リスト:ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲
ジャン=バティスト・ドゥルセ:エンディミオン(2021, キーツの詩による)
ジャン=バティスト・ドゥルセ(P)

録音:2021年12月
ジャン=バティスト・ドゥルセは1992年生まれのピアニスト、即興演奏家、作曲家。パリ国立音楽院でクレール・デセールにピアノと室内楽を、ティエリー・エス ケシュに即興演奏を師事しました。2019年、ロン=ティボー・コンクールで第4位および聴衆賞、クララ・ハスキル・コンクールでモダンタイムズ(新曲)賞受賞 の注目の存在です。作曲家として20ほどの室内楽や器楽作品を作曲、出版もされています。そんなドゥルセが今回プログラムしたのは、「詩」に多大な影響を受け たロマン派作品。シューマンの歌曲をリストが編曲した「春の夜」の繊細なさざめきのようなピアノは驚異的な美しさです。注目なのが、リストの「ダンテ・ソナタ」 と、そのリストへの導入と自身位置付ける自作を続けて収録していること。リストの「ダンテ・ソナタ」は超絶技巧がものすごいのはもちろんのこと、情景が見事に 目の前に浮かぶような描写力豊かな演奏に圧倒されます。ダンテ・ソナタが下降で始まるのに対し、ドゥルセの作品は上行で始まり、美や神の世界について語る キーツの詩を、天上の世界の響きを思わせる美しいハーモニーで聴かせます。1枚が大きなストーリーとなっている内容で、ピアノの詩人ドゥルセの今後にも期待 が高まります。 (Ki)
MIR-670
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Momentum1
ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲(ロ短調)
レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ(ロ短調)
リヤ・ペトロワ(Vn/Helios、1735年カルロ・ベルゴンツィ製)
ロイヤルPO
ダンカン・ウォード(指)
アダム・ラルーム(P)

録音:[ウォルトン]2022年9月5日、ロンドン/[レスピーギ]2023年1月28-29日
2016年のカール・ニールセン・コンクールで優勝し一躍世界の注目を集めたペトロワ。最新盤となる本盤は、[Momentum(運動量、推進力、勢い)]シリー ズの第1弾。ウォルトンの協奏曲とレスピーギのソナタを収録。続編(2024年リリース予定)にはコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲とR.シュトラウスのソナタを 収録する、ウォルトンとコルンゴルトという2つの作品を軸に構成した意欲的なプロジェクトです。ウォルトンの協奏曲は1938年、続編に収録のコルンゴルトは 1945年という、激動の時代に作曲され、どちらもハイフェッツによって初演されました。今回収録のウォルトンとレスピーギのソナタはどちらもロ短調、さらにウォ ルトン作品にはイタリアを意識した楽章が含まれるといった共通点があります。
ウォルトンのヴァイオリン協奏曲は美しく抒情的に歌うヴァイオリンと、ゆらぎが美しいハーモニーの管弦楽のアンサンブルで始まります。第2楽章は「アッラ・ナ ポリターナ」でタランテラ風の超絶技巧な楽章。カラフルで活気に満ちたヴィヴァーチェの終楽章でのヴァイオリンとオケの丁々発止のやりとりも聴きものです。
レスピーギのソナタは非常にオペラティックで、ピアノがフル・オーケストラのように奏でる上で、ヴァイオリンが何か実際に歌詞のある歌を歌っているような旋 律を奏でます。
ペトロワの次の新譜は2024年リリース予定の[Momentun 2]、コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲とR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタが予定されていま す。指揮と管弦楽はウォードとロイヤル・フィル、ピアノはアレクサンドル・カントロフです。
NoMadMusic
NMM-095
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私たちは女(じゃない)
(1)グリーグ:「ペール・ギュント」〜ソルヴェイグの歌(ソルヴェイグ:放置)
(2)グルック:「オルフェオとエウリディーチェ」〜なんと悲しいひととき(エウリディーチェ:地獄落ち)
(3)ベッリーニ:「夢遊病の女」〜ああ信じられないわ(アミーナ:憑依)
(4)チャイコフスキー:「オルレアンの少女」〜さようなら森よ(ジャンヌ:火刑)
(5)オッフェンバック:「ホフマン物語」〜ホフマンの舟歌(ジュリエッタ:服毒)
(6)ビゼー:「カルメン」〜ハバネラ(カルメン:刺殺)
(7)ピアソラ:「ブエノスアイレスのマリア」〜あたしはマリア(マリア:射殺)
(8)ヴェルディ:「群盗」〜前奏曲(アマリア:刺殺)
(9)モーツァルト:「ツァイーデ」〜虎よ、その曲がった爪で(ツァイーデ:死刑)
(10)カヴァッリ:「ジャゾーネ」〜魔法の洞窟から(メデア:子殺し)
(11)モーツァルト:「魔笛」〜復讐の炎は(夜の女王:敗北)
(12)ベッリーニ:「カプレーティとモンテッキ」〜ああいくたびか(ジュリエット:自害)
(13)モーツァルト:「フィガロの結婚」〜なくしてしまった(バルバリーナ:処女喪失)
(14)ヴェルディ:「運命の力」〜前奏曲(レオノーラ:刺殺)
(15)ハイドン:「アルミーダ」〜憎しみ、怒り、侮辱(アルミーダ:捨てられ)
(16)ヘンデル:「アルチ-ナ」〜ああ私の心の人(アルチーナ:裏切り)
(17)ロッシーニ:「マホメット2世」〜天の正義よ(アンナ:自害)
(18)R・シュトラウス:「サロメ」〜7つのヴェールの踊り(サロメ:圧死)
(19)マスネ:「マノン」〜さようなら、私たちの小さなテーブル(マノン:衰弱死)
(20)ヴェルディ:「椿姫」〜さようなら過ぎ去った日々よ(ヴィオレッタ:病気)
(20)ベッリーニ:「ノルマ」〜お願いだから生贄にしないで(ノルマ:火炙り)
(21)サン=サーンス:「サムソンとダリラ」〜前奏曲(ダリラ:圧死)
(22)ヴァイル:「マリー・ギャラント」〜ユーカリ(マリー:射殺)
テオフィル・アレクサンドル(C.T)、
ツァイーデQ

録音:2021年1月、3月/イル・ド・フランス国立O
テオフィル・アレクサンドルは、今年33歳のフランスのカウンターテナー歌手にしてコンテンポラリー・ダンサー。幼時からアイドルだったマリア・カラス風の声と、 ルドルフ・ヌレエフ風な筋骨隆々とした裸を見せたがる肉体美を誇るユニークな音楽家の出現です。
ヘンデルのオペラのオルランド役でマルゴワールに見いだされ、クリスティ、ミンコフスキらと共演して注目されました。ヒゲの似合う精悍さでヒロインを演じる芸 風は今後ブレイクしそうなポテンシャルに満ちています。
ここに収めた23曲はオペラのヒロインが男への苦悩のなか死んでいく様を描いたアリアで、それぞれの死因まで挙げる凝りようです。アレクサンドルはヒロイン が必ずしも女性である必要はないとジェンダーレスなトリビュートを捧げています。甘くせつない気持ちが妖しく光る独特な世界です。
伴奏を務めるのは女性のみで結成されたツァイーデ四重奏団。モデルばりの美女たちがあえて女性を出さずにテオフィル・アレクサンドルと不思議な一体感を見 せています。 (Ki)
NMM-047
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United Colors
フィリップ・ガイス(b.1961):サー・パトリック、ユナイテッド・カラーズ・オブ・サクソフォンズ
ウィル・グレゴリー(b.1959):ハイ・ライフ
トーマス・ドス(b.1966):スポットライト
ジャン=バティスト・ロビン(b.1976):パルス
グレアム・リンチ(b.1957):青白いダンサー
エリプソス四重奏団
ポール=ファティ・ラコンブ(ソプラノSax)、ジュリアン・ブレッヒエ(アルトSax)、
シルヴァン・ジャリ(テナーSax)、ニコラ・エルエ(バリトンSax)

フレデリック・オステル(指)
ナントPO

録音:2017年10月
ナントで生まれたサックス四重奏団、エリプソス四重奏団の15周年記念アルバム。エリック・ル・サージュやエマニュエル・パユらも彼らのアンサンブ ルを絶賛している人気グループです。ブラス、ジャズ、タンゴ、アイルランド音楽・・・様々な音楽のリズムが融合する彼らの音楽。ナント・フィルハーモ ニーとの豪華共演でお楽しみいただけます。 (Ki)
NMM-059
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バルバラのために
Ma plus belle histoire d'amour
Les rapaces / L'aigle noir
Pour Barbara (avant la nuit)
Nantes
Gottingen
Pour Barbara (vers l'aube)
Une petite cantate
Dis ! quand reviendras-tu ?
Pour Barbara (en son jardin)
Quel joli temps
ギョーム・シャシー(P)

録音:2018年11月
幼いころからバルバラに魅了されてきてピアニスト、ギョーム・シャシーによる、バルバラへのオマージュ。バルバラの歌に基づく即興などが収められています。 (Ki)

NMM-079
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ルートヴィヒ/ツァイーデ四重奏団&ドルプレール
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調Op.47「クロイツェル」(弦楽五重奏版)
弦楽四重奏曲第3番ニ長調OP.18の3
ツァイーデQ【シャルロット・マクレ、レスリー・ブーラン・ローレ(Vn)、サラ・シュナフ(Va)、ジュリエット・サルモナ(Vc)】、ブリュノ・ドルプレール(Vc)(1)

録音:2019年12月/Riffxスタジオ(ラ・セーヌ・ミュジカル)
これは衝撃的。2009 年結成の女性 4 名から成るツァイーデ四重奏団に、ベルリン・フィルの若き第 1 ソロ・チェロ奏者ブリュノ・ドルプレールを加えた 五重奏でベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」に挑戦。
「クロイツェル・ソナタ」は言うまでもなくヴァイオリンとピアノが火花を散らすボルテージの高い力作。それを弦楽五重奏にしているのは興味津々ですが、 ピアノ・パートを 4 人に振り分けるような単純な編曲ではなく、ヴァイオリンのパートも 5 人に分け、完全な室内楽作品に仕上げています。ヴァイオリンが 奏でるはずのメロディーをチェロが歌うなど、予期せぬ驚き満載です。ベートーヴェンの死後にジムロック社から楽譜が出版されましたが、編曲者名は記さ れてません。
チェロを加えることで音の視野が広がり、低域の深みが倍増。一説にはベートーヴェン自身か弟子のリースによる編曲ではないかとされ、各楽器への効果 的な分配やボルテージの高さ、充実度は驚くべきもので、まるで古典派のロックンロールとでも言うような凄さ。良く知る曲ながら思いがけぬ新しい魅力を 発 見させてくれます。
カップリングは彼の弦楽四重奏曲の実質的に最初の曲である第 3 番。こちらは原曲通り弦楽四重奏で演奏。明朗で平和なこの曲と、デモーニッシュなク ロイツェルを並べることで、ベートーヴェンの表現力の幅広さを証明しています。 (Ki)
NMM-088
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フェルナンド・デュリュック:サクソフォン作品集
パヴァーヌ
サクソフォネスカス(全8曲)
2つの子守歌
サクソフォン的変奏曲
サクソフォニア・ディ・カメラ(全4曲)
サクソフォニー(全3曲)
エリプソス四重奏団【ポール=ファティ・ラコンブ(ソプラノ・サクソフォン)、ジュリアン・ブレシェ(アルト・サクソフォン)、シルヴァン・ジャリ(テノール・サクソフォン)、ニコラ・エルエ(バリトン・サクソフォン)】

録音:2020年7月/シャンピニー=シュル=マルヌ音楽院
フェルナンド・デュリュック(1896-1954)はフランスの女性作曲家。六人組などと同世代ですが、あまり知られていません。パリ音楽院で作曲とオルガンを学び、 夫がトスカニーニ時代のニューヨーク・フィルのコントラバスとサクソフォン奏者となったためアメリカに数年間住み、ガーシュウィンのジャズの洗礼を受けました。
デュリュックは夫のためにサクソフォン曲を量産し、それらはフランソワ・コンベルやマルセル・ミュールといった名手にもとりあげられるようになりました。今日 でも彼女の「サクソフォン・ソナタ嬰ハ調」は、この楽器の重要なレパートリーとなっています。
彼女のサクソフォン曲の多くは未出版でしたが、2020年にようやくビヨドー社から刊行されたため、今後重要なレパートリーとなることは確実と申せましょう。 それらを早速エリプソス四重奏団の妙技で録音。リズムと和声の大胆さでラヴェル、ストラヴィンスキー、ガーシュウィン、ドビュッシーの世界が交差点する独特さ。 新たな世界の発見の喜びに満ちています。kい
NMM-110
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フュージョン〜ライヴ・イン・ドレスデン
(1)バッハ:ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ニ短調BWV1060
(2)同:オルガン協奏曲第4番ハ長調BWV595
(3)同:いざ来たれ、異教徒の救い主よBWV659
(4)ティエリー・エスケシュ:即興第1番
(5)シューマン:「BACH」によるフーガ第5番Op.60
(6)エスケシュ:即興第2番
(7)ヴィヴァルディ(バッハ編):協奏曲第8番イ短調RV522
(8)エスケシュ:オルガンのための3つの詩
(9)ピアソラ:「ブエノスアイレスのマリア」〜フーガと神秘
(10)エスケシュ:即興第3番
(11)ピアソラ:フガータ
(12)エスケシュ:タンゴ・ヴィルトゥオーソ
エリプソスQ【ポール=ファティ・ラコンブ(ソプラノ・サクソフォン)、ジュリアン・ブレシェ(アルト・サクソフォン)、シルヴァン・ジャリ(テノール・サクソフォン)、ニコラ・エルエ(バリトン・サクソフォン)】

録音:ドレスデン・フィルハーモニー(ライヴ)
2023年のフォルジュルネ音楽祭にも来日したエクリプス・サクソフォン四重奏団。2004年ナントで結成、2007年FNAPEC国際室内楽コンクールで優勝した実 力派。といっても堅苦しくなく、ジャズやタンゴまでセンス良く手掛け人気急上昇です。
今回はフランスを代表するオルガニスト兼作曲家ティエリー・エスケシュと共演。新しい楽器サクソフォンと楽器の王オルガンが真の対話を見せます。バッハ、 ヴィヴァルディ、ピアソラを素材に即興演奏をミックス。ドレスデンでのライヴで、白熱した演奏を聴かせます。 (Ki)
EVIDENCE
EVCD-085
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ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調Op.36(1931年改訂版)
前奏曲ニ長調Op.23の4
前奏曲ロ短調Op.32の10
楽興の時Op.16(全6曲)
ヴォカリーズOp.34の14(アラン・リチャードソン編)
ジャン=ポール・ガスパリアン(P)

録音:2021年2月シンガー=ポリニャック財団(パリ)
1995年生まれのフランスのピアニスト、ジャン=ポール・ガスパリアンの第3弾はラフマニノフ作品集。パリ音楽院でベロフ、デゼール、チッコリーニ、ダルベル トに師事した彼はフランス・ピアニズムの継承者。第1弾でもラフマニノフの難曲「音の絵」Op.39をとりあげましたが、今回はピアノ・ソナタ第2番をメインに技 巧派ぶりを示しつつも、詩的で高貴な世界が魅力です。
ソナタは改訂版を使用。最後に収められた「ヴォカリーズ」は、ギレリスも愛奏したアラン・リチャードソン編曲版で、ロマンティックに謳いあげています。 (Ki)
EVCD-088
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ジャケ・ド・ラ・ゲール:ユディット&セメレ
(1)聖書カンタータ「セメレ」
(2)トリオ・ソナタ第4番ト短調
(3)聖書カンタータ「ユディット」
(4)組曲ト長調(Vnでも演奏可能なクラヴサン小品集)
エロイーズ・ガイヤール(指)
アンサンブル・アマリリス、
マイリス・ド・ヴィユトレイ(S)

録音:2021年11月5-7日/ラ・クロワ(アントルーグ=シュル=ラ=ソルグ)
17世紀フランスを代表するクラヴサンの名手にして女性作曲家エリザベート・ジャケ・ド・ラ・ゲール。フランス・バロックの作曲家ダカンが夫の甥で、彼のクラヴサン曲にも影響を及ぼしています。
ジャケ・ド・ラ・ゲールはクラヴサン曲のみならず、世俗・神聖両カンタータも多数残しています。そのなかから旧約聖書に登場するふたりの女性、勇気と美徳を体現したユディト、節度と尊厳を体現したセメレを描いた2篇をエロイーズ・ガイヤール率いるアンサンブル・アマリリスが美しく再現。ジャケ・ド・ラ・ゲールの天性のドラマ的感覚が光ります。アンサンブル・アマリリスは1994年結成の女性団体。
器楽作品であるトリオ・ソナタ第4番は、半音階や大胆な和声などコレッリの影響を感じさせる新しい楽器法と、彼女ならではのフランス的な装飾技法の融合が興味深い作品。アンサンブル・アマリリスのフレッシュな演奏で味わえます。 (Ki)
H.M.F

HMM-902291
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モーツァルト:レクイエム
[ジュスマイヤー版にもとづく、ピエール=アンリ・デュトロンによる補完版(2016年)]
ゾフィー・カルトホイザー(S)
マリー=クロード・シャピュイ(A)
マキシミリアン・シュミット(T)
ヨハネス・ヴァイサー(Br)
フラブルク・バロック・オーケストラ、
RIAS室内cho
ルネ・ヤーコプス(揮)

録音:2017年7月、テルデックス・スタジオ・ベルリン(録音ピッチ:A=430Hz)
ヤーコプスがついにモーツァルトのレクイエムを録音。自身カウンターテナー歌手としてキャリアをスタートさせ、歌手として、そして指揮者として経験値と鋭い耳、そして深い知識を持つヤーコプス。70歳を迎え(1946年10月30日生まれ)、満を持しての録音・リリースとなります。冒頭から実にやわらかな音色の管弦楽にまず心奪われます。その後の声楽もそれぞれの声部がくっきりと聴こえ、美しく調和しています。独唱者陣も全体の美しいやわらかな雰囲気をそこならずに、劇的な表情をみせています。ヤーコプスの近年の充実ぶりが結晶化した演奏の登場といえるでしょう。また、注目なのが、ハルモニアムンディから久々にLPもリリースされること。LPの魅力である自然な雰囲気を最上のかたちで得るために、細心の注意をもってレコーディングも行われています。
モーツァルトのレクイエムといえば、問題になるのが版。モーツァルトの死後、ジュスマイヤーによって完成された版で演奏されることが一般的ですが、ここでヤーコプスはフランスの若手作曲家ピエール=アンリ・デュトロンの手による、ジュスマイヤー版を尊重しつつ注意深く行われた補完版を採用。この版を用いてヤーコプスは2016年11月にヨーロッパでツアーを行っており、大成功を収めました。この録音はツアーの後の2017年7月に、CDとLPヴァージョン両方のリリースを念頭においた万全のレコーディング態勢のもと、行われました。
1791年夏、モーツァルトはレクイエム作曲の匿名の依頼を受けます。実際の依頼はフランツ・フォン・ヴァルセッグ伯爵からのもので、彼の若き妻が1791年2月に亡くなったことを受けての依頼でした。匿名であったのは、伯爵はお金を払って他の人に書かせた作品を自作として発表することが多かったから。伯爵の公証人により、依頼が伝えられました。その謝礼は50ドゥカート、フィガロの結婚で受け取った額の半分で、その一部は前払いでした。モーツァルトの家計は厳しい状況が続いており、この依頼は「棚ぼた」であったともいえます。モーツァルトは、10月初旬頃からレクイエムの作曲を始めたと考えられます。しかし10月30日に控えた『魔笛』初演のためにまだ6曲ほど書かねばならず、さらにクラリネット協奏曲(K622)を作曲するなど、モーツァルトは多忙を極めていましたが、それでも依頼を完成させようとしました。
ちなみにモーツァルトは宗教音楽の作曲にあまり積極的ではなかったとする考えがあります。しかし、1788年頃からモーツァルトは例えばロイターの宗教曲「デ・プロフンディス」を演奏するわけでもなく筆写しており、当時のウィーンの宗教音楽のスタイルを学ぼうとしていました。また、1787から1790年の間にかけて、モーツァルトはミサ曲の作曲も試みており、その断片からは様式の新しい試みも見られます。またモーツァルトはヘンデルのメサイアの編曲も手掛けています。1791年にはアヴェ・ヴェルム・コルプスも作曲しており、宗教音楽への興味が低かったとは考えられません。1791年に、ウィーンのシュテファン教会の副楽長に任命され、これはいずれ楽長に就任することが約束されたということで、むしろレクイエムの依頼は経済的にも音楽的にも良いタイミングのものだったといえるでしょう。レクイエムで、モーツァルトにしては珍しくスケッチも残しており、主題の扱いや、対位法へのさらなる傾倒など、自身の新しいアイディアを試みていたということでしょう。
レクイエムを構成する典礼文のうち、モーツァルトが完成させたのは冒頭の「Introit」のみ。他の部分は声楽ラインと、通奏低音を含むオーケストラの一部のみ、あるいは音楽は書いたものの、オーケストレーションはしていない部分が残されており、ラクリモサは8小節しか書いていません。サンクトゥス以降は何も書いていません。モーツァルトが実際にどのように仕上げようとしていたかを知ることはできません。
モーツァルトが亡くなってしまったものの、借金まみれで妊娠もし困窮していた妻コンスタンツェは、とにかくレクイエムの依頼を完遂、お金を得なければなりませんでした。そこで、モーツァルトの筆跡に似せて書くことのできる人物、ということを基準に、レオポルト・アイブラー、続いてマキシミリアン・シュタートラーを選んで補完作業をさせますが、どちらも完成させることができず、最終的に当時25歳のフランツ=クサヴァー・ジュスマイヤーに白羽の矢が立ったのです。ジュスマイヤーはサリエリの弟子であり、モーツァルトの下では学んでいませんでした。『皇帝ティートの慈悲』のレチタティーヴォを書くのを手伝い、また、『魔笛』のオーケストラ・パートを筆写していたので、晩年モーツァルトの周囲で仕事をしていた人物ではありました。ジュスマイヤーはモーツァルトが書いた音楽を先の2人が補完しようとしたものに基づいてオーケストレーションをし、さらにサンクトゥス、ベネディクトゥスとアニュス・デイを新たに作曲。このスコアが、依頼人のもとに届けられ、また、我々も最もよく耳にする版となっています。
ここでのデュトロンによる補完は、モーツァルトに来た依頼を完遂した人物、ジュスマイヤーが残した版に敬意を払って行われたもので、モーツァルトが最後までレクイエムを作曲したらどのようになっていたか、を探るためのプロジェクトではありません。あくまでもジュスマイヤーの版を尊重しながら、彼が犯したオーケストレーション上の作法の間違いなどを修正し改善する、というところにあります。「未完」であり、それがジュスマイヤーというまだ当時若かった作曲家により補完されている、ということがいまなお私たちの中の不満要因として燻っている現状を、現代の若き作曲家デュトロンが解消すべく挑んだ補完となっています。残された「歴史的」版に最大の敬意を払って補完された本版の結果の判断は聴き手一人ひとりにゆだねられていますが、ヤーコプスの演奏が素晴らしいということだけは、間違いない事実だといえるでしょう。 (Ki)

=録音について=
録音技師、ルネ・メーラーが担当したこの録音では、CDとLPで異なるソースを採用しています。CDでは30のマイクを使用、テルデックス・スタジ オ内で鳴り響いている美しい音楽の、演奏者のわずかな表情の違いに至るまで再現されています。そしてLPヴァージョンでは演奏家たちの中 央に設置された2つの八の字型マイクからの信号のみを採用、いわば録音の現場で鳴り響いている音がそのまま刻まれており、きわめて自然な 姿を感じられるもの。演奏会とは異なり、オーケストラと声楽(合唱・ソリスト)は向かい合うかたちで録音に臨んでおり、適切なポジションにマイ クを設置することにより、CD、LPのどちらも最良の自然なバランスが得られています。と同時に、CDとLPではまた異なる音を体感することがで きます。両ヴァージョンでぜひともお楽しみ頂きたい演奏です。
HMM-902341
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シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲*
浄夜 op.4(弦楽六重奏曲版)
全て、イザベル・ファウスト(Vn)
スウェーデンRSO*
ダニエル・ハーディング(指)*
アンネ・カタリーナ・シュライバー(Vn)
アントワン・タメスティ(Va)
ダヌーシャ・ヴァスキエヴィチ(Va)
クリスティアン・ポルテラ(Vc)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)

録音:2019年1月ベルワルト・ホール(ストックホルム)*、2018年9月テルデックス・スタジオ(ベルリン)
イザベル・ファウストの最新盤は、シェーンベルク。20代中頃の作品「浄夜」の弦楽六重奏版と、それから40年弱という時を隔てて書かれたヴァイ オリン協奏曲という組み合わせです。「浄夜」はブラームスやワーグナーの影響が色濃く見られる欄熟のロマンティシズムが魅力の作品ですが、ここでは ファウストが心から信頼を寄せる奏者たちが集った最強のメンバーでの演奏で、注目です。ファウストのまっすぐな音色が中心となったアンサンブルが却っ て作品の欄熟した空気を際だたせており、ドロドロの世界が展開されております。そしてヴァイオリン協奏曲は12音技法を探求していた時期の作品ですが、 ソナタ形式で書かれており、楽章構成も第1楽章―急(アレグロ)、第2楽章―緩(アンダンテ)、第3楽章―ロンド・フィナーレという形をとっています。 シェーンベルクが12音技法の内に込めた様々な旋律を、ファウストが1ミリの狂いもない技術をもって奏でており、厳格かつ厳密な12音の世界の中に もシェーベルクが織り込んだ美しい旋律がこの上なく魅力的に引き出されています。それをサポートするハーディング率いるオーケストラとのアンサンブル も、ぴたりとあった見事なもの。欄熟のロマン、そして厳格な「古典」の書法の間にたって、ファウストと、彼女が心から信頼を寄せる音楽家たちが、20 世紀の音楽史の中でも屈指の傑作であるこれらの作品を、これ以上なく生き生きと表現しています。 「浄夜」の共演者には信じがたいメンバーが顔をそろえています。ヴァイオリンのアンネ・カタリーナ・シュライバーは、フライブルク・バロック・オー ケストラでリーダーも務める奏者。アントワン・タメスティは言わずとしれた世界的奏者(トリオ・ツィンマーマンのメンバー)。ダヌーシャ・ヴァスキエヴィ チはアバド指揮モーツァルト管、カルミニョーラのモーツァルト全集で協奏交響曲のヴィオラを務めていました。クリスティアン・ポルテラはトリオ・ツィン マーマンのメンバー。ジャン=ギアン・ケラスも来日も多い世界的奏者です。どの奏者も広い時代の作品を手がけており、そうしたメンバーがこの「浄夜」 を演奏する、というのはまた格別なものがあります。 (Ki)
HMM-902343
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INVISIBLE STREAM(見えない流れ)
ラファエル・アンベール(b.1974):Akim's Spirit(アキムの心)
ワーグナー:夕星の歌(タンホイザーより)
シューベルト:音楽に寄す(D 547)
アンベール:マイ・クレズマー・ドリーム
オーネット・コールマン(1930-2015):ビューティ・イズ・ア・レア・シング
アンベール:イメージの音楽
ハンス・アイスラー:小さなラジオに(An den kleinen Radioapparat)
アンベール:ソー・ロング・ラジオ・ヴォイス、亡命者
レイモン・ル・セネシャル(b.1930)/ピエール・バルー(1934-2016):水の中のダイヤモンド
ラファエル・アンベール(サックス/Henri Selmer Paris)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc/Gioffred Cappa)
ピエール=フランソワ・ブランシャール(P)
ソニー・トゥルペー(ドラム、ka ドラム(ハンドドラム))

録音:2022年2月、ドイツ、エルマウ城
世界が認める語り口と技術で、作曲家の時代や国境やジャンルを超えて、自身の音楽を聴かせるチェロ奏者ケラスと、ジャズやクラシックのボーダーを超えた音 楽を聴かせるサックス奏者アンベールによる、豪華共演アルバムの登場。 ふたりは2016年のエクサン・プロヴァンス音楽祭のアソシエイト・アーティストを務め、そこでの演奏は聴衆に熱い感動を呼び起こしました。アルバムのタイトル 「Invisible Stream(見えない流れ)」とは、様々な境界を越えつつ、人々、アーティスト、即興演奏家、音楽家をつなぐ「見えない流れ」のこと。まさにケラスた ちがここで展開している音楽、また彼らの活動自体を言い表したしたタイトルとなっています。
クラシックの楽曲をジャズ風にアレンジしたもの、また、現代作曲家やアンベール自身による作品を、彼ら独自の世界観で聴かせます。「夕星の歌」ではメロディ はケラスのチェロが担当。半音階が多用された旋律と、美しくも官能的なアンサンブルとの絡みに思わずドキっとさせられるようです。シューベルトの「音楽に寄す」 はアンベールがメロディを奏でます。歌では息の関係で難しいと思われるゆったりとしたテンポで進められる中、ドラムも非常に効果的に響きます。
ちなみに録音場所であるエルマウ城は、2022年のG7サミットでも使われた風光明媚な自然の中に位置します。 (Ki)
HMM-902370
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ケラス、ツィンマーマン、ロトの「ドン・キホーテ」
R・シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
ロマンス (1883)〜チェロと管弦楽のための
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)、
タベ ア・ツィンマーマン(Va)
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
ケルン・ギュルツェニヒO

録音:2019年1、2、7月/ギュルツェニヒOリハーサル場(ケルン)
今やリリースするディスクがすべてニュースとなるフランソワ=グザヴィエ・ロト。彼はR・シュトラウスに並々ならぬ情熱を示し、6年ほど前にバーデ ン=バーデン&フライブルク南西ドイツRSOと交響詩全集を完成しています。 そのロトが「ドン・キホーテ」と「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」に再挑戦。今回はケルン・ギュルツェニヒOで、「ドン・キホーテ」 の独奏者がジャン=ギアン・ケラスとタベア・ツィンマーマンという2 大スターなのも注目です。
短期間で再録音の理由は、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」が1895年11月に、「ドン・キホーテ」が1898年にギュルツェニヒO により初演されていることによります。ロトはギュルツェニヒOが世界初演したマーラーの交響曲第5番を2017年に、交響曲第3番を2019年に録 音していて、そのシリーズとなります。
「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」と「ドン・キホーテ」は、「ツァラツストラはかく語りき」を間にはさんだシュトラウス30代前半の力作。 どちらも架空の人物の気まぐれな冒険をオーケストラの機能を駆使して描いています。
「ドン・キホーテ」は事実上二重協奏曲で、とりわけ主役ドン・キホーテ役のチェロは大物が起用されます。ケラスはまさに適任で、ロトと音楽性も共通する だけでなく、オーケストラという権力とそれに立ち向かうチェロを演じる役者ぶりに感心させられます。
さらにサンチョ・パンサ役のタベア・ツィンマーマンの圧倒的な存在感。これくらいサンチョが雄弁だと、音楽がますます映像的で面白くなります。曲を知り尽 くしたロトの自在な表現も神業。ゆかりの深いギュルツェニヒOから極彩色の絵巻と悲哀を引き出します。 ★2つのピカレスク・ロマンに満腹となったデザートとして、ケラスとロトがシュトラウス初期の美しいロマンスを奏でます。シューマンとブラームスの系譜上のあ るドイツ的な歌をしっとりと聴かせてくれます。 (Ki)
HMM-902391
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ショパン:マズルカ&ソナタ集
マズルカ ロ長調 op.63-1
ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調 op.35
マズルカ ヘ短調 op.63-2
ピアノ・ソナタ第3番ロ短調 op.58
マズルカ 嬰ハ短調 op.63-3
ハヴィエル・ペリアネス(P)

録音:2019年4月&2021年4月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
スペインを代表するピアニスト、ペリアネスがショパンを録音しました。陰影に富んだ音色による研ぎ澄まされた世界が魅力のペリアネス。その特性はショパ ンでも見事に発揮されています。ここでは晩年(亡くなる3年前)に作曲されたマズルカ三篇(op.63)と、ソナタの第2番、第3番を収録。いずれもノアンに滞 在している間に書かれたという共通点があります(葬送行進曲以外)。マズルカでは、ポーランドのバグパイプを思わせる響きが聴かれたりと、祖国ポーランド に伝わる音楽のエッセンスが巧みに取り入れられています。ソナタでは、ショパンがソナタ形式に精通しており、それを天才的に昇華させていることにあらため て感じ入る演奏となっています。2012年、スペイン文化省より国民音楽賞を授与され、直近では2021年1月に来日を果たし、N響との共演でも高く評価され ているペリアネス。ますますその音楽性に磨きがかかっていることを感じさせる内容です。 (Ki)

HMM-902421
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(1)ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
(2)メユール:歌劇「アマゾネス」序曲
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
レ・シエクル

録音:2020年3月/トゥルコアン市立劇場(グルノーブル)(1)、2月/セーヌ・ミュジカル(ブローニュ・ビリヤンクール)(2)
鮮烈な「運命」で度肝を抜いたロトとシエクルのベートーヴェン、次なる挑戦は交響曲第3番「英雄」ですが、前作を上回る快演に圧倒されまくり。
ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は50分に及ぶ長さ、指揮者なしでは演奏し得ない複雑さ、政治性を公然と示す内容など、作曲された1804年当時 には類のない革新的なものでした。さらに激流か溶岩のような止めることのできぬ音楽の迸りなど、ロマン派様式の明らかな萌芽もみられます。
ロトは前作「運命」と同様にベートーヴェン作品の革命的側面に焦点を当て、さらに同時代のフランス作品をカップリングして多くの示唆を与えてくれます。今 回はメユールの歌劇「アマゾネス」序曲。メユールはベートーヴェンより7歳年長で、ナポレオン時代のフランスを代表するオペラ作曲家。考えられている以上にベー トーヴェンと共通点が多く、オーケストラの職人でした。メユールの交響曲第1番とベートーヴェンの第5番の類似性はシューマンも指摘しています。
ピッチは430Hz。現存するベートーヴェン時代の管楽器はもはや演奏不能なため、レプリカを使用。ロトは世界中のオーケストラと「英雄」を演奏してきま したが、フィナーレのコーダもしくは最後の変奏はモダン楽器だと活力に欠け鈍重になってしまうとしています、しかしピリオド楽器ならアクセントのインパクト を強調でき、現代楽器だとすべて同じような色彩になるベートーヴェンの調性選択も、変ホ長調の意図がよくわかるとのこと。
各楽章の演奏時間は、1:15’58”  2:14’28”  3:5’29”  4:10’58” で、特に変わったものではないものの、透明な音色、はつらつとして推進力に満ちているため実際よりも速く聴こえます。そのリズム感の良さと引き締まった造形、みなぎる緊張感いずれも見事。さすがロト、これほど新鮮な「英雄」は初めて聴くようです。 (Ki)
HMM-902429
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シュタイアーとディールティエンス
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 op.102-1
11のバガテル op.119
チェロ・ソナタ第5番ニ長調 op.102-2(1815)
6つのバガテル op.126
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ/1827年ウィーン製コンラート・グラーフ・モデルのコピー(1996年クリストファー・クラーク製))
ロエル・ディールティエンス(Vc/マルテン・コルネリッセン、1994年(アントニオ・ストラディヴァリのコピー)
(弓/2003年ヘンク・コルネリッセン(ジョン・ドッドのコピー))

録音:2019年6月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
ハル モニアムンディで 進 行 中の、ベートーヴェン・イヤー・シリーズ。シュタイアーと、ディール ティエンスによる、チェロ・ソナタおよびバガテル(シュタイアー独 奏) という注目新譜の登場です!チェロのロエル・ディールティエンスは、アンサンブル・エクスプロラシオンの創設者にして、チャイコフスキー・コンクールやライプ ツィヒ・バッハ・コンクールなど世界的なコンクールの審査員を歴任するなど、バロックおよびモダンの権威です。シュタイアーも、フォルテピアノ、チェンバロ、 そして時にはモダンのピアノもその自身の音楽性で見事に響かせるいわずとしれた現代の巨匠。現代の巨匠。注目の顔合わせです。
作品102のチェロ・ソナタは両曲とも1815年にさほど間をあけずに作曲されました。この時期はベートーヴェンが後期作風を模索していた時期で、従来の ソナタという枠組みを破るような、幻想的で瞑想的な色合いが強いもの。ディールティエンスとシュタイアーは、ファンタジーに満ちたアンサンブルを展開してい ます。
バガテルOp.119は1820-22年にかけてまとめられた曲集。1曲1曲は短いですが、その中にこれだけ深い世界と、様々な表情が込められていたのかと 驚かされる演奏です。そして時にはシュタイアーらしいビックリのしかけもあり、期待を裏切りません。1曲ごとに聴き終えた後の充実感がものすごいです。そし てop.126は、1823-24年、第九やミサ・ソレムニスと同時期に書かれ、「(後期の)弦楽四重奏のスケッチ」などともいわれている、ベートーヴェンの後期の 傑作群のエッセンスのすべてが凝縮されたような曲集です。シュタイアーは、ロマン派をも予感させるようなファンタジーと歌に満ちた演奏でつむいでいます。
ベートーヴェンの中期から後期に差し掛かる時期の、「既存の様式」の呪縛からはばたこうとする重要な傑作が、名手ふたりによって、最高のかたちでよみがえ りました。 (Ki)
HMM-902441
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ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集
ピアノ・ソナタ第28番イ長調Op.101
ピアノ・ソナタ第30番ホ長調Op.109
ピアノ・ソナタ第32番Op.111
ニコライ・ルガンスキー(P)

録音:2020年7月、モスクワ音楽院大ホール
ベートーヴェン・イヤーの2020年、ハルモニア・ムンディは特別なリリースを用意しています。その注目のひとつがニコライ・ルガンスキーによる後期ソナタ 集です。 後期の3つのソナタは、前期、中期の作品とは一線を画す、高い音楽性と孤高の音楽となっています。作品101(第28番)は、フーガが用いられ、それまでのピ アノソナタとは一線を画する内容を持ち、後期の入り口とされる作品。ルガンスキーは、ベートーヴェンの高まる芸術の萌芽を、丁寧に描き出そうとしています。 そして一筋の光が差すような温かな明るさを持った作品109(第30番)のソナタは、第3楽章に比重がおかれ、演奏者の構成力が試される作品ですが、緻密に 計算されたルガンスキーの構築力に改めて脱帽。作品111(第32番)は、「第9」や「荘厳ミサ」と並行して作曲されていた経緯もあり、ベートーヴェンのピアノ 音楽の最終地点でもあります。その深淵を極めたベートーヴェンの世界観を、限りない優しさに満ちた演奏でルガンスキーは見事に表現しています。 (Ki)
HMM-902448(2CD)
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ケルビーニ:『ロドイスカ』序曲
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 op.60
メユール:交響曲第1番ト短調(1808)
ベートーヴェン:交響曲第8番
ベルリン古楽アカデミー【コンサートマスター:ベルンハルト・フォルク】

録音:2021年4,5月、テルデックス・スタジオ(ベリリン)
ハルモニアムンディがリリースしているベートーヴェン・イヤー・シリーズ交響曲編の完結編となる、ベルリン古楽アカデミーによる第4番&第8番の登場!こ れまでの交響曲のリリースでは、同時代の作品がカップリングとして収録されておりましたが、それは今回も同様。今回は、ケルビーニ、そ してメユール(1763-1817)の作品が選ばれています。ベルリン古楽アカデミーのうまさと、録音の素晴らしさを存分にたのしむことのできる内容です。
ベートーヴェンでは、交響曲第4番終楽章のファゴットの刻みなど、超絶技巧のきわみですが、わずかな乱れもない見事なもの。ティンパニの豊かな響きも耳 にのこります(ティンパニ奏者は若くして首席奏者に就任した、1990年セビリア出身のフランシスコ・マヌエル・アンガス・ロドリゲス。安倍圭子氏の招きで 桐朋学園で学んだこともあり、ベルリン国立歌劇場で活躍したのち、バイロイト音楽祭でも演奏していました)。第8番第1楽章の快速テンポが生み出す、まる で舞曲のような軽やかさにもまた驚き。そうした第1楽章を経ての第2楽章のメトロノーム風の刻みも非常に効果的に響きます。
ケルビーニのオペラ『ロドイスカ』は1791年にパリで初演されました。大成功を収めた作品で、当時200回以上上演されたといいます。愛しあう男女が 父親によって引き裂かれるも、様々な苦難と試練や誤解を経てめでたく結ばれるという内容ですが、序曲はオペラの内容を予見させるというよりも、シンフォニー を思わせるスタイルとなっています。ケルビーニの友人でもあったメユールの作品は、シューマンらによって「ベートーヴェンの交響曲第5番への返答」と評さ れることもある作品です(終楽章のリズムが運命と似ていることなどが理由)が、彼がこの交響曲に取り組んでいたときに、第5番(1808年作曲)をどこ まで知っていたかは今となってははっきりしません。それよりもむしろ、フランス革命期にこのような素晴らしい交響曲が存在し、その後のフランスのオーケスト ラ作曲にも大きな足跡を残したこと、そしてベルリン古楽アカデミーによる決定的な名新録音が誕生したことを祝いたい内容です。 (Ki)
HMM-902509
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シューマン邸への招待
(1)C.シューマン:「アンダンテ・モルト」〜3つのロマンスop.22より第1番[Vn, Pf]
(2)シューマン:献呈(ミルテの花op.25-1)[声, Pf]
(3)C.シューマン:ノットゥルノ[ Pf]
(4)シューマン:ピアノ三重奏曲第2番ヘ長調 op.80[Vn, Vc, Pf]
(5)シューマン:見知らぬ国と人びとから(子供の情景op.15 第1曲/Vn, Vc, Pf編曲版)
(6)シューマン:ユーモアをもって(民謡風の5つの小品集op.102-1)[]
(7)バッハ:小プレリュード ホ短調 BWV938[ Pf]
(8)ニルス・ゲード:エレジー(op.19より)[Vn, Pf編曲版]
(9)ブラームス:「お姉さん、私たちは」49のドイツ民謡集より[声, Pf]
(10)シューマン:ゆるやかに(民謡風の5つの小品 op.102より第2曲)[Vc, Pf]
(11)メンデルスゾーン:アンダンテ&アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ op.92[4手ピアノ]
(12)テオドール・キルヒナー(1823-1903):無言歌(色とりどりの作品 op.83, book1, 第6番)[Vn, Vc, Pf]
(13)シューマン:私のばら(6つの詩 op.90-2)[声, Pf]
(14)D.スカルラッティ:ソナタ ト短調[Pf]
(15)ブラームス:子守歌 op.49-4[声, Pf]
(16)シューマン:詩人のお話(子供の情景 op.15-13)[Vn, Vc, Pf編曲版]
トリオ・ディヒター〔テオティム・ラングロワ・ド・スワルテ(Vn.1700年アレッサンドロ・ガリアーノ)、
ハンナ・ザルツェンシュタイン(Vc/1734年ピエトロ・ガルネリ)、フィオナ・マト(Pf/ベーゼンドルファー1890年頃製〕
※使用楽器はすべてフランス国立音楽博物館のコレクションより
サミュエル・ハッセルホルン(Br)
ホルヘ・ゴンザレス・ブアハサン(P/4手作品)

録音:2022年6月22-23日、9月12-15日、シテ・ド・ラ・ミュジーク・オーディトリウム(パリ)
フランスの俊英ヴァイオリン奏者ド・スワルテらをメンバーとするトリオ・ディヒター(”詩人トリオ”)。初CDとして彼らが選んだのは、クララ&ロベルト・シュー マンおよび、その友人たちの作品。ベーゼンドルファーの音色にあわせて弦楽器もガット弦を用い、より柔らかで丸みのある音色のアンサンブルが実現しています。 クララが愛奏していたピアノ三重奏曲第2番や、ロベルトがクララに愛を告げた時に書かれた「ノットゥルノ」(ウィーンの音楽の夜会より)、そしてロベルトがクラ ラに結婚前夜に送った「献呈」など。また、クララがその弟子に教材として与えたと考えられるバッハの小プレリュードや、ロベルトがショパンと同様に高く評価して いたゲーデの作品、さらにロベルトの死後もクララと親交の続いたキルヒナーの作品など、どの作品をとってもエピソード満載。歌い手には今飛ぶ鳥を落とす勢い のサミュエル・ハッセルホルンを迎え、当時生まれたばかりの作品を、歴史に名をのこす音楽家たちがシューマンの家に集って演奏し互いに聴き入っている光景が 目に浮かんでくるような、親密かつ熱気ある空気に満ちています。
トリオ・ディヒターは2018年のラ・ロック・ダンテロン音楽祭のレジデンス・アンサンブルの一つとしてセレクトされるなど、早くからその音楽は高く評価され ています。3人ともパリ国立高等音楽院卒業、音楽院ではクレール・デゼール、トリオ・ヴァンダラーなどに師事しています。フランスの若きピアノ三重奏アンサン ブルの一つとして注目されています。 (Ki)
HMM-902616
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ブラームス:愛の歌(ワルツ)op.52(全18曲)
新・愛の歌(ワルツ)op.65(全15曲)
ハンガリー舞曲 第7番イ長調、第20番ホ短調、第4番 ヘ短調、第14番ニ短調、第9番ホ短調
RIAS室内cho
ジャスティン・ドイル(指)
4手連弾ピアノ:アンゲラ・ガッセンフーバー&フィリップ・マイヤース

録音:2021年4月、ベルリン
ブラームスによる四重唱の中でも抜群の人気を誇る愛のワルツop.52を、名門RIAS室内合唱団が録音しました。ブラームス自身「印刷された楽譜をみて初め て笑顔になることができた」という手紙を残しているくらいに、この作品を気に入っていたもの。ブラームスの全作品の中でもとりわけ明るさに満ちた作品で、四 重唱+ピアノ連弾という編成をとり、ワルツやレントラー、そして当時のウィーンの居酒屋などで流れていた音楽のリズムで書かれており、どれも基本的には男女の 間で交わされる歌となっています。声楽の四重唱は、当時の家庭内での音楽活動のための編成で、大変に人気のあるジャンルでした。このop.52は、正式には「四 手ピアノ(連弾)のためのワルツ集(そして歌も自由に加えてよい)」という題がつけられています。これは、四重唱(声楽による四重奏)よりもさらに楽譜需要の 高かった、ピアノ連弾という編成を全面に打ち出すための出版社の作戦でもありました。ブラームスはロシア語、ポーランド語、そしてハンガリーの詞に基づいてゲ オルク・フリードリヒ・ダウマーが編んだ詩集をたいそう気に入り、作曲を始めました。出版社には「声楽パートなしで印刷・出版することのないように」と念を押 していたほど。実際、やはり需要があり、後年になって、ブラームスはピアノ連弾のためにあらたに編曲をしなおすことになりますが、その連弾の楽譜にはダウマー の詩が掲載されていました。このop.52の成功をうけて書かれたop.52に加え、ブラームスのピアノ連弾の代表格、ハンガリー舞曲からの抜粋を挟み込んだ充実 のプログラムとなっています。 (Ki)

HMM-902655
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ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
ペーテル・エトヴェシュ:ヴァイオリン協奏曲第3番「アルハンブラ」*
パブロ・エラス=カサド(指)
パリO
イザベル・ファウスト(Vn)*

録音:2019年9月、グランド・サルル・ピエール・ブーレーズ、フィルハーモニー・ド・パリ
2020年度のレコード・アカデミー賞大賞受賞したスペイン生まれの指揮者パブロ・エラス=カサド。深い解釈と高い説得力、そしてバロックから現代音楽ま での広いレパートリー、さらには、フライブルク・バロック・オーケストラ、バイエルンRSO、マーラー・チェンバー・オーケストラ、ミュンヘン・フィルハー モニーO、フィルハーモニアOと様々なオーケストラと共演・録音を行っていることを見れば、彼の多才さがよく分かります。
今回録音されたのは、1913年パリのシャンゼリゼ劇場で初演され、一大センセーションを巻き起こしたストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」。反バ レエ的な動き、バレエ界にとって大スキャンダルでもありましたが、同時に聴衆を驚かせたのは、5管編成という独特のオーケストラ編成から生み出される響き、 そして不規則で鋭いアクセント、変拍子というストラヴィンスキーの斬新な音楽です。 エラス=カサドの明晰な解釈とパリ管による精緻で多彩な色彩感をもつ演奏、個性的なパリ管の奏者たちの楽器一つ一つが良く響き、最高のアンサンブルで奏 でています。第1部では、土着的な要素よりも知的で洗練された印象ですが、第2部では万華鏡のように、光と色彩が目まぐるしく変化する演奏、それを躍動 的かつ鮮やかに引き出すエラス=カサドの手腕にも脱帽です。
カップリングのペーテル・エトヴェシュのヴァイオリン協奏曲第3番「アルハンブラ」。この作品は2019年7月12日にスペインのグラナダ音楽祭の委嘱作 品として、イザベル・ファウスト、エラス=カサド指揮マーラー・チェンバー・オーケストラによって初演されています。スペイン・グラナダにある有名なアルハン ブラ宮殿に触発され、そして初演者であるイザベル・ファウスト、エラス=カサドの二人に捧げられています。エトヴェシュは、「宮殿の噴水、その次元、周囲の山々、 アンダルシアの素晴らしい夕日、これらすべてが私の作品の一部となりました。私が画家であったらそれを描いていたでしょう。」と語っています。また作品には、 二人の名前が音名として隠されています。
HMM-902684(2CD)
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バッハ:無伴奏チェロ組曲(全6曲) ブリュノ・フィリップ(Vc)

録音:2020年7月、2021年8月/ラ・クーロワ、アントレーグ=シュール=ラ=ソルグ(フランス)
フランスの注目チェロ奏者、ブリュノ・フィリップ。30歳目前という、まだ若手に属する存在ですが、バッハの無伴奏チェロ組曲全曲録音に取り組みました。 あらためて譜面の選択からやりなおし作品とじっくり向き合い、第1番ト長調は「誕生」、第2番ニ短調「経験」、第3番ハ長調「生命」、第4番変ホ長調「精 神的なもの」、第5番ハ短調「死」、第6番ニ長調「復活」とそれぞれの作品の根源的なテーマをさだめ、録音する順番も熟慮の上決定していったそうです。トー マス・ダンフォードやジャン・ロンドーが所属するアンサンブル・ユピテルに通奏低音奏者としてガット弦を演奏して参加するうちに、ガット弦の魅力を深く知り、 このたびの録音ではガット弦で演奏しております。らくらくとしたテクニックで、自由にはばたくような音楽を聴かせるブリュノ・フィリップの、ひとつの究極の 到達点となっております。 (Ki)
HMM-902696(2CD)
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平均律クラヴィーア曲集第1巻 and beyond
■CD1
1-2. バッハ:プレリュードとフーガ ハ長調 HWB 846
3. ベートーヴェン:バガテル ハ短調 WoO 52
4-5. バッハ:プレリュードとフーガ 嬰ハ長調 BWV 848
6. ショパン:マズルカ 嬰ハ短調 op. 50 no. 3 (Moderato)
7-8. バッハ:プレリュードとフーガ ニ長調 BWV 850
9. ラフマニノフ:前奏曲 ニ短調 op. 23 no.3
10-11. バッハ:プレリュードとフーガ 変ホ長調 BWV 852
12. フォーレ:前奏曲 変ホ短調 op. 103 no. 6
13-14. プレリュードとフーガ ホ長調 BWV 854
15. ラヴェル:フーガ(Allegro moderato) ホ短調(クープランの墓より)
16-17. バッハ:プレリュードとフーガ ヘ長調 BWV 856
18. モーツァルト(ブゾーニ編):2台ピアノ版:自動オルガンのための幻想曲 ヘ短調 K608*
■CD2
1-2. バッハ:プレリュードとフーガ 嬰ヘ長調 BWV 858
3. ブラームス:カプリッチョ(Un poco agitato) 嬰へ短調 op. 76 no. 1
4-5. バッハ:プレリュードとフーガ ト長調 BWV 860
6. ショスタコーヴィチ:プレリュード ト短調 op. 34 no. 22
7-8. バッハ:プレリュードとフーガ 変イ長調 BWV 862
9. ブゾーニ:プレリュード(Andantino) 嬰ト短調 op. 37 no. 12 (BV 181/12)
10-11. バッハ:プレリュードとフーガ イ長調 BWV 864
12. リゲティ:ムジカ・リチェルカータ I on A (Sostenuto)
13-14. バッハ:プレリュードとフーガ 変ロ長調 BWV 866
15. レーガー:2つのパートのカノン 変ロ短調 op.19(すべての短調と長調による111のカノン WoO III/4, 第1巻より)
16-17. バッハ:プレリュードとフーガ ロ長調 BWV 868
18. シェーンベルク:6つのピアノ小品 op.19
19. バッハ:プレリュード ハ長調 BWV 846
ジュリアン・リベール(P/クリス・マーネ製)
アダ ム・ラル ー ム(P)*
クリス・マーネ製の並行弦グランドピアノを使用

録音:2021年7月、サル・フラジェ(ベルギー)
ベルギーの奇才、ジュリアン・リベールによるバッハの登場!バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の長調の楽曲と、それぞれの楽曲に呼応するようにリベール 自身がセレクトした、のちの時代の作曲家たちによる短調の楽曲を並べ、バッハと様々な作曲家たちによる対話のようなプログラムとなっています。モーツァルトの 自動ピアノのための幻想曲はブゾーニによる2台ピアノ版で、ラルームが共演しているのも注目です。ピアノは、バレンボイムが使用していることでも知られている、 クリス・マーネ製による並行弦グランドピアノを使用。新しいバッハ像が浮彫となってきます! (Ki)
HMM-902702
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ファンタジー〜7人の作曲家、7種の鍵盤楽器による

(1)バッハ:半音階的幻想曲とフ(2)C.P.E.バッハ:幻想曲嬰ヘ短調H.300, Wq.67
(3)モーツァルト:幻想曲ハ短調K.396/幻想曲ニ短調K.397
(4)メンデルスゾーン:幻想曲嬰ヘ短調Op.28
(5)ショパン:幻想曲ヘ短調Op.49
(6)ブゾーニ:古い旋法による幻想曲OP.33bの4
(7)シュニトケ:即興とフーガOp.38
アレクサンドル・メルニコフ(各種鍵盤楽器)

(1)リュッカース・モデルによるマルクス・フィッシンガー製2段鍵盤チェンバロ2019年
(2)クリストフ・フリードリヒ・シュマール製タンジェント・ピアノ1790年
(3)1795年アントン・ヴァルター・モデル、クリストフ・カーン製レプリカ・フォルテピアノ2014年
(4)グラーフ製フォルテピアノ1828年頃
(5)エラール1885年製
(6)ベヒシュタインB1905-10年頃製
(7)スタインウェイD-274

録音:2022年7月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
歴史的な鍵盤楽器を数多くコレクションし、実際に演奏・録音しているメルニコフ。彼が7人の作曲家の7つの幻想曲を7つの楽器で弾き分けました。メル ニコフはアインシュタインの格言「過去、現在、未来の区別は幻想に過ぎない」をコンセプトに、バッハを基準点として300年におよぶ影響と、彼に帰結 する偉大さを示しています。7という聖なる数字にこだわっているのもメルニコフらしい深い意味がこめられています。
メルニコフは2021年1月にトッパンホールでほぼ同内容のコンサートを行い聴衆の度肝を抜きましたが、ここではさらなる完成度で神業を発揮しています。 楽器も単に時代を合わせているのではなく、作風、効果を考え抜いて選ばれています。最後に現代のスタインウェイの機能を駆使したシュニトケの「即興とフーガ」 が聴きもの。1966年の第3回チャイコフスキー国際コンクール用に作られた華麗な作品で、精神的にバッハへ先祖返りしていることを実証してくれます。
HMM-905345
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Mein Traum(わたしの夢)
1. シューベルト:レチタティーヴォとアリア「私はどこに・・・力ある者よ、塵の中に (‘Wo bin ich… O konnt’ ich’)」(「ラザロ」D 689第2幕より)
2. 合唱「狩りへ‘Zur jagd’」(「アルフォンソとエストレッラ」D 732第1幕より)
3. レチタティーヴォ&アリア「‘O sing mir Vater… Der Jager’」(「アルフォンソとエストレッラ」D 732第2幕より)
4. シューベルト(リスト編曲によるオーケストラ版):影法師(「白鳥の歌」D 957より)
5. シューベルト:交響曲第7番ロ短調 「未完成」D 759より第1楽章Allegro moderato
6. ウェーバー:「おお!海の上に浮かぶのはなんと心地よいことか‘O wie wogt es
sich schon auf der Flut’」(オベロン、第2幕より)
7. シューベルト:交響曲第7番ロ短調 「未完成」D759より第2楽章Andante con moto
8. シューマン:人魚Meerfey op.69-5(女声のための6つのロマンス第1集より)
9. ウェーバー:レチタティーヴォ&アリア“どこに隠れよう・・・そして、私は復讐の力に身を捧げる”(抜粋)(歌劇『オイリアンテ』より)
10. シューベルト:序奏〜アルフォンソとエストレッラ D732第3幕より
11. シューベルト(ブラームス編):タルタロスの群れ D583
12. シューベルト:アヴェ・マリア(エレンの歌 第3番) D839, op.52, no.6
13. シューベルト:合唱「やさしく静かに(‘Sanft und still’)」〜「ラザロ」D 689第2幕
14. シューマン:アリア“ここは見晴らしがよく(‘Hier ist die Aussicht frei’)” 「ゲーテのファウストからの情景」WoO 3より第3部第5場
15. シューベルト:「神はわたしの羊飼い」D 706
ラファエル・ピション(指)
ピグマリオン(合唱、管弦楽)

ステファヌ・ドゥグー(バリトン/1, 3, 4, 9, 11, 14)
ユディト・ファ(ソプラノ/3, 6)
ザビーヌ・ドゥヴィエル(ソプラノ/12)

録音:2020年12月、ピエール・ブーレーズ・ホール、フィルハーモニー・ド゙・パリ
「マタイ受難曲」(KKC.6514)で世界を驚かせたピション&ピグマリオン、注目の新作のテーマはシューベルト。1822年のある朝、シューベルトは様々な思い 出(愛する父から何度か拒絶された記憶や、父に拒絶された後絶望の中にさすらう旅をしたこと、母が亡くなった時のことや失恋のことなど)を記した謎めいた 文章を書き残しました。シューベルトの心の闇、シューベルトの作品の裏に感じられる孤独や絶望といったものの根源が観られるようです。ピションとドゥグーは、 シューベルトの傑作や演奏機会の少ない楽曲、さらに関連あるほかの作曲家たちの作品を注意深く集めて、1枚の広大な絵物語を創り出しました。シューベルトが 主人公のドラマティックなオペラのようになっております。 (タイトルの「Mein Traum(私の夢)」とは、フェルディナント・シューベルトがフランツの文章につけたタイトルです) (Ki)
HMM-905357
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マーラー:交響曲第4番ト長調 フランソワ=グザヴィエ・ロト(指)
レ・シエクル
サビーヌ・ドゥヴィエル(S)

録音:2021年11月/セーヌ・ミュジカルRIFFX第1スタジオ(ブローニュ・ビリヤンクール)
ロトとレ・シエクルがマーラーの交響曲第4番のピリオド楽器演奏に挑みました。第1番「巨人」は同じ組合せで、第5番と3番はケルン・ギュルツェニヒ Oと録音し絶賛されましたが、シエクル向きと思われる4番も期待が高まります。
マーラーの交響曲第4番はまさに20世紀の夜明け1901年11月25日に初演されました。大規模な第2、3番の後、伝統的な4楽章構成に復帰した かのような古典的なたたずまいで、マーラー作品中では明るく親しみやすいとされています。
レ・シエクルは「巨人」の時と同様に作品が作られた頃のピリオド楽器を用いています。ピリオド奏法基本で、死神が弾くのをイメージした第2楽章のヴァイ オリン・ソロもノン・ヴィブラートで繰り広げられるのが新鮮。また随所で響くハープの低音の効果にも驚かされます。
終楽章でソプラノ独唱を担うのはサビーヌ・ドゥヴィエル。ラファエル・ピジョンの夫人で、ロト&シエクルともメサジェの「お菊さん」のアリアなどを録音し たアルバムをリリースしていて息もピッタリ。明るい声質のノン・ヴィブラートで清らかに天上の生活を歌いながら、どこか残酷で怖い感覚が背後から迫り、一気 に最晩年の「大地の歌」へつながる世界に気づかせてくれるかのようです。
ロトはやや速めのテンポで生気に満ち、何よりオーケストラの透明な音色が魅力。マーラーの4番観が完全に覆される衝撃的な演奏で、一見明暗の対照的 な第5番との相似性を示してくれます。2021年11月のセッション録音で、強奏部でも豊かに響く音質も極上。超注目盤の登場です! (Ki)
HMM-905373
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バッカナール〜サン=サーンスと地中海
1-3. サン=サーンス:バレエ音楽「パリザティス」
4. IDIR(1945-2020):A vava Inouva(歌、チェロとハープ)
5. サン=サーンス:タランテラ op.6(フルート、クラリネットとオーケストラ)
6. ラシド・ブライム=ディジェルール(b.1964):ホタ・アラゴネーゼへの序曲
7. サン=サーンス:ホタ・アラゴネーゼ op.64
8. イスティクバール・メズムムによる即興演奏
9. サン=サーンス:あなたの声に私の心は開く(Vcと管弦楽版)
10. バッカナールのダンス
11. サン=サーンス:アルジェリア組曲 op.64より第1曲 前奏曲「アルジェの街」
12. イスティクバール・ジダンによる即興
13. インキレブ:Yababi el Hosn
14. サン=サーンス:アルジェリア組曲 op.64より第2曲 ムーア風狂詩曲
15. 即興
16. Leyla
17. サン=サーンス:アルジェリア組曲 op.64より第3曲 夕べの夢想
18. 即興
19. フランシスコ・サルバドール=ダニエル(1831-1871):チュニスのモレスクの歌
ザイア・ジウアニ(指)
オルケストル・ディヴェルティメント
フェットゥマ・ジウアニ(Vc)
シルヴィア・カレッドゥ(Fl)
パトリック・メッシーナ(Cl)
ステファヌ=フランス・レジェ(Hp)
アンサンブル・アメディエ(音楽監督:ラシド・ブライム・ディジェルール)

録音:2022年11月
チェリビダッケからも認められた指揮者、ジウアニによるフランスと地中海の音楽のつながりを見つめるプロジェクト!2023年1月、ジウアニの伝記的映画がフ ランスを中心に公開され、大きな話題となっています。
大の旅行好きで、特に地中海沿岸の国々によく旅したサン=サーンス。アルジェリアへは18回、ほかにもエジプト、イタリア、スペインにも足を伸ばしました。「サ ムソンとデリラ」の「バッカナール」、「アルジェリア組曲」、エジプトへの旅に触発された「パリサティス」のアバレエ音楽など、旅の影響を受けて書かれた作品は 多数にのぼります。このアルバムは、アルジェリアに重きを置いて選曲されています。「アルジェリア組曲」の3つの楽章は、アリジェリアの伝統音楽や古典音楽と ならんでプログラムされ、その関連性がよくわかるようになっています。
指揮のザイア・ジウアニは1978年、アルジェリア人の両親のもとパリに生まれます。音楽好きな両親のおかげで幼いころからクラシック音楽に親しみ、中でも 次第に指揮に興味を持つようになります。16歳の時、パリで開かれていたチェリビダッケのマスタークラスを熱心に受講していました。チェリビダッケの側近に認 められ、アシスタントの一人として指揮をしたその日にチェリビダッケに会うことが許され、その後1年半にわたってチェリビダッケの指導を受けました。チェリビ ダッケは彼女に、当時、女性が指揮者として成功することは難しい時代だったけれども、彼女なら絶対にできると励ましてくれたといいます。1998年、ディヴェル ティメント・シンフォニー・オーケストラを設立。いまやその存在感はフランス内外でも広く知られる存在となっています。2007年、アルジェリア国立SOの 初の客演指揮者に就任。2023年1月にフランスを中心に彼女の伝記的映画が公開されるなど、ヨーロッパでの注目が非常に高まっています。
ディヴェルティメントの首席チェロ奏者でザイアの双子の姉妹でもあるフェットゥマ・ジウアニ、2021年にフランス国立管の首席フルート奏者に就任したシルヴィ ア・カレッドゥ、フランス屈指のクラリネット奏者パトリック・メッシーナ、ディヴェルティメント創立以来ハープ奏者を務めるステファヌ=フランス・レジェがソロも 務めます。さらに伝統楽器と歌のアンサンブル・アメディエが加わり、ヴァイオリンと歌のラシド・ブライム=ディジェルール、ウードのユセフ・ザイード、カーヌーン のマハディ・ムキニーニら、多彩な奏者たちを迎えた意欲的な内容となっています。 (Ki)
HMN-916119
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ルイーズ夫人のための音楽
■[田舎の音楽]
ジョン・フロウ(1649-1708):羊飼いよ、みなおいで Come shepherds all (『ヴィーナスとアドニス』より)
リュリ:漁師のためのエア (アルチェステ、またはアルシードの勝利 LWV 50より)
 歌え、踊れQue l’on chante (アティス LWV 53より)
 ブレー(ヴェイルサイユの王の大喜遊曲 LWV 38)
マシュー・ロック (ca. 1621-1677):Lilk (テンペストより)
パーセル:それゆえ、あなたのつまらない神と Hence with your trifling deity (アテネのタイモン Z. 632)
作曲者不詳:おろかな英国 De foolish English nation (The Comical History of Don Quixote)
ジョン・ブロウ:この甘い木立で In these sweet groves (Venus and Adonis)
■[ソフトな音楽]
リュリ:みな、眠れDormons, dormons tous (アティス LWV 53)
パーセル:エア (Bonduca, or the British Heroine, Z. 574)
ホーンパイプHornpipe (Bonduca, or The British Heroine, Z. 574) 1’21
準備せよ、祭りが始まる Prepare, the rites begin (テオドシウス、または愛の力 Z. 606より)
 見よ、夜だってそこに (妖精の女王 Z. 629より) EL 4’27
サムエル・エイクロイド(1684-1706頃に活躍):フランスから最近来たにやけた男が歌う新しい歌(A new song sung by a fop newly come from France)
ジョン・ブロウ:フルートのための楽曲(ヴィーナスとアドニス)
ヴィーナス!アドニス!(ヴィーナスとアドニス)
マシュー・ロック:ヴィーナス降臨のためのシンフォニー(Symphony for the descending of Venus)(プシケ)
■[狂気の歌]
リュリ:この芝のなんという緑!Que ces gazons sont verts ! (Roland, LWV 65)
マシュー・ロック:悪魔と怒りの歌(プシケより)
リュリ:黄泉の国の祭りのエアAir de la fete infernale (Alceste ou le Triomphe d’Alcide, LWV 50)
作曲者不詳:暗黒の牢獄からForth from the dark and dismal cell
ジョン・エックレス(1668-1735):Oh! Take him gently from the pile (Cyrus the Great, or The Tragedy of Love)
■[嘆きの歌]
リュリ:天よ!私をつつむ空気 Ciel ! Quelle vapeur m’environne (Atys, LWV 53)
ルシル・テシエ(リコーダー、バロック・オーボエ 、バロック・バスーン)、
アンサンブル・レヴィアタン

録音:2021年9月、サル・コルトー、パリ
フランスのマルチ楽器奏者、ルシル・テシエ率いるアンサンブル・レヴィアタン(リヴァイアサン、海中の聖獣のこと)による、17世紀英国の音楽集。17世紀英国、 といってもその切り口は実に興味深いもので、当時活躍した女スパイゆかりの音楽集となっています。
ルイーズ・ド・ペナンコエ・ド・ケルアイユ(ルイーズ夫人)は、ルイ14世に雇われたスパイで、チャールズ2世(1630-1685、王位1660-1685)の愛人 でした。最初はチャールズ2世の王妃キャサリン付きの女官としてロンドンの宮廷に入り込み、チャールズ2世の寵愛を受け、ポーツマス侯爵夫人という称号まで 与えられます。彼女はルイ14世から、太陽王の影響がイギリスにも及ぶように命じられていました。チャールズ2世はたいへんなフランス趣味で、王位につくと、 ルイ14世にならって弦楽合奏団(24のヴァイオリン)を結成、宮廷や礼拝堂では、フランス人や、フランスで学んだ音楽家を雇いました。また、英国の音楽家をフ ランスに派遣したりと、フランスの芸術を英国に取り入れようとしました。そんな中ルイーズも、独自の音楽施設まで与えられ、そこでリュリのオペラからの楽曲を 楽員に演奏させるなど様々な催しを開いていました。チャールズ2世はこれを喜びましたが、彼がますますフランス趣味になることはルイ14世の意図と合致。ルイー ズは非常にうまく立ち回りながら、文化的・政治的な目的を遂行したのです。さらに音楽家たちも、チャールズ2世宮廷の動向を、フランスに報告したりもしてい たようです。しかしそんなルイーズのおかげもあって、英国でも豊かで華麗、かつ表現力豊かなレパートリーが生み出されることとなったのです。こうした視点から プログラムされた音楽を聴いていると、海峡で隔てられた国同士の音楽でも、器楽の編成や書法などに似た部分が感じられ、大変興味深いです。
ルシル・テシエはパリ国立高等音楽院やバーゼル音楽院などで学んだ、様々な楽器を演奏でき、さらに歌も歌えるプレイヤー。コンセール・スピリチュエル、レザー ル・フロリサンなどでも活躍しています。さらに、2016年からソルボンヌ大学で「英国の舞台音楽の狂気」について研究もしています。2015年、アンサンブル・ レヴィアタンを設立。17世紀の英国の舞台音楽を中心としたレパートリーで活動をスタートさせますが、現在ではイタリア、ヘンデル、フランス音楽など、主にバロッ ク期の作品に多く取り組んでいます。


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