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ヨンダニ・バット(指揮) |
ロンドン交響楽団 |
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Nimbus Alliance
NI-6217(1CDR)
オリジナルCD-R仕様 |
録音:2012年11月16日、19日 アビーロード・スタジオ(ステレオ) |
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演奏時間: |
第1楽章 |
16:03 |
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第2楽章 |
15:26 |
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第3楽章 |
6:21 |
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第4楽章 |
14:18 |
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カップリング/交響的バラード「地方長官」Op.78 |
“ヨンダニ・バットの指揮の技量にやや疑問符が…” |
ヨンダニ・バットは、中国系のマカオ人指揮者。ASVレーベルへのグラズノフの交響曲録音などで注目を集めましたが、ここのところNinbusレーベルへ王道名曲を精力的に録音し続けています。今まで聴いた限りにおいてはバットの芸風は細部を突き詰めるタイプではなく、良く言えば大らか。この録音も2日を掛けて行われていますが、音楽に対し誠実に対峙しつつも確信に裏打ちされたニュアンスを刻印するには至らず、結果的に平凡な演奏に終わってしまった感が拭えません。
全体に遅めのテンポを貴重とし、派手に金管が活躍するシーンでも露骨な強奏は避けているので、老練の巨匠風の演奏を狙っているのかもしれませんが、主体的な表現意欲が感じられないのが最大のネックです。例えば第3楽章。優雅なイメージを描いているのが、小躍りするような愉しさをイメージしているのか、さっぱりわかりません。同じレーベル録音したベートーヴェンの「献堂式」序曲では、空前絶後のド迫力演奏を聴かせ、フォーレの「パヴァーヌ」では心から繊細なフレージング感動を呼び起こしたバットなら、終楽章では本音を発揮させると思いきや、やはり生煮えの表現は変わらず、主部の金管大斉奏部も老巨匠気取り。更に奇妙なことに、ロストロポーヴィチ&LPOと同様のティンパニ・パートの改変を少しだけ採用。LPO以外の録音で聴かれるとはあまりにも意外なことですが、ロストロ盤のような色彩の広がり効果はなし。その意図がわかりません。ヨンダニ・バットという指揮者は、少なくとも作品との相性に左右されやすいということは言えそうですが、一体どこに軸足を置いて指揮活動しているのか、疑問は膨らむばかりです。【湧々堂】 |
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第1楽章 |
ツボ1 |
冒頭のクラリネットは、技術的にも音色的にも模範的。弦楽器との調和がやや不安定。 |
ツボ2 |
冒頭の弦の刻みの音色が不統一。テンポは標準的。クラリネットはやや楽天的。 |
ツボ3 |
楽譜通り。 |
ツボ4 |
呼吸は決して浅くはないが、ここでも音色に対するコンセプトが感じられない。101小節と102小節のティンパニの音を変更している(ロストロポーヴィチ&LPO盤と同じと思われる)。 |
ツボ5 |
哀愁を込めて歌い上げてはいるが、スラーを無視し、心にビリビリ響くフレージングには程遠い。 |
ツボ6 |
強弱のコントラストを感じさせず、平板に響く。 |
ツボ7 |
楽想の変化に応じたハッとするニュアンスが、少しは欲しいところ。 |
ツボ8 |
それなりに繊細なフレージングだが、弦の響きは美感を欠く。 |
ツボ9 |
やや遅いテンポを貫いているので、16音符は聞き取れる。 |
第2楽章 |
ツボ10 |
弦の導入がこんなぶっきらぼうに響くのも珍しい。ホルンは無表情で安全運転に終始。 |
ツボ11 |
緊張感を欠くフォルティシシモ。ここに至るまでの弦のフレージングは今までになく入念に心を砕いた跡が感じられるが、その分、この山場への伏線を張ることは疎かになってしまった感じ。 |
ツボ12 |
直前の遅いテンポをそのまま引きずって突入するので、クラリネットは著しく間延び。そのせいで9連音は克明に聞き取れるが…。108小節のピチカートまで延々とこの遅いテンポを貫徹しているので信念を持っているのだろうが、残念ながらニュアンスの凝縮度が弱い。 |
ツボ13 |
きちんと弾いているという範疇。 |
ツボ14 |
楽器は良く鳴っており表面的には立派だが、ここでも遅めのテンポが災いし、老人が息切れしながらやっと登頂した感が否めない。 |
ツボ15 |
テンポの間延び感はここまで尾を引いている。音量を弱くしているだけで、ニュアンスを確立しきれていない。 |
第3楽章 |
ツボ16 |
ほとんどイン・テンポのまま突入。 |
ツボ17 |
テンポが中途半端なことと、この楽章のイメージを固め切れていないことによって、愉悦感がまるで沸き立たない。ロンドン響のアンサンブルの妙味も |
ツボ18 |
スムースな連動。 |
第4楽章 |
ツボ19 |
やや遅めのテンポでじっくりとフレージング。 |
ツボ20 |
ホルンはほとんど裏方。遅いテンポは良いとしても、拍節感が弱いので、響きは散漫な印象。 |
ツボ21 |
テンポはカラヤンよりやや遅め。ティンパニはスコア通り。楽器は鳴っているが、根源的な力感が不足。 |
ツボ22 |
スコアのアクセントを遵守。 |
ツボ23 |
明瞭な録音によって、音の線がしっかり捉えられている。 |
ツボ24 |
主部冒頭よりほんのわずかに速いテンポに転じるが、やや曖昧。 |
ツボ25 |
克明に打ち込まれているが、意思が弱い。 |
ツボ26 |
そのままインテンポ。 |
ツボ27 |
まずテンポが中途半端で、音楽から緊張感を削いでしまっている。452〜454小節のティンパニは、ここでもロストロポーヴィチ&LPOと同じ改変あり。 |
ツボ28 |
完全にスコア音価より長め。 |
ツボ29 |
この箇所は、遅めのテンポが勇壮なニュアンスにしっかり結実した唯一のシーン。弦の響きにもオケ本来のハリがようやく感じられる。 |
ツボ30 |
弦もトランペットも音を切る。 |
ツボ31 |
改変型。 |
ツボ32 |
明朗だが輝きがない。 |
ツボ33 |
最後の一音まで完全イン・テンポ。 |