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チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY:Symphony No.5 in e minor Op.64
グィド・カンテッリ(指揮)
Guido Cantelli



掲載しているCDジャケットとそのCD番号は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。


チャイコフスキー:交響曲第5番

グィド・カンテッリ(指揮)
ミラノ・スカラ座管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Treasures
TRT-009(2CDR)
録音:1950年9月23-25日 ロンドン・EMIスタジオ(モノラル) ※音源:W.R.C SHB-52
演奏時間: 第1楽章 13:11 / 第2楽章 12:54 / 第3楽章 6:15 / 第4楽章 12:30
カップリング/チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」(録音:1952年10月)
“ストイックなのに柔軟!作品の魅力を再認識させるカンテッリの天才性!”
■製作メモ
「第5番」は、英HMVの第1回LP発売の筆頭を飾るレコード(ALP-1001)がとかく珍重されますが、それよりも素直に演奏のニュアンスを感じ取れた、EMI傘下のWRC盤をここでは採用。世界初CD化となった日本盤は第1楽章のピッチが高く、音はこもり気味。「板起し」と思われる処理の不手際も散見されて問題外。それ以降の再発CDと比べても、発信力は雲泥の差。「悲愴」も曇りのない音像を体感していただけると思います。

★ミラノ・スカラ座管は、1950年にサバータ、カプアーナ、カンテッリと共に戦後初めて英国を訪れ、カンテッリは、“モツ・レク”、“ベト7”、“チャイ5”を指揮。ここに収録した「第5番」は、その時に急遽組まれたセッションで、単にイタリア的という言葉では済まない、カンテッリの天性の音楽性が十分に盛り込まれた名演です。第1、第4楽章で顕著なように、本能の赴くままにテンポや表情を施すのではなく、基本的にインテンポを守り、その中で克明に各フレーズのニュアンスを熱い共感を込めながら描き切っているのが特徴です。第2楽章では歌の意味、漫然と流れがちな長いフレーズの中でのアクセントの重要性を痛感させられ、音楽にメリハリを与え、独特の瑞々しい音像を確立するのに効を奏しています。全楽章を通じて最も心の染みるのが第3楽章。軽く流されがちなこの楽章を最初の一音から心の底から奏で、メカニックな響きがどこにもありません。各奏者も十分に音を聴き感じながら音化しているのが手に取るように分かります。この楽章だけでも、カンテッリの天才は疑いの余地はありません!
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットも弦も感傷的にならず、淡白テンポも粘らない。
ツボ2 リズムが軽妙でイタリア的。テンポは速めだが、木管は良く感じている。
ツボ3 軽妙な跳ね上げ。
ツボ4 一音ごとに丹念に音を置いていく。少しだけメンゲルベルク風にテンポを落とす。
ツボ5 ややテンポを落とし、美しく息の長いカンタービレを聴かせる。
ツボ6 引き続きここも美しい。アニマート以降も感傷的にならない。
ツボ7 非常に色彩豊か!
ツボ8 洗練美の極致!前の部分からほとんどテンポを変えずにさらっと進行するが、心が込め抜かれ、一息での呼吸が実に鮮やか!
ツボ9 確固たる意志が漲り、逞しい推進力を示す。
第2楽章のツボ
ツボ10 テンポは普通だが、ずべての符点2分音符を入念に歌わせる。4小節と5小節の間で一旦フレーズを切るのが独特のこだわりだが、やや唐突に聞える。ホルンはヴィブラートが掛かるが、歌のセンスが満点。
ツボ11 熱いカンタービレ。実に呼吸が大きくしなやかで、吸い込まれそう。
ツボ12 テンポはほとんど変えずにクラリネットが歌いだす。69小節と70小節の頭のアクセントを弦にも与え、フレーズが水平に流れるのを避けている。
ツボ13 この直前の全休止で不自然な無音状態となる、CD化の際の編集の不手際と思われる。ピチカートは実に意味深い。この後も延々と「歌うピチカート」が堪能できる。
ツボ14 イタリア人ならではの情熱がほとばしる、伸縮自在のカンタービレが感動的!途中148小節で一度を落として再び高揚させるのが独特。フォルテ4つの直前でもテンポを落とす。
ツボ15 澄み切った詩情が横溢。しかも、拍節感はきっちりと保持。
第3楽章のツボ
ツボ16 インテンポのまま突入。
ツボ17 これほど音楽的なニュアンスを伴って全パートが緊密に絡み合う演奏は、聴いたことがない。
ツボ18 ほとんど聞えない。この後のフレーズの切り方と切ない歌い回しが聴きもの。
第4楽章のツボ
ツボ19 堂々としているが、内面に翳りを覗かせているような不思議なニュアンスを湛えている。テンポは標準的なもの。
ツボ20 ホルンはほとんど裏方。木管に強い意志を感じる。
ツボ21 冒頭でクレッシェンドするのみで、後は一定音量でトレモロ。終始音がこもっていて、力感は皆無に等しい。その代わり弦が強靭な意志をたぎらせて全身でリズムを刻む。テンポは通常よりやや遅く、ケンペンのような勇壮な進行が素晴らしい
ツボ22 はっきりとアクセントを施している稀少な例。カンテルリは、一貫してフレーズの中のアクセントの重要性を意識している。
ツボ23 音の輪郭がぼやけきっているが、意思の強さはなんとなく伝わる。
ツボ24 ここから一段テンポを上げる。
ツボ25 聞えないに等しい。
ツボ26 TempoTから主部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 ことさら速いテンポをとらない。響きは輝かしく、リズムは強靭。ヴェルディの影がチラつく。
ツボ28 楽譜の音価どおり。
ツボ29 ツボ13同様、この直前の無音もやや不自然。475小節の金管の符点リズムをきっちり処理しているのが流石他の部分でもそうだが、長い音符の後に短い音符が来る場合、短い音符の音価を詰めてフレージングに独特の弾力を持たせているのがいかにもイタリア的だが、結果的に生命感を与えることになり、効を奏している。この運命動機などその好例。
ツボ30 弦もトランペットも音を切る。
ツボ31 改変型。
ツボ32 バランスの取れた雄渾の鳴りっぷり。
ツボ33 完全なインテンポ。音の量感で煽らず、瑞々しい進行のまま終わる。


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