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ジョージ・ハースト(指) |
ハンブルク・プロ・ムジカ |
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Treasures
TRT-007(1CDR)
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録音:1959年頃(ステレオ) ※英SAGA盤からの復刻 |
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演奏時間: |
第1楽章 |
14:08 |
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第2楽章 |
12:55 |
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第3楽章 |
6:00 |
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第4楽章 |
11:52 |
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カップリング/シューベルト:交響曲第8番「未完成」 |
“停滞禁止!音楽の自然な躍動を絶やさないハーストの手腕に脱帽!” |
サイモン・ラトルが指揮者になる決意をした最初のきっかけは、少年時代に聴いたジョージ・ハースト指揮によるマーラーの「復活」だったそうです。その演奏がどれほど衝撃的だったか、これを聴けば容易に想像出来ます。ハースト(1926-2012)は、イギリス・エジンバラ出身ですが、父はルーマニア人、母はロシア人。第二次大戦が始まるとカナダへ移り、トロント王立音楽院で研鑽を積み、帰国後1958年から10年間、BBCノーザン管(現BBCフィル)の主席指揮者を務めました。その指揮スタイルは、血筋からも分かるように英国風の穏健さとかけ離れた直截なダイナミズムに溢れています。
とにかく、表面的にフレーズを撫でているだけのシーンなど皆無。第1楽章でも明らかなように、楽想を内面から抉りすことと、ダイナミックな音像と推進力を導き出すことを常に共存させた音楽作りは、説得力絶大。第2楽章冒頭の低弦の歌わせ方にも、指揮者の本気度とセンスが象徴されています。それなりに美しく奏でるだけでも一定の雰囲気を出せるシーンですが、オケが自発的にフレージを膨らませているような風情は、まさに指揮者の手腕の賜物と言えましょう。ホルン・ソロが終わった直後の30小節の結尾で一瞬ルフト・パウゼを挟み、低弦を意味深く浮上させ、それによりTempoTの新たなシーンへの見事な連携を図るなど、並のセンスではあり得ません!終楽章はテンポこそ標準的ですが、音楽の感じ方が半端ではないので、何もしていないようでいて各ニュアンスが重みと密度を持って迫ります。4:36からの進軍では、金管は決してあからさまな強奏をしていないのに、威厳が横溢。腹から搾り出すとはまさにこの事!
なお、オーケストラは北ドイツ放送響あたりが主体でしょうか?実態は不明ですが、いかにもドイツ的な響きが魅力です。【湧々堂】 |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
クラリネットは飾り気のないフレージングだが、十分に音楽を感じており、弦との調和も素晴らしい。 |
ツボ2 |
主部のテンポは標準的。悲しさを強調しない素朴路線。クラリネットとファゴットの一体感も美しい。 |
ツボ3 |
こういう箇所を微視的に捉えないところに、ハーストのアプーローチの一端が表れている。 |
ツボ4 |
細部に拘泥しない。内面に静かな闘志を感じさせる。 |
ツボ5 |
スフォルツァンドをほとんど無視して、推進力を優先。 |
ツボ6 |
アニマートで僅かにテンポを落とす程度。フォルティッシモも強調せず、次のフレーズへ自然に繋げることを優先している。 |
ツボ7 |
第1音だけはは、コルクの栓を抜いたような奇妙な音だが、それ以降は弦のな上質な響きが伝わる。 |
ツボ8 |
ハーストの歌のセンスを象徴するシーン。耽溺せず、突き放しもせず、あくまでも音楽の脈動を維持した上で、表情を克明に注入。 |
ツボ9 |
ほとんどテンポを買えないが、明らかに音の緊張感が倍増。決して前のめりにならず、緊張感だけを確実に高める手腕が素晴らしい。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
低弦の導入は、呼吸が自然に振幅し続け、フレージングが途切れないのは指揮センスの賜物。ホルンは点ンポもフレージングも淡白なようでいて、響きにコクがあるので惹き付けられる。相当の技量の持ち主と見える。 |
ツボ11 |
わずかにテンポを落とすが、決して大見得に陥らない。 |
ツボ12 |
クラリネットの力量はまずまず。わずかにテンポアップ。 |
ツボ13 |
ここでも、このオケの弦の上質さを感じさせる。 |
ツボ14 |
まさに本物のフレージング!作為を用いず、内燃エネルギーのみを増幅させる力量に感服するばかり。 |
ツボ15 |
繊細さを後付けするような瞬間のないスタイルを貫いているが、このシーンだけはあえてデリケートな情感を徹底表出。ハーストの表現の多彩さを窺わせる。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
少しンポを落とす。70小節でも同様。 |
ツボ17 |
16分音符の随所にアクセントを置く。時折見かける解釈だが、やり過ぎると煩わしさが際立ってしまうことも。そんな危険はここでは一切なく、パート間の緊密な連携によって、有機的に音楽が紡がれる。 |
ツボ18 |
クラリネットとファゴットの連帯感は、いまひとつ…。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
品格と威厳を兼ね備えている。 |
ツボ20 |
ホルンは、裏方に埋没せず、常にオーボエと一体で歌い上げる。 |
ツボ21 |
まさに勇壮美!ティンパニは、58小節、62小節、66小節にアクセントあり。テンポは標準的。70小節からの木管群は、フルートを主役に据える。 |
ツボ22 |
完全に無視。 |
ツボ23 |
恣意的な強調は一切なし。 |
ツボ24 |
同じテンポのまま。 |
ツボ25 |
強打ではなく、見事な入魂! |
ツボ26 |
そのままイン・テンポ。 |
ツボ27 |
モルト・ヴィヴァーチェは採用せず。 |
ツボ28 |
ほぼ楽譜の音価どおおり。最後のティンパニ一撃、これが素晴らしい音!ここでアクセントを打つなら、こうでなければと唸らせる。 |
ツボ29 |
実に健康的で開放的だが、一定の節度が感じられる。 |
ツボ30 |
弦もトランペットを音を明確に切る。トランペットを徹底的に前面に立たせたバランスだが、煩さ皆無。 |
ツボ31 |
弦の動きと合わせる改変型。 |
ツボ32 |
ドイツ風の渋みが利いている。 |
ツボ33 |
盤石のイン・テンポ。このスタイルによる理想の響き! |