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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5




チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY:Symphony No.5 in e minor Op.64
飯守泰次郎(指揮)
TAIJIRO IIMORI



掲載しているCDジャケットとそのCD番号は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。






飯守泰次郎(指)
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:小林祐治
フォンテック
FOCD-6030(5CD)
録音:2011年11月26日ティアラこうとう【デジタル・ライヴ】
演奏時間: 第1楽章 15:15 / 第2楽章 13:25 / 第3楽章 5:53 / 第4楽章 12:27
カップリング/交響曲第1−4番、6番「悲愴」
“世界が注目すべき、和製チャイコフスキーの最高峰!”
胸が張り裂けんばかりの感情の渦を全ての音に封じ込めた感動的なチャイ5!「チャイ5」と言えば日本にはなんと言ってもコバケンという強敵がいますが、この飯守盤を聴くと、音の意味の掘り下げ度合い、チャイコフスキーとの一体化の持続力という点で、コバケンをも凌ぐとさえ思われ、「どんな演奏でもだいたい成功してしまう」という安易なチャイコフスキーへの取り組み方へのアンチテーゼとしての意気込みが、こうして現実に音として具現化されたことは驚異的と言えましょう。どんな指揮者でも「作曲家の思いを忠実に再現したい」と口では言いますが、「これが正しい演奏ですという」演奏者の自己満足に終わり、聴き手にとっての感動とは程遠いものも少なくありません。それをチャイコフスキーにおいて有言実行し、しかも初めて聴いた作品のような感動を覚えるとは全くの予想外でした。
この全集の中では特に第1番〜第4番が最高の名演奏ですが、この「第5番」も競合盤がひしめく中で、他では味わえないニュアンスが満載で、この作品へのアプローチの一つの基準となるに相応しい素晴らしい演奏です。
中でも第1楽章の感情表現の徹底ぶりは、この作品を指揮しようとする全ての指揮者が模範として欲しいと願わずにはいられません。第1主題が現に写ってからの強弱の振幅はスコアどおりに演奏しているに過ぎませんが、そこにここまで感情のときめきを宿した演奏は他に思いつきません。しかも2小節単位でフレージングする何のいう意味深さ!第2主題が奏されたあとの5:05からのピチカートは全ての音が鳴りきり、展開部直前6:56からの(スコアにはない)クレッシェンドも、最後の一音まで昇り、再現部の10:34からの管楽器同士が愛を交わすように連動する等々、これら他に例のないニュアンスのどれもが演出ではなく、チャイコフスキー自身の言葉として迫るのです。終楽章はスピード感も力感も満点。立派な演奏に仕立てようという邪心がなく、原動力は作品への愛情一本。冷静に聴くと相当細部に渡って声部バランスに配慮しているのがわかりますが、それが音楽の流れを阻害せず、一本筋の通った気高い勝利の歌として結実しているのです。
作品と指揮者との相性の良し悪しも、演奏の質を左右する要因かもしれませんが、この全集の6曲全てにおいてそれぞれの楽想にフィットした感動をもたらしてくれたという現実を目の当たりにすると、飯守泰次郎に限ってはそいうい相性の問題などそもそも存在せず、各音楽の固有の魅力を引き出すセンスが並外れているのだと思えてなりません。【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 冒頭のクラリネットの音色の木目調の風合いを漂わせながら、感情を常に抑える一方で。それを支える弦の陰影は恐ろしいほど濃密!相反する2つの魂がぶつかり合うような独特の空気を生み出している。
ツボ2 標準的なテンポ。冒頭の弦の刻みが柔らかくも切迫感のある響きで、不安の空気を醸し出す。クラリネットとファゴットのバランスも良好で人肌のぬくもりを感じさせる。
ツボ3 ポルタメントとではないが、優しく弦を滑らせて密やかに語る。それにより直後の発作的なクレッシェンドの意味が際立つ。とにかく全ての音に魂が充満している!
ツボ4 スコアどおりだが、強弱の振幅の意味をここまで掘り下げて、音楽的に再現した例は稀。。
ツボ5 イン・テンポのままだが、感情の高ぶりを更に強く刻印し、スラーにとらわれすぎることを避け、息の長い呼吸を確保することで、音のドラマにリアリティが生まれている。
ツボ6 スコアの強弱の指示をそのまま音化することよりも、息の長いフレージングに比重を置いている。
ツボ7 ここでややテンポアップ。腰の入ったリズムが顔をもたげる。ピチカートの上行音型の響きが充実の極み
ツボ8 弦の響きにご注目!ベルリン・フィルのような巧みさはないが、「これが本当のチャイコフスキーだ!」という確信に満ちたフレージングは、どんなに技術的に達者な演奏よりも説得力絶大!
ツボ9 冒頭の16分音符は微かに聞こえる程度。テンポはややアップ。503小節からと突如テンポを落として粘着質に進行するが、ただのメリハリ付けではなく、今までの暗い感情をロシアの大地にそっと戻す絶妙なニュアンスを生んでいるところが画期的。そして感動的!
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は、強弱の起伏を付けずに感覚的には平板に響くが、やはり音に込められた切実な思いはひしひしと伝わる。ホルンは音楽をよく感じてテンポにもうまく乗っているが、ややニュアンス不足。
ツボ11 やや力感不足だが、音楽の感興を削ぐものではない。
ツボ12 クラリネットもファゴットも素朴だが、心から歌っていることは確か。
ツボ13 元のテンポに戻る。ピチカートのの響きはここでも充実。
ツボ14 ティンパニがややデッドに響くため粉砕力はないが、呼吸は本物で、最高潮点でも響きが混濁しないの流石。
ツボ15 もっと真綿でくるむような柔らかな音色が欲しいところだが、このフレージングの純朴さは貴重。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす程度。
ツボ17 すべての声部が楽しく対話!このオケはよほどチームワークが良いのだろう。前のパートが築いたニュアンスを急速なテンポの中でもしっかり受け継いでいることがわかる。
ツボ18 一本のラインを成す美しい演奏。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。全体の響きは柔和だが、希望の光をやっと目にすることができるという期待感に満ちた響き。
ツボ20 ホルンは出入りを繰り返すのではなく、常に裏方。
ツボ21 ティンパニは58小節、62小節、66小節にアクセント有り。テンポはここから希望の光を目掛けて高速でまっしぐら!響きも強固。
ツボ22 アクセントはほぼ無視。
ツボ23 風圧感はないが、そこそこの力感は確保。8分音符の動きがよく聞き取れるのは稀なこと!
ツボ24 主部冒頭のテンポに戻る。
ツボ25 強打ではないが、一撃の意味は伝わる。
ツボ26 ほぼイン・テンポのまま進行。
ツボ27 ほぼイン・テンポ
ツボ28 8分音符の音価はほぼスコアどおり。469小節の複符点2分音符をやや長めにとることで良好なバランスを保っている。
ツボ29 ティンパニの強打に頼らずに荘重なニュアンスを一気に敷き詰める!リズムにも強靭な意志が漲る。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットも同様の切り方で揃えている。このトランペットが巧い!
ツボ31 トランペットを弦の音型に合わせる改変型。
ツボ32 芯のある堂々たる響き。
ツボ33 作為のないイン・テンポので締めくくる。

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