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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5




チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY:Symphony No.5 in e minor Op.64
エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)
ERICH LEINSDORF



掲載しているCDジャケットとそのCD番号は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。




エーリヒ・ラインスドルフ(指)
ボストン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:チャールズ・カヴァロフスキ(?)
Von-Z
S-2-268
(2CDR)
録音:1963年8月25日 ボストン・シンフォニー・ホール(ステレオ・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 14:08 / 第2楽章 13:08 / 第3楽章 5:45 / 第4楽章 10:47
カップリング/プロコフィエフ:交響曲第6番
“情緒を排し、愛も置き去りにしたラインスドルフの辛口演奏”
ワーグナーでもJ・シュトラウスでも、作品に込められた情緒的な面をさっぱり削ぎ落として、スコアを合理的に鳴らすことにこだわったラインスドルフにとって、チャイコフスキーは最も遠い存在で、まして「チャイ5」など眼中にないのではと思っていただけに、このドキュメントの出現は驚愕。その演奏はというと、これがほぼ予想通り、極めて冷酷な演奏。テンポの変動は最小限に抑えること自体はもちろん解釈として成立しますが、トスカニーニのような厳格さにも徹し切れず、そうかと思うと唐突に連綿と歌い上げて聴く者をハッとさせますが、それも必然性を感じさせないまま過ぎ去ってしまう…。オケの意欲も鼓舞し切れてもおらず、端的に言って愛を感じさせない演奏なのです。そんな中、ほとんど唯一、共感を心の底から滲ませているのが第2楽章、3:54からの副次旋律を弦が奏でるシーン。ここだけははなぜか、自らを作品に埋没させるように本物のリリシズムが通っており、深々とした静寂感を残しながら実に滑らかで美しいカンタービレを聴かせてくれるのです。それだけに、なぜ他の部分でもこのモードを徹底してくれなかったのか、それが悔しくてなりません。なお、この当時のアメリカでのライヴ録音の多くがそうであるように、この録音も残響が乏しいので、余計に潤いを求めたくなります。
※WORLD MUSIC EXPRESS(1CD-R)からも発売されていますが、モノラル録音。
第1楽章のツボ
ツボ1 冒頭のクラリネットは、表情に関する指示を与えた痕跡がまるで感じられない無機的な響き。但し、6小節目の付点2分音符から4分音符に掛けてクレッシェンドする。弦はそれよりも表情が感じられるが、クラリネットを掻き消してしまう箇所があり、バランスが良いとは言えない。
ツボ2 テンポは中庸。クラリネットとファゴットのバランスは良いが、ここでも表情は膨らまず、響きの乏しいい録音と相まってドライな印象がつきまとう。
ツボ3 杓子定規で、まるで音楽を感じていない!
ツボ4 スコアどおりに弾いているが、ニュアンスがない。
ツボ5 ラインスドルフなら、ここのアーティキュレーションを緻密に表出してもよさそうだが、普通に流れてしまう。意外なのは122小節から少しずつリタルダンドが掛かり憂いの表情を醸し出そうとしている点。
ツボ6 音量を抑制しながら、デリケートに抒情味をを醸し出そうとしているが、いまひとつ踏み込み切れていない。
ツボ7 特徴なし。
ツボ8 副次主題に差し掛かる前に大きくリタルダンドを施して約2倍のテンポまで減速。そこまでは珍しくないが、なんとそのテンポのまま副次主題を延々と弾き通しているのは驚き!ラインソドルフにしては最大限のカンタービレとも言えるが、逆に取って付けたような違和感が残る。
ツボ9 ここからテンポを速め、最後までインテンポのまま直進。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は美しく溶け合い、意外なほど雰囲気がある。ホルンは技術的な傷こそないが、ホールに響き切らず、ニュアンスが伝わりにくい。
ツボ11 ここに差し掛かるまでの弦の副次旋律が感動的で、その脱力した憂いのニュアンスのままフォルティシシモを築く技が見事!56小雪の頭は、ミュンシュ時代によく耳にする突き刺すようなトランペットが突出。
ツボ12 テンポをを少し速めるのはよいが、クラリネットは無表情というよりも、完全に馬鹿にしたような野放図さ!9連音も怪しい。感性が病んでいるとしか思えない。
ツボ13 音量は抑え気味。
ツボ14 なかなか堂に入ったアゴーギク。全体の響きはやや窮屈だが、フォルテ4つの直前での大きなリタルダンドも魂がこもっており、エネルギーが高潮しきった瞬間を見事に表出。
ツボ15 デリケートな弦が優しく歌い、決定的な欠点などないが、音楽が香ってこないのがもどかしい。
第3楽章のツボ
ツボ16 一旦テンポを確実に落とす。
ツボ17 アンサンブルは乱れることなく最後まで弾ききっているが、あまりにもニュアンスに乏しい。
ツボ18 緊張感が感じられず、軽く受け流す感じ。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは中庸。弦はバランスよく響き、風格もあるが、音に意志の強さがあまり感じられない。
ツボ20 かつてモントゥーは、ここでかなりホルンを突出させていたが、ここでもそれとそっくりのバランスで響いているのが印象的。但し、ラインスドルフ個人の明確なアプローチとしてではなく、どうしても、モントゥーの名残りとしか聞こえてしまうところが問題。
ツボ21 ティンパニはほぼスコアどおりだが、主部冒頭で一瞬戸惑ったような変な空白がある。テンポはごく標準的。これからいよいよ未来が開かれるといった希望も意欲も感じられない、漫然とした進行ぶり。
ツボ22 アクセントを生かしているようだが、不明瞭。
ツボ23 細かいパッセージも含めてきちんと弾き尽くしている。
ツボ24 インテンポ。
ツボ25 響きは鈍い。
ツボ26 インテンポ。
ツボ27 インテンポ。さすがに音楽は高揚し、緊張感も良く出ている。ティンパニも盛大に連打。
ツボ28 いかにもドライなラインスドルフらしく、完全にスコアどおり。8分音符の音価は正確にスコアどおり。しかも、全休止をほとんど無視して先へ進んでしまうが、ここでは大いに納得!
ツボ29 速めのテンポで完全にマーチ調。
ツボ30 これはユニーク!474小節では弦をレガート気味に弾かせ、直後の476小節では明確な意思を持ってバッサリ音を切り上げている。その後の繰り返しでも、この法則を遵守。この使い分けの意図は不明。トランペットは音をつなげている。
ツボ31 曖昧だが、改変しているようだ。
ツボ32 トランペットがキンキン鳴り渡るのに対して、ホルンはややくすんでいる。
ツボ33 プレスト以降はかなり速いテンポを採用し、最後まで一気呵成に進行するが、トランペットが目立ちすぎて豊かな風格を醸し出すことなく終わってしまう。最後の4つの音が微妙に前のめり気味になるのは、一瞬ストコフスキーを思い出させるが、もちろんそんな効果は狙っていないだろう。





ICA CLASSICS
ICAD-5059D(DVD)
エーリヒ・ラインスドルフ(指)
ボストン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:ジェームズ・スタリアーノ
録音:1969年4月15日ボストン・シンフォニー・ホール(モノラル・ライヴ)、映像:カラー、音声:モノラル
演奏時間: 第1楽章 13:30 / 第2楽章 12:25 / 第3楽章 4:49 / 第4楽章 12:17(拍手を含む)
カップリング/モーツァルト:セレナード第9番「ポストホルン」〜メヌエット第1番、ベートーヴェン:エグモント序曲
“パワハラ的なテンポ運び!それに付き従うボストン響の凄さ!”
映像作品としての「チャイ5」としては、面白さダントツ!ラインスドルフの映像というと、ウィーン響を振ったJ・シュトラウスを思い出します。オーストリア出身にもかかわらず、ほとんど情というものを感じさせず、作品を正確に鳴らすことに終始したような演奏でしたが、この「チャイ5」も歌うことを禁じ、フレーズに酔ったらあとで厳しい罰が待ち受けていそうな締め付け感が全体を覆っており、音楽そのものを味わうという点ではお勧めしにくいのでですが、映像を見ることによって、ラインスドルフの意図がオケにどのように伝わり、どういう反応を示しているのかが手に取るようにわかり、即興性と即物性が入り混じったような独特のアプローチが生まれる過程を具に確認できるドキュメントという点で、あえて「Excellent」マークを付けました。
ラインスドルフのアプローチは、63年盤と基本ラインは共通していますが、テンポも強弱も一層コントラストは大きくなり、響きは贅肉を削ぎ落した筋肉質なもので、テンポはスピード感重視。意外なのは終楽章で、ドライなラインスドルフの印象からは信じられないほどの熱演を繰り広げているのが特徴的で、後半の全休止部分では、なんとラインスドルフが物凄い唸り声を発して次のフレーズへなだれ込みます。全休符のフェルマータを無視して気合で先へ進むテンポも、63年よりもかなり高速。この一連のオケに対するまくし立て方をとくと確認してくだい。圧巻は、コーダを締めくくる4つ四分音符を「ダダダダ!」と高速ドリルのように突き刺して終わるという荒技!かつてストコフスキーも行っていた手法です。63年盤を最確認するとなるほどその片鱗は多少聴き取れますが、ここまで露骨ではありませんでした。その際のラインスドルフのジェスチャがまた見もの!
ところで、ラインスドルフの棒の特徴ですが、極めて分かりにくいのは相変わらずです。特に左手で表情を与えることは殆ど無く、左右の手首をゆさゆさと均等に動かすだけで拍を示し、大音量のトゥッティでは大きく棒を振りかざしながらも、棒を下ろす際は腰をかがめてお辞儀をした格好になってしまう癖は、いわゆる指揮法の王道からは外れており、フレージングが生命感とスケール感を蓄えないまま音になってしまうのも、そのクセのある動作に関係しているのかもしれません。次のフレーズに新たなニュアンスを加える際にも直前でオケに暗示を与えることも皆無に等しいので、ゆとりと確信を持った表情が生まれにくく、唐突なテンポの変化にもなかなか安定感が得られない場面も散見されます。つまり指示の一つ一つに「優しさ」が感じられないのです。生前は各方面とトラブルも多かったそうですが、相手に気持ちよく理解してもらいながら理想の音楽を築くというのではなく、ラインスドルフ自身の考えを絶対視し、それに従いさえすれば間違いないんだという自信が人一倍強かったのかもしれません。
要求の厳しさという点ではトスカニーニの名も浮かびますが、トスカニーニにはなんといっても強烈な訴求力を誇るカンタービレという武器がありました。ところがラインスドルフには音楽のニュアンスを押し広げるような決め手になる技もこれといって見出せません。
一方、そんなドラスティックというかサディスティックというか、独特の厳しい要求に従うボストン響のプロ意識には感服することしきり。指揮者との共感度合いは別として、最後まで破綻を見せずに精度の高いアンサンブルを展開しており、心から拍手を贈りたいと思います。それと弦の美しさ!
ラインスドルフの解釈はスリリングだけど心に迫ってこない…と言いながら、実は終楽章の最後の和音が打ち鳴らされた直後、感動で鳥肌が立ち、自分でも驚いてしまいましたが、これも過酷な試練によくぞ耐えぬいたというオケに向けての思いが積もった結果かもしれません。
なお、映像は鮮明なカラー。音質は代理店の情報ではモノラルとなっていますが、一定の広がりが感じられてとても明瞭です。【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 2本のクラリネットは完璧なバランスで共鳴するが、テンポがメトロノームのように無機質。低弦は物々しい雰囲気を醸しだす。
ツボ2 最初の弦の刻みは通常よりやや速め。木管がテーマを吹き始めると更に速くなり、遂には史上最速の部類の高速に落ち着く。
ツボ3 余韻が皆無。
ツボ4 あまりにもテンポが速いので憂いなど感じさせず、呼吸は一本調子。
ツボ5 わずかにテンポを落とし、ラインスドルフも憂いの表情を浮かべて指揮をするが、呼吸が浅く、音楽の核心に触れるのをあえて避けるようなクールさ。
ツボ6 強弱のコントラストは希薄。ここでもクールなインテンポ。フレージング自体は丁寧。
ツボ7 縦の線が完璧の揃い、ボストン響の弦の質感も格別
ツボ8 ここは打って変わって抒情豊かは歌をきかせ、弦の美しさも手伝ってフレージングが真に迫っている。ただやはり呼吸は決して深くない。
ツボ9 冒頭の16分音符は聞き取れる。ここからテンポを速め、最後まで高速のまま突き進み推進力を確保しているが、音楽自体が小ぶりに感じる。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は、これまたほろぼれする美しさ。ロシア的な音像の広がりも感じさせる。ホルン(1972年まで首席を務めた)は、かなり緊張気味で、楽譜通り吹くのが精一杯。クラリネットとも融け合わない。オーボエは巧い。
ツボ11 強烈な衝撃こそないが、風格味のあるフレージングを醸成。しかも魅力的な弦の響きが主体となっているので、音楽的な説得力を持って迫る。逆にラインスドルフという人がますます分からなくなってくる。
ツボ12 テンポをを少し速める。、クラリネットもファゴットも技術的に完璧だが、9連音は軽く流しすぎ。
ツボ13 直前の全休止が異様に長い。この弦も見事な響き。
ツボ14 ラインスドルフらしい巧みな設計力を感じさせる瞬間。頂点への登りつめ方も心から熱狂はしていないが、着実に足場を固めた安定感がある。
ツボ15 全体を通じてもっとも美しい瞬間かもしれない。ラインスドルフの指示とは無関係に、オケが主体的に自分たちの音楽を奏切ったとも受け取れる。
第3楽章のツボ
ツボ16 一旦テンポを落とす。
ツボ17 アンサンブルは精妙だが、香りや色彩的な華やぎ少ない。
ツボ18 これぞ理想!特に一回目の連鎖の妙は奇跡的!
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは中庸。弦全体のバランスも非常に良い。
ツボ20 ホルンは部分的に突出。
ツボ21 ティンパニはスコアどおりだが、一呼吸を置いてから一撃し、トレモロを開始するのは63年盤と同じ。テンポはやや速め。
ツボ22 アクセントは無視。この直前の122小節のトロンボーンの入りはスコアよりも1拍早く吹かせている。
ツボ23 凄みはないが、精妙なアンサンブル。
ツボ24 インテンポ。
ツボ25 響きは鈍い。
ツボ26 直前でテンポを落とすが、ここからまた主部冒頭のテンポ。
ツボ27 そのままインテンポ。しかしこの時点ではライヴ特有のノリも手伝って、主部冒頭のテンポよりもかなり高速に達している。
ツボ28 完全にスコアどおりの音価。ここで拍手をされるのを避けるためではないだろうが、ラインスドルフが猛烈な唸り声を発しながら全休止を殆ど取らずにまっしぐら!
ツボ29 史上最速クラス。完全に軽快なマーチ!コンロラバスのパートがクローズアップされるが、その弓さばきの速さを目にすると余計に高速ぶりを実感。
ツボ30 474小節では弓を一瞬浮かせてレガートを回避し、直後の476小節では明確に音を切っている。トランペットは音をつなげ気味だが、わずかに空白を入れる。
ツボ31 改変型。この後はも猛烈に速い!
ツボ32 強烈な強奏ではないが、ホールに響く良い響き。
ツボ33 プレスト以降もかなり速い。最後の4小節の付点2分音符を伸ばせるだけ伸ばし、最後の4つの四分音符は天を仰いで両手をブルブル震わせて一気に畳み掛けて終わる!これを映像で見られののだから興奮しないわけにはいかない!

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