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アーネスト・マクミラン(指)トロント交響楽団 | |||||||||||||
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Serenade SEDR-5025 (2CDR) 限定生産 |
録音年:1953年 【モノラル録音】 使用原盤:RCA CAMDEN(U.S.A.) CAL 374 | ||||||||||||
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◆カップリング〜チャイコフスキー:交響曲第5番 @コンヴィチュニー(指)ベルリンRSO、Aストコフスキー(指)フィラデルフィアO(第2楽章のみ) |
“シンバル追加あり!閃きを信じて熱く歌いぬいた佳演!” |
マクミランの名前は、グールドが弾くベートーヴェンの協奏曲の伴奏者としてしか一般的には知られていないだけに、この復刻は極めて貴重なもの。トロント響の音楽監督としての在位期間は25年と、歴代指揮者の中で今もって最長。その芸風と当時のトロント響の力量を知る上で欠かせない存在です。演奏スタイルは、この演奏を聴く限りインスピレーション重視型で、格調の高さをウリにする演奏ではありませんが、作品に対する共感は並々ならぬものがあり、その意思に対して、名門オケのような巧味を持たないオケ(但し第2楽章のホルンは聴きもの!)が懸命に奉仕している姿が目に浮かびます。カップリングされているコンヴィチュニーの演奏と比較すると分かるように、むしろマクミランの方が一時代前の様式を思わせるニュアンスが顔を出す瞬間が多く、第1楽章第2主題に入る前、85小節でチューバの持続音をクレッシェンドさせるなど、やや外面的にも取れますが、そうせずにはいられない気持ちも頷けるのです。終楽章の金管の運命動機はかなり丸出しの強奏で洗練とは程遠く、コンヴィチュニーの演奏が気高く聳えるほどですが、それでもこの演奏には軽く受け流す訳には行かない人間的な魅力が溢れているのです。アゴーギクも独特。しかし、終楽章だけはインテンポを基本とした、確固とした造型重視型に転じるのですから一筋縄ではいきません。しかも終楽章502小節の冒頭ではセルと同じくシンバルの一撃が追加されます。このシンバルが不思議と違和感を感じさせません。 この1曲だけでマクミランの芸術の何たるかを決めることなどできませんが、嘘のない本音の音楽をここまで敢行し尽くす手腕は侮れません。 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | クラリネットは洗練味と微妙な陰影には欠けるが、2人の奏者による響きの広がりは感じられる。テーマの最初の付点4分音をたっぷりとテヌートするなど濃厚なロマンを注入する姿勢が早くも伺われる。弦の筆致もかなり太い。 |
ツボ2 | 弦の刻みには哀愁が感じられる。木管の音色はやや明るめ。は哀愁がこめられているが |
ツボ3 | 大きな特徴はなく、丁寧な奏で方。 |
ツボ4 | スコアどおり。 |
ツボ5 | 直前でアッチェレランドしておいて、116小節から急激に低速に転じるのが珍しい。 |
ツボ6 | この第2主題は、濃厚なアゴーギクと共にかなり主情的に歌いぬいているが、嫌らしさがなく純粋な共感が滲んでいる。 |
ツボ7 | ここでまたしてもギアチェンジして駆け抜けると思いきや、意外にも落ち着いたテンポで可憐なピチカート。この表情が、次の副次主題と見事に連動している。 |
ツボ8 | この副次主題結尾にかけてリタルダンドが掛かるが、一度息の長いフレージングを上り詰めた後のふわっと息が抜けていくような失速感は、このシーンにおいて最適と思わせる意味深さ。 |
ツボ9 | 16分音符は不明瞭。インテンポのまま颯爽と進行。終結にかけて思い切ったリタルダンドを敢行するが。悲愴交響曲の終結のような効果をもらしているのが印象的。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | ホルンが素晴らしい!音色そのものが深々と哀愁を湛え、かつフレージングを末端まで感じきっている。続くオーボエとファゴットはそれに比べると表情が明るい。 |
ツボ11 | 強烈な打ち込みではないが、大きな呼吸感葉伝わってくる。 |
ツボ12 | クラリネットの音が軽い、ファゴットも技術的にやや難あり。 |
ツボ13 | 後半にかけてリタルダンド。 |
ツボ14 | ここからグッとテンポを落として、アゴーギクの妙味を堪能させる。やや不器用さが残るが、共感の純度が高く、フォルテ4つの頂点も渾身。 |
ツボ15 | 第1楽章の終結同様、最後のリタルダンドが実に意味深く効果的。 |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | テンポをいったん落とすが、第2音を引き伸ばすのが珍しい(後半でも同様の解釈)。 |
ツボ17 | ヴィルトゥオーゾ的な巧味はないが、このシーンの面白みを十分に伝えている。 |
ツボ18 | マイクが捉えきっていない。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 遅めのテンポで慎重に進む。素朴な味わいだが、勇壮さにも欠けていない。 |
ツボ20 | ホルンはほとんど裏方。 |
ツボ21 | ティンパニは冒頭で一撃、その後わずかにクレッシェンドしながらトレモロ。62小節目はわずかにアクセントがある。テンポはカラヤンに近い標準的なもの。 |
ツボ22 | 完全に無視。 |
ツボ23 | ドイツの伝統を受け継ぐオケのような腰の強さはないが、全体のバランスは良好。 |
ツボ24 | 主部冒頭と同じテンポ。 |
ツボ25 | やや硬い響きで明確に打ち込まれる。強打ではないが、前後のニュアンスと見事に連動。 |
ツボ26 | そのままインテンポ。 |
ツボ27 | 前のテンポを引き継いでここでもインテンポ。 |
ツボ28 | 8分音符の音価はスコア表記よりもやや長い。 |
ツボ29 | 際立った個性はないが、熱いフレージングが心に迫る。 |
ツボ30 | 弦は明確に音を切るが、トランペットはテヌート気味。 |
ツボ31 | トランペットは改変なし。但し502小節冒頭でシンバルの一撃を追加(セル&クリーヴランドO盤と同じ箇所)。 |
ツボ32 | やや弱い。 |
ツボ33 | プレスト以降、最後の4小節まで含めてほとんどインテンポのまま直進。 |
製作者・平林直哉氏のコメント このディスクのチャイコフスキーの第5交響曲はすべて世界で初めてCDR化されたものである。演奏史の観点から見るとそれぞれに興味深いが、まずこの曲の唯一の録音となるコンヴィチュニーは、徹底してドイツ風の解釈だ。第1楽章の主部の遅さはあのチェリビダッケを思わせるし、第4楽章の洗練されない遅いテンポはフルトヴェングラーに似ている。また、コーダの全く唐突な急発進、急加速は珍演奏として知られるワルター/NBC響(1940年)とうり二つと言っていいだろう。こうした田舎臭さは当時のドイツでは定番的な解釈だったと思われる。一方のマクミランはもっと洗練されており、すっきりした現代風の演奏である。しかし、第3楽章ではメンゲルベルク風にテンポが落ちたり、第4楽章にはシンバルを追加するなど、後期ロマン派の名残りが随所に感じられる。ストコフスキーはラッパ吹き込み時代のもので、しかも第2楽章のみの収録なので付録として加えた。管楽器のソロがルバートをかけたり、弦楽器にはポルタメント奏法が多用されるなど、ロマン的な色彩が強い。なお、マトリックス番号はSP盤に印字されていないので、Arnol d著の『The Orchestra on Record, 1896-1926』(Greenwood Press)を参照した。 コンヴィチュニー、ストコフスキーの略歴については省略するが、マクミランは日本ではほとんど無名に近く、彼の一番有名なレコードはグレン・グールドの伴奏をしたものかもしれない。生まれはカナダ。のちにイギリスに移住し、オルガンを学び、その後、エディンバラ大学、トロント大学でも学ぶ。1914年、パリに行き、そのあとバイロイトに滞在中に第1次世界大戦が勃発、ベルリン近郊のルーレーベンに収容される。その間の音楽活動が認められてオックスフォード大学より学位が贈られた。戦争後はカナダに戻り、オルガニスト、後進の指導に活躍し、1931年からはトロント交響楽団の常任指揮者に就任し、同楽団を短期間に一級の団体に仕上げた(1957年まで)。さらに、メンデルスゾーン合唱団の指揮者として活躍し、作曲家としても多数の作品を残した。1935年、イギリス政府よりサーの称号を与えられる。録音はSP時代にホルストの「惑星」、エルガーの威風堂々等があるが、量的には少なく大半は地味なレパートリーだった。(平林 直哉) |
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