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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
ヴィトルド・ロヴィツキ(指揮)
Witold Rowicki



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番
ヴィトルド・ロヴィツキ(指)
バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
SWR music
SWR-19112CD(2CD)
録音:1962年2月14日 バーデン・バーデン、ハンス・ロスバウト・スタジオ【モノラル】
演奏時間: 第1楽章 16:04 / 第2楽章 13:32 / 第3楽章 6:27 / 第4楽章 12:29
カップリング/交響曲第6番ロ短調「悲愴」、『くるみ割り人形』組曲
“甘い感傷を寄せ付けないロヴィツキの熱いこだわり!”
初出の放送用録音。ロヴィツキの音楽作りの特徴であるテンポ変化のタイミングや音価の長短へのこだわりが随所に感じられる非常に興味深い録音。ムザのスタジオ録音と共通する解釈も見られ、スコアを知り尽くし、イメージが完全に出来上がったいることを伺わせます。全体に音色のトーンが暗く、人間的な温かみより音楽の構造の妙味で訴えかける点も、いかにもロヴィツキ。したがって、情に溺れたり感傷にふけるシーンはありませんが、すべてのテンポ設定、強弱変化などの操作には強烈な意味が込められており、その揺るぎない意志の力によって、音楽全体に独特の安定感をもたらしています。
 第2楽章は、ロヴィツキの「情に溺れない歌」の魅力が満載。音量パワーに頼らず、音の意志の力で共感の熱さが音の端々から溢れます。ロヴィツキの意図がほぼ完全に再現されていると思われるのが第3楽章。表情注入と構成力に一切ムラがなく、バレエの1シーンのような軽みとは違う純音楽的な味わいを引出しており、この手応え十分のテイストは他の指揮者ではなかなか見い出せません。
ロヴィツキの独特の解釈は決して独善的なものではなく、スコアを真摯に読み込んだ上で、その背後の意味を確信を持ってニュアンス化したものであることは、終楽章188小節のフォルティッシモの指示を忠実に慣行していることなどからも明らか。
 ただ残念なのは、オケがロヴィツキに敬意を払い、その意図を汲んで表現しているものの、団員の体に染み込むまでには至っておらず、ロスバウトの薫陶を受けた優秀なオケの技量も、特に両端楽章でやや散漫に聞こえること、SWRのCDにありがちな、オリジナルの放送用テープの音にステレオ的な広がりが加えて音が脆弱に響くことなどがマイナス要因となり、せっかくのロヴィツキの熱いこだわりがダイレクトに迫ってこない点。終楽章の追い込みでテンポを煽るのは良いとしても、それが興奮よりも慌ただしさが先に立ち、音楽がスケールダウンしているのも残念至極。ロヴィツキは元々重厚なサウンドを思考する人ではないので、表現の方向性は意に沿っていると思いますが…。
 もう少し時間を割いて録音に望むか、妙なマスタリングなど加えないオリジナルのサウンドのままCD化されていたら、これより数倍心に迫る演奏となっていたに違いありません。 【湧々堂・2022年12月】
第1楽章のツボ
ツボ1 低速テンポで、暗く濃密な表情を紡ぐ。クラリネットの弦の主導権を絶妙に入れ替える。
ツボ2 中庸のテンポ。音色は暗めだが、リズムがキリッと洗練されているので、悲しみに溺れる素振りは見せない。
ツボ3 スコアを遵守。
ツボ4 スラーは意識せず、スタッカートを優先してサクッと進行。
ツボ5 直前のテンポの落とし方が独特!直前の1小節のみを念を押すように噛みしめる。第2主題は全体を大きな呼吸で歌い抜く。
ツボ6 フォルティッシモは強調せず。
ツボ7 かなり長いスパンでテンポを落としす。ピチカート直前の弦の繊細な響きも印象的。
ツボ8 テンポこそ標準的だが、一音ごとに余韻を感じながら歌うスタイルは独特の憂いを伴って心に訴えかける。
ツボ9 インテンポのまま進行、16分音符は明確に聞こえる。コーダのリテヌートが恐ろしく入念!
第2楽章のツボ
ツボ10 弦の導入は、全体に大きな弧を描く描くのではなく、一音ごとに丹念に入アンスを注入。ホルンは破綻もなく丁寧に拭いているが、テンポを持て余し気味でニュアンスが平板。
ツボ11 パワーの爆発よりもl哀愁味を優先。
ツボ12 はっきりとテンポを上げて別世界を展開するが、クラリネットが自らの技術に酔っているような能天気ぶり。
ツボ13 直前に猛烈に加速。ピチカートからは再びテンポを戻すがハーモニーのバランスが悪い。
ツボ14 ロヴィツキの確かなルバートのセンスが光る。ロシア系指揮者に多い爆発ではなく、常に深い情念を湛えたエネルギーの増幅を見せる。
ツボ15 細い音で繊細さをアピールするのではなく、明確に音像を刻印。特に低弦の受け答えにもはっきりと主張を持たせるのがロヴィツキらしい。
第3楽章のツボ
ツボ16 テンポを落とす。
ツボ17 ややテンポアップするが、軽妙さを狙わずに、各声部の連動の妙で魅了。テーマの再現直前でこんな丁寧なリテヌートを行った例は他にないのでは?
ツボ18 見事な美しいラインを形成!
第4楽章のツボ
ツボ19 威厳に満ちた進行。テンポは標準的。
ツボ20 ホルンは裏方だが、しっかり響いている。
ツボ21 テンポはやや遅め、ティンパニは58小節頭にアクセントを置き、その後はクレッシェンドなしで一定音量。74小節、76小節はテヌートを施している。
ツボ22 ほとんど無視。
ツボ23 ことさらコントラバスを強調せず淡々と進行するが、響きの凝縮力が高いので、音楽が弛緩することはない。
ツボ24 若干テンポアップするが、オケの方のギアチェンジが甘い。
ツボ25 極めて控えめ。
ツボ26 ここも直前で急激にテンポを落とすが、ここでもオケの反応が少し鈍い。
ツボ27 もう少し切迫感が欲しいところ。トランペットがやや弱腰のせい?
ツボ28 8分音符は本来の音価よりやや長め。トランペットがわずかににクレッシェンド
ツボ29 ハリある弦の響き!威圧的な力感ではなく精神の効用の音化に徹している。
ツボ30 弦もトランペットも明確に音を切っている。トランペットがやや投げやりな吹き方をしているのが興ざめ。
ツボ31 改変なし
ツボ32 ホルンの響きは上滑り気味。
ツボ33 痛快なアッチェレランド。ただ音楽自体が軽くなってしまった感は否めない。

チャイコフスキー:交響曲第5番
ヴィトルド・ロヴィツキ(指)
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
DANTE
LYS-562(6CD)
録音:1967年(?)  【ステレオ録音】
演奏時間: 第1楽章 14:25 / 第2楽章 12:20 / 第3楽章 6:15 / 第4楽章 12:31
原盤LP:muza- SX1369
“西側の解釈とは一線を画すロヴィツキ独自の屈折美!”
DANTEの他のCD同様、これも「板起し」復刻。しかももとになったLPは最良のものとは思えず、弱音の部分でのノイズ感は著しく興を殺ぎます。したがって、手持ちのLPも併せて聴いた上で、この録音の価値を判断せざるを得ませんでした。まずこのチャイ5は、DGの録音ではそれほど感じなかったオケの基本性能と使用楽器の質の低さが表面化してしまっているのが残念。ニュアンスと言っても、素朴としか言いようがない部分が多いのです。しかしながら、社会主義体制下でのこの録音には、その閉鎖性ゆえに発酵されたと思われる独特の切迫感と、他に類を見ないフレージングとダイナミズムが息づき、決して軽くあしらうわけにもいきません。第2楽章の横溢する歌の数々はどれも不器用ですが、一切嘘がなく、第3楽章も優雅なワルツとは程遠く、まるで晩年のケーゲルのような不思議な屈折感が漂っています。終楽章の第1主題の弦の露骨なテヌート処理や、最後の全休止の前後の空前絶後のダイナミズムは、ロヴィツキのアクの強い個性と劇的な音楽作りを如実に示しています。特に最後の全休止以降の全体が一丸となっての灼熱の進行は、全チャイ5録音の中でも最も心を打つものといえます。ロヴィツキの録音はポーランド時代だけなく、西側での録音も正規盤として復刻されることを熱望して止みません。
第1楽章のツボ
ツボ1 テンポは標準的。クラリネットは響きそのものは素朴だが徹底的に暗い。弦の響きはノイズが混じる。
ツボ2 弦の刻みは最初はテヌート気味。ここでも木管は朴訥ながら、哀愁が漂う。
ツボ3 特に特徴なし。
ツボ4 スラーの2音は、アタックがやや鋭角的。終楽章資源の響きはざらつき気味。
ツボ5 最初のクレッシェンドが、スフォルツァンド効果も効いて美しいラインを描く。
ツボ6 強弱の振幅がほとんどなく、呼吸も深くはないが、なぜか切実に響く。
ツボ7 巧みはなく、響きは散漫。
ツボ8 アインザッツが微妙にずれたりするが、一音ごとに込められたニュアンスが心から語り掛けてくる。テンポはほとんど落としていない。
ツボ9 テンポはほとんど変えない。16分音符はほとんど聞えない。最後にティンパニがいきなりバランスを破って連打するのには、ロヴィツキの独特のダイナミズムを感じる。
第2楽章のツボ
ツボ10 こういう弱音部ではノイズの多さと音飛び寸前のような音の途切れが目立ってしまい、深々とした雰囲気を壊してしまう。ホルンも埃まみれの音が何とも残念。技術的に安定しており、そのそのノイズを差し引くと、豊かな歌を感じることができる。クラリネットの音色が異様に太い。
ツボ11 呼吸が大きく羽ばたかず、どこか屈折している。
ツボ12 テンポがかなり速くなる。ャイ5録音史上最速クラスだが、続く運命動機の斉奏のテンポと完全に連動しているのが見事。
ツボ13 間髪を置かず、前の速いテンポのままピチカートが飛び込んでくる。直後にリタルダンド。
ツボ14 最初から速めのテンポで直進。フォルテ4つの頂点で大きくルバートして、すぐに高速に戻るのがユニーク。
ツボ15 弱音を強調せず素朴に歌う。
第3楽章のツボ
ツボ16 ややテンポを落とす。フルートが入る際は、より大きくテンポを落とす。
ツボ17 オケ性能の悪さばかりが目立つ。
ツボ18 コーダは最後にフォルティッシモが登場するまでピアニッシモが続くが、260小節と261小節の頭にあえて表記されているピアニッシモを意味深く生かしている例として稀少!
第4楽章のツボ
ツボ19 一音ごとの切込みが鋭角的。テンポは標準的。続くトランペットの響きが意味深い!
ツボ20 ホルンは裏方。
ツボ21 最初のクレッシェンドをかなり長く引き伸ばし、渾身の力が込められている。弦の第1主題の4分音符の全てをテヌートで粘るのは古今を通じてロヴィツキだけ!再現部でも同様。感覚的にかなり奇怪に響き、その真意も不明だが、一種の方言的な味わいとして面白い。テンポはごく標準的なもの。
ツボ22 無視。
ツボ23 強力に押し出てはこない。ここでもクラリネットの素朴さが印象的。
ツボ24 テンポを一段速める。
ツボ25 これまた素朴な一打。
ツボ26 直前で急ブレーキを掛け、主部冒頭のテンポに戻す。
ツボ27 テンポは落ち着いたテンポで、威厳を醸し出す。音のアタックが鋭角的。
ツボ28 8分音符の音価は長め。しかも、最後の和音を壮絶にクレッシェンドするのは鳥肌もの!
ツボ29 そのクレッシェンドの高まりから間髪入れずに、弦が刻み出し、そのエネルギーを保持したままかなりの高速で直進。全体の響きも決死の輝きを誇り、全チャイ5録音の中でも特に感動的。
ツボ30 弦もトランペットも音を切る。特にトランペットの決然とした切り上げ方は痛快。
ツボ31 改変なし。
ツボ32 素朴に響いている。
ツボ33 546小節から超快速のインテンポで最後まで突進。この精神力の漲りも圧巻!


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