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レオポルド・ストコフスキー(指)NBC交響楽団 | |||||||||||||
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Guild Historical GHCD-2334 |
録音年:1942年11月29日 NBCスタジオ8H 【モノラル・ライヴ】 | ||||||||||||
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カップリング/ チャイコフスキー:序曲「嵐」(録音:1942年11月29日)、幻想曲「テンペスト」(録音:1943年3月7日) |
“数ある“ストコフスキー版チャイ5”の最高峰!” |
ご承知のとおり、ストコフスキーのチャイ5は非正規盤も含め多くの録音が存在するため、これらのコメントは今までずっと躊躇し続けてきましたが、ついに重い腰を上げざるをえない恐るべき録音が出現してしまいました!今後ストコフスキーの録音に関してはなるべく年代順に聴き直しながらコメントしていくつもりですが、おそらく後にも先にも、これほど彼の意思をオケが汲み取り、完璧に表現として完成しきった演奏には巡り会えないことでしょう。 最も有名なDECCAのステレオ録音をお聴きの方の中には、本来ならもっと凄いことが出来るはずだったのでは?というもどかしさを感じた方も多いことでしょう。不思議なことに、スタジオ録音、ライヴを問わず、またオケの技術の優劣を問わず、ストコフスキーが振るチャイ5はなぜかアンサンブルの縦の線が乱れている例が多く、これは他の作品にいてはあまり見られない現象です。おそらく、ストコフスキーのあの独特な指揮法、つまり打点は明確ながら、その前触れを示す運動がほとんどなく、いきなり打点をアタックする指揮は、優秀なオケでもなかなか慣れにくいものでしょうし、ましてこの曲には、他の曲以上に常識外の唐突なテンポ、強弱の急変を要求していまので、彼の一挙手一投足までを完璧に感知して、瞬時に音にすることは至難の技なのだと想像できます。私自身、今まではそうやって納得させた上で彼の個性的な解釈を楽しんできました。ところが、そんな妙な憶測など必要とせず、出てくる音の全てがとのかく凄い、そんな演奏がこうして存在していたのです!NBC響は言うまでもなく技術的に最高次元に達した素晴らしいオケですが、彼らをを鍛え上げたトスカニーニが突如辞任を発表し、急遽招聘されたのがストコフスキーでした。その背後に何があったか、いろいろ説があるようですが、ここはそれを検証する場ではありません。ただ、トスカニーニがストコフスキーを露骨に嫌悪していたことは事実のようですし、彼らの芸風を知る人なら、まさに水と油であることは創造がつくはずです。オケの事務局側の思惑はともかく、オケのメンバーは、トスカニーニとは全く違う個性に触れることに歓びを見出していたに違いありません。辛いものばかり食べていると甘いものが欲しくなるように…。持てる技術力の全てを出したというだけでなく、今まで眠らされていた、しかも彼ら自身も思いも寄らなかった欲求が堰を切って飛び出してどうにも止まらない、そんな雰囲気がこの演奏には満ち満ちているのです。したがって、ほとんどの客演指揮者との録音で感じる「トスカニーニの色の上にその指揮者の色を乗せる」といったイメージはなく、最初から最後まで紛れもないストコフスキー・サウンドに変貌しているのです。 そのサウンドの魅力と共に心底感じ入るのが、本物の呼吸感。ストコフスキー特有のあの吸い付くようにしなやかなフレージングには、決して外面的な鮮やかさだけでなく、心の奥底から感じきった結果に真の衝動が息づいています。例えば、第2楽章のホルンソロが終わってから一回目の山場を迎えるまでの迫真のフレージング!誰に真似できましょうか?逆にステレオ録音で聴くと、その外面的な演出ばかりが耳にこびり付きがちですが、こうしてバランスの良い放送モノラル音源で聴くと、彼の目指した音楽の内面に宿るものが焙り出されるような気がしてなりません。 【湧々堂】 |
第1楽章のツボ | |
ツボ1 | 第一音から、完全にストコフスキー色。クラリネットの音色にトスカニーニにはない艶やかさがある。主題結尾の付点2分音符をいちいちクレッシェンドする点や。21小説の冒頭のピアニッシモを無視し、明確に音を立ち上げるのは、後年まで一貫していた解釈。 |
ツボ2 | 弦は引きずり気味に陰鬱な雰囲気で開始し、木管もそれに合わせて開始しようとするが、42〜43小節でいささか先走りぎみになる。しかしすぐに両者が一体となり、濃密なフレージングを実行。注目は主題が弦に移行した直後!フレーズ冒頭を前打音風にしねらせ、甘味満点!この部分をここまでニュアンスがぶれずに表出され尽した演奏も珍しい。 |
ツボ3 | 一気呵成にフレーズを下降し、音量を弱めないのがストコ流。76〜79小節をカット。その後、第2主題が現れるまで一気呵成に駆け抜ける。 |
ツボ4 | これは個性的。ディミニュエンドで減衰するのではなく、下行フレーズで急激に弱音に転じ、コントラストを明確に施している。しかもデリカシー満点。 |
ツボ5 | ここも絶品、というより116から副主題が現れるまでの数秒間は奇跡的な出来栄え!直前で壮絶なアッチェレランドでパワーを放射した直後、この第2主題ではほぼ倍にテンポを落とし、冒頭のスフォルツァンドの効果を完璧に実現!強弱の振幅も渾身。弦のテクスチュアの透徹も見事と言うほかない。スコアには表記はないが、120小節冒頭でも再びスフォルツァンドを行うが、その直前の付点2分音符の音価を早めに切り上げ、エロティックなニュアンスを徹底演出! |
ツボ6 | 極限までテンポを落とし、吸い付くようなフレージング。アニマート部分はまさに恍惚境! |
ツボ7 | ここから急速に駆け上がりるが、直後の156小節で大きく減速。後にノーマン・デル・マーもこのスタイルを踏襲しているのが興味深い。 |
ツボ8 | 171小節冒頭でポルタメント。189小節あたりから大きくリタルダンドし、181小節結尾でポルタメントを掛けながら一旦終息。その先は展開部に入るまで一気呵成に突っ走る。 |
ツボ9 | 猛烈な速さにつき、冒頭の16分音符は不明瞭だが、この高速進行の緊張感と、501〜502小節での大きなテンポ・ルバート&クレッシェンドを挟んで、次第にエネルギーが地面に浸透していくような終息へと向かうドラマティックな展開は、アンサンブルの完璧さと共に、ストコフスキーの同曲録音の中でも群を抜いた素晴らしさ。 |
第2楽章のツボ | |
ツボ10 | 弦の導入では、聴き手に弱音を意識させるのは、なんと最初の一音のみ。ホルンはリリシズムを讃えたフレージングが魅力的。クラリネットはかなり濃密に絡みつくが、そのハーモニーにストコフスキーならではの色彩が滲み出る。 |
ツボ11 | 事前に急加速を掛け、その極限に音量の頂点も合体させる。ストコフスキーは、この手法をこの曲の随所で用いているが、空回りに終わっている箇所が全くない! |
ツボ12 | やはりアゴーギクが独特だが、音色、音量共に、ニュアンスの広がりには繋がっていない。クラリネット奏者の力量不足か? |
ツボ13 | 空前絶後のパワフルさ!しかも気負いを感じさせずに大音量でホールを響き渡らせるストコフスキー、ならびにNBC響の技量にただ呆然とするばかり。しかも突如、110小節で最弱音にすり替わる鮮やかさ!また、この後の第2回目の山場を築くまでの熱いカンタービレの連続も聴きもの。 |
ツボ14 | 142小節冒頭ではそれほどパワーを感じさせないが、フォルテ4つの頂点を完璧に見据えた設計と進行の素晴らしいこと!その頂点では例によってトランペットによる機関銃のような連続音の付加があるが、それだけが突出せずに全体と見事にブレンドした響きとなっている点も注目。 |
ツボ15 | ここでの弦の高音パートと低音パートは、それぞれに男女の役割を与え、愛のいとなみのように聞こえる。ストコフスキーは全楽章を通じて弱音をめったに用いていないが、ここでのヴァイオリンの最弱音は、まさに満を持して現れた、抜群の説得力! |
第3楽章のツボ | |
ツボ16 | 誰よりも大きくテンポ・ルバート。しかもしばらく遅いテンポのまま進み、繰り返し時には、強弱の変化も与えるという凝った演出。 |
ツボ17 | アクセントの位置にご注目!この部分のスピード感をリアルに表出するために以下に効果的なアクセントであることか! |
ツボ18 | ステレオ録音から判別できるような明瞭さは感じようもないが、一本の線で緊密に連携しているのは感じ取れる。 |
第4楽章のツボ | |
ツボ19 | 強固な意志を湛え、スケール感のある導入。ピチカート開始と共に加速。 |
ツボ20 | ホルンはほとんど裏方だが、オーボエを中心とした主旋律に、これ以上不可能なほどの太い筆致を求めており、それを完璧に敢行。 |
ツボ21 | 他の録音同様、直前の52〜54小節はカット。56〜58小節は、管パートを全てカットして弦楽のみに変更。ティンパニはクレッシェンドを行わず一定音量でトレモロ。全精力を弦に傾け冒頭で一撃、その後クレッシェンドなしに最後までトレモロ。テンポは極めて低速。70小節で他の録音で付加されているピッコロはここでは登場しないが、70小節冒頭で大太鼓の一撃は追加あり。80小節あたりから加速を開始し、82小節からまさにヴィヴァーチェ・モードに突入。82小節冒頭にも大太鼓の一撃あり。 |
ツボ22 | 完全に無視。しかしその代わりに、ストコフスキー自身のフレージングのセンスの高さを窺わせる結果となっている。 この後、他の録音と同様に184〜199小節までカット。 |
ツボ23 | コントラバスのみを強調はしていないが、量感十分。 |
ツボ24 | 80小節と同様の高速テンポを設定するが、すぐに304小節で大きくテンポ・ルバートし、TempoTから再び高速へ。 |
ツボ25 | 響きは鈍いが、アクセントとしての役割は果たしている。 |
ツボ26 | 80小節と同様の高速テンポに再び戻る。 |
ツボ27 | 意外にも金管は抑え気味にして、弦の細かい躍動を前面に出す。 |
ツボ28 | 他の録音と同様に、全休止前後の467〜472小節をごっそりカット。 |
ツボ29 | 素晴らしい張りと輝き!テンポの伸縮感の独自さにも要注目。特に478小節の下降フレーズでの微妙な減速は、メンゲルベルクに代表されるようなアゴーギクの概念とは性格を異にしており、より生々しく肉感的に響く。 |
ツボ30 | トランペット以外の管楽器パートを全てカット。その分、響きが急激に薄くなることは否めないが、リズムのエッジが鮮明に立ち上がり、孤軍奮闘するようなニュアンスを醸し出している。弦もトランペットも明確に音を切っている。 |
ツボ31 | 完全に聞き取ることは不可能だが、499小節から501小節にかけては、トランペットを完全休止(もしくは最弱音)し、502小節に入ってから少しだけ浮上させる。この502小節からのトランペットの音の運びはスコアどおりと思われる。その間、一貫して弦を前面に立てて、502小節ではフルートを強調。503小節の2つの2分音符のスフォルツァンドは、それぞれクレッシェンドに改変。504小節冒頭で、大太鼓の一撃を追加。 |
ツボ32 | 極めて明瞭。548〜549小節をスラーで繋ぐ。 |
ツボ33 | プレスト部分は演奏可能な限界を行く超高速。546小節で一旦落ち着くが、再び加速。557〜559小節をカットし、最後の2小節は荘重なテンポで幕を閉じる。 |
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