|
ジョージ・セル(指) |
ケルン放送交響楽団 |
|
EMI
CZS-5759622(2CD)
|
録音:1966年6月24日、クラウス・フォン・ビスマルク・ザール【ステレオ・放送ライヴ】 |
|
演奏時間: |
第1楽章 |
15:48 |
/ |
第2楽章 |
13:26 |
/ |
第3楽章 |
6:00 |
/ |
第4楽章 |
10:52 |
|
カップリング/ディーリアス:「イルメリン」前奏曲(クリーヴランドO.'56*)、ロッシーニ:「アルジェのイタリア女」序曲(クリーヴランドO.'67)、ワーグナー:「マイスタージンガー」第1幕前奏曲(NYO.'54*)、ヨゼフ・シュトラウス:ワルツ「うわごと」(
クリーヴランドO.'62)、オーベール:「フラ・ディアヴォロ」序曲(クリーヴランドO.'57)、ドヴォルザーク:交響曲第8番(クリーヴランドO.'70)、ドビュッシー:交響詩「海」(ケルンRSO.'62*)
*=モノラル録音。チャイコフスキー、ドビュッシー、ディーリアス、ワーグナーが初CD化。 |
““ローカル色を一切排除し、セル独自の美学を貫徹!” |
この「チャイ5」の骨太な推進力と骨格の逞しさの前では、名盤の誉れ高いスタジオ録音も霞むほど!1〜3楽章までは綿々とした憂いと激情を見事に交錯させ、終楽章で遂に高潔な精神を一気に炸裂。3分47秒の奇跡的なフォルテの一撃、コーダの息を呑むテンポ設定など、セル以外に実現不可能な至芸の連続です。なお終楽章では、ケンペンのように展開部の210小節から再現部の315小節までをバッサリ割愛する短縮版を採用(従って演奏時間10分弱)しているのが興味深く、逆にエピック(SONY)盤で聴かれたコーダのシンバル追加は、ここでは行っていません。ケルン放送響の各セクションの技術とセンスの高さも魅力です。カップリング曲も、セルのお気に入りだったディーリアスの鼓膜に吸い付くような感触がセルのイメージからしてあまりにも意外ですが、これが泣かせてくれます!
ワーグナーは、後年のステレオ録音よりもアーティキュレーションが厳格な上に音のカロリー価が高く、男性的な力感が満点!しかし、何度聴いても鳥肌が立つのは極美のヨゼフ・シュトラウス!カラヤン等の巨匠が良く取り上げる名曲ですが、この全てのニュアンスがツボにはまりき切ったイマジネーション豊かな名演を最後に置くとは、なんともニクイ演出! ドビュッシー、ワーグナー、ディーリアスはモノラルですが、丁寧なマスタリングでセルの芸風を心行くまで堪能できます。 |
|
第1楽章のツボ |
ツボ1 |
セルらしく、情に溺れずに正確な拍節を貫き、太い音色で吹き通す。主題結尾をリタルダンドするが、ここにでも厳格さを絶やさない。。 |
ツボ2 |
意外なほど優しく弦を刻んで、憂いを湛える。テンポも先へ進むのを拒むかのよう。 |
ツボ3 |
楽譜どおり。 |
ツボ4 |
ほんのわずかにスタッカートを施し、優しい風情を漂わす。 |
ツボ5 |
テンポこそインテンポだが、高潔なフレージングが心に迫る。 |
ツボ6 |
呼吸を感じさせ、フォルティッシモに達してからは、声高にならず、情念を搾り出すように歌う。 |
ツボ7 |
ピチカートの一つ一つに意味を込め抜くと共に、ここから拍の刻みに重量感が増す。 |
ツボ8 |
豊かな呼吸、そしてなんと高潔なカンタービレ!表面的な表情付けの入り込む余地なし。高潔なカンタービレ! |
ツボ9 |
この直前からテンポを速め、後はそのままインテンポ。しかし、決して機械的に進行せず、リズムそのものに充分な憂いを保ったまま重厚なコーダを築く。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
全体をレガートで覆い尽くすのではなく、一音ごとに段階的に強弱を施し、微妙な感情の揺れを表出。ホルンは、技術的にこれより精度の高い演奏もあるが、音楽を感じきった歌いまわしが魅力的。クラリネットとの絡みも絶妙。オーボエがべらぼうに巧いが、明るすぎか。 |
ツボ11 |
大きく山場を築くが、小節ごと(56〜58小節)に微妙に強弱とテンポのニュアンスを施す(偶然か?)のが印象的。 |
ツボ12 |
テンポは直前から緩めて、自然にトーンを落とす。クラリネットは最高に巧い!ファゴットへ移る直前のディミニュエンドは、これ以上望めない! |
ツボ13 |
凄い重量感を湛えたピチカート。続く117小節目からのクラリネットを太い音色で浮き立たせるのが特徴的。 |
ツボ14 |
セルのアゴーギクのセンスが大全開で、凄い緊張感とほとばしる共感を惜しげもなく飛翔させる。この素晴らしさは、チャイ5録音史上最高と言いたい! |
ツボ15 |
束の間の安らぎのように、かすかな晴れやかさを感じる音色とフレージング。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
出だしで若干テンポを落とし、フルート、クラリネットが加わる直前でもテンポを落とす。弦の動きもそれに合わせているから、明らかにセルの指示によるもの。 |
ツボ17 |
全パート満遍なく発言力を発揮。特に低弦の意味深さに注目。 |
ツボ18 |
相当セルにしごかれたのかもしれない。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
ムラヴィンばりの強靭な切り込み!主部への導入というよりすでに本編のような荘厳さ。 |
ツボ20 |
控えめながら、しっかり浮き出している。後半に行くに従って突出が強くなる。 |
ツボ21 |
弦が入るまでかなり長くトレモロを引っ張る。58小節と66小節、共に一撃を加える。 |
ツボ22 |
完全無視。むしろディミニュエンドする。 |
ツボ23 |
210小節から再現部の315小節まで演奏カット。 |
ツボ24 |
- |
ツボ25 |
- |
ツボ26 |
- |
ツボ27 |
大きくテンポを落としておいて、436小節からややテンポアップ |
ツボ28 |
凄い技が登場!462小節からガクッとテンポを落としておいて、ティンパニのトレモロで極限まで高揚させた後は、自然と複付点2分音符が長めに伸びることになり、結果的に8分音符が本来の音価どおりの正確な長さで奏でられる。しかも、その8分音符をスタッカート気味に短く切って、厳格さを誇示する念の入れよう!クリーヴランド盤でもこのテンポ変動は見られるが、ここまで入念ではなかった。 |
ツボ29 |
輝かしい進軍ぶり。ホルンが一貫して強靭に背後を支えている。 |
ツボ30 |
直前の弦のフレージングと完全に同じ音価で統一!セルなら当然だが…。 |
ツボ31 |
改変型で、それを強調するようにテンポも落とすのはクリーヴランド盤と同じだが、シンバル追加は行っていない。 |
ツボ32 |
トランペットとのバランスが良好。 |
ツボ33 |
重厚かつダイナミックな締めくくりを完全なインテンポで築き、尋常ならざる手応え! |