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外山雄三(指) |
大阪交響楽団 |
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King International
KKC-2702(1CD)
税込定価
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録音:2018年11月2日 ザ・シンフォニーホール・ライヴ |
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演奏時間: |
第1楽章 |
15:31 |
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第2楽章 |
1:/21 |
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第3楽章 |
6:34 |
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第4楽章 |
14:40 |
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カップリング/ボロディン:だったん人の踊り |
“準備不足か共感不足か?コンセプトが一貫せず、老練技も瞬間芸に終始” |
今や重鎮となった外山雄三が作曲家としても視点も盛り込みながら、この作品の新たな側面を切り開いてくれることを期待しましたが、結果は一言で言って中途半端。仙台フィルを振ったモーツァルトなど実に素晴らしかったのに、どいういうことでしょう?そもそも外山自身がチャイコフスキーの指揮を心から熱望していたのか疑いたくなるほど、表現に一貫性がないこと、録音のせいか人数のせいか団員の問題なのか、弦(特にヴァイオリン)が弱いこと、等のネガティブな要素が最後まで付き纏うのです。
第1楽章冒頭のクラリネットのニュアンスは、全体のイメージを象徴する重要な要素です。そこに響きの練り上げが感じられないことから嫌な予感がしたのですが、第2主題直前の金管が活躍シーンではテンポもリズムの重心も重くなり、急にロシア色を全面に立てて晩年のスヴェトラーノフ張りに高粘度の進行を見せるのには面を喰らいます。その響きは実に勇壮ですが、弦が完全に埋没しているので説得力は半減。特に10:52以降などヴァイオリンが背後に回ることなどあり得ません。その後も、ティンパニと金管が映える箇所は感動的ですらあるのですが、すぐに幻滅するシーンがやってくるのには辟易するばかりです。
第2楽章では独特のアゴーギクにこだわりを見せますが、それが常に唐突で、全体とのバランスも良好とは言えません。大きくテンポを落としたら直ぐさま元のテンポに戻す癖が散見されますが、そんなに余韻に浸るのが怖いのでしょうか?
第3楽章は最も安心して音楽に浸れる楽章。ホルンのゲシュトップ効果や終結部冒頭のヴィオラ音型の活かし方は全く見事で意味深く響きます。
終楽章は再び問題あり。何と言っても主部冒頭のテンポの遅さはチェリビダッケも顔負けで、しかも明確にロシア色を意識した濃厚テヌートの徹底ぶりは大胆不敵!5:26からの金管咆哮シーンも、ロシア人以上に土臭さを煽りまくり、終結部直前でも空前絶後のルバートを見せるなど、どれも心震えますが、随所に顔を出す弦の弱さとフレージングの間の悪さがいちいち興を削ぐのです。終結部直前では、全休止を挟み、それまでの大スケール音像を受け止めるには眩いばかりの輝かしい音を鳴らさなければ釣り合いが取れないわけですが、案の定、ティンパニも弦も貧弱。もちろん全てに完璧を求めているのではなく、外してはならないツボで愕然とさせられることがこれほど頻発すると、ただ閉口するばかりです。【湧々堂】 |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
甘さを拒否し、イン・テンポでぶっきらぼうなフレージング。各パートが同音量で聞こえ、決してバランス良好とは言えない。 |
ツボ2 |
同様に。やや早めのテンポで淡白に進行。この時点ではムラヴィンスキーのスタイルを目指しているように感じさせる。 |
ツボ3 |
弦の響きは芯を欠き、貧弱な鳴り方。スラーの箇所も含めてニュアンスの焦点が定まらない。 |
ツボ4 |
ここも同様。弦の人数が少ないのだろか?とにかく弱々しい。 |
ツボ5 |
第2主題の冒頭音を思い切り引き伸ばす。しかし、そこで築いたニュアンスが持続せず、一見濃厚なアゴーギクも説明調。 |
ツボ6 |
スコアのスフォルツァンドの効果を最大限引き出そうと試みているが、成果は中途半端。呼吸も伴っていない。そもそもリハーサルをしたのかと疑いたくなる。 |
ツボ7 |
わずかにテンポ・アップ。 |
ツボ8 |
低弦と高弦を上手く対話させているが、ここもニュアンスが曖昧。甘い表情を出すことをどこか恥ずかしがっているかのよう。 |
ツボ9 |
相当遅いイン・テンポのまま進行。重戦車モードのコンセプトが明確だが、これまた弦がペラペラで閉口するばかり。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
前楽章の最後を重厚に締めたにもかかわらず、この冒頭部を少しも粘らずに通り過ぎるのが疑問。ホルンは堅実な歌い回しが好印象ながら、一部で音程がふらつくのが残念。 |
ツボ11 |
素晴らしい響き!57小節の直前で一瞬間を開けるのが独特の効果をもたらす。ただその後にニュアンスが持続しない。 |
ツボ12 |
クラリネットの入りのタイミングが、緊張からか微妙に早い。技術的には普通。続くファゴットはたどたどしい。共に、あまり歌が感じられない。 |
ツボ13 |
直前の勇壮極まりない響きから一転して、貧相な響き。8:15付近のテンポ操作は個性的だが、あまりにも唐突でピンポイント過ぎる。 |
ツボ14 |
直前の音をを引き伸ばした上での突入も含め、見事な進行!ニュアンスのムラもここではほとんど見られない。。これで、もっと弦が濃厚に下支えしていたら鳥肌モノの感動が生まれたであろう。 |
ツボ15 |
洗練されたフレージングを目指したのかもしれないが、心に迫るものがない。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
ほとんどテンポを落とさず進行。 |
ツボ17 |
アンサンブルの精度は高くないが、素朴な戯れ感が表出される。 |
ツボ18 |
器用な連動ではない。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
テンポはやや遅め。堅実な楷書スタイルだが、響きに安定感がある。 |
ツボ20 |
木管の主旋律の下支えに徹している。トランペットが煩い! |
ツボ21 |
ティンパニは、ほぼスコアどおりだが、驚くべきはチェリビダッケも顔負けの超低速テンポ!しかも、その確信に満ちた響きは勇猛そのもの!!しかしそのテンポのままで先まで進めるはずがなく。82小節からはややテンポアップ。その切り換え技が弱い。その後、再び低速モードに戻すもの何ともぎこちなく、設計力の弱さを覗かせる。 |
ツボ22 |
アクセントを活かしているような無視しているような、どっちつかず。 |
ツボ23 |
量感が不足気味だが、許容範囲。 |
ツボ24 |
ややテンポアップ。 |
ツボ25 |
かなり克明な強打だが、どこか空虚。 |
ツボ26 |
主部冒頭の超低速テンポ。 |
ツボ27 |
恐るべき低速による咆哮! |
ツボ28 |
空前絶後のルバートは圧巻!なぜこのモードを全体に一貫させられなかったのか、返す返すも残念。 |
ツボ29 |
その壮麗を極めた響きを受け止めるには、ティンパニも木管も、そして例によって弦もあまりにも弱々し過ぎる。 |
ツボ30 |
弦の音は、475小節では切っているが、477小節出はレガート風に繋げる、その弾き分けの違いが意味不明。ロシア色を際立たせるためにテヌートを多様路線を決め込んだのなら、ここも徹底して粘着質に徹するべきだったのではないだろうか?テンポも極限まで落としてその下地は出来ているのだから。 |
ツボ31 |
トランペットは一貫してロシア風のレガート。改変なし。この箇所の響きは、古今を通じて屈指の素晴らしさ!ところがその直後に主役が弦に代わった途端、なんとも腰砕けの音楽が流れる。この演奏が、いかにトランペットと打楽器に頼ったものであるか露呈してしまった。 |
ツボ32 |
トランペットが輝かしい分、ホルンが弱く感じる。 |
ツボ33 |
ほとんどインテンポによる堂々たる締めくくり。565小節の4分音の頭にティンパニのアクセントが入るには前代未聞で、これが絶妙の効果を上げている。 |