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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン |
ダラス交響楽団 |
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DSO Live
DSOLIVE-002
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録音:2009年1月15-17日ダラスマイヤーソン・シンフォニー・センター,マクダーモット・コンサート・ホール 【デジタル・ライヴ】 |
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演奏時間: |
第1楽章 |
13:58 |
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第2楽章 |
12:12 |
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第3楽章 |
5:40 |
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第4楽章 |
11:05 |
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カップリング/チャイコフスキー:イタリア奇想曲 |
“心に響く爽快さ!ズヴェーデンの音楽性と指揮技術の高さに脱帽!” |
ズヴェーデンがダラス響の音楽監督となった最初のシーズンにライブ演奏。ズヴェーデンは今までの録音からも瑞々しい感性の持ち主だということは十分認識てしいたつもりでしたが、さり気なく加えられる個性的なアプローチが「あざとさ」に陥ることなく、彼の正直な感性の結晶として作品にスッと融合させるセンスは只事ではないということはつくづく痛感させられました。チャイコフスキーだからロシア的な香りを湛えねば、とか感傷的な色彩に染めなければ、といった「お約束」は全く念頭に置かず、スコアから感じたままの音楽をストレートにぶつけ、しかも独りよがりではない洗練された美しいフォルムに仕立てあげる力量を持つズヴェーデンはまさに指揮者の中の指揮者と言えましょう。
ヴァイオリニスト出身だけ合って、弦の歌わせ方に対するこだわりも相当なものですが、オケはそれを完全に理解し消化しきっているので、そのこだわりだけが突出することなく音楽的ニュアンスに結実しているのです。第3楽章冒頭はそれ最も分かりやすい例でしょう。
この作品に対するズヴェーデンのアプローチが最高に凝縮されているのが終楽章。イン・テンポを基調とした爽やか路線ながら、確実に聴き手の心に迫る繊細なニュアンスが散りばめられ、進化を遂げた良い意味での現代感覚スタイルに心洗われる思いです。そして忘れがたいのが、後半のトランペットの信じ難い輝き!過去のどんな名演奏でも、ここまで吹ききった演奏は皆無です!!
カップリングのイタリア奇想曲も名演! |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
2本のクラリネットの音色の幅はあまり感じさせず、徹底的に暗い情感を表出。基本的にイン・テンポだが、フレーズ結尾のリテヌートのセンスが抜群に良い。 |
ツボ2 |
標準的なテンポ。リズムを弾ませすぎずに洗練された雰囲気を醸し出す。陰りのあるニュアンスも取ってつけたようなものではなくハイセンス。クラリネットとファゴットのブレンド感も良好。 |
ツボ3 |
スコアに忠実だが、強弱のコントラストが実に自然で、スコア上の表記の意味を再認識させられる。 |
ツボ4 |
スコアどおり。 |
ツボ5 |
冒頭スフォルツァンドが効果的に効き、しかも直後のクレッシェンドの求心力の高さに心奪われる。 |
ツボ6 |
スコアの強弱指示に忠実だが、常に心がこもり繊細。フォルティッシモは声高に歌いあげない。 |
ツボ7 |
ここでややテンポアップ。ピチカートは弱音寄りで繊細に駆け上がる。直後の管楽器のみによる合の手でクレッシェンドをさり気なく付加。こういったレスポンスの良さが随所に感じられるのがこの演奏の特徴。 |
ツボ8 |
ほとんど間髪入れずにイン・テンポで滑りこむが、これまた強引さの全くないセンスの高さを痛感。現代的と言ってしまえばそれまでだが、常に心のときめきを忘れないフレージングは普遍的な魅力を誇る!なお、この副次主題は再現部においては6小節目でスコアにないピアニッシモに変更している。 |
ツボ9 |
冒頭の16分音符は微かに聞こえる程度。テンポは変化させずそのまま直進。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
冒頭の弦は、厚ぼったい響きではなく透明なテクスチュアを維持。ホルンは技術性は高いが、音楽的には単調。 |
ツボ11 |
爆発的な音量を避けて、全体の息の長いフレージングを大切にするスタンスが見事に結実。 |
ツボ12 |
このクラリネットは絶品!やや遅めのテンポながら間延びせず、余韻を感じながら美しい音色で丹念に歌う。 |
ツボ13 |
強烈な主張はない。縦の線が美しく揃い、優しい風情が漂う。 |
ツボ14 |
かなりの高速!音量のパンチに頼らず、絶妙な緩急を交えながら頂点へ一途に掛け上げる精神的な飛翔が見事! |
ツボ15 |
冒頭は薄いヴェールを敷き詰めたような感触の最弱音で開始し、やや速めのテンポで一息でフレージング!作為性を一切感じさせずにこういう美学を当然のように貫徹できる感性に脱帽。この部分の最高演奏の一つ。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
わずかにテンポを落とすが、フレーズの推進力を損ねない程度に抑制する配慮が窺える。 |
ツボ17 |
この中間部は特に特徴はなく、そつなくこなしている印象。 |
ツボ18 |
やや遠くで響く感じだが。そこそこ美しい。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
今まで見せなかった威厳あふれる表情だが、高圧的ではなく、フレージングには常に瑞々しさが宿っている。テンポは標準的。 |
ツボ20 |
ホルンは全体のバランスの中で要所要所で浮上。管楽器のみならず弦の動きにも配慮した有機的なニュアンスを表出している例は稀。 |
ツボ21 |
ティンパニは完全にスコアどおり。テンポは超高速。しかし猛獣のような肉感とは異なる爽やかさが際立つ。 |
ツボ22 |
アクセントは無視。 |
ツボ23 |
力感も表現意欲も十分に伝わってくる。 |
ツボ24 |
インテンポ。 |
ツボ25 |
音の芯が曖昧。 |
ツボ26 |
インテンポ。 |
ツボ27 |
ことさら高速ではなく、神の警告のような物々しさに傾くこともなく爽快な進行。 |
ツボ28 |
8分音符の音価はやや長め。 |
ツボ29 |
やや速めのテンポ。これ以降はズヴェーデンの音楽性の全てを結集したような、感興に満ち溢れたシーンが続く。まず最初のトランペット・ソロが決然とクレッシェンド!「これで全てのモヤモヤは忘れようぜ!」といったメッセージ性まで発するとは全く予想外。このトランペットは最後まで徹底して意志の強さを感じさせ、史上空前の感動的演奏と言いたいほど。弦のフレージングは、ヴァイオリン出身のズヴェーデンの面目躍如たるハリと輝きがまやゆいばかり。 |
ツボ30 |
弦は音を切るが、トランペットは高らかにレガート。 |
ツボ31 |
改変なし。 |
ツボ32 |
明瞭な響き。しかもあまりにも巧すぎて鳥肌! |
ツボ33 |
全く粘らず、最後までイン・テンポを貫徹し、颯爽と締めくくる。 |