BRIDGE
BCD-9133(2CD)
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ヴァイオリン協奏曲、交響曲第1番、管弦楽のためのパルティータ、
「ヘンリー5世」〜“彼女の柔らかい唇に触れて別れよう”、“ファルスタッフの死” |
バール・セノフスキー(Vn)、サー・ウィリアム・ウォルトン(指)ニュージーランドSO |
録音:1964年(モノラル・ライヴ) |
“音質も最高!セノフスキーの神々しい技巧とウォルトンの感動的な指揮芸術!” |
バール・セノフスキー(1925-2002)はアウアーの孫弟子にあたる名手。この協奏曲を献呈されたハイフェッツはアウアーの弟子ですから、セノフスキーにとって浅からぬ因縁を持つ曲と言えるのでしょう。とにかく最後まで一貫して気迫が凄まじく、テクニックは兄弟子のハイフェッツも震撼させかねない全く隙のない冴え渡り方で、しかも輝かしい美音の大放射!この曲の容量の限界まで持てる感受性の全てを影し尽くしています。第1楽章冒頭のただでさえ甘美なテーマをキューッと胸を締め付けるその美音に恍惚!十分にむせび泣きながら自らは厳しく律する精神力が伝わるので、感銘もひとしおです。曖昧さを許さないフレーズ表出を支える意思の力、特に高音域の伸びで見せる精神的な充溢ぶりも鮮烈です。第2楽章は求心力の高さと共に更に深い没入を見せ、終楽章では弓圧を変幻自在に操りつつ、激情のうねりを徹底表出。最後の8:56以降のオケとの熱い一体感と共に迫る壮絶な切り込みは、脳髄直撃!テーマを完璧なフォルムで再現する箇所の緊迫感にも言葉が出ません。伴奏の域を超えたウォルトンの指揮とオケの巧さにも唖然。そのことを最も痛烈に感じるのが「パルティータ」で、この曲の凄さをまざまざと突きつける妥協のない表現力の応酬です!第1曲目は単に豪奢な音の饗宴に止まらず、灼熱の精神が漲り、全ての音が極度に激高しているにもかかわらず、全く破綻を見せないオケのテクニックとスタミナも驚異的です。作曲家の自作自演は、聴き手を感動させようとするよりも、自分のイメージを引き出すのに専心して、ドライな後味しか残らないことも多いですが、第2曲でのエキゾチックな空気と色彩の生々しい表出力は、オーケストラを真に知り尽くし、音楽を心から愛してやまないウォルトンの息づかいをダイレクトに感じることができます。終曲での生命の塊と化した強固なリズムの打ち込みも、手に汗握ります。なお、録音はモノラルではありますが、音に奥行きを感じ、Orfeoのモノラル後期の放送音源のような完璧なバランスが維持されているのが驚異で、この演奏の凄さを伝えきっているのも嬉しい限りです。 |