赤いオルフェオ・レーベルの初期のリリースの一つ。曲目と演奏者のイメージから言って当然かもしれませんが、初発売時にはさっぱり売れなかったCDです。しっかり聴いたのはそれから数年後のことですが、これが実に素晴らしい!
まずオネゲルでの、人間的な温かさに溢れる息づかいがなんとも魅力的!第1楽章は、鋭利な響きを叩き付けるのに終始せず、十分に熾烈な響きを醸し出すと共に希望も忘れず、慰めにも似た雰囲気が全体を覆っているのが特徴で、それが実に音楽的に迫ってくるのです。第2楽章の深遠な響きも、バイエルン放送響だからこそ可能なもので、最初に現われるイングリッシュホルンとオーボエが吹くモチーフと、それに続く弦の透明なテクシュチュアの美しいコントラスト、優しい風合いが印象的。終楽章は、大河ドラマ風のモチーフをホルンが吹き始めて以降の、コクのある響きと自然なフレージングがまず印象的で、後半、ティンパニの連打を経て、奈落の底に落ちるような箇所の壮絶な響きも、音量に頼らずに意味深いものに仕上げているところにアンセルメの底力を感じさせます。更にその後コーダまで続く弦の透明感は、まさに天上のニュアンス!
ブラームスは、演奏時間も解釈も、スタジオ録音と大差ないですが、アンセルメの魅力が決して緻密な設計力だけでないことを示す熱演。第2楽章、木管で吹かれる第2主題の聴けば聴くほど念入りなアーティキュレーションが、あくまでも自然な呼吸に乗せて流れるのは、まさにアンセルメの真骨頂!終楽章は一気呵成に突進しながら、展開部でテンポを落とす巧妙さなど、アンセルメらしい設計の巧さも光っています。【湧々堂】 |
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