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チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY:Symphony No.5 in e minor Op.64
マンフレート・ホーネック(指揮)
Manfred Honeck



掲載しているCDジャケットとそのCD番号は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。




チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64

マンフレート・ホーネック(指)
ピッツバーグ交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ: ウィリアム・キャバレロ(?)
オクタヴィア
OVCL-00443(1CD)
録音:2006年5月12、14日 ピッツバーグ・ハインツ・ホール(ライヴ)【ステレオ】
演奏時間: 第1楽章 14:15 / 第2楽章 13:33 / 第3楽章 5:36 / 第4楽章 12:41
カップリング/
“発見の連続!スコアの指示にまだ掘り下げる余地があったとは!”
マンフレッド・ホーネックがピッツバーグ交響楽団音楽監督に就任した記念演奏会のライヴ盤。スコアに書かれている指示と指揮者の表現アイデアが合致することが名演奏を生む条件の一つであるとすれば、この演奏はその最右翼と言えましょう。素晴らしい演奏は例外なく「スコアを深く読む」ことも「共感を持って演奏する」ことも確実に実行しているのは確かですが、このホーネックの演奏におけるスコアの掘り下げ方は比類なく、それが完全に深い音楽表現に直結しているのですから驚きです。聴いたことのない魅惑的なニュアンスが多数登場しますが、ほとんどがスコアに書かれていることを取りこぼしなく再現しているのであって、チャイコフスキーの繊細な感性に今更ながら感服する次第です。特に第1楽章ではアーティキュレーションの緻密さには唖然とするばかりですが、それによって暗い不安の心情が100%抽出される結果に繋がっています。しかもどん族に悶々とするだけではなく、展開部では意思を振り絞った強固な推進力を見せてメリアリのある構築力も発揮。第2楽章では、ホーネックの「スコアの指示に全てがある」という確信が、管楽器のソロ奏者の演奏に完全に浸透し、決して「おまかせ」ではない指揮者としての音楽イメージの一貫性、ドライブ能力の高さを痛感。終楽章では第1楽章からは想像できないほど解釈の制約を解き放ちますが、金管による運命動機斉奏部にみられるように、テヌートによる粘着やティンパニの確信的な強打を駆使してスラブ的な躍動を見事に表現するなど、この作品の本来の生命力にも光を当てている点も魅力です。
「交響曲第5番は、同時代で最も偉大な作品のひとつであり、最高の敬意を持って取り扱うに値する作品であると思います。」とライナーノーツの中でホーネック自身の語っている言葉は、全く嘘がないということが実証されているのです!【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 冒頭クラリネットはやっと聞こえるくらいの最弱音で開始。美しいレガートで哀愁の限りを尽くし、弦との絡みも重視しながら陰影の濃い音楽を展開。このテーマを繰り返す直前で再弱音まで沈み込む。25小節のディミニュエンドをスコア通りに大切に表現しているのが珍しい。呼吸も共感に満ち溢れている。
ツボ2 標準的なテンポ。木管の第1主題はスコアではピアニッシモのままだが、41〜43小節と44〜45小節で強弱の差をコントラストを付けているのが珍しいが恣意的な印象は与ずに自然な流れ。弦の刻みもエッジを立てず、クラリネットも序奏部の暗さを踏襲し、作品のイメージを明確に抱いていることを証明している。
ツボ3 スラーは際立たせていないが、上記「ツボ2」同様、弦のテーマにも強弱のコントラストを付加43小節の四分音符は通常より短めに切り上げているのも珍しいが、これもスコア通りのフレージング。しかもそれが、テーマの強弱コントラストの伏線として有効に作用していいるので、ホーネックが如何に共感を持ってスコアを掘り下げているかが分かる。
ツボ4 エネルギーを減衰させるよりも、ここでは推進力を重視。ホルンの音型が明瞭に聞き取れる例も珍しい。
ツボ5 冒頭のスフォルツァンドが楽想に相応しく見事!イン・テンポのまま進行するが、呼吸が深いので単調に陥ることはない。
ツボ6 アニマートで少しテンポを落とすが、強弱を殊更強調せずにしなやかに進行。
ツボ7 直前のホルンはかなりの再弱音だが、連携する弦も同様で、確実にニュアンスを形成する意思が反映されている。ピチカートはサラッと通りすぎるが、続く管楽器の走句が驚愕!木管が四分音符+八分音符なのに対し、ホルンだけがなぜ八分音符+四分音符なのか?その意図、色彩的な面白さをリアルに再現したこれは初めての例と言っても過言ではない。
ツボ8 ここで初めてはっきりとテンポを落とし、繊細に歌い上げる。「モルト・カンタービレ」のニュアンスを忠実に再現し、第2主題とは明らか異なる表情を繰り広げている。
ツボ9 わずかにテンポアップ。八分音符の頭は不明瞭。いかにもロシア的な臭いを感じさせる重厚さをもって進行させている点、やはり、並々ならぬ共感を窺わせる。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の低弦は弱すぎてニュアンスが浮かび上がらないが、その限りなく無に近い静けさから次第に音楽を膨らませる様に接すると、これまた音楽表現の一環として行なわれたものと気づき、唖然とさせられる。ホルンの巧さも尋常ではない!強弱のニュアンスもアーティキュレーションもスコアの指示を徹底遵守しながら深い味わいを醸し出した演奏。決して痩せることのない弱音の何という美しさ!しかもこの音楽作りのスタンスは、ホーネックがここまで示してきたものと全く同じで、ホルン奏者のセンスと指揮者の考えがいかに融合していいるかが分かり、さらに驚きを禁じ得ない!オーボエの音色も翳りを帯びて深い。
ツボ11 骨太でスケール感があり、呼吸も入魂!
ツボ12 このクラリネットも音色、技巧共に素晴らしい。テンポはほとんど不変。
ツボ13 ホルン主題のテンポに戻る。ピチカートの質感が最高。
ツボ14 これも絶品!142小節の冒頭から速めのテンポを早々に提示し、その勢いを生かしながら最高潮点にまで一気に達する。その頂点での噴射においても音が割れず、神々しい力感の飛翔に結実している。
ツボ15 絹の感触を思わせる繊細なフレージング。最後の一音は、弦もクラリネットも聞こえないほどの弱音だが、見事に結晶化されている。
第3楽章のツボ
ツボ16 ややテンポを落としてから進行。
ツボ17 オケの潤滑力を大発揮。しかも機械的ではない愉悦感が横溢!
ツボ18 最後の一音まで音の線と輪郭が明瞭。
第4楽章のツボ
ツボ19 ゆったりとしたテンポで風格満点。
ツボ20 木管とホルンはほぼ同等のバランスだが、38小節で突然ホルンが強調される。確かにスコアを見ると、ホルンのこの箇所にだけアクセントの標記があるのだ!
ツボ21 ティンパニは冒頭で一撃強打。その後62小節、66小節でアクセント。テンポはカラヤンに近いが、推進力と声部の完璧なバランス配分、音の凝縮力が破格!
ツボ22 ほとんど唯一と言ってよい、スコアを超えたアプローチを行っている箇所。弓を軽く弦に当てる程度にして軽く弾ませ、アクセント記号は無視。前例がないわけではないが、「こうするしかない!」と思わせるこんな自然なアプローチには接したことがない!
ツボ23 コントラバスをのみを強調するのではなく、ヴァイオリンの強弱増減も含めた全体としてのうねりを重視。
ツボ24 今までの流れを断ち切るように、超高速で猛進!カエターニ&バイエルン放送響以来の確信に満ちた切り返し!
ツボ25 意志の力満点の素晴らしい強打!
ツボ26 提示部冒頭のテンポに戻るが、超高速とのギャップがありすぎるので、急ブレーキを掛けたような違和感をどう解消するかが問題。しかし、ここでは直前までの暴走を一陣の風の様に扱い、312小節の木管の細かい音型にそのエネルギーを吸収させるという離れ業を敢行!それによってテンポの大きなギャップが大きな意味を持って迫る!
ツボ27 一段テンポアップ。金管の安定感が抜群で輝かしさ満点。
ツボ28 音価はたっぷりと長め。
ツボ29 最初の2小節はホルンを際立たせ、弦のみによる量感不足を解消。楽章冒頭と同様のテンポで確信に満ちた進行。
ツボ30 弦は音を短く切るが、トランペットはテヌート。
ツボ31 トランペットは改変型。499小節から全体を弱音に落として次第にクレッシェンドさせるムラヴィンスキーのスタイルも踏襲。
ツボ32 露骨な強調ではなく、バランスよく明快に鳴り渡る。
ツボ33 546小節からテンポアップし、そのまま最後まで駆け抜けると思わせておいて、最後の2小節のみテンポを緩める。

チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64

マンフレート・ホーネック(指)
スウェーデン放送交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
DIRIGENT
DIR-0786
入手不可
録音:2011年1月21日 ストックホルム(ライヴ)【ステレオ】
演奏時間: 第1楽章 13:53 / 第2楽章 12:48 / 第3楽章 5:35 / 第4楽章 12:12
カップリング/ベートーヴェン:「エグモント」序曲、ハイドン:交響曲第93番
“前回録音の洞察力に加え、新解釈も登場!”
2006年のオクタヴィア盤から約5年の歳月を経たライヴですが、ほとんどの解釈はオクタヴィア盤と同じ。共感の度合いも変わらず本物。ただ同じで、録音を前提とて周到に計画されたものと、そうでないものの差のせいか、こちらの録音は全体の大きな流れを重視したアプローチになっています。音質はこの種の録音にしては優秀ですが、当然ながらオクタヴィア盤と比べるとその差は歴然。オケの力量は放送オーケストラらしく機能性に優れてはいますが、ピッツバーグ響の鉄壁の巧味にはかないません。ただ興味深いのは、第2楽章の164小節の最後の8分音符にティンパニを重ねたり、終楽章の主部冒頭で、あのコバケンと同じスタイルでティンパニにアクセントを施すなど、新たな手法を取り入れている点。また、第3楽章は、2006年盤とテンポこそ変わりませんが、より表情が濃く、構えも大きくなっており、2006年年の羽のような軽やかさとは違うニュアンスを想定したようにも感じられ、他の楽章でも、2006年の解釈を更に深化させたニュアンスも登場します。というように、この演奏を単体で考えれば、ロシア的な情感を反映した音色センス、重厚感も十分満たし、コンセプトを明確に示した演奏として無視できない名演であることは確かなのですが、スコアの深い読み込みとニュアンス表出のあり方の極限を示したオクタヴィア盤が登場してしまった以上、この「チャイ5」に関しては存在価値は下がってしまったと言わざるを得ません。なお、カップリングはベートーヴェンはC・クライバーを思わせる凝縮力の高い演奏で、特に後半は猛烈な速さ!ハイドンもダイナミックでメリハリの効いた好演で無視できないので、その点も含めて「Excellent」とします。【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットは2006年盤ほどではないが、強弱の陰影が濃く、味わい深い。弦の主張は一層強く求心力も高い。
ツボ2 標準的なテンポ。41〜43小節と44〜45小節で強弱の差をコントラストを付けているのは2006年盤と同じ。全体の空気は暗さよりも推進力を優先したものとなっており、フェドセーエフのライヴ盤を思い起こさせる。
ツボ3 2006年盤同様、弦のテーマにも強弱のコントラストを付加し、クレッシェンドとディミニュエンドの指示は行なわず、ピアニッシモとしている。43小節の四分音符は通常より短めに切り上げているのも同じ。
ツボ4 イン・テンポで推進力を重視。2006年盤はホルンの音型が明瞭に聞き取れたが、ここでは背景に徹している。こちらのほうが自然なバランス。
ツボ5 冒頭のスフォルツァンドが2006年盤よりも強いアクセントを伴っている。
ツボ6 2006年盤と同様のアプローチ。
ツボ7 ピチカートの第1音に強烈なアクセント2006年盤のようなホルンの「八分音符+四分音符」の際立たせはない。オクタヴィアの録音は、ここをあえて編集で強調したのだろうか?
ツボ8 2006年盤ほどテンポを落としたコントラストを強調せず、全体の流れを尊重している。181小節の最後で僅かにポルタメントが掛かるがこれは2006年盤にはなかった。しかし、フレージングのニュアンスの細やかさは明らかに2006年盤が上。
ツボ9 わずかにテンポアップ。8分音符の頭は不明瞭。十分に熱気が伝わるが、ロシア的な野趣は2006年盤の方が勝る。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の低弦の冒頭は2006年盤同様に最弱音だが、少しずつ光が差し込むような克明なニュアンスは弱まっている。その代わり流れの自然さが際立つ。ホルンは技量的には全く問題ないが、呼吸の深さ、スコアの指示への忠実度など、あまりに素晴らしかった2006年盤に比べると、やや聴き劣りがする。
ツボ11 2006年盤ほどの手応えはないが、力感は感じられる。
ツボ12 クラリネット、ファゴットも無難な出来栄え。
ツボ13 ホルン主題のテンポに戻る。ピチカートの統制がやや弱い。
ツボ14 2006年盤同様に見事な高揚を見せるが、音の量感、厚みは、圧倒的に2006年盤が上。
ツボ15 この演奏も十分に美しいが、2006年盤の方が録音が磐石なだけに繊細さが際立っていた。但し、最後に消え入る余韻はこちらの方が素晴らしい!
第3楽章のツボ
ツボ16 ややテンポを落としてから進行。
ツボ17 放送オケらしく機能性十分。
ツボ18 ファゴットの第1音がわずかに強い。
第4楽章のツボ
ツボ19 2006年盤よりも風格が増している。
ツボ20 木管とホルンはほぼ同等のバランスを築きながら、スコアどおり38小節で突然ホルンが浮上させているが、2006年盤ほど明確ではない。
ツボ21 なんとここではコバケン・スタイルを採用!冒頭58小節から2小節おきに一撃アクセントを置く。オクタヴィアとの縁で、その演奏を参考にしたのだろうか?テンポ感は2006年盤同様カラヤンに近いが、推進力は2006年盤のほうが勝る。
ツボ22 2006年盤と同じく、弓を軽く弦に当てる程度にして軽く弾ませ、アクセント記号は無視。
ツボ23 2006年版と同じ配慮。コントラバスをのみを強調するのではなく、ヴァイオリンの前半部分のみを前面に立てるのがユニーク。クラリネットが派手にひっくり返る。
ツボ24 ここから超高速に激変させるのは2006年盤と同じ。
ツボ25 克明な強打。
ツボ26 提示部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 見事な推進力だが、音色的な魅力にやや欠ける。
ツボ28 音価はたっぷりと長め。最後にティンパニの一撃あり。
ツボ29 2006年盤は最初の2小節はホルンを際立たせていたが、ここでは完全に背後に回る。弦の弾き上げるテーマはハリと輝きに満ちて素晴らしい。
ツボ30 弦は音を短く切るが、トランペットはテヌート的。
ツボ31 トランペットは改変型。但し、2006年盤では499小節から全声部をディミニュエンドにしていたが、ここでは499小節内はトランペットのみを浮上させたままにしている
ツボ32 バランスよく明朗に鳴っている。
ツボ33 2006年盤同様、546小節からテンポアップするが、推進力は2006年の方に軍配。そのまま最後の締めくくりまで、イン・テンポ。

チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64

マンフレート・ホーネック(指)
ピッツバーグ交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ: ウィリアム・キャバレロ(首席奏者)
REFERENCE
FR-752SACD(1SACD)
録音:2022年6月17-19、ハインツホール、ピッツバーグ(ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 14:08 / 第2楽章 13:22 / 第3楽章 5:38 / 第4楽章 12:11
カップリング/シュルホフ:弦楽四重奏のための5つの小品(ホーネック編)
“作品への無限の愛を美しい造形美に見事に結実させた名演!”
チャイコフスキーの交響曲第5番は、ホーネックが同オケの音楽監督に就任した際の記念演奏会のライヴ録音やケルン・ギュルツェニOとの自主制作盤もあり、YouTubeでも3種(hr響、イスラエルPO、チェコPO)もの全曲動画が上がっているほどですから、ホーネックにとって余程お気に入りの勝負曲なのでしょう。
 細部の解釈は前回の録音を踏襲している部分が多く、その上で対旋律や内声の処理がより入念になり、強弱、音価の長さへのこだわりを織り交ぜつつ、この作品の唐突とも言えるテンポの変化とも折り合いも付けて、安定的な造形を確立させています。
 第1楽章の主題における強弱の入れ替え処理のように、こだわりのあまりの多さに、聴き手の心理状態によってはそれらが煩わしく感じることもあり得ると思いますが、そのベースには誰にも負けない作品への愛と共感があることは間違いなく、他と違うという事実だけで決して白眼視などできません。ただ、軽くあしらおうとしても、展開部冒頭のホルンによる主題の決然とした響きを聞けば、、ホーネックのこだわりの本気さに気付かされることは必至でしょう。
 第2楽章も強弱へのこだわりも尋常ではなく、冒頭の低弦の緻密で入念なニュアンスはなかなか他では見られず、ピアノからピアニッシモへの推移といった単純なものとはわけが違います。驚異的な巧さを誇るホルンは信じがたい最弱音から開始しますが、これはスコアどおり。しかし、この箇所のスコア遵守の意味深さを教えてくれる演奏を他に知りません。終結部前の165小節の休止は異様に長いですが、咳き込むような8分音符の連打の後には理に叶っていると言えましょう。そして、最後の3小節の弱音の完璧な美しさ!
 3楽章をリラックスしたそこそこの演奏で済まさないのも、ホーネックの本気度の表れ。漫然としたワルツではなく、全ての音がときめいていて、色彩豊か。中間部の愉しさも特筆ものです。
 終楽章は、勇壮一辺倒ではなく、ここでも入念なバランス感覚が冴え渡ります。主部冒頭で決めたテンポでそのまま突き進むのではなく、82小節から更にもう一段テンポアップするのが印象的。156小節からの軽妙なリズムの弾ませ方は、スコア指示を盲信せず、楽想にふさわしいニュアンスを与えるという指揮者のセンスの表れ。再現部冒頭(6:50〜)の猛烈な加速に曖昧さが一切ないのは、表情への確信の為せる技。全休止後に木管が3連音を奏でる箇所で急に力感が萎える演奏が多い中、そのアンチテーゼと言うべきリズムの本腰の入れ方はあっ晴れ。終盤504小節からのプレストも、どの程度の高速にするかが問われるところですが、第1音と第3音が装飾音のような扱いになることを目指したような絶妙な速さ。
 ニュアンスへのこだわりと造形へのこだわり、作品への愛が深ければ深いほど、それらを統合するのには大変な労力が必要となりますが、長年の同曲の演奏経験から得た教訓を活かしつつ、それらを継ぎ接ぎとして点在させることなく強固に関連付けることに成功したと事実は大いに称賛されて然るべきだと思います。純粋な愛を貫徹させることが、人々に感動を与える第一歩ということでしょう!【2023年10月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 深い霧の中から茫洋と現れるようにクラリネットが鳴り出すし独特の暗さを表現するが、弱音を重視しすぎてニュアンスが曖昧になる傾向もある、一方、弦の表情は濃厚と言うより過剰で、発作的な強弱の付加に違和感が残る。
ツボ2 テンポは標準的。軽妙なリズムには悲壮感はなし。クラリネットとファゴットの融合は完璧。
ツボ3 なんとも独自なフレージング。前半2小節と後半2小節で対話させるように後半部の音量を落としている。そのため、59小節のスラーは完全に無視し、呟くように表現。気持ちはわかるが、そのために進行が淀み、恣意的な印象しか残さない。
ツボ4 呼吸が浅く楽観的。
ツボ5 冒頭のスフォルツァンド効果が絶品!他の箇所もスコアの指示を遵守し、それによって最大の効果を上げ、確実にニュアンス化させている。ている。
ツボ6 ここのスフォルツァンドも見事。アニマートの箇所は、絶叫こそシないが、前例がないほど徹底的にテンポを落とす。それが少しも大げさに響かない。
ツボ7 ややテンポアップ。極めてアグレッシブ!
ツボ8 絶妙なリタルダンドからのすすり泣くフレージングへの滑り込み。
ツボ9 筋肉質な響きで一貫し、最後まで果敢な意志を漲らせる。16分音符は聞き取れない。
第2楽章のツボ
ツボ10 ここでも強弱ニュアンスへの強いこだわりを刻印。弦の冒頭の弱音はぎりぎり聞こえる程度まで抑制。ホルンは超低速で、これまた冒頭を最弱音で開始しニュアンスを繊細に膨らませる。技術の高さも驚異的で、チャイ5史上屈指の名演!。オーボエとの絡みの有機的。
ツボ11 リタルダンドからの爆発力が見事。その余韻をホルンが吐息のように吐露。
ツボ12 巧い!巧すぎる!これまた史上屈指。テンポはほとんど不変。その後の弦のハーモニーが濃厚な味を醸し続ける。
ツボ13 元のテンポに戻り、縦の線を完璧に揃えたピチカート。共感も十分。続くアルコの弦は全てレガート処理をして息の長いフレージングを確保
ツボ14 この作品の本質に本気で迫る意志のある指揮者にしか出せない爆発力と呼吸力。響きの破綻のなさも、それだけで感動的。
ツボ15 165小節の休止を非常に長く取り、続くリテヌートの呼吸へつなげる配慮が素晴らしい!終結部は過度な弱音も持ち込まず、内声を緊密に連携させた響きで魅了。最後の3小節の弱音の美しさとフォルムの完璧さは、空前絶後!
第3楽章のツボ
ツボ16 リタルダンドしてからの滑り込み。
ツボ17 緊密な声部間の連携で愉しさ倍増。
ツボ18 パーフェクト!フォルティッシモの指示もしっかり踏襲!
第4楽章のツボ
ツボ19 標準的なテンポ。威厳と品格を滲ませて、響きに弛緩がない。
ツボ20 ホルンは裏方で、全体の色彩に確実にスパイスを与えている。
ツボ21 58小節、62小節、66小節の頭に強靭なアクセントを置く。
ツボ22 156小節からの弦は音価を短く刈り込んで軽妙にリズムを弾ませる演出。したがって、二分音符だけのアクセントは省略。同様の処理は他でも見られれるが、ここまでニュアンスが生きている例は少ない。
ツボ23 最強音ではないが十分に力感を湛えている。
ツボ24 猛烈な高速テンポ。
ツボ25 このテンポと勢いに相応しい絶妙なな強打!
ツボ26 提示部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 一切破綻のない高速進行。
ツボ28 最後の471小節ではなく、470小節冒頭にアクセントを入れるのが前代未聞。これまた絶妙。8分音符の音価はやや長め。
ツボ29 堂々たる凱旋行進。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート。
ツボ31 499小節で突如弱音に転じるムラヴィンスキーを参考にしたのか、ここでは499小節からディミヌエンドし、すぐに500小節でクレッシェンド処理をしている。トランペットのフレーズは改変型。
ツボ32 高速で響かせにくい中、明朗に轟いている。
ツボ33 最後の4つの四分音符のみテンポを落とす。それならば、もう少し強靭さと重みがほしいところ。

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